ヒトフタ:猛暑日
「あっぢぃ……」
額に浮かぶ汗を手のひらで拭いつつ、提督が何度目ともしれぬ悪態を吐く。
隣でずっと聞いてると気分が滅入ってしまうので、そういうのは心の中だけにしててほしいと思うのだが、いや、たしかに暑いのはたしかで、しかも今日は近年稀に見る猛暑日というやつらしいので、それも一入なのだ。
「というわけで、提督、海に行こう」
そう、せっかくここは鎮守府なのだから。
「じゃじゃーん! どうよ、提督!」
惜しげもなく、玉の肌を晒す加古。
その肢体はホルターネックのビキニに包まれている。
重巡らしくメリハリのある体は、同時に女の子特有の柔らかさも孕んでいて、思わずガン見しそうになったほどだ。
「いいと思うぞ。似合ってる」
「ふっふーん、そうだろー。よし、泳いでこよーっと!」
似合ってる、と、それだけを提督に言わせたかったのか満足した様子の加古が、準備体操もしないうちに海に飛び込んでいく。
……まぁ、加古なら大丈夫か。
「しっかし、毎日眺めてる海だけど、水着着てると、また違う感覚がするな」
暇そうにしていた艦娘たちを引き連れて、私と提督は、海に出てきていた。
心ばかりの避暑である。同時に、水着になった見た目麗しい同僚たちをガン見するための方便でもあるけど、まぁ、それは今はいいや。
「ね、提督。……私は?」
今はそれより、ビキニにパレオを纏った古鷹さんがかわいすぎて辛い。
なにこれ、めっちゃ撫でくり回したいんですけど。
「あ、ああ、かわいいぞ、うん……」
提督も普段のオラつき具合が剥がれて思わずキョドるほどの威力。
うーん、ナイスおっぱい。
「そう、ですか。よかった……」
古鷹さんも提督の一言がほしかっただけなのか、愛らしくはにかんだあと、波打ち際で騒ぐ加古のほうへと駆けていった。
「…………」
「…………」
「……いいな」
「……そうでしょ?」
「ああ……」
私も今は女の子なわけだけど、元男だったわけで、今でもかわいい女の子やらおっぱいやらにはその関心をおおいに寄せてしまう。まぁ、はっきり言って、趣味である。
けれど、そういうところはこの実はむっつりな提督と非常に馬が合うので、私たちは互いにサムズアップしてから、他の艦娘たちのほうへと新たに一歩を踏み出したのだった。
「ああ、川内」
「ん……?」
一通り水着女子たちと談笑して、普段は海上しか知らない海を満喫し尽くし、他のみんなも遊び疲れただろうなぁという頃合い。
さぁ鎮守府に戻って今夜はバーベキューにしようか、などと騒ぐ艦娘たちを尻目に、提督がなんだか照れくさそうにこちらを振り返った。
「その、だな……。……お前も、その水着、似合ってるぞ。……それだけだ」
そっぽを向いて、さっさと歩き出してしまう提督。
数秒して、言われたことを頭の中で処理しきったとき、私の顔は盛大にふやけていた。
「えへ、えへへ……」
自分ではなんとなく肌を晒すのが恥ずかしくて手にとったタンキニ。
でも、まぁ、提督が似合うと言ってくれるのなら、これはこれでよかったなぁ、なんて……。
というわけで、新章でーす