「ふあぁぁぁっ……!?」
濛々と立ち込める黒煙から、悲鳴が一つ。
「チィッ……! クソッ、ありゃあ、フラグシップじゃねぇか!」
「旗艦、大破! みんな、下がって! 撤退するよ!」
「う、うそ……な、なんで……」
「海風さん、先に! 綾波が殿を!」
「りょ、了解!」
朱色の服を襤褸切れにした少女を背負った五人は、背後の
川内大破の報もまた、俺の心を酷く波立たせた。
現在、艦隊の他のメンバーに牽引され、鎮守府に帰投中とのことだが……。
「…………」
俺のせい、か……。
たしかに、ここ最近での川内の練度の伸びは凄まじかった。
けれど、しかし。
やはり、彼女には荷が重かったのだろうかと思う。
彼女は人間だった。
生来の艦娘とは、なにもかもが違う。
けれど、それを押して、今まで彼女は俺の傍にいてくれたのに。俺はそれを返すどころか、結果、こうして彼女を沈ませるような事態への引き鉄を引いてしまった。
「くそっ……!」
壁を殴る。
まったく、情けない……!!
『くそっ……!』
あまりに沈んだその罵りと、なにかを殴るような鈍い音が、朦朧とした意識の片隅、通信機の向こう側で聞こえた。
――――ああ、そんな顔しないでよ、提督……。
――――提督、お茶だよー。
――――頑張ってるねぇ、提督ー。
――――ねー、提督ー、今日の夕飯はなに食べるー?
脳裏を過ぎるそんな日々に、俺は……。
ふと、いつの間にか心の中心に灯った暖かい感情に気づく。
「ああ、そういうこと、か……」
なんだよ、くそ……。
先ほどまで揺らぎに揺らいでいた胸中が、今は嘘みたいに凪いでいた。
よし、こうなったら、このままで黙っていられるか。
どっちみち、鎮守府近海にはまだ撃破し損ねたフラグシップ、戦艦ル級が残っている。それを始末しないことには、今回のことはなにも終わらないんだ。
鎮守府に帰投した僕たちを出迎えたのは、不安と焦燥に顔を歪めた大淀さんと明石さんだった。
「川内さんはっ!?」
「酷い……」
陸に上がり、艤装を外すこともせずにみんなで川内さんを入渠ドックへと担ぎこむ。
服を脱がせる暇も煩わしくて、そのまま川内さんをドックへとぶち込もうとして。
そのとき、大淀さんの持っていた提督との無線が着信を告げた。
「提督……!?」
『ああ、時雨か。ってことは、そこには川内もいるな』
「そう、だけど! でも大破状態で!」
『わかってる』
「なら!」
『けど。その前にお前らに頼みたいことがある』
「もう! なんなのさっ!」
『川内の、改二改装だ』
はい、ル級さん、フラグシップに進化しました