改二改装。
高練度到達艦のポテンシャルをさらに引き出し、その能力を大幅に底上げするそれは、この鎮守府でも達しているものはそう多くない。
それほどまでに、改二への道のりは厳しいのだ。
『川内の、改二改装だ』
だから、その場にいた者らは、提督のその宣言に一瞬固まった。
その中で、最も早くに現実に帰ったのは、先ほどまで無線で提督と言葉を交わしていた時雨であった。
「……できるの?」
『この場面で嘘ついてどうする。それに、もともと川内にはこの話を近いうちにするつもりだったんだ』
無線の向こう側の、その揺らぎのない声に時雨は、一つ、息を吐いた。
「よし、やろう。明石さん、川内さんを工廠へ。さ、みんなも手伝って」
ふわふわと、意識になにか靄のようなものがかかって、どうにもはっきりしない。
はて、俺はなにをしていたのだったか。
たしか、そう、鎮守府に深海棲艦が攻め込んできて。
ああ、そうだ。三水戦のみんなと迎撃して、戦艦ル級に14cm砲をぶち込んだんだった。
それで、えっと。
……そうだ、そのル級が、フラグシップだったんだ。
記憶に残る黄色いオーラを身にまとったル級。
その砲の直撃を受けて、そこからの記憶はない。
ああ、これ、沈んだのかな……。
なんだよ、せっかくなら、もう少しだけ、暴れたかったかも……。
そういえば、結局、提督からの大事な話ってのはなんだったんだろう。
解体とか秘書艦解任とかだったら嫌だけど、でももしそうだったときに、その話を聞かないまま逝けるのは、まぁ、僥倖ってやつなのかも。
フラッシュバックする今までの、川内になってからの記憶。
川内としての自分に、神通や那珂の力を貸してもらって。
提督と仲良くなって。
鎮守府の他のみんなと仲良くなって。
みんなには内緒で訓練なんかもしちゃったりして。
あーあ、ちぇっ、死にたくないなぁ――――。
そのまま沈んでいくかと思っていた意識が、ふと、急速に浮き上がり始めた。
感覚のなかった、体、四肢に血が流れていくのが意識できる。
肺が動いて、気管を空気が出たり入ったりするのがわかる。
「あれ、生きてる……?」
思いのほかしっかりと、声が出た。
「ああ、死なせてたまるか」
耳に心地のいい聞き慣れた声がした。
「なんで……?」
「なんでもなにも、生きてるんだから、それでいいじゃねぇか」
「……あー、それもそうか」
「そうだ」
「ん……」
どうやら、私は沈まなかったらしい。
目蓋を開いて横にされていた体を起こしてみれば、周囲には、酷く服装を乱した提督をはじめに、みんなして瞳に涙を浮かべた三水戦のメンバーと大淀さん、明石さんがいた。
「とりあえず、夜戦でもしてみる?」
きっと、いっぱい心配かけたんだろうなぁと思うと、なんて言っていいかわからなくなって、結局私が口にしたのは、なんともいえないそんな一言だった。
もともと今回の話は、川内をどうやって改二にしたものかと浅い考えを捻った結果だったりします