――――お前、秘書艦にするから。もう、海出るな。な……?
提督のその言葉は、ありがたいことだって頭では理解していた。
――――やだよ! 私だって戦うもん! 艦娘なんだよ!? 戦えるもん!
ああ、どこか穴があったら入りたい……。
たぶん、私が考える艦娘の存在理由が、提督の思うそれと食い違っていたんだと思う。
私からすれば、人間だった頃の記憶からこの世界が結構綱渡りな状況だってのが最初から頭にあったし、なにより、存在そのものが異端である私は、戦うことでしか己を証明できないと考えていた。
それが、提督にとっては違ったのだ、きっと。
私は、大事な部下で。替えの効かない唯一無二で。庇護対象なのだ。
「なんだ、それ……」
自分は指図するだけで、結局、実際に戦って、傷ついちゃうのは艦娘のほうなんじゃん。
…………。
…………。
…………。
「……俺、なにしてんだよ……」
川内が、怒った。
どれだけ特殊な素性をしていようと、平等に扱い、また、リスクが最も軽減される選択をするのが俺のモットーだ。
この鎮守府に配属されたのは最近のことで、もっと言えば、士官学校を出たのだってそんなに前のことじゃない。
「だからって、ちょっと気を張りすぎてたか……?」
だから、川内があんなに捲くし立てるほどのことをしてしまったのか?
「……わからん」
もともと、俺はそんなに他人の機微に敏いほうではない。
だから、こんな任、本当は向いていなかったのかもしれない。だってそうだろう。艦娘とコミュニケーションを取り、彼女たちに成長を促し、そして己のことも高めながら、襲いかかってくるものと戦う。
ほら、俺みたいなのには向いていない。
やや高圧的で、せっかちで早合点も多く、なにより、己に自信を持てていない提督など、何ほどのものかよ。
「……いや、そうだ、川内を探しに行こう」
執務机の上に残っていた書類には目もくれず、軍帽も取らず、着の身着のままに俺は川内の後を追うように走り出していた。
「隣、いいか……?」
提督が、いつのまにか背に立っていた。
「ん……」
短く返答すると、提督も無言で私の隣に腰掛ける。
埠頭の縁で、私と提督はしばらく、ただ黙していた。
「「なぁ……」」
思わず、顔を見合わせる。
ベタな展開……。
「「……ごめん」」
でも、まぁ、たまにはこういうのもいいかなって。
そう思った。
「秘書艦、引き受けるよ」
提督が私のことを思ってくれているのは、最初に一目見たときから、なんとなくわかっていた。
だから、もう迷うことはない。
聞けば、秘書艦業務を引き受けていた艦娘は他にいなかったらしいし、私が提督の秘書艦第一号である。
ふふん、光栄に思うがよいぞ。
「ああ、頼む」
「それと……」
「なんだ……?」
「私、戦うのはまだ諦めてないよ。いい……?」
でも、それとこれとは別。
人間だった俺からすれば、戦って、命のやり取りっていうのはぞっとする。だけど、それも今は脇に置いとかなきゃいけない。
現行兵器の効かない敵に対する、
「……わかった。俺もでき得る限り、協力してやる。艤装が出なくても、まだ装備できないと決まったわけでもないからな」
にやり、と提督が笑った。
「……なんだ、笑えるんじゃん」
実際のところ、気遣いが伝わってきていても、相手が笑みの一つも見せなかったら、うん、ちょっとは不安になるもんだろうなぁと実感した、そんな初日の出来事であった。
稚拙な展開とお言いあそばされますな。
これでも当方、なにも考えずにただ勢いだけで書いておるのですぞ。ふはは。