「せーんだーいちゃーん、朝だよーっ。ご飯食べよー!」
私は、朝がダメなのだ。
低血圧というわけでも、夜更かしをしているわけでもないのだが、どうにも頭が冴えない。
人体構造上、朝はお脳が活発なはずなんやけどなぁ……。
「おはようさん、那珂……」
「川内ちゃん、イントネーション、関西っぽくなってるよ……?」
「え、ほんま……ほんまや、どうしよ……」
「えぇっ、なんでなんで!?」
実はわざとなのだが、那珂は大げさにリアクションをとってくれるので、こういうことをしていると楽しくて、目を覚ますのにいいのだ。
「ごっはんー、ごっはんー。那珂ぁー、早くぅー」
「あれ、川内ちゃん!? さっきまで布団の中にいたんじゃ……って、あーん、待ってよぉっ」
だいたいいつもこんな感じで、私の一日は幕を開ける。
「おはようございます、姉さん」
「おっはー」
食堂につくと、朝食を私と那珂のぶんも用意してくれていた神通が、すでに自分のぶんに手をつけていた。
「あー、神通ちゃん、待っててって言ったのにぃ……」
いつも三人でご飯を食べたがる那珂がぶーたれる。
とは言っても、だ。
私たちは艦娘なのだから、当然軍属なわけで、そうすると上からの指示は基本的に絶対遵守だ。
「しょうがないよ、那珂。神通、今日は遠征だし」
「はれ、そだっけ?」
そうなのです。
私、秘書艦ですし、みんなの予定くらいは先一ヶ月、あるいはそれ以上、ちゃんと把握してます。えへん。
「……じゃあ、晩ご飯は一緒ね、神通ちゃん」
「はい、必ず。では、行ってきますね、二人とも」
「いってらっしゃい」
「絶対だよー! いってらっしゃーいっ」
空になった食器を片し、駆けていく神通を二人で見送ってから、席につき、箸をとる。
「うーん、今日もおいしいっ。ね、川内ちゃんっ」
「そうだね」
「そういえば、今日、川内ちゃんも朝早いって言ってなかったっけ……?」
本当に、そういえば、みたいな感じで首を傾げる那珂。
そんな彼女の言葉に、一瞬同じように首を傾げるも、すぐさま心当たりに思い至る。
「あ……」
思わず漏れてしまったその一音に、不穏な空気が広がった。
ごくり、と那珂が固唾を呑む。
「川内ちゃん、その、あ、っていうの、ダメなときのやつだよね……?」
心なしか半音下がった声音に、びくっと肩が震える。
…………。
…………。
…………。
ははっ、まっさかぁっ!
「や、やっべぇぇっ……!」
…………。
…………。
…………。
「ね、川内ちゃん。本音と建前、逆になってない……?」
な、ななな、なってねーしっ。
「だ、だだだ、大丈夫だしっ」
とは言ったものの、今日は朝から提督が忙しなくするそうなので、漏れなく私にもお鉢が回ってくるという話だったはずだ……。
事前に伝えられていた時間はいくらか前に当に過ぎている。
本格的に、やばいかもしれない。
朝ご飯は諦めて、さっさと執務室に向かおう。それから、謝ればきっと、うん……。
「じゃ、じゃあ、那珂、片付け、頼むね」
「那珂ちゃん、かしこまりっ」
と、そのとき、不意に館内放送が響いた。
『……せーんだーいちゃーん、あーっさだよー……ハヤクコイ……』
ぞぞーっと、背筋に冷たいものが走る。今朝、那珂にかけられたものとまったく同じ台詞だけど、はっはっは、こんなシチュエーションでもう一度聞きたくはなかったかなぁ。
さて。
あれで提督は、仕事に関しては厳しいのだ。早く行かなければ。
「那珂、あとよろしく……!」
「頑張ってー!」
妹の声援を背に、私は、執務室までの距離を一息に駆け抜けた。
川内かわいい(挨拶
こう、まことしやかに流行らせたい。。