まぁ、それはそれ。
どうぞ二章もお楽しみください。
マルハチ:艤装
「へ? 艤装?」
秘書艦として執務補佐に精を出していると、手元の書類とにらめっこしていた提督が、不意に口を開いた。
「ああ。お前用のが、つい先日完成したと、明石から報告がきていたのを思い出した」
「……普通そういうの、報告が入り次第当事者に伝えるべきじゃない?」
「だって、真夜中近くだったし。お前、川内のくせに、夜更かしあんま得意じゃねーもんな」
「……眠いものは、眠いの。いいよ、コーヒーとか飲んだら私も夜更かしとかできるしっ」
「なにムキになってんの……?」
「なってないしっ」
とはいえ、艤装、艤装だ。
普通艦娘には初期装備として、砲やら艦載機やらが付随して建造されるらしいのだが、どうにも私にはそれがなかったらしく、じゃあ作ればいいじゃん、という話になったのだが……。
「私用の、艤装……」
「そうだ。14cm単装砲が一門、それと零式水上偵察機が搭載数分用意されているとのことだ」
うむ、思いっきり軽巡川内の初期装備だな。
いや、だが、そんなものだろう。むしろこれがいい。なにせ、私は最近艦娘になったばかりの新米ゆえな。
「まぁ、俺からの着任祝ってとこか」
「女の子に送るようなものじゃないことは、たしかだね……」
「……口が減らねーな、お前」
「ふふん……。……でも、ありがとね、提督」
「お、おう……」
しばらく、まだ見ぬ艤装に思いを馳せる私と、そんな私からの礼に照れ照れする提督という誰得な図が展開されることとなった。
「初めての単装砲、触った感じはどう?」
「う、うん、意外とおっきいね、これ……」
つんつんと指でつつくと、硬質且つ冷ややかな感触がして、それがまた艤装を身にまとっているという事実の認識に拍車をかける。
そう、私は今、工廠にて艤装を身にまとっている。完成した艤装を受け取りに来たところ、工廠を任されている工作艦明石に試用を勧められたのだ。
訓練をするにも、戦闘をするにも、もちろん艤装を扱うのも、その感触を知っているのと、そうでないのとではだいぶ違うものだとか。
「外に試し撃ちの的があるから、一度、撃ってみる?」
「じゃあ、せっかくだし」
というわけで、鉄と油、火薬の臭いのする工廠内から、潮風の気持ちいい外へ。
ぼろっこい的の前で、明石に教えを請いつつ、14cm単装砲を構える。
「目標を正眼に構えて……そうそう、それで、撃つ……」
無言のまま、明石の指示に従う。
的へ向け、単装砲が火を吹いた。
重低音が腹に響き、同時に撃った反動で肩から全体にかけて衝撃が走る。
そして、次の瞬間には、破砕音とともに、眼前の的がその姿を凄まじいまでに変えていた。正方形だったそれが、三日月になるように抉り取られていたのだ。
「す、っげぇ……」
「おお、お見事。上出来だね、川内さん」
これが、艤装。
敵性艦たちとやりあうための、
「…………」
そんなことを今さらながらに理解した俺は、二機の偵察機を駆る妖精さんたちと挨拶を交わしたあと、書類仕事に没頭し始める。
できればあんまし艤装を使う機会が来なければいいなぁ、なんてことを考えつつ、その日は終わった。
川内かわいい(挨拶