ボクらの月光―月光少女ツキナ―   作:fruttiano

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転生

 私の名前は霜月(しもつき)月渚(つきな)

 

 現在、中学三年女子。現在・・・というのは、20✖✖年の二月である。高校はすでに推薦入試に受かっており、同級生が勉強している中、私は一人家に帰って呑気にゲームをしていた。

容姿は普通。運動も普通。勉強だけは得意・・・だと思う。私は帰宅部だから他の人よりも時間があっただけ・・・一年時から学年一位を獲り続けていたせいで、担任の先生に生徒会に入って欲しいと言われた。

 いくら成績が良くとも、私には大衆を引っ張れるほどのリーダーシップというものが皆無である。私より適任者がいるだろうに・・・

 担任曰く、

 

「お前、部活に入ってないだろ?成績もいいし、誰もお前が生徒会に入ることを嫌がる奴はいないし、お前しか適役がいないんだ」

 

 私は断ったが、先生が何度も説得してきたので、結局、生徒会に入った。文化祭や運動会がある時は帰るのが遅くなったが、特にイベントがない時はいつも通り帰れたので、思っていたより、時間を削られることはなかった。

 ちなみに役職は生徒会副会長である。副会長という役職は本当にラッキーだったし、会長が皆勤賞を獲るために少し具合が悪くとも学校に来るタイプの人間だったので、私に回ってくるのは簡単な雑務だけだった。

 そのまま、三年時も成績を落とさず、生徒会に入っていたおかげで推薦入試を受け、無事合格することができた。あとは、春を待つだけである。

 

 

 合格が決まってから私は勉強せず、ずっと、ゲームをやっていた。特に、METAL GEARシリーズをやっていた。このゲームはすごく面白い。グラフィックもよく、BGMもよく、ストーリーもいい。何より、相手と対峙する時の緊張感が好きだった。何度も失敗していた頃が懐かしい。今では、どのステージでもノーダメでクリアできるようになったが。

 

 

 そして、私は今日も早く帰り、ヘッドフォンをつけ、画面に目線を集中させる。手慣れた操作で敵を殲滅する。しかし、私の手はすぐに止まった。自身の体の異変に気付いたからである。

 私は画面に向けていた目線を、異変を感じた自分の胸元に移した。

 胸から突出した鋭利な刃が濁った赤い液体を流しながら、私の顔を映し出す。その直後、その異変は激痛であることを理解した。

 

「・・・っぅ・・・あぅ・・・ごぼぉ・・・」

 

 喉から何か生暖かいものが逆流し、私は嗚咽と共にそれを吐き出した。吐き出したもの、それも濁った赤い液体・・・いや、私の血である。

 

(推測するまでもない・・・何者かが家に侵入してナイフで背後から私を刺した。ヘッドフォンで聴覚を、画面で視覚を遮断していたため、部屋に侵入されたことに気づけなかった・・・恐らく、強盗の類だろうか・・・いや、二月だから鍵は全部閉めてあったし、専業主婦である母もいた・・・このままでは、死んでしまう・・・助けを・・・助けを・・・呼ばないと・・・いや・・・助けを呼んでもどう考えても私は助からない・・・なら、せめて・・・)

 

 

 私は激痛に耐えながら、勇気を振り絞り、後ろを振り向いた。せめて、自分を刺した犯人の顔だけでも見たかった。

 

 

 しかし、その顔を見て私はすぐに後悔した。

 

 

 そこにあったのは、返り血を浴びてもなお眉一つ変えることのない・・・まるで喜怒哀楽のどれにも当てはまらない表情をした母の顔だった。

 

「・・・な・・・ん・・・でぇ・・・ぇ・・・」

 

 母は私に対して優しかった・・・いや、甘かった・・・私をたくさん褒めて、私の欲しいものをたくさん与えてくれた。ただ、私に友達という存在がいなかったことを少し気にしていた。もしかしたら、その『少し』は母にとっては『かなり』だったしれない。もしかしたら、私が欲しいものを強請りすぎて気に障ってしまったかもしれない。

 母が私を殺すための動機を考えている内に、視界が黒に染まり、意識は遠のいていく。ヘッドフォンから流れてくるBGMは私の死を嘲笑しているように感じた。

 

 

 

「・・・っぅ・・・」

 

 眩しい・・・私は死んだのか・・・そしたら、ここは死後の世界なのか?

 目が慣れてきた、周りは白い壁で囲まれている。が、所々に黒い鎖が剥き出しになっている。その黒い鎖は私の手足と首に繋がれていた。

 

「ふふ?お目覚めかしら?」

 

 誰かが私の耳元に吐息をかけながら囁く。

 

「っ!?だれ!?くぅっ!?」

 

 私が後ろに振り向こうとした瞬間、首についていた鎖が閉まり始めた。

 

「あらら、飾りのつもりだったのに機能残ったままだったのね」

 

 指を鳴らすと、鎖は緩んだ。私は息を整えた後、後ろを振り向いた。そこに立っていたのは黒い長い髪に黒いドレスを身に纏った美しい女性だった。

 

「・・・あなたは誰?」

 

「神様よ・・・と言っても私は死神だけどね」

 

「・・・死神・・・」

 

 死神と名乗る彼女は微笑み、私を見下している。私はこれからどうなるのかと内心ひやひやしていた。すると、

 

「・・・ごめんなさい・・・」

 

「・・・えっ?・・・」

 

 しかし、彼女は深々と頭を下げ、私に謝った。

 

「えっと・・・話が見えないんだけど・・・」

 

「あなたが死んだのは、私達のせいなの・・・これを見て・・・」

 

 すると、彼女は本を見せてきた。ただ、その本の絵は動いていた。そこに映し出されていたのは泣いていた母の姿である。対面するように警官が座っている。そして、会話が聞こえてきた。

 

『・・・なぜ、娘さんを・・・』

 

『・・・違う・・・私・・・違う・・・私じゃない!?・・私は!・・・娘を・・・愛していたんです!・・・殺したくなかった!・・・あの時は何かに・・・悪魔に・・・憑りつかれていたんです!』

 

『落ち着いてください!』

 

 それから、母は泣きながらに警官に訴えていた。

 

 

「これは・・・」

 

「死神の仕事は死を与えるもの・・・しかし、リスト外の人間を殺してはいけない・・・あなたは、リスト外でありながら、私達が使っていた自動システムの誤作動によって殺されました・・・動機のない母に殺されるという誤作動によって・・・」

 

 私は絶句し、内心、安心した。母は私のこと、嫌いではなかったことに。もし、本当に嫌われていたら、私の心はもっと酷いことになっていただろう。しかし、気がかりなことがある。

 

「私はこれから、どうなるんですか?」

 

「お詫びとしてはなんだけど、あなたには、違う世界に転生してもらうわ・・・」

 

「転生?」

 

「ええ、あなたがいた世界より少し、治安が悪い異世界・・・多分、元の世界より住みにくいところで大変だけど・・・少しでも生きやすいように、あなたにプレゼントがあるわ・・・」

 

 死神の掌が光りだす。あまりの眩しさに目を閉じた。そして、彼女の掌には、見覚えのあるメモリーカードがいくつかあった。

 

「それは・・・!?・・・うっ!?」

 

 死神はそのメモリーカードを私の口に押しこんできた。すると、身体中が麻痺し、指一本も動かせない。次第に意識は薄れてくる。

 

「ふふ、生き残れるように頑張りなさい」

 

 いったい、私はどうなるのだろうか・・・

 

 




 部屋を掃除していたら、ボクタイのゲームと漫画がでてきて、懐かしくなって書きました。
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