もしもZ戦士たちが、異世界の怪しげな組織に目をつけられたら。 作:レイチェル
今回間が空いてしまったのは、レポートとかそんなの関係なく、純粋にやる気の問題です。
~地球(カプセルコーポレーション)~
「ちょっと!二人ともストップ、ストップ!!」
瞬間、悟空とカトレアの間に流れていた緊張感が霧散した。
カトレアは軽く手をふる。するとさっきまで握られていた刀が消えている。だが、さっきまでつけていなかった刀の形をしたブレスレットが手首についていた。
「ったく~。だれだ?今いいところだったのによ~!」
「………ああ?」
俺――ラディッツはカカロットの不満そうな声を聞きながら、
するとそこには16歳ぐらいの女の子がいた。服は迷彩服を着ていた。二つに結んだカールの髪の毛とトンボメガネはよく似合っている。そして背中には大きなクマのアップリケのついた黄色いリュックサックを背負っていた。そして腰には黄色いポシェットをつけている。
「あら、キョウコじゃない。地球にも、ザリア石があったわよね?しかも、地球にあるザリア石は、
「ギクッ!」
カトレアとの知り合いか?
「もう、回収はすんだのかしら?」
「………そ、それが………その……………」
「失敗したのね」
カトレアが冷たく言う。
そんなことを言いながらカトレアは投げ捨てた赤いメガネを拾い、かけなおした。
瞬間、瞳に浮かんだ朱の十字模様も消えた。
「違うの!ザリア石発見装置には確かに反応があったの!それがいつの間にか反応が消えてザリア石を回収できなかったってだけで………」
「失敗、したのね」
「………はい」
おそらくザリア石、という石を回収するためにキョウコは迷彩服を着ているらしい。
というか、力関係がよく分かる光景だ。
「なあ、カトレア~、早く戦おうぜ~!」
「のう、かかろっと。そちなぜそんなに戦いたがっているのかの?」
「ん?そりゃあ、戦いたいからに決まってんだろ」
「カカロット、それじゃあ答えになってないぞ?」
まあ、サイヤ人に『なんで戦いたいのか?』なんて理由を聞いても明確な答えがは返ってこない。『食べる』、『寝る』と並んだ三大欲求が『戦う』だからな。
「マロもちんぷんかんぷんでおじゃる」
「安心しろ。俺も分からん」
俺はなぜかそういう欲求がないからな。
「そういえば、どうしてキョウコは、わたしたちの戦いに、待ったをかけたのかしら?」
その言葉にキョウコは呆れたように、
「あのねえ、二人とも自分の実力分かっているの?!」
その言葉に俺はようやく合点がいった。
「あー、そういうことか」
「それは……考えていなかったわねぇ」
カトレアにも分かったようだ。
「ああ、ここで戦ったら西の都がめちゃめちゃになるからか」
カカロットにも分かったようだ。
「おぬしらなんて戦いをしようとしておるんじゃ?!」
おじゃる丸が驚いているが無視して続ける。
「ん?ちょっと待てよ?」
「どうしたんだ、兄ちゃん?」
「カカロット、疑問に思わないのか?キョウコは俺たちと初対面なんだぞ」
「それがどうかしたのか?」
カカロットはなんて鈍いやつなんだ!
「なんで俺たちの実力を知っているんだ?」
「そういやそうだな。
というかなんで兄ちゃんはそういうこまけえことに気付けるんだよ………?」
仕方ないだろう?こういう細かいところに気が付いて一つ一つ危険を回避していかないとベジータ相手に生き残っていけないからな。
カカロットの言葉に、キョウコは大きく頷いて、
「よくぞ聞いてくれました!実は、この間『ドラえもん』という世界の『未来デパート』で『タイムテレビ』という、過去や未来を見るテレビで一か月くらい前の戦いの様子を昨日見て見たのよ!ただ思ったよりも消費電力が多くてもう使うことはないと思うけど」
「へ~、そんなすげえテレビがあんのか!!」
カカロットが何やら感心しているが、
「ちょっと待て。『ドラえもんとういう世界』とはどういうことだ?」
「ああ、その世界はつまんない世界だったよ。精々三十過ぎたおじさんが車の免許を取ろうとするだけだし」
「その言い方だとまるで異世界から来たように聞こえるが」
俺の言葉にキョウコはきょとん、とした顔になり隣にいるカトレアに尋ねた。
「あれ?まだ言っていなかったの?」
「だって説明が、面倒じゃない」
「それもそうだね。じゃあこれの出番かな~?」
そういうとキョウコは黄色いポシェットをごそごそあさる。
♪てってて てってー てってて てってー てー♪
忘れん棒ー
聞こえてきたのは間の抜けた音楽と声。出されたのは一メートルくらいのピンク色の棒。なにやら無駄にごてごてと飾りがついていてかわいいを通り越して恥ずかしい。
「こんなこともあろうかと作っておいて良かったわ!」
「なあ、それなんなんだ?如意棒に似てっけど?」
「これはね、記憶を操作する棒よ!元は十分間の記憶を忘れさせることしかできなかったけど、改良を加えて使用者の都合のいいように記憶を消したり植えつけたりできるようになったものよ!」
ということはまさか、
「それで無理やり記憶を脳に植え込むと?」
「そういうこと!」
どうやらそういうことらしい。
しかしその途端、
カラン、コロン、カララララ……
忘れん棒が五つくらいに分解して地面に落ちた。
「……………ちょっと溶接が甘かったみたい」
「ちょ、ちょっと待て!それで俺の記憶を操作するのか?!」
「………だ、大丈夫!今から修理するから!!」
そういうと何やら工具を出して修理し始めた。
………………修理したところで、一抹どころか百抹くらいの不安がある。
それにしても記憶を人工的に埋め込む、なあ………
それじゃあまるで、
「
「兄ちゃん、
カカロットが不思議そうに尋ねてくる。
全く、こういう時記憶喪失は厄介だ。
「
まあ、そのあとこの地球で記憶喪失になったから記憶がおしゃかになったけどな」
「………!ああ、そうやって『地球人を皆殺しにしろ~』とかいう命令を出すんか!」
「ようやく分かったか……」
全く、できの悪い弟を持つと大変だ。
「さらにいうと、俺も地球に来る前に宇宙船の中で使ったぞ?」
「え?そうなんか?!」
「カカロット、このシャツを不思議に思わなかったのか?」
「その『弱虫』って書いてあるシャツか?いや、別に…………」
本当に鈍いやつだな!
「どうして去年初めて地球に来た俺がなんで地球の言葉を理解できるのかってことだよ!」
「なんでって………そういうもんじゃねえのか?」
………はあ。まさかここまでのアホとは思わなかった。
「まあ、確かに地球の話し言葉は奇跡的にも共通語だった。だが書き言葉は全く違うものだぞ?」
こういう辺境の星では話し言葉も書き言葉も共通語とは違うことがほとんどだ。だから無人探査機で惑星を調べるときにその星の言語も調べる。で、その調べた内容を惑星間の移動時間に宇宙船に搭載されている
「というわけで、今じゃあ俺は『弱虫』から『臆病』まであらゆる単語の読み書きができる!
結構便利なんだぞ?その星にしかない言葉で命乞いすると、たいていは隙を作ってくれるからな。それのおかげで何度命拾いしたか。」
そのおかげで今じゃ習得言語は百を超える。
「………………ニイチャンッテ、モノシリダナア………はあ」
ものすごい棒読みで言われた。なぜだ?
「と、いうわけで行くよ~!」
どうやら修理が終わったらしい。
「用意はいい?!」
「いや、全く」
「さ~、やってみよう!」
「用意はできていないぞ?!こっちの話を聞け!!」
「問答無用!!」
キョウコはそういってその忘れん棒とかいうのを振り回し始めた。
「プルリン、パラリン、ピピリンプー!」
おい、なんか言い始めたぞ。
「ペルーロ、ペレーロ、ポポロンパー!」
言い終わると同時に振り回していた棒を俺の脳天めがけて振り下ろしやがった。
地味に痛い。
ん?なんで避けなかったのかって?
…………………そ、それは、あれだ。なんか避けちゃいけない雰囲気だったからだ。だから断じてわけのわからん呪文みたいのを聞かされて呆けて油断していたわけではない!ああ、油断なんかしていないとも!
「…………ペレーロ、ポポロンパー!」
みるとキョウコがカカロットにも同じことをしていた。
「で、あたしたちがどういう人なのか分かった」
「ああ、だいたいな」
埋め込まれた記憶はついあの世、しかも閻魔大王のいるあの世のものだっだ。
なんか世界のこととか、組織のこととかを話していたみたいだ。
それにしても顔に傷のある奴と三つ目のやつはあの後酒盛りをしていたのか。……こっちは戦っていて忙しかったというのに。
「ひゃあー、驚いたぞ!まさかヤムチャや天津飯、それにチャオズに会っていたなんてなあ!」
カカロットの知り合いか。というか驚くのはそこか。
「おい、その三人は全員地球人なのか?」
「当たりめえじゃねえか。それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって………いや、もういい」
三つ目のやつとか、白くて小さいやつなんかも地球人なのか?似たような奴を他の星で見たことがあるぞ?
………ああ、ナメック星人が地球人と間違えられるような星ならしょうがないか。
「なあ、カトレア。早く戦おうぜ~!オラ戦いに向いてるいい荒野知ってっからよ~!」
というかそのセルフ、
「まるでナンパみたいだな」
「ん?なんか言ったか、兄ちゃん?」
「いや、別に」
そんなことを言いながらカトレアの方に目をやると、カトレアは本を読んでいた。
「……………んな!!」
俺はカトレアの読んでいる本の題名を見て戦慄した。
その本の題名はは俺のような地上げ屋やカカロットのような武道家にとって、天敵となりうると即座に判断させてしまう―――そんな題名だった。
「あら、もう、終わったの?」
カトレアがゆっくりと顔を上げる。
「おう!早く戦おうぜ~!」
……………やめろ
「やめるんだ、カカロット!」
カカロットはカトレアの読んでいる本の恐ろしさを知らないのか!
「あら、そうよ。どうして止めるのかしら?」
そういって読んでいた本を閉じる。
カトレアが不満そうに言っているがそんなことは関係ない!
こっちはわが身がかわいいんだ!
だからまだ「早く戦え」だのなんだの騒いでいるカカロットに言ってやった。
「カカロット、カトレアが読んでいた本の題名はなんだ?」
するとカカロットは何のためらいもなく、あっさりと答えた。そう、自分の力で簡単にいなすことができるかのように………
「えっと……『目障りなあいつを速やかに抹消する方法~その二 精神編~』って書いてあるな。それがどうかし…………って兄ちゃん!なんで倒れてんだあ?!」
カカロットが驚きの声を上げているが、こっちはそれどころじゃない。
「カ、カカロット…………お前といたこの一年、悪くなかったぜ……」
「なんで!!なんで兄ちゃんが死ぬみたいになったんだ?!まさか『速やかに抹消』『精神』ってオラが言ったからか?!」
「思えば、蛇の道で俺と、ま……まともにしゃべってくれたのはお前だけだった…………」
「そりゃあそうだぞ?!蛇の道を走っていたのはオラと兄ちゃんだけだったからな?!!あれでオラ以外としゃべってたら頭がおかしな人になっからな!?」
「…………し、死ぬなよ………カカロット………ガクッ」
「わけわかんねえぞ?!兄ちゃあああああああああああああああああん!!!」
さらばだ、カカロット。甥を、
「……………なあ、これどうすればいいんだ?オラこんなの初めてだぞ……」
「あたしの情報によるとこの辺では明日が生ごみの日みたいだよ?」
「あら、ちょうどいいわね。ならわたしは、大きい袋を、用意するわ」
「じゃあ、このままじゃかさばるし、大きくって、なんでも粉々にできるシュレッダーと、圧縮機をつくっておくね★(キラリ)」
「兄ちゃん起きろ!このままじゃおめえ粉々にされて圧縮されて明日捨てられっぞ!!」
「……はっ!」
い、いったい俺はなにを………
ゆっくりと立ち上がると、キョウコとカトレアがものすごく残念そうな顔をしていた。
「「チッ………」」
「おい、なんで俺を見て二人は舌打ちするんだ?!」
分からない、全くもって分からない!
「そう……まだ生きていたのね」
「………はあ、生きていてくれて良かった………」
カトレアとキョウコの口調が残念そうに聞こえたのはきっと俺の聞き間違いだな。ああ、そうに違いない。………………あ、目から汗が。
「そういえばカト姉、この前未来を見たらなんか面白そうな本が発売されるみたいだよ?」
「あら、それはどんな本?」
「『単純男を手玉に取る1001の方法』って本。数年後にメノリスのローランドで発売されるって」
「とっても、楽しみね」
カトレアは、これ以上ないくらいの笑顔だった。寒気が止まらない。
そういえばおじゃる丸は何をやっているんだ?
「………………」
寝てた。いつの間にか畳と屏風を出して寝ていやがった。
後でわかったことだが、あの畳と屏風、それに肘掛も含めて三点セットというらしい。
「そうだ!カト姉、こんなのいる?」
キョウコがまたあの黄色いポシェットをあさる。
♪てってて てってー てってて てってー てー♪
妖精の箱庭~
出したのは黒い箱だった。10センチ四方で、面には薄い緑の十字の飾りがある真っ黒い箱。
それをみたカカロットがキョウコに尋ねる。
「それなんだ?中に食いもんでも入ってるんか?」
「カカロット、腹が減っているんならプリン食うか?俺の食べかけだけど」
「………………少しもらうぞ」
そんなことはさておき。
キョウコが黒い箱の説明をしてきた。
「この箱は、なんとびっくり、中が結構広い空間になっているの。しかも、中に入ってどんなに大暴れしても、箱の外に影響を及ぼすことは一切ない、という優れものよ!カト姉と悟空は、戦うのならこの中で戦った方がいいんじゃない?」
一体どういう原理になっているのかさっぱりわからないが、キョウコの話が本当だとすればかなりすごい。
「で?」
「で、ってなに?カト姉?」
「で、いったい今回はどんな欠点があるの?」
「ちょっと待ってよ!なんで欠点があることが前提なの?!」
「さっきの、忘れん棒」
「………ぐっ!あれはちょっと溶接が甘かっただけで……」
「それに、やたらこっぱずかしいことを、口走っていたみたいだけど」
ああ。あの、プルンプー、だの、ペロンパーだの言ってたあれか。
「あ、あれは忘れん棒の乱用をパスワードだよ!」
「…………なんであんな魔法少女が口にするようなこっぱずかしいパスワードなんだよ」
俺がそう尋ねるとキョウコは、
「そんなの決まってるじゃない。他人の記憶を操作するのよ?そんなのほいほいやるわけにはいかないでしょう。でもこういう恥ずかしいパスワードなら使いたがらないでしょう?
それにね、すごいことに気が付いたの。こういう呪文って、適当にパ行とラ行を組み合わせておけば
セリフの後半は無視するとして、
「記憶の操作の乱用防止策だと?」
「そういうこと」
意外と考えていたんだな。
「ねえ、キョウコ。顔認証や指紋認証、光彩認証システムは、使おうと思わなかったの?」
「あ………………」
訂正する。ちっとも考えていなかった。
そこで俺は気付く。誰も使いたがらないものを乱用防止で自分が使う。それをキョウコは今現在も使っているものがあるのだ。
だから聞いてみることにした。
「なあ、そのくまのアップリケのついたリュックサックもそうなのか?」
俺の言葉にキョウコは大きく頷いて、
「ご名答~!これは『なんでも持ち上げ
ほら、この通り!!」
「お……………おお?!」
「へ?!」
キョウコが軽く手を振ると俺とカカロットの体が浮かび上がった!
「な、なんでオラ舞空術使ってねえのに空飛んでんだ?!」
「エッヘン!!なんでも持ち上げ
「くそっ、このっ!そうだ、気を高めれば…………はあ!!」
カカロットが気を高めた。するとブチブチと何かが切れるような音が聞こえた。
「うわ!」
「およ?!」
ドサドサ………
俺とカカロットが地面に落ちた。
「ち、ちぎれた………。見えざる水銀がちぎれちゃった…………」
キョウコの話によると、見えざる水銀とかを触れざる硫黄を使って、操っているそうだ。要は、目に見えない金属でものを持ち上げるリュックサックらしい。この道具の元のアイディアはパクったそうだが。
ちなみに、見えざる水銀は自由に姿を変え、温度も輝度も思いのまま、という万能金属らしい。見えざる水銀で光線なんかも打てるそうだ。触れざる硫黄はというと、速度や重力やベクトルなど、位置情報に関与する力を操れるそうだ。
他にも魂の塩、とかいう命の核、みたいなわけのわからんものもあるらしい。
……………という錬金術、なんていう俺がこの先一生使わないような知識をなぜか俺だけが聞いていた。
その間カカロットは何をしていたのかというと、俺が買ってきたプリンを食っていやがった。カカロットのせいでプリンがあと十個しかない!カカロットが俺の買ってきたプリンの三分の一を食いやがった!覚えてろよ!!
カトレアは本を読んでいた。てっきり『目障りなあいつを速やかに抹消する方法~その二 精神編~』の続きを読んでいるかと思いきや『目障りなあいつを速やかに抹消する方法~その三 社会編~』とかいうのを読んでいた。カトレアを敵に回さないように注意しなくては。なんせこっちにはベジータと同じ戦闘狂のカカロットがいるからな。どこでどういう敵を作って俺にまで被害が及ぶか分かったもんじゃない。カカロットなんてそのうち、あのフリーザ様にまで敵に回すんじゃないか?
……………………まさかな。
「ところで………二人とも戦いにいかないの?」
キョウコが妖精の箱庭を指さしながら尋ねる。
言ったと思うが、妖精の箱庭は10センチ四方の四角い箱だ。しかも箱の面には薄い緑色の十字の模様があるだけでボタンなどは一切ない。
つまり、この中で戦うにあたって一つ問題があるのだ。
「ねえ、キョウコ。一体どうやって、この中に入るのかしら?」
そして次にくるキョウコの言葉は俺の予想を上回るものだった。
「え?」
「……………」
「………………………」
「………………………………」
黙ってしまった。
「………………おめえ、使い方知らねえんか?」
カカロットが聞くとキョウコがばつの悪そうに、
「だ、だってあたしが作ったものじゃないもん……………」
「じゃあおめえ、自分が作ったもんじゃないのにあんなに自信満々に言ってたんか?!」
「…………………うん」
「………ダメダメじゃねえか」
「………だ、大丈夫!こういう時は作った人に直接使い方を聞けばいいのよ!!
うん、そうよ!今からでも遅くない!!!」
そういうとキョウコは何やら手をいじって電話をかけるようなしぐさをした。
「……………あ、もしもしひかる?実は前にもらった妖精の箱庭について聞きたいことが………」
けれど、連絡の取り方がおかしかった。なぜなら手には何も持っていなかったからだ。まるで、手がそのまま電話であるかのようだった。
「カトレア、キョウコは何をしているんだ?」
俺が聞くとカトレアはめんどくさそうに、
「何をしているように、見える?」
「…………誰かと連絡を取っているように見える」
「分かっているなら、聞かないでちょうだい」
むちゃくちゃだな!
「…………い、いや、連絡を取るにしても何か無線機とか、そういう連絡を取り合うための道具が必要だろ?キョウコはどう見たって手ぶらじゃないか!」
俺が叫ぶようにカトレアに聞くと、
「あるじゃない。キョウコのかけている、メガネがそうよ?『電脳メガネ』っていうものよ」
「ああ、兄ちゃんのかけてたあのスカウターっちゅうのと同じようなもんか?」
「…………言っておくがカカロット、スカウターに通話機能はないぞ?」
「……………へ?でも兄ちゃん、前にスカウターには通信機能があるようなこと言ってなかったか?」
「カカロット、通信機能と通話機能は別物だぞ?」
「……………何が違うんだ?」
「通信機能は情報を伝えるだけ。通話機能は相手と話すことができる。
星と星との間はな、時には何十光年も離れているんだぞ?いいか?光の速さでウン十年だ。その間を会話してたら一つの会話が終わる前に寿命が尽きるだろ」
「………………ああ」
納得したようだ。
俺はキョウコの方に目をやった。
「……………うん、それで?……………この線をこうなぞると………で、出すときは………………逆になぞればいいと………うん、だいたいわかった………またわからないことがあったら聞くね。……じゃ、またね!」
どうやら、使い方が分かったようだ。
「おーい!使い方分かったよ!!」
「………あ、うん、知ってる。
ところで、ひかるっていうのはだれだ?」
俺がそう聞くと、
「錬金術仲間よ。カト姉からもらった仙豆って豆を半分渡したら、組織に入ってくれるし、エクスプロープとか、ベクトル変換器とか、ラーの天秤の技術とか、いろんな発明品をくれるし、もうウハウハよ!
いや~、ひかるの『これでもう栄養失調で倒れることはない!?』ってお腹を鳴らせながら言ったときは、ひかるの今までの食生活に疑問を持っちゃったけどね」
なんかものすごいニコニコしながら話しているが………話しているが!それと対照的にカトレアが殺気を出し始めているんだが!!
「ねえ、キョウコ。」
「は、はいっ!」
「いい?わたしはね、あなたが、仙豆を量産できるって言ったから、わたしの持っている仙豆を、全部、渡したのよ?」
「………………はい」
「その仙豆は、どうなったのかしら?」
どうやら二人の間で仙豆量産計画が発動していたようだ。
「………………は、半分はひかるのにあげたけど!もう半分はちゃんと植物学に精通している錬金術仲間のヒッシャムさんに渡して……………」
「それで?」
「………………まあ、作ることには成功したことにはしたんだけど……………」
「なに?早く言いなさい」
「量産できるようにはなったけど…………怪我を治せるようにはできていない、というか…………」
………………おいおい。
「ねえキョウコ。それは仙豆、ではなく、ただのただの豆じゃないの?」
「か、カト姉!ちゃんと満腹機能はあるよ!」
「つまり、怪我を治すことはできないけど、お腹がいっぱいになる豆だと?」
「…………うん」
俺はちょっとカカロットに聞いてみることにした。
「カカロット、仙豆というのはベジータと戦う前に甥とハゲに食わしたあれか?」
「ああ、クリリンと悟飯にやったあれだ」
「怪我を治せない仙豆って価値はあるのか?」
「………………ねえんじゃねえかな?」
どうせなら、怪我を治す機能はあるが腹が膨れる機能はない豆の方が良かったのにな。
「キョウコ、何か、言い訳はある?」
「……………ひ、ヒッシャムさんがものすごいニコニコして『オー、これデー食費ニー困ることハー、アーリマセーン!』とかいうのを聞いたら何も言えなくなって………………」
俺はキョウコの発言で分かった。
「よーく分かった。つまり異世界人は皆変人なんだな」
そう考えれば全てつじつまが合う!
「訂正、してもらえるかしら?異世界人が変、なのではなく、錬金術師が、変なのよ。その言い方だと、わたしも変、ということになってしまうから」
「カト姉、訂正してよ!『錬金術師が変』じゃなくて『あたし以外の錬金術師が変』、なの!それじゃあ、あたしまで変になっちゃうよ!」
鏡だ!誰か鏡をくれ!!
知ってるぞ。地球ではこういう時に相手に鏡を見せるものなのだろう?
「………オラ、自分が初めてまともだと思った気がすっぞ……………」
カカロットが頭を抱えて何やら呟いているがよく聞こえない。
「カカロット、なんか言ったか?」
「…………………いや、別に」
それにしても驚いた。この場には俺以外のまともな奴がいない。
そんなこんなで、カカロットとカトレアは妖精の箱の中で戦うことになった。
「じゃあ、箱の中に送るからあたしの手前1メートルくらいのところに立ってね。
カト姉、悟空との勝負が終わったら連絡入れてね。箱から出すから」
その発言に、俺はふと気になったことがあったので聞いてみることにした。
「おい、キョウコ。その言い方だと、まるでこの箱の中から自力で出ることができないように聞こえるんだが?」
「…………………あれ?言ってなかったけ?」
「言ってねえよ!!」
なんでこいつの道具は微妙に使えないものばかりなんだ?!
もしかしたら、そこに入ったはいいが出てこれなくなったやつがいるかもしれない、ということだろう?なんかヤバイやつが出てきたらどうするんだ?!
それに、まぁあああた何か不都合が起こるかもしれないじゃないか。そしたらいろいろと不味いだろう?箱の中で起こったことが外に影響を与えることはない、なんていうのも眉唾物だ。下手したら俺も巻き込まれて死ぬ。
西の都の連中?そんなの俺が知ったことか。
「おい、カカロット。この箱の中で戦うのは………………ってカカロットはどこだ?」
「カト姉と悟空ならもう箱の中に………」
「なんだと?!」
手遅れだったか………。
「ところで…………あの子誰?」
キョウコがおじゃる丸を指さしながら聞いてきたが………遅すぎるだろ?!
「なんか千年過去に行こうとしたら失敗したらしいぞ?」
「…………どういうこと?」
「本人に直接聞いてくれ」
そのあとキョウコは、寝ていたおじゃる丸をたたき起こしていろいろと聞き出していた。
そして一つ頷くと、
「
そんなことを言ってきた。
「落人、じゃと?」
おじゃる丸が不思議そうに聞き返す。
「そうよ。たまにあるのよね~。事故とかで別の次元、つまり異世界へ飛ばされちゃうようなことが」
キョウコが笑いながら言っているが、笑いごとじゃないだろう?!
「のう、マロは元いた世界に帰れるのかの?」
おじゃる丸が心配そうに聞く。
「大丈夫!こういう無理な次元移動は、大抵通ったところに跡がつくの。例えるなら、車が急ブレーキした時の跡みたいな。その跡を辿っていけば元いた世界に帰れる。絶対にね」
すごく自信満々に言ってはいるが、あの道具を見せられた後にそんなことを言われても俺は不安になるんだが?
「おじゃ、そうか」
だが、そんなキョウコの言葉でおじゃる丸は少し安心したらしい。
無理もないか。見慣れぬ土地でいつ帰れるかわからなかったんだからな。ああ見えてもおじゃる丸はまだ子供だ。きっと内心不安で仕方なかったんだろう。ああ、そうに違いない!
俺が昔ベジータに騙されて、一人見知らぬ惑星へ置いて行かれた時なんか……思い出すのはやめよう。あのとき宇宙船の中でやったおもらしのあとはベジータたちに気付かれなかったはずだ!そうだと信じたい。
「おじゃ?らでぃっつ、そち泣いておるのかの?」
「………………目から汗が出てきているだけだ」
ふ、ふん!泣いてなんかいないからな!!
「それはそうとおじゃる丸君。いつもと体の調子が違う感じはする?」
「ふむ。そういえば体が軽く感じるでおじゃる。それと、いつもならおなかいっぱいになってしまう量のプリンが食べれたのう」
はあ。なんとかしてベジータの悔しがる顔が見てみたいんだが……………
「ああ、それなら心配しなくても大丈夫。あたしも最初の慣れないときははそうなったから。
体が軽く感じるのは、そもそもがこの世界の重力が他の世界とは違って、かなり小さいの」
もちろん報復が怖いから、俺だと特定されない方法であることが前提条件だ。
「どういうことじゃ?」
「ちょっと思い切りジャンプしてみて」
何かないか?
「?分かったでおじゃる
おじゃ………………………………おじゃあああああああああああああああああああ!」
「あ?」
おじゃる丸の叫び声で我に返った。
っておい!なんかおじゃる丸が7メートルほど上空にいるんだが?!
「助けてたもおおおおおぉぉぉぉ……………」
しかもまだ高く飛んでいるんだが?!
「一体どうなってんだ?!」
おじゃる丸の体つきはどう考えてもあんなことができるようにはなっていない。
「ん?あたしが『ジャンプしてみて』って言ったらああなった。
それよりも落ちてくるわよ?」
そういわれて上を見るとおじゃる丸が落ちてきた。
俺の顔面に。
「ぐへ!?」
「………う、うう!こわかったでおじゃるぅぅうううううう!!!」
「おじゃる丸君に怪我はないみたいだね。ちょうどラディッツの顔がクッションになったみたいだし」
のんきに話しているキョウコの声を聞きながら泣きじゃくっているおじゃる丸を顔からひっぺはがした。
そして俺はあることに気がついた。おじゃる丸の戦闘力が上がっているのだ。
プリンを食っていた時の戦闘力はだいたい2くらいだったが、今では30くらいあるんじゃないか?スカウターがないから正確な値は分からないが、そんなもんだろう。
これもカカロットとの修業のおかげだな。今じゃ気配を消してどれだけ早く逃げ………もとい走れるかは自信がある!その技術に関してだけはカカロットよりもうまい。界王様もそのことだけはほめてくれたからな。そこだけは。
………お、俺だって何もできないわけじゃない!確かに元気玉は打てないし界王拳も二倍がやっとだが、俺だってその気になれば戦闘力一万くらいはいく!きっといく。たぶんいく。………うん、いくはずだ。
余談だが尻尾は生えてきた。ベジータたちと戦った時に切られて一か月ちょい。今回はかなり早かった。ただ……まあ、なんだ……未だに尻尾を握られると力が抜ける。今後の課題だな。いかにして相手に弱点が尻尾だと気付かせないか。鍛える?そんな面倒なことはしたくない!
そんなことはさておき。
「おいおじゃる丸、お前いつもあんなに高く跳べるのか?」
俺がそう聞くとおじゃる丸は怒りながら、
「そんなわけあるかあああ?!マロあんなの初めてでおじゃる!」
と言った。聞こえ方によっては戸惑っているようにも聞こえる。
「キョウコ、何か知っているのか?」
俺の言葉にキョウコは頷いて、
「まあね。この世界は他の世界と比べてファリアス濃度が高いから」
は?
「ファ、ファリアス?」
「ふぁりあす、とはなんじゃ?」
戸惑っている俺たちをよそにキョウコは笑いながら説明をする。
「別に特別なものじゃないよ。この世界では『気』って呼ばれているもののことだし」
ほう。つまり、戦闘力
「ファリアスっていうのは簡単に言うと別の世界での気ってこと。
まあ、珍しいことじゃないからね。他にも気のことを『精霊』って呼んでみたり『
もちろん今言ったのは呼ばれ方のほんの一部。他にもいろいろあるよ。でも世界によって気は根っこの部分は一緒だけど、それぞれ微妙に違うところもあるから注意してね」
「根っこの部分が一緒、っていうのは?」
「そんなのラディッツみたいな武道家の方が詳しいんじゃない?」
嘘だろ?俺は、はたから見たら武道家だったのか?武道家ってのは正々堂々、『どんな敵でも倒してやるぜ』っていうやつだろ?
そんなものになった覚えはないんだが………
俺の動揺をよそにキョウコは続ける。
「自分から、というよりも生き物から出る力で、それを意のままに操れるっていうこと。
もっとも、操り方はその世界によってまちまちだし、生き物から出ていないこともあるけど」
「ずいぶん適当だな!」
そんなんでよくもまあ根っこの部分が一緒なんて言えたもんだ!
それともなんだ?俺には理解できないような基準があるのか?
「のう、さっき言っていたふぁりあすのうどが高い、とはどういういみじゃ?高いとなにかよいことでも起きるのかの?」
おじゃる丸の疑問はもっともだ。
「う~ん、その濃度が高いことがいいことかどうかは人それぞれかな?
そもそもファリアス濃度っていうのはこの世界の言葉でいうと『空気中に漂っている気の濃度』のことだし」
ちょっと待て!
「気の濃度って、そんなものあるのか?!」
不思議だ。なんでキョウコは俺をそんな可哀想な目で見ているんだ?
「何言ってんの?あんたたち武道家って、気を体外に放出して戦うでしょ?
では問題。体から出た気は一体どこへ行くでしょうか?」
「のう、らでぃっつ。気、とはなんじゃ?」
おじゃる丸を無視して考える。
「そりゃあ………空気中に出て消えてなくなる………」
いや違う。カカロットから気の扱い方や戦闘力のコントロールを知ったが、戦った後もその時に使った気は残っていた。
それはつまり、消えてなくなったのではなく、
「空気中に霧散して見えなくなった?」
「その通り!!」
それなら空気中に気があることも納得だ。
ということはまさか、
「ファリアス濃度は戦った後の方が高いのか?」
ん?なんでキョウコは目を丸くしているんだ?
「……うわ、サイヤ人って脳筋族のアホ集団ってカトレアが言ってたけど、結構頭いいんじゃない?」
む。なんだと?
「失礼な。アホでバカなのはカカロットだけだ」
おじゃる丸にも頭が悪いと言われたし、俺って本当にバ………
い、いやいや!そんなことはない…………よな?
「この濃度が高い方が気が扱いやすかったり外に出しやすかったりするの。で、この世界はその濃度がかなり高くて………」
「待ってくれ。なんでそのファリアス濃度が高いと扱いやすくなるんだ?」
俺がそう聞くとキョウコは何やら考え始めた。
そして思いついたように手をポンと打って指をパチンと鳴らした。すると煙とともに水の入ったコップと小皿に盛られた角砂糖が出てきて…………出てきて?!
「さあさあ御立合い!ここにありますはコップ一杯の水と角砂糖!えー、この水の中に一個の角砂糖を入れると溶けてしまいます!しかし、いくつも入れると溶けにくくなり、さらに入れると………」
「おい待て」
俺は何度『待て』と言わなきゃならないんだ?
「なに?今説明するところなんだからちょっと黙ってて!」
「俺がいけないのか?この状況で待ったをかける俺が、いけないのか?!」
キョウコがものすごく面倒くさそうな顔をしている。なぜだ。
しかも無視して話を続けている。
「いい?水の中にお砂糖を入れると溶けるでしょう?」
そういってどこからか出したスプーンでコップに入った砂糖をかき回した。
当然だが砂糖は溶けて見えなくなった。
というかキョウコが出したのは本当に砂糖と水なのか?
「けどね、お砂糖もたくさん入れればこうやって………………」
そういってどぼどぼと十個くらい一気に角砂糖を入れた。一気に入れたせいで水が跳ねる。
………入った。何がって?跳ねた水だ。跳ねた水が口の中に入ったんだ。
甘い。どうやら本当に砂糖と水みたいだ。
「ほら。いくらかき回してもお砂糖は溶けない。これは水がお砂糖で飽和状態になっているからなんだけど、これは気に関しても同じことが言えるの」
「同じこと?」
「そう。お砂糖の濃度が高いほどお砂糖が結晶で存在しやすくなる。気も、ファリアス濃度が高いほど空気中で存在しやすくなるのよ」
………え~っと、ファリアス濃度が高いほど気が存在しやすくなるってことは、戦闘力も高くなるということだから……
「おじゃる丸の戦闘力が高くなったのはファリアス濃度が高くなったからか?」
体内にたまった気がおじゃる丸のいた世界よりも外に放出されにくくなっている、と考えれば説明がつく。いつもなら使わなかった気がこの世界に来たことで使えるようになったということだからな。
「そういうこと!」
ふむ。ひとまずの疑問は解決した。
残った疑問は………
「どこから砂糖と水の入ったコップを出したんだ?」
こっちはどこからともなく出した水とコップのことがしょうがないんだ!!
「もしかしてさっき出したコップとお砂糖が気になるの?」
「当たり前だ!!」
色んな星へ行ったがそんなもの初めて見た。
見たところ手品やなんかの類ではなかった。
「おい、おじゃる丸もなんか言ってやれ」
こんな時に子供に頼るのは情けないと言われそうだが、二人同時に食って掛かればキョウコだって素直に説明するは………
「のう、プリンは出せるのかの?」
「って違あああああああああああああああああう!!
というか食べるのか?分けの分からんやつが、分けの分からん出し方をした食い物を食べるのか?!」
「もちろんよ。」
パチン。
「はい。どうぞ」
「って、おいいいいいいいいい!俺の話は無視か?!」
俺の叫びを無視したままキョウコは指を鳴らしてプリンを出した。
「うむ。おいしいのう」
「おいしい?よかった!」
キョウコとおじゃる丸の間にほのぼのとした空気が流れている。
…………もう何も言ってやるもんか。
「…………キョウコ、とりあえず俺の質問に答えてくれるか?」
「いいわよ」
「その、プリンやら角砂糖を出したのは何なんだ?」
「魔法」
魔法。シンプルだが思わず思考を停止しかける単語が出た。
「そんな質量保存の法則を無視した魔法があってたまるか!!!」
怒鳴ってやった。それはもう思いっきり怒鳴ってやった。
なのになぜ俺はキョウコから呆れらた目で見られているんだ?
「武道家が何言ってんのよ。カト姉もそうだけど、武道家って気を使うでしょう?」
「それと一体何の関係があるんだ?」
何で武道と魔法が絡んでくるんだ?
「じゃあヒント。E=mc
「いーいこーるえむしーのにじょう?」
なにかの数式か?
「一度は聞いたことがあるでしょう?
Eはエネルギー、mは質量、そしてcは光速。この式の意味は簡単。エネルギーは質量になるし、逆に質量はエネルギーになるの。聞いた話によると『気』を込めたパンチは重いそうじゃない。それって『気』のエネルギーが実際に質量になっているから。つまり質量は保存されないの。
で、この魔法は逆にエネルギーを質量にする技術ってこと。
どう?分かった?」
「まあ、なんとなく………」
質量はエネルギーになってエネルギーは質量になって………?
「………はあ」
ため息をつかれた。キョウコは、俺をまるでできの悪い子供を見るかのような目で見ている。
思えば
………よし。
「ねえおじゃる丸君。何でラディッツは膝をかかえてめそめそ泣いているのかな?」
「サイヤ人だからじゃないのかの?」
俺は泣いてない!目から汗が出ているだけだ!!
「のうきょうこ。そちはその魔法とやらでなんでも出せるのかの?」
「なんでもは出せないわよ。出せるものだけ………と言いたいところだけど、今のところ出せなかったものはないわね」
………カカロットは何してるだろうな。
今は小さい箱の中か。
「どうやって使えるようになったんじゃ?」
「錬金術にはね魂の塩っていう貴重なものがあるの。でも貴重すぎて手に入らなかったからなんかいい方法はないかな~って探したらこの魔法のことを知って魔女になったのよ」
「???」
俺はなんでこんな戦いばかりある世界に生まれてしまったんだろう?
こんな世界、もう嫌だ。
「ところでおじゃる丸君。あなたが元いた世界に帰るにあたって一つ問題があるの」
「問題、とな?」
「おじゃる丸君にうちの組織に入ってもらいたいたいの」
そういえばキョウコやカトレアが別の世界がどうのと言っていたな!
「……おじゃ、なんだかややこしい話になってきたのう」
「この腕時計あるでしょう?これで異世界へ移動するわけだけど……」
いいことを思いついた。あの腕時計を奪えば………
「これはいわゆるパスポートの役割を果たしているの。だからこれをつけずに次元を移動するととても厄介なことになるのよ。あたしが」
「おじゃ、それはそちの都合であろう?」
「うるさい。始末書を書くのが面倒なのよ。だからおじゃる丸君には組織に入ってもらって、この腕時計をつけてもらう必要があるの。
これ、組織からの支給品だから」
なるほど。いい話を聞いた。
「その、『そしき』というものに入ればマロは元いた世界に帰れるのじゃな?」
「そういうこと」
そうとなれば話は早い。
「おいキョウコ。その『組織』とかいうのは誰でも入れるのか?」
「もちろん。来るものは拒まずっていう主義だから」
「俺にもその組織とやらに入らせろ」
ふっふっふ。これで俺の人生は決定だな。
異世界の中にはこことは違って争いのない平和な世界もあるだろう。俺はそんな世界に行って、のんべんだらりと自由気ままな生活を送るんだ!
「じゃあ、組織に連絡して腕時計を支給してもらうからちょっと待っててね」
キョウコがそういって腕時計を操作している間、俺は
「おじゃ、らでぃっつ。なんじゃ?その不格好な片めがねは?」
どうやって説明すればいい?
「………まあ、簡単に言うと情報を得る機械だな」
「おじゃ、情報とな?」
「これは敵の位置情報、や他のスカウターを持った仲間と情報をやり取りできるんだ。
つまり、敵の位置を近づいたりせずにわかるものだ。これさえあればより強い敵と戦わずに済むようになるんだ」
それにしても、スカウターの予備を宇宙船の中に二十個ほど持ってきておいて良かった。……ほとんど壊れていてまともに使えてのは三個しかなかったが。
ん?どうしておじゃる丸は呆れたような目で見ているんだ?
「………お主、その敵とやらと戦うという選択肢はないのかの?」
何を言っているんだ、こいつ。
「そんなものあるわけないだろう」
死ぬのも怪我をして痛いのもごめんだからな。
「のう、少しその『すかうたー』を見せてたも?」
おじゃる丸は俺のスカウターに手を伸ばした。
けどそれだけは飲めないな。
「悪いがおじゃる丸、これに触らないでくれ」
「なぜじゃ?」
「それはな、これが壊れやすいからだ」
なんせ高い戦闘力を感知すると、
「すぐ爆発するからな」
「なんて危ないものを目にあてているんじゃ!!」
おじゃる丸が後ろにさがった。
昔ならいざ知らず、今じゃ戦闘力のコントロールで最大にまで気を高めれば俺なんかでも簡単に二万を超えるからな。
………大猿になればの話だが。
「お。ようやく情報が入ってきたな」全く、宇宙は広い。
二週間前から情報を取り寄せ始めて、ようやく入って来た!
なになに?ナッパは戦死。これはまあいい。問題は……あった。ベジータは………何だと?!悟飯たちのいるナメック星へ?!
お?俺の情報もある。
………………………………………………………。
「らでぃっつ、おぬしなぜ無言でスカウターをはずしたんじゃ?」
おじゃる丸が何か言っているようだがそれどころではない。さっき見た俺の情報は何かの間違いであってほしい!そうだな。おれは疲れているんだ。うん、さっきのは見間違いだ。よし、もう一度見てみよう。
……けれど運命は非情だった。俺はもう一度スカウターに映し出された情報を読む。
『ラディッツ(サイヤ人)―A級犯罪者。罪状―フリーザ軍への反逆。見つけ次第ただちに抹殺すること』
そのあとに注意事項として満月には戦闘力が大幅に上がるだとか、打ち取った者にはそれなりの褒美が出るとか、カカロットもA級犯罪者だとかいろいろ書かれていたがそんなことは重要ではない!!
俺はお尋ね者になったのだ。お尋ね者になったのだ!!(ここ、重要!)
お尋ね者になった者の末路なんて決まっている。なぶり殺しだ。
これから地球には俺やカカロットを殺しに大勢の奴らががやって来るだろう。まず一人で来ることに意味がないからな。むしろ一人で来る方がリスクが高い。
俺?俺は例外だ。俺が初めて地球に来る前の選択肢はカカロットを迎えに行くかあの好戦的な危険人物、ベジータと一緒に地上げだった。その二つの選択肢だったら誰でも前者を選ぶだろう。
それはさておき、俺とカカロットはA級犯罪者だ。まあ、地球は辺境惑星だから俺たちの首を取ろうとする輩も来るのに時間がかかるだろう。まあ、少なく見積もって半年くらいか?それにしたって時間の問題だ。早くこの星から、いや、この世界から逃げなければ!!
いっそのこと、S級のフリーザ一族と同等以上の力を持っているため何があっても絶対に手を出すな、拠点とする惑星に近づくことも禁止~とかいうのにでもなったら楽なんだろうけどな。でもいくらなんでもそれはないだろう。定義上存在するだけで今まで誰一人としてなったことのないランクだ。これからも出ることはないだろう。S級になるやつはフリーザの一族に逆らって、なおかつその一族以上の力を持つやつだからな。ああ、出るわけがない。
「二人ともー!腕時計が届いたよー」
ついに来たか!
キョウコの持ってきた時計は少し大きめの、キョウコがつけているのと同じ時計だ。針もコチコチと刻んでいる。
「実は!この時計には今までついていなかった新機能があるの!」
ほう。新機能か。
「それはね……」
そういってキョウコは言葉を切って、こちらの反応を見る。
「もったいぶらずにさっさと話せ」
こっちは早く逃げなきゃならんというのに。
「この腕時計には………」
一体何なんだ?そんなに勿体付けるということは相当すごい機能が……
「現在時刻が表示できるようになったのよ!!」
「「………。」」
なんか今すごくおかしなことを聞いたぞ?
「あ、あれ?やけに反応が薄くない?」
「キョウコ、それは『腕時計』なんだよな?」
「もちろん!」
「とけい、というのは時間が分かる機械じゃったよの?」
「もちろんよ、おじゃる丸君」
となるとますます分からない。
「時計、というものは時間を知るための機械じゃなかったのか?」
何で現在時刻を表示できるようになったことが新機能になるんだ!あって当然の機能だろ?!
「い、いや~……。他にいろんな機能を付けていったら腕時計の機能がはいらなくなっちゃって………」
よく分かった。こいつバカだ。
「け、けどあたしは天才錬金じゅちゅちっ!」
「噛んだの」
「噛んだな」
それも盛大に。確かに錬金術師って言いにくいからな。
そもそも自分で天才とか言うか?
「は、発明に成功したの。錬金術の秘宝である賢者の石……」
賢者の石って本当にあったんだな。
鉄を金に変えるだとか、不老不死をもたらすとかいうあれか?うんくさくなってきた。
「のレプリカを」
レプリカなあ………。
「期待せずに聞くが、賢者の石のレプリカでは何ができるんだ?」
「情報を蓄積できる」
ほうほう。それで?
「………」
終わりか?い、いやもっと色々あるだろう?!
「…………」
「……………」
流れる無言の時。
「………………?」
キョウコが不思議そうに首をかしげている。
「………お、俺の聞いた話だと賢者の石っていうのは、赤い石で鉄を金に変えることができて、不老不死もできるんじゃ……」
「できないよ?ついでに言えばあたしの作った賢者の石は黒い色してるし」
「それはレプリカとはいえ賢者の石を名乗っていいレベルじゃないような気がするんだが?!」
そんなこんなで俺は組織とやらの一員となった。ちなみに組織の名称はないらしい。名前を決めるときに候補として上がったものが相当痛いものだったらしく、結局は名前のないただの組織として機能しているそうだ。……きっと他の組織の連中もキョウコと同じく残念なやつなんだろう。
おじゃる丸は元いた世界に帰った。ん?おじゃる丸についていかなかったのかって?何を言う。話によるとおじゃる丸の世界の地球は宇宙人に狙われているんだぞ。そんな危険な世界に行くのなんてごめんだ!!
「ラディッツ、カト姉と悟空は組手終わったって!」
そういえばいつの間にかずいぶん時間がたってしまった。
そしてごそごそと妖精の箱庭をいじり始める。二人を箱から出すのだろう。
だが、一体どういう戦いだったのだろう?
紳士的な種族だと、お互いの技を一発づつ受けあって終わりというあっさりしたものもあるが、カカロットに限ってそれはないだろう。
だとするとどちらか一方だけがボロボロという展開か?実は、ベジータとカカロットが戦った時みたいにお互いがボロボロになるということは稀だ。大抵はどちらかが相手の戦力を上回っていて、勝負は一瞬で決まることが多い。だがもしそうなったときにボロボロになっているのはカトレアの方だろう。あの時気を解放したのを見たが、あんなのではとてもカカロットには及ばない。戦闘力は精々が千といったところだろう。
俺はそう思っていた。
「んな?!」
だがそこには嘘みたいな光景が広がっていた。
「カト姉、お腹大丈夫?」
そう。キョウコが言ったようにカトレアの腹は、その部分の服が破けそして血がべったりとついていた。
だが心配するのはそこじゃあない。
「大丈夫、よ。これは、もう、治っているから」
カトレアはそんな風に、まるで
そう、問題にすべきはそこじゃあないのだ。
「………おい、カトレア。その手に持っているものはなんだ?」
俺はカトレアの持っているものを指さしながら聞く。それは人の腕だった。しかも切り口は鋭利な刃物で切り取られたかのように鋭い。だが、まるで獣が肉を食べたかのように欠けている。しかもカカロットの腕にはめていたリストバンドをはめていて―――
「見て、わからない?」
そう。それはまるで、
「悟空の、腕よ」
まるでカトレアがカカロットの腕を一口タベテしまったかのような、
「おいしかったわよ」
後ろを見ると片腕を失ったカカロットがいた。
15話に続く!
ファリアス濃度。これが低かったからあたしはビーデルと同じ修行をしても舞空術ができなかったんだ!あたしだってドラゴンに行けば舞空術くらいできるはずなんだ!!
………すみません。もう二度と言いません。
それはさておき。
今回、特に最後の方が人によってはグロ描写です。でもこの作品はあくまでもギャグとして書きたいのであえてタグにR-15はつけていません。原作でも天津飯の腕がなくなって血が噴き出ていたり、セルが16号の顔を踏みつぶすときに目がキモイ感じに飛び出ていたりしたので。今回はセーフかな?と思っています。
ただ、これはあくまでも主観なので『何言ってんだこいつ。R-15タグ入れろや!運営に報告するぞ』なんていう方がいましたら遠慮なくどうぞ。すぐにタグを追加します。
他にも『この作品にはこういうタグも入れろ』なんていうという方もどうぞ。批評も受け付けます。
電脳メガネ:電脳コイル
忘れん棒:ドラえもん
錬金術関連:吉永さんちのガーゴイル、ガーゴイルおるたなてぃぶ