もしもZ戦士たちが、異世界の怪しげな組織に目をつけられたら。 作:レイチェル
~界王星~
「‥‥‥‥‥‥一億五千九百九十八、一億五千九百九十九、一億六千!やったぞバブルス君!ようやくこの界王星の半分もの草の本数を数えたぞ!」
「ウホッ、ウホッ!」
わしは北の界王。この小さな星に住んでいる。普段やっていることといえば、星を一回りするドライブすることと、おしっこを遠くへ飛ばすことと、草の本数を数えることじゃ。しかしここまで数えたことは未だかつてない。
一億を超えたことは何度かあったが、いつもどこまで数えたか分からなくなってしまって、いちから数え直し。
よって今回は、
「数えた場所に印をつける!」
「ウッホーーーーーーーー!!」
「‥‥‥‥‥‥それにしても地面に這いつくばっていたから、手が草の匂いで臭くなってしまったわい。ん?草の匂いで臭い。草臭い!・・・・・・・ププッ‥ワーーハッハッハッハッハ!今のはなかなかいいシャレだったろう、バブルスくん?」
「ウホ?」
「まったく、このシャレの良さに気がつかないなんて、バブルスくんもまだまだじゃなぁ。」
やれやれ、バブルスくんとは長い付き合いじゃが、未だにシャレのよさが未だに分からないと見える。バブルスくんがシャレで笑ったことなど一回も見たことがない。‥‥‥‥‥‥ここはわしがなんとかせねば!
いや、そんなことより、
「とりあえず、印をつけねば‥‥‥‥‥‥」
「初めまして、北の界王様。」
「な、なんじゃお主!」
ここは界王星だぞ!こやつはどこか降って湧いてきた?
「私は、カトレアと申します。」
‥‥‥‥‥‥えー、こやつは見たところ地球に住む都会の女性じゃ。とりあえずここはシャレを‥‥‥
「ああ、それから、私は無駄なことは、嫌いなの。もし、ダジャレを一言でも言ったりしたら、」
シュン
「あなたの右腕を挽肉にします。」
「あわわわわわわわわ!」
ちょっと待てーーーーーーー!いつの間に背後に回った?いつの間にあの長い刀を出した?そしていつの間に刃先がわしの右腕に当てられている?
「ウッホー!ウホウホ!」
!バ、バブルスくんがこの上なく怒っている!わ、わしの心配をしてくれるのか!
「あなたには、これをあげるわ。」
ポーーーーン ←放り投げられるバナナ
「ウホー♥ウホウホ♥」
ヒューーーーン ←走り去るバブルスくん
「バ、バブルスくーん!」
‥‥‥‥‥‥ま、まけた。バナナに負けた。か、界王であるこのわしが。
「では、少し私とお話しましょう。」
「‥‥‥‥‥‥。」
それしか選択肢はないみたいじゃな。
「さて、私の名前は言ったし、次はどこから来たのか、ね。」
そうじゃ、こやつは突然現れた。なんの気配も感じることができなかった。
「私はこの世界の人間ではないの。異世界から来たのよ。」
確かに、こやつの雰囲気はどこか違うと思っていたが‥‥‥。
「ただし、私が最初にこの世界に来たのは、今からおおよそ150年後の未来なのよ。」
は?
「驚いたわよ。亀仙人とかいうお盛んなじいさんが馴れ馴れしく話しかけてくるし、地球の神とかいう宇宙人が『お久しぶりです。』とか言ってくるし。」
そういえば、地球の神はナメック星人だったな‥‥‥‥‥‥。
「初めて来た世界で、よ。誰かと間違えているのかと思ったけど、話を聞いてみると、本当に私の事みたいだし。だから、その人達が私と初めて会った、とかいうこの時代に来たの。」
‥‥‥‥‥‥この話を信じろと?
「だから、私はさっきまで7年前にいたのよ。」
「なぜそこで『だから』なのじゃ!」
つながってない。何かがつながっていない。
「ちょっと地球の神と今後のことについて話したり、武術の仙人とかいう猫から仙豆をもらったりしていたのよ。」
なぜそんなに軽々しいのか‥‥‥。
「仙豆については、私が回収しなければ、どうやっても数が合わないのよ。」
「?どういうことじゃ。」
「亀仙人さんが言っていたの。7年前には、仙豆は瓶一杯にあった。けれど今から一年後、地球にサイヤ人がやってくる。でも、その時には仙豆が2粒しかなかった、と。そのせいで戦闘中に体力が回復できず、苦しい戦いになった、とね。」
「しかしそれなら、かえって回収しないほうがよいのではないのか?」
とりあえず、サイヤ人うんぬんにかんしてはこの際無視じゃ。
「でもね、『仙豆が2粒しかなかった』という事実は歴史に刻まれてしまった。そうなってしまった以上、その歴史を変えるのはかえって危険なの。」
「危険じゃと?」
戦闘中に体力を回復できないことよりもか?
「『タイムパラドックス』という言葉くらい聞いたことがあるでしょう?Aさんが過去に行って、先祖であるBさんを殺しました。では、Aさんはどうなるのでしょう、という話。この話につじつまをつけるとすれば、1つしか方法がないの。それは、Aさんが生きているという世界と、Bさんが殺されてAさんがいない世界の、2つの世界を作る、という方法よ。」
「世界を作る、じゃと?」
「正確にいえば『作り変える』かしら。世界、というものは無数に存在しているの。科学が発達した世界、剣と魔法の世界、人間がいない世界、みたいなかんじでね。
でもね、その世界の数は常に一定なのよ。『質量保存の法則』って言葉くらい聞いたことあるでしょう?それと似たようなものよ。だから、タイムパラドックスみたいな矛盾が生じたときは、他の世界を作り変える。さっきの話で言えば、AさんがBさんを殺してしまったから、人間がいない世界を、Bさんが殺されてAさんのいない世界にする、みたいな感じにね。」
「なるほどなぁ。それにしてもずいぶん説明が慣れているなぁ?」
なんであんなに小難しい説明をスラスラできるんじゃ。
「だって、この説明をするのが、3回目だからよ。神様と、カリン様と、あなた。と、いうわけで本題ね。」
「この話が本題ではなかったのか!」
「そんなわけ無いでしょう。今のは私についての説明だもの。今から界王様にやってもらいたいことがあるの。」
‥‥‥そんな身勝手な。
「そろそろ地球で、『孫悟空』という人が死ぬの。さらに、地球にはこれからサイヤ人が攻めに来る。だから、あなたには、そのひとに修行をつけてもらいたいの。」
は?
「してくれるわね?」
‥‥‥‥‥‥い、いやいやいやいや!こんな笑顔で言われても!そんな勝手な‥‥‥
「し・て・く・れ・る・わ・ね・?」
「はい。」
‥‥‥‥‥‥仕方ないだろう?あんな殺気初めて受けたんじゃ。右腕をひき肉どころか、全身ひき肉にされるところだった。
「じゃあ、そういうわけで。」
何をする気だ?腕時計を操作し始めたぞ。あ、カトレアの足元に魔法陣が‥‥‥消えた。カトレアも消えた。言いたいことだけ言って、頼みたいこと頼んで、勝手に消えたぞ、こやつ。こんなやつ初めてじゃ。
とりあえず、下界の様子でも見てみるか。‥‥‥えっと、地球、地球っと。おお、見えた見えた。高い気を持ったやつが3人集まっているぞ。こいつかな?そこそこ気が高いやつが指を額にあてて、気を集中し始めたぞ。あ、もうひとりが残ったやつを後ろから羽交い絞めにしたぞ。‥‥‥‥‥‥まかんこうさっぽう?それを打つのか?あの緑の奴とオレンジの服の奴は仲間かと思ったんじゃが、緑の奴はオレンジの奴ともう一人をまとめて打つのか?あ、打った。‥‥‥‥‥‥あーあ、2人とも虫の息だぞ。‥‥‥‥‥‥あ、1人死んだ。‥‥‥2人目も死んだ。つまり、あの二人のうちのどちらかがここに来るんじゃな。久しぶりだなぁ。ここに人がくるのは。
‥‥‥‥‥‥で、草はどこまで数えたっけ?
3話に続く
読んでくださってありがとうございました。