おっさんPの奮闘記   作:九十九茄髪子

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毎日暑いので熱中症に気を付けて


第5話

「入るぞー」ガチャ

 

聞こえていないだろうなと思いながら声をかけレッスン場に入る。

案の定2人はこちらに気付いたそぶりもなく必死の形相で青木さんのレッスンにくらいついている。

このレッスンが始まって半年、始めたのがつい最近だったかのように思えるほどあっという間だった。初めは俺の軽いレッスン一時間にも耐えられなかったのが、最近ではきっちりレッスンについていっている。

レッスン後に疲れ果てて眠っているのを家まで送り届けるのにもすっかり慣れたものだ。

正直今日まで一度も弱音を吐かなかったことが意外である。へばっている2人に『止めるか?』と声をかけると決まって睨み返されたものだ。

 

(そろそろかな・・・)

 

基礎はかなり仕上がってきたと思う、これからの課題は活動をしながらレッスンでつぶしていけばいい。やはり頃合いかな。

彼女たちは今18歳。正直アイドルとしてデビューするなら結構ぎりぎりのラインである。

当然いくつであってもアイドルを目指していいとは思う、ただそれを世間が許すかどうかが問題なのだ。今活躍しているアイドルたちは遅くとも20半ばでは引退してしまう。

それは世間からのアイドルとしてのイメージに“若さ”が含まれているからに他ならない。特に日高舞のイメージが消えていない今それは顕著である。彼女は13歳でデビューし16歳で引退した。この前例のせいで特に若くないといけないというイメージが強いのだ。

だが逆に言えば、日高舞より人気のアイドルが二十歳を超えても、それこそ三十路になっても活動していけば、後に続くアイドルたちは20半ばという今の区切りを超えられるのではないだろうか。

 

(そういう意味でもこいつらには期待してるんだよな)

 

「あっあの~」

 

「おう、すまん忘れてた。もう少し待っててくれるか?合図を出したら入ってきてくれ」

 

考えに没頭していた頭を切り替え、2人に向かっていく

 

「お疲れ様です」

 

「ん?今日は少し早いじゃないか、まだレッスンの時間のはずだが」

 

「以前お話しした通り次の段階に移ろうと思いまして、青木さんからみたらまだ駄目ですか?」

 

「いや、私もそろそろいいと思う。正直この短時間でここまでやれると思っていなかったよ」

 

「それでは」

 

「ちょっとさっきから何をこそこそ話してんのよ」

 

「仲間外れはよくないわね」

 

「お前たちの仕上がり具合についてだ、一応私とプロデューサーの間でひとまず合格という判断だ」

 

「レッスンは減るけど無くなるわけじゃないからな。取り敢えず、これからいよいよアイドル“高橋礼子”と“柊志乃”として活動してもらうことになる。」

 

「ようやくね」

 

「ええ、ここからがスタートだわ」

 

「実はこれともう一つ話が合ってだな、おーい入ってきてくれ」

 

合図を送るとドアから小柄な影が駆け寄ってくる。その姿を見た礼子の眉が少し上がる。

 

「えーこちら今度からうちに所属することになった安部菜々ちゃんだ。年齢はお前らの一つ下の17歳だ。初めての後輩になるわけだがいじめてやるなよ」

 

「は、はじめまして安部菜々17歳です、トップアイドル目指して頑張るのでよろしくお願いします。・・・・キャハッ」

 

「ねえプロデューサー殴ってもいいかしらこの子」

 

「ええ、ちょっとイラッと来たわね」

 

「ななななんですか、いきなり新人いびりですか、な、菜々は負けませんからね。絶対にアイドルをやめませんからね」

 

「ほら、3人とも落着け、取り敢えず安部は明日から青木さんのスペシャルレッスンだ。それと、2人は明日は休みだ。ゆっくり体を休めてくれ。」

 

「そう、じゃあ今日はみんなで食事に行きましょうか、もちろんプロデューサーの奢りで」

 

「あらいいわね、賛成」

 

「構わんが、あんまり高いのは勘弁しろよ」

 

「それは」「どうかしらね」

 

2人揃ってイヤーな笑顔を浮かべてやがる、まあ女子高生2人ならそこまではー

 

「じゃあ着替えてくるから、下で待ってなさい」

 

「青木さんも菜々ちゃんもまた後でね」

 

そう言い残し、レッスンルームを後にする。

 

「ほう奢りか、勿論子供達も呼んで構わんよな?」

 

「あっ、えーっと・・・な、菜々は大丈夫ですから、気にしないで下さい」

 

「おや、まさか可愛い新人を仲間外れにはしないよな?」

 

「はは・・・ええ勿論ですよ、ほら一番若いんだから遠慮すんな」

 

安部の頭をポンと叩き声をかける。

 

「ただ、青木さんはほどほどにしてくださいね?」

 

「ふっ、それは子供達に言ってくれ。」

 

どうやら財布の中身がかなり軽くなるのは確定らしい。その間もずっとあわあわしている安部を眺めながら俺は現実から目を逸らしていった。

 

 

 

 

さて、今日はいよいよ初めてのテレビ撮影である。と言っても、新人アイドルが10組ほど出演するバラエティーであり、うまくアピールできなければ他の子達に埋もれてしまうだけである。本当は2人は別々でデビューさせる予定だったが、せっかくのテレビ出演のチャンスという事で急遽ユニットを組んでもらった。

実際半年のレッスンでかなり息が合うようになっていたし、こちらもプロデュースするのに2人一緒の方が都合が良かったのはある。

 

話をもどして、この番組は基本的に各組30秒程のアピールタイムが与えられ、その他の時間は決まっておらず、司会者の無茶振りに答えるというもの。

その為、大半が泣き崩れてしまったりと放送事故になることも多い。まあ本当にまずいのは編集で切ってくれるし、意外と深夜帯にも拘らず視聴率は悪くない。

あたふたしながら美少女が泣き崩れる、そんなシーンが夜の男性にウケているとかなんとか。今回もそんな放送になるはずだったのだろうがー

 

「はぁ?!、アンタ本気でそんな事言ってるわけ?」

 

「とてもじゃないけど正気とは思えないわね」

 

「何で私がそんな事しなきゃいけないのよ」

 

「確かに似合うかもね、私はゴメンだけど」

 

(どうしてこうなっちゃったかなー)

 

元気に現場で大暴れするうちのアイドル達を見て現実逃避をしたくなる。

事の発端は礼子が司会者に胸を強調するポーズを指示されたことだ。当然あの礼子がそんな指示を聞くわけがなく、そこに志乃ものっかり現場はまさに24プロの独壇場である。

おかげで、他のアイドル達のプロデューサーの視線をグサグサ背中に感じている。

 

(まあそりゃそうだわな、あれだけ出番をとられちゃ。いやうちの子達もアイドルのアピールという意味では・・・)

 

 

この番組が放送されたらどうなるか、そう考えると胃がきゅっとしてくる。

俺は天井を見上げながらまだ聞こえてくる声を聞き今後の事に頭を悩ませるのだった。

 

 





菜々さんじゅうななさい

この頃はちゃんとじゅうななさいです

そしてNGが出る頃もじゅうななさいですいいね
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