盆休みなんてありませんでしたよ
「はい、ではそれで、ええ・・・こちらこそ宜しくお願い致します・・・ふぅ」
今日何度目かの電話対応を終え、一息つく。
あの放送はい意味で大反響だった。まああれで良い反応がもらえるなんて、最近の流行りがわからなくなって自身が無くなりそうだが。
あの番組が放送されると、2人の知名度は爆発的に急上昇した。高圧的でありながらもそれすらも魅力的に感じる礼子に、物静かで引き込まれるような魅力のある志乃。
あれ以来、最初はひな壇のような仕事から、今では雑誌のメインや小さいながらも番組内でのコーナーを持たせてもらってたりもする。
今では礼子は「キング」、志乃は「クイーン」なんてあだ名がつけれ、知名度はかなりのものとなった。
ただここで問題となるのは、未だにデビュー曲が未発表状態になっていることだ。
アイドルと言ったら曲、歌わない、踊らないアイドルなんていないのはこの世界の常識である。本来ならあの放送の後で曲を作り徐々に露出を増やしていく中で、曲を発表できればよいと考えていた。
だが反響があまりに大き過ぎた為、メディアへの露出が増える代わりに曲がどんどん後回しになっているのである。
(でもそろそろ・・)
最近テレビ局なんかでは様々な人に、曲の件についてせかされている。自分で言うのもなんだが、一応それなりに注目度のあるアイドルのデビュー曲初お披露目となれば局によって競争が起きるのも仕方がない事である。
少し遅れてしまったが、曲自体は出来ている。作詞作曲は俺自身ではあるが、2人には専門の先生に作ってもらったことにしてある。これは社長との相談で決めたことで、曲調というものにはどうしてもその人が出る。
俺が作ったことにすると一部の昔のファンから邪推されてしまう可能性がある為、存在しない架空の人物をでっち上げたのだ。
試聴した2人の反応は上々、特に礼子が
「なかなかいいじゃない、今度挨拶に行きたいわね」
と言い出した時はそれらしい理屈をいくつも並べて何とか断念してもらった。
正直目の前で手放しに誉めてくるため、顔が赤くならないよう気を付けるので精いっぱいだった。
それからは一応レッスンに並行してデビュー曲の練習も行っているのだが、いかんせん今のありがたい状況が逆に足を引っ張ってしまっている。
これが初めての曲になる為、練度不足で発表というのだけは避けたい。
(売れたら売れたで悩みは尽きないな・・・)
問題は山積みではあるが、放置しておいてもよくなることはない。取り敢えず一つ一つ片づけようと、手前にある書類に手を伸ばすのだった。
今日は2人がデビューした番組に久しぶりの出演である。
何時もは十数組のアイドルがいるスタジオには今日はうちのアイドルしかいない。
というのも今日この番組でデビュー曲のお披露目をすることになっているのだ。
様々な番組からオファーはもらったが『この番組への恩がありますので』と断って今日に至る。本当は他番組は放送まであまり日が無く、余裕を持って受けられる番組を選んだのが真相である。
ただ番組は今勢いのあるアイドルという事で、普段と編成を変えてまで扱ってくれている。
(これは本格的にディレクターに頭上がらなくなるかもな・・・)
「なーにしかめっ面してんのよあんたは」
バシッっと背中を叩かれる。
「難しく考えなくていいのよ、ここであたしたちの活躍をしっかり見てなさい」
「ええ、完璧に決めてみせるわ」
「このあたしたちのプロデューサーなのよ?もっとどっしり構えてなさい」
「そうだな、自慢のアイドル達の活躍をしっかり見させてもらうさ」
「それでいいのよ、じゃあ行ってくるから」
「ふふ、期待していて」
そんな事をわざわざ言ってくる2人に違和感を覚える。確かに最近は収録にも慣れてきて軽口も言うようにはなっているが・・・
(ああ、そうか)
結局はいくら強がっていても十代の少女である。先ほどの発言はこちらに心配をかけないようにしているように見せて、自分に言い聞かせていたのだ。
何せこれで彼女たちのデビュー曲の評価が決まってしまうといっても過言ではないのだ。
「2人とも」
「「ん?」」
「好きなようにやってこい、失敗したら菜々と一緒に事務所で笑ってみてやるからな」
「・・・はっふざけんじゃないわよ、誰が失敗なんかするものですか」
「今のは、少し傷ついたわ・・・責任とってくださいね?」
そう言いながら、スタジオに向かっていく。少し怒ったように笑う2人からは先ほどまでの気負った様子は感じられなかった。
雰囲気に飲まれる、それがどういうことなのか今この場で俺、いや、今居合わせたスタッフたちは実感している。
歌が始まった途端この場にいる誰もが彼女たちの歌に引き込まれていく。普段からレッスンに付き合っていた俺でさえこれである。今この場はまさに彼女たちの為にあると言っていい。
(いや、想像以上にすげえわ。確かに舞台で化けるやつはいる、だがここまで本番に強い、本番で実力を120%だせるやつはまずいない。これは本当に日高舞を越えていけるかもな)
歌い終わり司会者に詰め寄られてる彼女達の姿は先程よりも大きく見えた。
「えー本日はお日柄もよく、えー皆さまに「いいからさっさと始めなさいよ」はいはい、分かりましたよ。では改めましてレディビーストのデビュー曲がオリコン1位を獲得したことを祝いまして、乾杯」
「「「乾杯」」」
「料理もかなりいいお店のやつだからな、味わって食べるように」
わいわいと食事を囲む姿を眺めながら、一息にコップに注がれたジュースを飲み干す。本当はアルコールが欲しいところであるが、本日の主役達がまだ未成年の為そこは素直に諦めよう。
そう、今日は先日発売されたデビュー曲がオリコン首位を獲得した為の細やかな事務所パーティーである。例の放送後様々なメディアで宣伝してもらいその甲斐もあっての1位で売り上げは今なお好調である。このままいけばミリオンは確実だろう。
因みに今日の参加者は俺、礼子、志乃、菜々、青木さんである。当初は社長も参加の予定だったのだが、今回のオリコンの件で色々と行かなければならないらしい。
俺も着いていくよう言ったのだが「2人についていてあげなさい」と断られてしまったので事務所に残っている。
正直言ってこの結果には喜んでいる反面不安も大きい。スタートが良すぎた分これからのハードルも上がってくる。更にはまだ菜々のデビューも控えているが、今は正直そちらの事まで考えているような余裕はない。
しかしそう悩んでいる暇はない、もう進み始めてしまったのだからこそー
「んぐっ」
「おらっ食べなさい」
考え事をしていた口にいきなり何かをつっこまれる、んぐ…んぐ…これは寿司か?
犯人である礼子がニヤリと笑いながら
「誰かさんが全然食べてないから食べさせてやったのよ、感謝なさい」
「…んっ感謝ってお前なぁ」
「ほらプロデューサーさん、こっちも飲んで」
横に志乃が座り飲み物を勧めてくる。いや、飲み物入れてくれるのはいいんだが何か近くないですかね?胸とか当たりそうですけど。
「あープロデューサーさんが立場を利用してセクハラしてます。菜々もこの後襲われちゃうんですね、キャーキャー」
あっちではあっちで何やら菜々が勝手に盛り上がっている。いやあのテンションはおかしいだろ。
「何よ菜々の方なんか見て、アンタの前にいるのはアタシなんだからこっち見なさいよ」
何て眺めてたら礼子の手が顔に添えられ強制的に前を向かされる、と比例するように俺の腕を抱える志乃の手に力が籠る。と言うか胸が腕に当たってますしなんなんすかねこの状況、礼子も志乃も少し顔が赤くて目が座っていて、どこか大人な飲み物の匂いがーん?この匂いは
おそらくこの状況を作ったであろう青木さんの方を見る。彼女は笑いながら大人な飲み物をこちらに向けて笑っている。
「なーに、今日ぐらい無礼講だ。今日は事務所に泊めれば誰にもばれん」
「そう言う問題じゃないですよね?!何て事してくれてんですか」
「ちょっとプロデューサー余所見しないで」
「ふふ、プロデューサーさんの腕たくましいわね・・・」
「あわわアダルトです。菜々は菜々は大人の階段を登ってしまうのでしょうか」
「ははっモテモテだな山下、いやプロデューサー。あはははは」
「笑ってないでなんとかもらえませんかね?!」
「だから聞いてんの?プロデューサー、だいたいアンタはね」
「ふふ、ふふ」ギュッ
「でも菜々はちゃんと大切にしてもらえるなら・・・」
誰も言うことをききゃしない、もうめちゃくちゃで収集はつきそうになさそうだ。
手を添えているだけだった礼子が抱き付いてくる。
「ねえ、ちゃんと見てなさいよ、このまま日高舞も越えてトップアイドルになってやるんだから…」
抱き付いてきた礼子に耳元で囁かれ、慌てて礼子の方を見ると既に穏やかな寝息をたてている。腕に感じる重みも増しており、そちらを見ると志乃も頭を肩に乗せ眠っていた。
ただでさえ色気のある2人が無防備な姿をさらしているのである、2人のアイドルの重みを感じながら落ち着こうと深く溜め息をー
「ふふ、避妊はしろよ?」
目の前でニヤニヤしてるこの人を見て一気に冷静になった。取り敢えず2人を仮眠室に連れていくか、その後はソファーで固まってるもう1人もか。
どうやらニヤニヤ見てる人は手伝ってくれないらしい。
先ずは礼子か。志乃の抱いている腕をほどき起こさないよう慎重に抱き上げ仮眠室へ続くドアを開けた。
この後めちゃくちゃ健全でした
主人公的には小娘だからね、まだ
ユニット名は木場さんいないけどレディビーストで
ドランカー関係は未成年だからね。未成年飲酒ダメ絶対