IS×ケンイチ(仮題)   作:凡人さん

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第三撃

「はぁ、この学園、というよりも開発者を筆頭にしたIS関係者かな。ちょっと問題があり過ぎるよ」

 

昨日の件と朝のショートホームルームの出来事で兼一はそう結論付けざるを得なかった。

おそらく開発者が一番大きな問題を抱えているはずだということを兼一はよくよく理解している。

そうであってもやはり目に余るというものがある。今日やって来たドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒは、軍人であることを隠そうとしていないことを兼一は理解した。

 

「ISの軍事利用って禁止されてるはずなのに……軍人がIS乗りってどうなんだろう」

 

普通では誰も立ち寄ることの出来ない、物理的な高所にて周りの様子を見ながら、そんなことを考える。

IS運用協定、通称アラスカ条約によりISの研究のための超国家機関設立や軍事利用の禁止されている。だというのに軍属の人間がIS乗り、しかも代表候補生であるのだから邪推してしまうのは仕方がないことだろう。実際は邪推も何もなく、IS部隊が設立されているのだが、兼一はまだ知らない。

それ以外にも気になることがあった。それは件の少女、ラウラ本人についてだ。齢十五で軍人ということは気にならないが、ドイツ軍という点で何かが引っかかる。

しかし、考え続けても答えは出ない。

そんな折ふとアリーナの方へと目を向けると、多くの生徒達が訓練に勤しんでいる。

 

「織斑くんとデュノアくんの模擬戦か。そういえばIS同士の試合って生で見たことなかったな。うん、そうだ。近くで見よう」

 

自分の中で勝手に納得した兼一は、飛ぶようにしてアリーナに向かう。

どうせ思い出せないことなら大したことではないのだから、もっと実戦的なことを把握しようと自身の思考も中断した。

その途中、何か考え込みながら一人でアリーナに向かうラウラを見かけた。

 

どうするべきか一瞬の逡巡の後、まずは観察だという結論を導き出し、少し離れた位置に静かに降りると、距離を保ったまま後を付ける。

 

 

 

「朝のあれは一体何なのだ」

 

ラウラは、朝の一件の際に感じた謎のプレッシャーについて考えている。

あの場にそのようなことができる人物など、尊敬してやまない千冬しかいないと思っている。そのため、益々もってわからない。そんなことをせずとも声をかければ済む話だったのだから。

 

「ふむ、分からんな」

 

しばらく考えても結論は出ずじまいだった。分からないものはいくら考えても分からない。諦めて別のことを考え始める。

 

「あの男、名前は白浜兼一と言ったか。ヤツは一体何なのだ」

 

教員であることは分かる。けれど、何を教えるのかが分からない。

男が女より強かった時代はすでに過ぎ去っている、その上男はISを動かせないのだから実習に深くかかわるはずはない。仮に女だとしても、お人好しが服を着て歩いているような雰囲気を放つ兼一ではそういったことを教えられるとは思えない。

では座学の教員かと考えてみるが、それにしては今日一日見た限り教鞭をとっていないし、そもそも常に教室の後ろにいて、教壇に立つことはなかった。

ますますもって何のためにいるのかが分からない存在であった。

 

更に生徒達の様子を見る限り、ごく最近……というよりも昨日やって来たらしい。

 

だから

「分からん」

結局は分からないという解に辿り着く。

 

そのまま、後ろからついてくる存在に全く気が付くことなくアリーナに向かうのだった。

 

 

 

ラウラの考えにある通り、男が女より強い時代は女性しか動かすことの出来ないISという存在の登場とともに終焉を迎えた。今では男と女が戦争をすれば、男は三日と持たないとまで言われている。それほどまでにISの力は凄まじい。

 

けれど、それは一般社会の常識である。その常識の通用しない裏の世界ではそれに比肩する程に恐ろしいものの存在が、危険なものの存在が知れ渡っている。

 

それが『達人』という存在だ。

 

実際に達人とISが戦闘したという記録はない。故にどちらが強いかはわからない。

けれど想像をしてみるといい。背格好が多少違うだけの同じ人間が、戦車を引っくり返す姿を。ライフル徹甲弾さえ防ぐことの出来る装備を素手で貫く姿を。弾丸乱れ飛ぶ戦場を悠々と進む姿を。それはすごいを通り越して恐ろしい光景だ。

 

それを可能とする存在が達人である。

繰り返すがISと達人が戦ったという記録はない。

ただ、ISにしろ達人にしろ、人の常識からかけ離れた存在であり、どちらも敵に回したくない存在であることには違いない。

 

 

 

ラウラとその後ろをひっそりと歩く兼一がアリーナに到着した時、そこでは一夏がシャルルの装備を借りて射撃をしていた。近距離型の一夏が射撃をする意味について兼一は何となく想像がついた。要は特徴を知るためである。全ての銃を銃器として一括りにすることはできないが、それでも根本的な部分は相似なものである。なら、少しでも知っていれば立ち回りを考えるきっかけになるだろう。

また、いずれ遠距離装備を使うことになった時、この経験が役に立つだろうことは言うまでもない。

 

「間に合わなかったみたいだけど、ま、いっか。ここにいれば機会はいつでもあるだろうし」

 

ここに来た本来の目的であるIS同士の戦闘を見ることの出来なかった兼一だったが、僅かに悔しがるだけだった。

しばらく銃声が聞こえると、射撃の練習が一息ついたのか、一夏とシャルルは談笑していた。

 

「あれって」

 

ある生徒の漏らした声を皮切りに、アリーナが騒がしくなる。皆の視線の先には一機の黒いISが立っていた。

 

「織斑一夏、私と戦え」

 

黒いISの乗り手、ラウラは一夏にそう命じる。

 

「いやだね。戦う理由がない。それに戦いたいんなら今でなくてもいいだろ。もうすぐクラスリーグマッチなんだから」

 

一夏はそれを切って捨てる。

 

「そうか、なら」

 

言って右肩のレールカノンを構えると、躊躇なく発射させる。

ラウラのいきなりの行動に反応ができない一夏の前に、盾を展開したシャルルが割り込みかばう。

 

「いきなり戦いを仕掛けるなんて――」

「ボーデヴィッヒさん、ISは戦争じゃなくてスポーツのためのものなんだから、お互い合意の上で始めなきゃダメだよ」

 

何かを言おうとするシャルルに被せ兼一は告げる。そして、シャルルの前に進む。

 

「貴様、教員とはいえ邪魔するようなら容赦はしない」

「危ないから先生は下がっててください」

 

ラウラの発言に本気の色を感じたシャルルが兼一の前に立とうとするが、笑顔のままそれを手で制す。それだけであるにもかかわらずシャルルは動けなくなってしまった。

 

「私は本気だぞ」

 

そう言って第二射の準備をしようとしたところで

 

『そこの生徒、何をやっている』

 

アリーナの拡声器から騒ぎを聞きつけた教員の声が飛ぶ。

命拾いしたなと言わんばかりに、鼻で笑うとラウラはISを解除する。そして、銀の髪を翻しその場を立ち去るのだった。

 

「あー、怖かった」

 

ラウラの姿が消えた後、兼一はそう漏らした。

 

「先生、何してるんですか」

「そうですわ。ISに生身で立ち向かうなんて死にたいんですの」

 

シャルルと、一夏の傍に駆け寄ったセシリアからの叱責が飛んでくる。

 

「うーん、やっぱりみんな一応は理解できてるんだよな」

けれど兼一の漏らす言葉はこれであった。

兼一にしてみればあの程度大したことのない危険であるが、傍目から見れば自殺行為に他ならない。あの行為がどれだけ危険なのかを理解していない者はこの場にはいない。

だからこその呟きなのだ。

 

「先生は何を言っているのだ」

 

兼一の呟きに反応するのは、長い黒髪をポニーテールにしている少女篠ノ之箒だった。

 

「いや、銃器に生身で向かうと死ぬかもしれないってことだよ」

「はあ? そんなこと言われなくても分かってるわよ」

 

兼一の答えに鈴音が馬鹿にするなと言外に文句を付ける。

 

「うん、普通はそうだよね。普通は」

 

けれど、そんなことなど気にもせず、兼一はそう言い残すと、アリーナから出ていくのだった。

 

「先生は一体何が言いたかったんだ」

 

背中を見送りながら溢す一夏の言葉に応えるように、皆一様に首を傾げるだけだった。

やはりというべきか、彼と彼女たちは自分たちの扱う力の強大さをどこか他人事のように捉えていることを理解できていないのだった。

 




中々口調が掴めていない気がしてならない
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