IS×ケンイチ(仮題)   作:凡人さん

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お久しぶりです
返ってきましたよ
というわけで更新します


第八撃

「雪片……千冬姉と同じじゃないか」

 

定形になりつつあるそれが何であるかをすぐに見抜いた一夏。彼の感情はめまぐるしく変化する。最初は驚き、次は恐怖、最後は怒り。

 

「俺がやる」

 

シャルルにそう告げると、剣を、雪片弐型を構える。それを察知したのかラウラであったモノは、一夏に襲い掛かる。

 

それは一合で、一夏の手から剣を弾き飛ばす。

続き振るわれた鋭い一撃で、一夏はISを強制的に解除された。

 

「この野郎」

 

なおも一夏は立ち向かう。自分の大切な家族を、大事な姉の技を汚く模倣されたことが許せなかった。姉との思い出を土足で踏み荒らされることが我慢できなかった。

 

「馬鹿者。何をしている、死ぬ気か」

 

そんな一夏を箒は羽交い締めにして止める。ISに生身で立ち向かうなど自殺行為なのだから当然である。

 

「そうだよ、勇気と無謀をはき違えちゃダメだよ」

 

箒を振りほどこうと暴れる一夏に、遠くから声が届く。

 

「先生!」

 

声の方へと顔を向けると、人の良さそうな笑顔を浮かべた兼一がいた。

兼一の登場に、会場にいる三人だけではなく、千冬を除くモニタリングしている教師たちは言葉を失う。千冬もまた違う意味で言葉を失っているが……

 

兼一の登場による驚きから醒めた教師たちは、ただちに避難するように指示を出そうとする。

しかし、千冬はそれを止める。この際なのだから女尊男卑の思想に凝り固まった教師陣の考えを改めさせようと思ったのだ。

 

視線の先、その奥にいるラウラを見据える兼一の瞳は波一つない海のようであった。

 

「こんなことする人って一体何を考えてるんだろうな」

 

悪友よりもたらされた情報で、目の前の存在が何であるかを知っている兼一。

過去のモンド・グロッソ優勝者の強さをコピーし、それを植え付けることで最強を騙る禁忌の技術。

その忌まわしき技術の名をVTシステムという。

 

「試練なくして人は完成しない。だったらこの試練は一体誰のものなんだろう

ボーデヴィッヒさんなのか、織斑君なのか、千冬ちゃんなのか。それとも他の人なのか」

 

兼一はただ歩いているだけだ。たったそれだけであるにもかかわらず、一夏達は肌のヒリつくような圧倒的なまでの力を感じる。距離が詰まるにつれ、息苦しさまで感じてくる。

 

「……先生は一体」

 

一夏は言葉を漏らす。その言葉は現場を見るものの総意でもあった。

一夏たちは、時期外れにやって来た兼一がなにかを教えている場面を見たことがない。訓練の時に何かと手を貸してくれてはいたが、それ以外では接点がなかった。

 

思い起こせば兼一について何も知らなかった。忙しく過ぎていく時間の中でその機会を作れなかった。

 

一夏たちは未知の恐怖を甘く見ていたのだ。

 

それは大半の教師たちにも同じことが言えるのであった。男というだけで自分たちより下に見て、深く知ろうともしていなかった。

 

今日この時、白浜兼一と言う男のもう一つの顔、達人としての顔を知ることになる。

 

 

 

「さて、一夏くん。君はどうしたいんだい? 君が何かしなくても、この事態の収拾はすぐにつく」

 

一夏たちの前に立ち、VTシステムに相対する兼一は問いを投げる。

 

「違うよ先生。俺は、俺がアレを止めたいんだ。千冬姉の真似をするアレを自分の手で止めたいんだ」

「一夏、お前の気持ちは分かる。だが、どうやって立ち向かうというのだ? 白式のエネルギーは切れているのだぞ」

 

一夏は自分の意志を答える。けれど、箒の言った通り手段がない。

 

「エネルギーがないなら、ある所から持ってくればいいんだよ」

 

シャルルはその手段を、一夏の望みをかなえるための武器を与える。

 

「そんなことが可能なのか」

「うん。できるよ」

 

箒の言葉に笑って答える。

 

「それで、改めて聞くけど君たちは戦いたいのかい?」

 

兼一は再び問いを投げかける。

 

『はい』

 

その問いに三人は声をそろえて答える。

 

「そうかい。だったら、準備する時間はボクが作ってあげる」

 

そう告げると兼一は構えを取る。空手の防御の構え『前羽の構え』を。

 

「先生、何をするつもりですか」

「早くしなきゃボクが片を付けちゃうよ」

 

その姿を見て驚きとともに疑問を投げたシャルルに、笑って言葉を返すと、一歩踏み込む。

兼一を、ただの人を脅威として認識したVTシステムは、剣を振る。重い音ともに、砂煙が舞う。

その場を見ている者は、最悪の事態を想像した。それほどまでに鋭い一閃であった。

 

「悪くない一撃だね。でも、ボクはそれよりも鋭い一撃を知ってる」

 

砂煙の中からそんな言葉が聞こえた。

心宿らぬただ上辺だけをなぞった技が、信念を持って振るわれる本物を超えることなどありえない。故にその攻撃が兼一の体を捉えることなどありはしないのだ。

 

「デュノアくん、ボーっとしてないで作業しなきゃホントに僕一人で片付けちゃうよ」

 

固まったままのシャルルを見た兼一がそう告げると、慌てたように動き始める。

 

「おっと、邪魔はさせないよ」

 

何かしらの危機を感じたのか、一夏たちの方へ攻撃を行おうとするがそれに待ったをかける。

 

「ボーデヴィッヒさん、おしゃべりをしようか」

 

言葉に応じるように剣が振られる。

 

 

 

「すごい」

 

いつの間にか管制室にやって来ていたセシリアと鈴音は、画面の向こうの現実にそう言葉を漏らした。

そして、ISと生身で戦う兼一を目にした者その全ても同じ言葉を漏らしていた。

ISという史上最強の兵器を扱う彼女達だからこそ、その現実離れした凄さがより一層映えて見え、同時に夢だと思ってしまう。

 

形を再現しているだけとはいえ、放たれる鋭い一閃を時に受け止め、時に弾き返し、時に避ける。

一撃でも喰らえば敗北を、死を免れない。そんな中、涼しい顔で戦闘をこなす兼一。

 

(ボーデヴィッヒさんも必死に戦ってるんだね)

 

その一太刀一太刀から、ラウラの心の声を読み取っている兼一は嬉しかった。あの時、自分で言った言葉を忘れず、自身を支配しようとする力に抗い続けているのだ。

こんな力は自分の求めているものじゃない、そんな思いが兼一に伝わって来ている。

 

兼一は彼の信念に則って、子供と女性は決して殴らない。けれど、それを知らない者たちは攻め手がないと判断してしまう。いくら防御が優れていても、攻撃ができなければ敗北は避けられない。

 

「先生、もういいです。下がってください」

「まだ、準備が終わってないんでしょ、だったらそれはできない相談だよ」

 

一夏の叫びを笑って流す。

 

一般的なISの倍以上ある相手だが、兼一にとってその大きさはあまり関係がない。柔術において、体格が劣った者が体格に優れたものを投げることなど訳がないのだ。

だが、兼一はあくまで防御に留める。

それはやはりラウラの心の声を、こんな状況だからこそ出て来る本当の想いを聞くためだろうし、生徒たちの意志を尊重するためでもあるだろう。

 

それから更に数分が経った。

 

「先生、準備ができました」

 

シャルルの声が、兼一とラウラの会話の終了を告げる。

 

「それじゃ、また。いつでも話に来ていいからね」

 

小さくそう言うと、振り下ろされる剣を避け、その腕を取るとこともなさげに投げたのだった。それは体育の教科書に載っていそうなほど綺麗な背負い投げだった。

 

その光景を目の当たりにした者たちは沈黙に包まれた。

 

「織斑くん、後は任せるよ」

「――――は、はい」

 

手を払いながら放心気味の一夏にバトンを渡すと、結末を見ることなくその場を後にする。

 




とりあえず次で一段落ですので、色々お察しください
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