俺ガイルキャラ生誕祭!!   作:Maverick

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やっぱり八幡にはこういう小町の無理矢理な企画に乗ってもらうべきだと思いこうなりました。
頑張れ!八幡!!


八幡のbirthday 後編

もはや小町に反論をしても遅いだろう。それに今ならどんなに罵倒されても、小町と戸塚が同じ空間にいるという事実だけで癒されていくから、多分大丈夫だろ。うん、大丈夫だよね?雪ノ下とか何言ってくるかわかったもんじゃねえよ。

 

「ではでは、皆さん準備が必要だと思うので…そうですねえ。10分後!始めたいと思います!」

 

「んー、ねえ小町ちゃん?」

 

「何でしょう、結衣さん?」

 

勝手に話が進んでいくなあ。現実逃避のつもりで朝、小町にリクエストした唐揚げを食べる。

ん?いつものと違うな…ああ、雪ノ下がつくったのか。

 

「ヒッキーがいる目の前で考えるの、なんかヤだからどこか部屋ないかな?」

 

「それもそうですね!」

 

肯定するな、悲しいわ。だいたい小町はさっきのセリフいつ考えてたんだよ、お前まじ作戦とか立たせたら最強の案持ってくる人種だろ。策士だわ。

 

「大志くんとはやてくん、あと戸塚さんはお兄ちゃんの部屋でいいとして…お義姉ちゃん候補の皆さんが全員小町の部屋っていうのは、ちょっと狭すぎるから…」

 

小町がなにやらブツブツ呟いている。怖い、ちょくちょく悪い笑顔を浮かべてるのが何より怖い。でも可愛い。

 

「比企谷妹、私ならここでいいさ。どこで考えても私が言いたい事は変わらん」

 

「私も、ここでいいよ。たいして伝えたいこともないし」

 

平塚先生と川崎はどうやらここに残るつもりらしい。と、なると残るのは雪ノ下と由比ヶ浜と一色か。小町も入れて4人なら、小町の部屋に十分入る人数だろう。

 

「そうですか?では雪乃さんと結衣さんといろはさんは小町についてきちゃってください!

お兄ちゃんは男子の案内してね」

 

「やっぱり今日も労働しなきゃならないのね…了解」

 

小町たちが部屋を出ると同時に重い腰を上げて財布に手を伸ばす。その中から部屋の鍵だけを取り出し3人に目で合図を送り、部屋を出る。

その視線に気づいた3人は何も言わずに部屋を出た俺についてくる。

 

「にしても、戸塚。お前からはもう貰ったんだからこんなことしなくてもいいんだぞ?」

 

「ううん、僕はちょうどいい機会だと思ってるから。いつも八幡にはお世話になってるし」

 

「…そか。もっとも、最近は何もしてやれてないけどな」

 

せいぜい戸塚に社会分野の勉強を教えてやってたくらいだろう。その代わり、戸塚には数学を教えてもらったからお礼をされる意味は無い。

部屋の前に着いたので、部屋の鍵を開け3人を部屋に入れる。

 

「散らかってるけど気にすんな。なんか触ったら怒るからな」

 

「了解っす」

 

「わかってますよ」

 

「ありがとうね、八幡!」

 

礼を言うのは俺の方だ。俺の為なんかにわざわざ考えてくれるのを止める理由はないのだ。

 

「んじゃ、10分後な」

 

部屋のドアを閉めてリビングに戻る。そこには、相変わらず酒を飲んでいる平塚先生とご飯をゆっくり食べながらも言葉を考えている様子がわかる川崎がいた。

 

「平塚先生、折角ですし一杯注ぎますよ」

 

「む、そうか。ありがとな、比企谷」

 

そういうとグラスに残っていた酒を一気に飲み干し、俺の方へグラスを差し出す。こんなに男らしいから結婚出来ないんですよ、そう思い苦笑しながらビールを注ぐ。

 

「そうだ、比企谷。あと川崎もいるが…どうせ後々知らせるからいいだろう」

 

「どうしたんすか?改まって」

 

「私達なんか悪いことした?」

 

平塚先生がいきなりこんなこと言い出すから俺と川崎は少し狼狽える。しかし、平塚先生の顔はあまりにも幸せそうで、悪いことでは無さそうだ。

 

「彼氏ができたんだ。それも結婚を前提としたお付き合いをしている」

 

「ええ!?マジっすか?それ俺の最近の1ヶ月での1番のニュースですわ」

 

八幡、先生が変な男に捕まってるんじゃないか心配です。でもまあ、先生もアラサーの立派な大人なのだ。自分の責任は自分でとるだろう。

 

「良かったすね、末永くお幸せに。私は結婚式行きませんよ?」

 

「さ、先に言われるとは思ってなかったな…比企谷は勿論来てくれるよな?」

 

「正直めんどいですが…行きますよ。一生の中で一番の恩師ですから」

 

これは俺の率直な感想だ。きっとこれから先、大学でも彼女以上の教師には巡り会えないだろう。この先生ともあと約半年の付き合いなのだ。少し、寂しくなるな。

 

「「比企谷が…デレた?」」

 

「なんすか、それ。つーか川崎まで変な事言うんじゃねぇよ」

 

こんな会話をしながら過ごす10分間。居心地がいい。

しかし、人生いつも居心地がいいわけでなく…はあ。

 

「すんません、少し遅くなったっす」

 

「大丈夫だ、女子陣は誰も来てない。とりあえずさっきの場所に座ったらどうだ?」

 

「そうですね、では座らせていただきます」

 

男子陣が先に来る、だろうなとは思うがやはりこういうものも女子の方が時間がかかるようだ。

ちょっとして、女子陣が来る。

 

「い、いやーごめんね皆。ちょっとだけ遅くなっちゃったね…へへ」

 

ドアを開けて入ってきたのは由比ヶ浜だ。それに続き、雪ノ下、一色、小町が入ってくる。俺達を見て空気を読んだ由比ヶ浜がさっきと同じ場所に座る。どうやら空気を読む能力は健在のようだ。

小町は俺とは反対側の誕生日席に立っている。おとなしめの胸を張っている小町はとっても可愛かったです、まる。

 

「それではー、早速始めたいと思いますが!その前に…じゃっじゃーん!!」

 

小町の手には8本の割り箸が握り締められていた。えっと、①雪ノ下②由比ヶ浜③一色④戸塚⑤平塚先生⑥川崎⑦大志⑧はやてだからどーせ割り箸の先に番号が書いてあるのだろう。

皆もそれを察したのか小町の周りに群がる。1人1本決めたようだ。

 

「それでは…どうぞ!!」

 

小町の掛け声とともに8人は割り箸を引っこ抜いて先に書いてある番号を見る。満足している人、していない人がいる。

なんだなんだ、なぜ皆そんなにガチってんの?雪ノ下は負けず嫌いだからともかくとして一色とかなんでそんなにチカラ入れてんのかわかんねーよ。

その後、小町は一人ひとり割り箸を回収し、紙にメモしていく。はやてから回収した割り箸を見て、メモをして8人分揃ったらしい。

 

「順番は、こうなりました!!」

 

そういって小町は紙を読み上げる。それによると、①平塚先生②一色③大志④戸塚⑤はやて⑥由比ヶ浜⑦川崎⑧雪ノ下らしい。

 

「ではでは、改めてルール説明を行います!!

今日は小町の大好きなお兄ちゃんの誕生日♡お兄ちゃんの知り合いの方々がプレゼントを持ってきてくれました…しかし、ただ渡すのでは面白くなーい!!そこでー…ほら、はやてくん」

 

「はいはい、えっと。ああ『どきどき、何でもありの暴露大会♪やったもん勝ちだよ♡』を行います」

 

はやても察しがいい。よく分かったな。こいつになら小町を…いやまだだ、判断するのはまだ早い。まずは小町に聞いてみなければならない。しかしそれはあとに回すことにして、小町の話を引き続き聞くことにする。

 

「はやてくんありがとー!この企画は、プレゼントと一緒に気持ちもプレゼントしちゃおう!というものです!濁すのもあやふやにするのも構いませんが、一つだけ絶対に守って欲しい約束があります」

 

そこまで言うと小町がいきなり真面目な顔になる。

 

「嘘を言うのはやめてくださいね」

 

小町のこんな悲しそうな顔を見るのはいつぶりだろう。そう思うほどに、修学旅行での1件の話を聞いた時よりも悲しそうな顔をしていた。

小町は頭を切り替えたのか、すぐにいつもの笑顔に戻り話を進める。

 

「尚、気持ちのプレゼントにはお兄ちゃんにすぐに点数をつけてもらい、一番点数が高かった人が賞品を貰えます!!質問がなければ、進めようと思いますがー、どなたかいますか??」

 

質問をする人がいなかったので、早速始めるらしい。最初は平塚先生だったな。

 

「私からだな、比企谷。まずは改めて言わせてもらおう、誕生日おめでとう。私は正直、比企谷を奉仕部に入部させてよかったのだろうかと思う時が多々あった。それは、まあ林間学校だったり文化祭だったりだな。しかし、今の君を見ていて私の選択は間違っていなかったと思っている。実際、本人から感謝されたからな」

 

ほんとに、その通りだ。何度後悔したことか…でも、それでも奉仕部での活動は間違いなく俺を変えた。1年と数ヶ月しか経っていないのにここまで変化が出ているのは間違いなく奉仕部のおかげだ。

 

「さっきも最高の恩師だなんて言ってもらえて嬉しかったよ。君が卒業しても君は私の生徒であり、私は君の教師だ。いつでも相談しろ、報酬はラーメン一杯で手を打ってやる。

私にとって比企谷は今までで一番手のかかる、見ていて面白い生徒だったよ。こ、こんなもんかな。因みにプレゼントはなりたけの株主優待券だ」

 

そう締めくくり先生は俺にチケットを渡す。

 

「はい、ありがとう…ございます。先生は75点で」

 

俺は目をこすり先生を見つめる。すると気まずくなったのか、顔を赤くして捲し立てる。あんた、彼氏いるんだろ…。

 

「…どういたしまして、私からはこんなもんだな。次は…一色だったな」

 

俺から目を逸らし先生は一色の方を向く。それとともに俺の目線の一色の方へと向く。

 

「はいはい、可愛い後輩の出番ですねー。えっと、先輩には先にプレゼントをあげようと思います」

 

そういって一色は背中に隠していた箱を俺の前に出す。それは包み紙で綺麗に包装されていた。かなり手が込んでるな。

 

「私からはメッセージが書いてある手紙とミサンガ、あとブレスレットです。ミサンガには先輩の合格祈願を願いましたし、ブレスレットは…利き手じゃない方につけていて欲しいです。できれば学校でも」

 

「それは無理だが…まあ、家でなら付けておく。せっかくもらったもんだからな、大切に使う」

 

「ありがとうございます!では、私の気持ちを…」

 

箱を俺に渡しながら、話を切り出す。その後、一色は一息ついてから喋り出した。

 

「まず、ミサンガは白と青と差し色で黄色を使って作りました。ミサンガの白には、健康と落ち着き。青には仕事と勉強。黄色には金運と勉強、向上に平和といろんな意味があるらしいです」

 

一色はここまで考えて作ってくれたのか…俺のためにここまでしてくれた人は今までにいなかっただろう。一色が自分の部屋でスマホを弄りながら必死にミサンガを作っている風景が容易に想像できた。

もっとも、一色の部屋がどんな感じなのかは知らないし、服装もどんなのか知らないからそこは妄想だ。

 

「つける場所は利き足の足首にしてくれますか?友情と勝負運が上がるらしいです。勿論、先輩には受験という大きな勝負に勝って欲しいとは思っています。と、同時にここにいる人たちと友情を築いて欲しいとも思っています。これが、今の素直な気持ちです。嘘偽りはありません」

 

そう言った後、照れ臭そうに微笑む。素直に嬉しい、一色にとって俺はどんな存在なのだろうか。たまに考える時もあった。その度におれはへこんでいたのだが…今なら、嫌われてはいないだろうなと確信できる。

 

「ありがとな、75点」

 

「はあ、小町ちゃんには勝てませんか」

 

「比企谷くんに関しての優先順位のトップは間違いなく小町さんよ。そこは諦めるほか無いと思うわ」

 

雪ノ下に言われるのは癪なのだが合っているので何も言い返せねえ。そう悔しがっていると、一色が近づいてくる。

 

「せーんぱい♪責任、取ってくれるの、待ってますから」

 

…ずるい、これはずるい。一色は俺を普通に呼んだ後、耳元で色気を纏った声で甘えるように言ったのだ。全く、けしからん。誰だね、一色いろはくんにこんな技教えた人は。出てきなさい、千円あげちゃう。

 

「くっ…点数変更、80点」

 

「んふふ、平塚先生よりかは上になりましたよ!!」

 

一色がドヤ顔で平塚先生の方を向いて告げる。平塚先生はどこが清々しそうな顔をしてる。なんで?そんな先生は置いておくことにして…次は…大志か。

 

「お兄さん!俺からはこれっす!」

 

「ん、なにこれ」

 

大志から貰ったのは…合格祈願の言葉が彫られていた特注だと思われるシャープペンシルだった。

 

「お兄さんはお兄さんが信じる道を行けばいいと思うっす。お兄さんの事は、去年の姉ちゃんの1件から尊敬してるっす。これからも、俺とは知り合いでいて欲しいっす!」

 

「そか…それは、あれだ。知り合いだけでいいのか?」

 

顔を逸らしながらそう伝える。

今ならこいつを、こいつらを信じられる。そんな気がした。一色に後押しされたからも勿論あるが、それ以上にこいつとならいい関係を作れるんじゃないかなと思ったのだ。ただのカンだけど。

何の返事もないので逸らした顔を戻す。すると、そこにはニカッと笑った大志がいた。

 

「これから友達としてよろしくっす。八幡さん!」

 

「はあ、調子いいな。お前」

 

苦笑しか出来ねーよ、アホ。

俺の心境の変化に驚いたのか、ほかの奴らは固まっている。そんなに俺が友達を求めるのが珍しいか。悪かったな。次だ、次。恥ずかしくてやってらんねえよ。

 

「次は僕だね。八幡、僕からは何も言わない。これからゆっくり伝えていきたいと思ってるから…でも、1つだけ頼みがあるんだ」

 

「ん、なんだ?」

 

「僕とも友達になってくれる?八幡が辛そうな時はそばにいてあげる。八幡が嬉しそうな時は一緒に笑ってあげる。僕も…八幡と友達になりたい。純粋に、そう思った」

 

微笑んでいた戸塚だが途中から真剣な表情になる。ふっ、さっきは冗談でぼっち卒業とか言ってたが、本当に卒業する時が来たかもな。

 

「そんなもん、当然だろ。これからもよろしくな、戸塚」

 

「もう…僕は八幡って呼んでるんだから、八幡も名前で呼んでよ!」

 

頬を膨らまして言う。かあいいなあ。

 

「あ、ああ。彩…加。っと、83点」

 

そういうとにっこり笑ってくれる。とつ…彩加には色々お世話になったし、これからもお世話になるだろう。これからもよろしく、もう1度心で伝えて次を待つ。

 

「ああ、次は俺ですか。比企谷先輩、どうぞ」

 

そう淡白に言って、俺に箱を差し出してくる。

 

「中身はグラスなんで取り扱い注意ですよ。比企谷先輩、今でもちょくちょく部室に遊びに来ますよね?1人では来ませんけど…。その度に姉貴の心配するとこ、俺結構好きですよ」

 

「何やってるんですか、先輩。ちょっと引きます」

 

悪かったよ、だって気になるじゃん。数少ない知り合いの身内とか俺にとってどんだけレアキャラか分かってねぇだろ。

 

「まあまあ、落ち着けよ姉貴。俺は姉貴も大切ですし比企谷先輩のことも、言葉を借りるなら、嫌いではありません。ぶっちゃけお義兄さんと呼ぶ日を今か今かと待ち構えてるまであります」

 

「な、ななな何言ってんのはやて!?」

 

一色顔あっか。俺顔あっつ。何言ってんだよ、ほんとに…。由比ヶ浜と雪ノ下からの目線が怖いよぉ。ふえぇん。

 

「大学に行ってもこっちから無理矢理連絡とるんで、これからも何卒宜しくお願いします」

 

「お、おう。そうか、まあなんだ、お前とは話がよく合うからな。こちらこそよろしく頼むわ。78点」

 

「せ、先輩…」

 

一色がすげえこっち見てんだけど。え、なに、怖い。い・ろ・は・す、怖い。でもなんか雰囲気的にそんな怖くないんだけど。まあいいや、次行こう。

 

「次は私かな?」

 

「そうですねえ。ではでは、結衣さん。どうぞ!」

 

何やらすごくもじもじしてるんですけど、何この子可愛い。流石にここでトイレの場所を教えるほど鈍感ではない。

 

「え、えーっとね、ヒッキー…。私、ヒッキーに出会って自分をかなり変えられた…と思う。去年の春に奉仕部に行った時には、何でヒッキーこんなに喋るんだろうって思った。去年の冬にはどうしてあんなに甘えさせてあげてるのか、手伝ってるのかって嫉妬した。だからね、私諦めることにした。それで、ヒッキーの一番の女友達になっていろんな事をこれからも話していきたい。そう…思ったの」

 

そうやって一言一言大切そうに話す由比ヶ浜の目には涙が溜まっていた。え、ちょ、なんで?八幡わかんない。

 

「私からのプレゼントはね、2人のうちのどちらか1人。私はこの気持ちを忘れることは出来ないけど、それでも、小町ちゃんと一緒でヒッキーの味方だよ。応援してる」

 

そういって可愛らしい泣き笑い顔を見せた由比ヶ浜。暗喩が沢山あったが、ここまで来ると想像はつく。それに、小町の部屋でもなにか話していたはずなんだ。ここに嘘偽りはないのだろう。

 

「へへへ、ヒッキー。私から2つお願いしてもいい?」

 

「あ?ああ。なんだ?内容による」

 

「最後に…頭…撫でて欲しいな。それと、友達になりたい、結衣って呼んで?」

 

難易度たっかいなぁーー!!!!そう頭の中で悶絶しながらも顔はクールを保つ。さて、どうしようか。

由比ヶ浜は由比ヶ浜なりの答えを選んだ、ならば俺も…。

 

「そんなことか、2つ目はまだ難しいから。これから慣れていく」

 

由比ヶ浜の頭に手を伸ばす。こいつの髪さらさらだな、ピンクがかったこの茶髪も染めていないんだな。こいつのお母さんは普通の茶髪なんだけどな。

 

「あり…がとね。ヒッキー」

 

少し涙声だったが俯いていたから泣いているか分からない。俺は見ていない、由比ヶ浜の服にある水の跡なんて、見ていない。

これは由比ヶ浜のためなんだ。そう言い訳して手を離す。

 

「はい、終わり。84点。ほれ、自分の席に戻りな」

 

「あ…うん」

 

さて、次は川崎か。

 

「はい、これ。まあお金そんなかけたくなかったから手作りだけど」

 

「おお、ハンカチか。こりゃ有難い」

 

「ふっ、そう言ってもらえてよかったよ。私もあんたのこと嫌いではないよ。こんなもんでいいか」

 

「75点で」

 

やけに率直かつ早いことで・・・いやまあね?聞いてるこっちとしては楽だからいいんだけどね。

 

「では私が最後のようね。あなたの為にお金を使うなんてとても屈辱だったのだけど由比ヶ浜さんがどうしてもというから買ってきたわ」

 

「お前相変わらず由比ヶ浜に弱いんだな」

 

百合百合しいんだよ、見てたこっちの身にもなってみろ…ったく。ほんとこいつは由比ヶ浜LOVEだな。

 

「え、ええ。だって、由比ヶ浜さんは…その…友達だから」

 

反撃してやる。今までの恨みを晴らすべく俺は彩加に声を掛けた。平静を取り繕って、冷静に…。

 

「なあ、彩加。たしか友達は下の名前で呼び合うんだよな?」

 

「…うん。そうだね、雪ノ下さんも由比ヶ浜さんのこと下の名前で呼ばなきゃ」

 

俺の意図を汲み取ってくれた彩加からの援護射撃!雪ノ下は5のダメージを受けた。

 

「そ、それも一理あるにはあるけれど私は…その…恥ずかしいからその要求は拒否するわ」

 

「へえ、俺も彩加って呼んでるのに、お前は出来ないってのか?」

 

我ながら安い挑発である。だが、こんな見え透いた挑発に乗るのが雪ノ下である。まじチョロイン。

 

「比企谷くんからの挑発を受けるのは癪なのだけれど、あなたに負けるのは癪を通り越して嫌だわ。それで、結衣…さんでいいかしら?」

 

「ゆきのん…」

 

由比ヶ浜めっちゃ目キラキラしてんじゃねーか。このまま百合百合しちゃったら話進まないよ?てか今も進んでないよ?

 

「話が進まん。雪ノ下、さっさと言ってしまえ」

 

「わ、分かりました。比企谷くん、いいえ友人とするなら八幡と呼んだ方がいいかしら」

 

雪ノ下はそう言った。いやいや、待て、待つんだ雪ノ下。

 

「比企谷でいいわ。話続けろ」

 

「そう。では比企谷くん。私からのプレゼントはこれよ」

 

「はあ、最近出てきてる写真のデータをスライドショーしてくれるあれか?」

 

なんでこんなもん俺に渡すんだ?写真のデータとか小町と彩加くらいしかないぞ?あとは今日、強制的に入れられたプリクラのやつくらいだわ。

 

「『なんでこんなもん渡すのか。俺が写真全く持ってないこと察しろよ』みたいな顔してるわね」

 

「流石、ユキペディア。よくお分かりで」

 

「1年間あなたの相手をしていれば分かるわ。捻くれているから心境も逆に読みやすいし。あと、その呼び方やめなさいと何度言えば分かるの」

 

さいですか。ではあれですか、俺の心は筒抜けなんですね。分かりました、これからは無心で行動します。

 

「それで?何故わざわざ分かっときながらこれをくれるんだ?嫌がらせか?」

 

「違うわよ…今ないならこれから撮っていきなさい。平塚先生からの依頼の続きよ」

 

「ああ、あの人格矯正の話か」

 

あれ、まだ続いてたの?というかそれ言ったら結局バトルロワイヤルの決着ついてないし。

 

「幸運にも今のあなたには川崎さんの弟さんと戸塚くんと結衣…さんという友達がいるでしょう?平塚先生もあなたの大切な人なのだから、そんな人たちとの写真を増やしていきなさい」

 

「はあ、よくこのタイミングでそんなこと思い出したな」

 

逆に当事者である俺が忘れてんのに、なぜ雪ノ下が覚えていたんだよ。謎だよ。

 

「ええ、結衣さんから後押しされてしまったら後には下がれないわ」

 

うっかり勘違いさせんなよ。一色も、なんでそんなに頬を膨らます。やめなさい、あざといから。

 

「比企谷くん、私はあなたが好きです」

 

「……は?」

 

クールにいけ、比企谷八幡。大丈夫、ノープロブレム。問題ない、これはどうせLIKEの方だ。雪ノ下がLOVEの方の感情を抱くなんて、明日は雪が降るぜ。雪ノ下だけに。

 

「嘘偽りはないし、ここで証拠を見せてもいいのだけれど…流石にみんながいる前ではしたくないわ。勿論比企谷くんがすぐに答えを出せないのは分かってるわ、それでも私も欲しくなったの。本物を…。だから、抜けがけのようになってしまったけれども改めて言わせてもらうわ」

 

「おっとぉ!これは意外な急展開!!どうするの?お兄ちゃん」

 

小町が器用に小さい声で俺だけに聞こえるようにいう。いつの間に移動してきてんの、いろはすくらい怖いわ。

 

「私、雪ノ下雪乃は、あなた、比企谷八幡のことが好きです」

 

そう言った瞬間に顔を赤くし顔を背ける。何それ、可愛い。うっかり惚れちゃうだろうが。

 

「そ、そうか。すまん、俺はすぐに答えを出したくない」

 

「分かってるわ。あなたがヘタレなことくらい」

 

「そりゃどーも。85点」

 

小町と同レベルなんて名誉なことだぞ。誇りに思え。

 

「ではでは…結果発表!」

 

「1位が85点で比企谷さんと雪ノ下先輩なので…どうなるの?」

 

「賞品は…小町と雪乃さん、2人ともに与えられるという事ですね!」

 

はやて…お前なんだかんだで楽しんでるだろ。めっちゃくちゃ優しい笑顔になってんぞ。

 

「なあ、一色。はやては小町のこと好きなのか?」

 

「んー、多分そうだと思いますよ?家にいる時の話題の1割は小町ちゃんでほかの女子の話は一切しませんから」

 

「ほお、はやてか。大志よりは頼りになるな…」

 

「なんか複雑な気分です…」

 

というわけで、小町プレゼンツのヘンテコ企画も終わったことだし。お開きにしよう。

 

「私の車には私を入れて5人しか乗れないぞ?荷物もあったからレンタカーをとってきたがこんなに遅くなるとは思ってなかったからな」

 

家の前の見慣れない車はあなたのでしたか。そりゃまあこの中で免許持ってるのあんたくらいだろ。若しくは校則を無視して由比ヶ浜がとってるか。

 

「川崎と由比ヶ浜、あとは戸塚…あと1人はまあ、川崎弟でいいか」

 

「はーい」

 

片付けを始める。みんな黙々とやっていながらも暖かい雰囲気が流れている。これが俺の欲しかった『本物』のひとつの形かもな…とか柄にもなく思った。

30分かけて片付けを終わらした頃には既に10時を回っていた。平塚先生はさっき言った人達とかえったのだが。

 

「問題はお前らだよなあ。どうする?」

 

「帰るに決まっているでしょう。そこまで迷惑をかける事は出来ないわ」

 

「姉貴には俺が付いていくんで、比企谷先輩は雪ノ下先輩送ってってくださいよ」

 

やだ、めんどくさい。それ俺が帰ってくるの11時回るし金も使いたくない。

 

「めんどくさいしやだ。おまえら今日は泊まってけ、一色と雪ノ下は小町の部屋で寝ろ。はやては俺の部屋だ」

 

「ほえー、まさかお兄ちゃんが小町より先にそれを言うとは…およよ、お兄ちゃんが妹離れしていくよ」

 

「馬鹿野郎、俺の一番は小町だ。何年経っても変わらん…多分」

 

「小町ちょっと心配だよ…では、小町はお風呂を沸かしてきますので。お兄ちゃん、布団よろしくね」

 

へいへい、わかりやした。渋々2階へと上がる。押し入れから布団を1セット出しては部屋に運ぶ作業をする。つらたん、暑い。汗かいたった。

 

「先輩、何か面白い話してください」

 

リビング入った瞬間にそんな事言う後輩。馬鹿じゃねーの、俺に面白い話を要求すんなよ。

 

「無理だ、お前ら3人で話してろ」

 

「比企谷先輩ノリ悪いですね…雪ノ下先輩、あと姉貴」

 

「何かしら」

 

「何?」

 

嫌な予感しかしねえ。やめて、はやて。リズム作ったからこれで許して。

 

「結局、比企谷先輩が誰のこと好きか。気になりません?」

 

「ばっ、お前予想以上にひどい話振りやがったな」

 

「何それ、小町も気になる」

 

どわぁ!いつの間にいたんだよ、お前。普通にびっくりしたわ。ちょ、何ですか。こっち見ないで。恥ずかしいからやめて!

 

「答えが出せないと言われてましたよね、雪乃先輩。それってつまり公衆の前で断るのかわいそうっていう先輩なりの優しさですよ、多分」

 

「一色さん、彼のことを語るにはまだまだ一緒に過ごした時間が短いと思うのだけれど。少し調子に乗ってないかしら」

 

やめて!仲良くして!下組が手取り合って震えてるから、怯えてるから!

うーん、こうして見てると大志には悪いがやはりはやての方が任せられるんだよな。

こんなくだらない(俺にとっては)ことをしながら過ごせばもう既に日を跨ぐ時間になる。

 

「そろそろ寝ようぜ、俺もうねみぃわ」

 

「そうね、一色さん、小町さん先に行きましょう。待ち伏せされないようにね」

 

「待ってくださいよ、雪ノ下先輩。先に行くとストーキングされますよー?」

 

「「あんたら俺、のことどう思ってんだよ(思ってるんですか)」」

 

こんな話してるから寝れねーんだろうが。腰を上げるとはやても腰を上げる。先に行ってしまおう。部屋に入り、念のため鍵をかける。

 

「楽しかったですか?比企谷先輩」

 

「まあまあ、だな」

 

クーラーをつけながらそう答える。

 

「そうですか。もう遅いですし、ボーイズトークとか需要ないですから寝ましょう」

 

そういいながら微笑むはやて。お前絶対『捻デレ来たwww』とか思ってんだろ。

 

「ああ、おやすみ」

 

彩加とデートして雪ノ下さんに会って3人でいろんな所回って帰ってきたらみんながいて俺のためのパーティを開いてくれた。小町の変な企画が炸裂して支離滅裂だよ。みんなのキャラ崩壊してたよ。

 

でもまあ、あれだ。

 

こんな青春を送るのは間違っていない。




長かった…どっちも5桁分文字あるよ。

よくよく見る『書きたいと思ったことが多すぎて進みませんでしたー』っていうのを実感した。

次は9月最後の葉山のストーリーを書くつもりですが…BLにはしないよ?耐性はあるけど自ら書こうとは思わないから。

では、次は連載中の作品若しくは葉山の誕生日に会いましょう。
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