地元の弁当屋の店長はどうやら元死神の給仕長だそうです。 作:すくのすくお
昼食分の弁当を売り捌いた万里は、愛用のスクーターで隣町の卸売市場へ行った帰りに顔馴染みである[浦原商店]へと訪れていた。
スクーターを店の横の邪魔にならないスペースに停め、貴重品の入ったカバンを持つ。新鮮な食材が大量に詰め込まれた発泡スチロールの箱は荷台にしっかりと乗っていることを確認し、店の中へと向かう。
「ようこそいらっしゃいました、万里サン。今日は何か御用で?」
「いや、隣町に買出しに行ったついでに何となくね。……そうだ!折角だから何か作っていこうかい?今晩の献立に一品、逸品を追加したげようかなってね」
「おお!それならテッサイ、厨房を料理しやすいように少し片付けといて下さい」
「承知しました。雨、ジン太、手伝って下さい」
「え゛えーー……でも久々に百川のおじちゃんの料理が食べられるんなら手伝うよ!」
賑やかな浦原商店の個性豊かな面々を見ながら、浦原と万里は近況報告の交換や雑談、虚の出現状況等を話し合っていた。
「そういや万里サン、アタシの悪いカンと言うか第六感が告げてるんですけど……」
「おっ?近々俺の身に何か起こっちゃうのかな?宝くじで5000円位当たるとか?」
「いや、そんなもんじゃ無いです。上手くは言えないんですけど……'アタシらの運命'が大きく変わる気がするんですよ」
何やら不穏な空気を醸し出している浦原とは対照的に、台所の方からドタバタと音を立てて走ってきたのは赤い髪のガキンチョ……もとい、ジン太だった。
「台所の準備は出来たぜ!さあ、何か作ってくれよ!」
「元気な子供は良いねぇ!よし、今日はそうだな……なめろうでも作るとするか。浦原くーん、このアジ使って良いかい?」
「使って大丈夫っスよ。それじゃジン太、我々は他の事をしてましょう。」
冷蔵庫から取り出したのは刺身用のアジと白ネギ、ミョウガ、長ネギ、キュウリ、玉子。調味料棚からは醤油と調理酒、白ゴマを取り出した。
アジを始めとした食材を一旦粗く刻む。ザクザクと心地よい音を立てる食材達は微塵切り一歩手前程度に切られると、まな板の中央に寄せ集められる。
彼は包丁をもう1本取り出すと、二刀流の剣士であるかのように二本の包丁で食材を細かく刻んでいった。
タカタカタカ……とした包丁の音が作っていて気持ちいいこの料理。ある程度刻み終わると器に入れ、調味料を混ぜ込む。
素材の味を消さず、かといって味が薄いわけでもないベストな味付けが完了すると、仕上げに卵黄を綺麗に載せ、白ゴマをパラリと振りかける。
野菜多めで夏バテ予防にもなる万里特性のなめろうが完成した。これ位なら夕食の小鉢程度にはなるだろう。
「や、浦原くん。特性なめろうが完成したよ。今はラップして冷蔵庫の中に入れてるからね。………マズイ!時計を見るのを忘れていた!急いで帰らないと楽しみにしてた番組[金腕奪取]が始まっちゃうじゃないか!」
「それは大変っス!今日は特番だった筈ですよ!ささ、お早目に帰った方がいいっス!なめろう、ありがとうございました!」
「言ってくれたらいつでも作ったげるよ!それじゃ、失礼します!」
旧型のスクーターで出せる全速力の速度で自宅[千鳥苑]へと向かう。道中、他の生徒よりもどことなく白さが目立つシャツを着た四角のメガネを掛けた青年[石田雨竜]を見かけたので挨拶を掛けておいた。彼はどうやら一人暮らしのようで千鳥苑には常連だったからだ。
「や、雨竜くん。学校お疲れ様!」
「ああ、万里さんか。ご苦労様です。すみません、今ちょっと急いでるんで!」
「何かあったのかな?……ってかそれよりも早く帰らないと!」
そんなこんなで千鳥苑にたどり着いたのは[金腕奪取]が始まった2分後だった。たかが2分、されど2分。彼は少しだけ残念な気持ちになったがすぐに気持ちを切り替えて売れ残りの弁当をつつきながらテレビを見ていた。
夜になり、翌日の弁当の具材の仕込みをしていた彼は調理酒とだし醤油が残量が少なくなっていたので追加の買出しに行く事にした。カバンの中には財布とスマホと買い物メモを入れて。そして大きめの上着とその中に隠す様に彼の斬魄刀を持ってスクーターに跨った。
夕方に浦原から聞いた情報によると、ここ最近中型の虚が出やすいとの事だったので、行く道中でもしそれと遭遇したら退治してやろうと思ったからだ。
スクーターを飛ばしていると、[黒崎医院]の近くで大きな音がした。ただの大きな音なら問題は無いのだが、その音の種類が明らかにおかしかったのだ。コンクリートが砕けるような音。そしてそれに混ざって子供の悲鳴も聞こえる。
急がねば。彼は進行方向を音の発生源へと替え、夜風をその身で切り裂きながら全速力でその場所へと到着した。
そこでは、魚のような顔をした中型の虚[フィッシュボーン]が黒い髪の少女を掴んで振り回し、もう片方の手で栗色の髪の少女を追い回していた。
「キシャアアエアアアア!!」
「きゃぁぁあああ!!助けてぇぇぇ!」
彼は貴重品のカバンと一緒にスクーターを乗り捨て、片手に斬魄刀を持って走り出した。虚が栗色の髪の少女を突き飛ばす。少女はうずくまっていて動けない。虚が止めをささんと近づき、腕を振り上げる!
―――待ちな、虚くんよぉ。
虚と少女の間に飛び込むようにして割り込んだ万里は、斬魄刀を鞘から抜かずに虚を翻弄していた。
攻撃をしようにも、もう片方の手で握られている少女に当たることだけは絶対にあってはならない。万里が悩んでいると、先ほど突き飛ばされた少女がふらふらと立ち上がった。
「そこの君!誰でもいい。すぐに助けを呼んでくれ!」
「う、うん……一…護……お兄ちゃん………」
「行った…か。幸いと言ってはナンだか捕まっている方の少女は気を失っているか…。ならばやってみる価値はあるっ!」
「伝われ、[不還刃(かえらずのやいば)]」
彼がそう言うと、鞘から抜いた斬魄刀を地面に深く突き刺した。そしてそのまま地面を蹴りつける。すると地面から飛び出て来たのは'白く濁った分厚い刀身を持つ短刀'だった。これが彼の始解、不還刃だ。
「食らいなっ!」
「ギシャアアアアア!」
瞬歩で虚の後ろを取ると、袈裟懸けに切りつける。切りつけた傷には大理石の尖った破片がいくつも埋め込まれていた。
彼の斬魄刀の始解の能力は[大理石を自在に操る]。本来ならもっと派手な戦闘が出来る筈だが状況が悪い。
虚が継続したダメージを受けている途中、万里は別の死神の霊圧を感知した。色々深い事情があったりはしないが、後は任せた。といった感じで物陰に隠れ、すぐさま浦原の電話へと今しがたの状況をメールで送った。
物陰から顔を出してみると、そこで虚と対峙していたのは朽木ルキア…確か十三番隊所属の死神だった。その後ろには黒崎一護が居た。何故一護君がいるのか?と思ったがまあ現役バリバリの死神が居るのならあとは大丈夫だろう。と思い場を後にした。
万里が去ったおよそ1分40秒後、運命の歯車は唸りを上げて動き出した事は今の彼には知る由もなかった。
皆様の声援で私の霊圧が保たれています( ´ω`)
コメント等、待っていますので気軽にお送り下さいなm--m
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万里「結局買出しするの忘れてた」