地元の弁当屋の店長はどうやら元死神の給仕長だそうです。 作:すくのすくお
日曜日。休日ともあって弁当屋には驚く程人が来ない。
そんな日は万里は店を閉めて'新たな味の探求'という名のぶらり旅を楽しんでいる。
[千鶴苑]の万里の部屋。少し散らかった彼の部屋には大小様々なリュックサックが置いてあり、壁には有名な観光地のペナント等が飾られている。彼の一番のお気に入りは富士山の登頂記念写真と共に飾られているそこのペナントだ。
「〜〜♪(今日は何処に行こうかねぇ……そうだ、何年かぶりに虚圏に行こう!)」
普通の死神なら寄り付かない、虚の住処である[虚圏]。彼はそこの寂しげな雰囲気が何となく気に入っているのでぶらり旅の行き先候補の1つに入っているのだ。
なら、行く方法はどうするのだろうか?
彼は一応護廷十三隊から脱退した存在なので、'虚圏に行きたいから戻ってきました'とは流石に言いにくい。そこで頼りになるのが十二番隊隊長、涅マユリだ。
以前……とは言っても百五十年程前の話だが、万里が現役で給仕長を務めていた頃、彼は研究で忙しい十二番隊によく出前を運んでいた。その都度色々と見学させてもらったりしていた結果、浦原やひよ里、阿近や中々心を開かなかったマユリとも仲良くなったのだ。
百四十三年前、万里は当時浦原の極秘に作っていた崩玉の初期型試作品の機能、'死神の虚化'の被検体を自分から志願したのだ。それを聞いた浦原はとても驚き、あまり乗り気では無かったが万里が強く志望し続けた結果浦原が根負けして実験するに至ったのであった。
結果はあまり成功とは言えなかった。後の平子達はもう少し安定した状態の崩玉で虚化するに至ったが、万里が使ったのは初期型試作品であるため霊圧・霊体共々至極不安定な状況になってしまったのであった。
だが万里はこのような展開になると予め察していたのか、当時の彼のもてる最高の調理技術と十二番隊の薬剤技術を駆使した特性の丸薬を用意していた為、最終的には幾分かは安定した。
その後、虚としての様々な実験データ等を十二番隊に提供しまくった結果、マユリの(数少ない?)気が許せる相手になった。
場面は現在に戻り、万里は死神時代の衣装'では無く'現世での彼の私服と何ら変わりのない服を身にまとって十二番隊の隊舎まで来ていた。
彼の持っている荷物は斬魄刀と小さなリュック(中には包丁等の調理セット&調味料類)、伝令神機だ。幾ら慣れているとはいえ何が起きるかわからないのが虚圏。荷物が多ければ生存率は相対的に下がってしまう。
「や、マユリくん、ネムくん、久しぶりだね」
「誰だネ、私を君付けで呼ぶのは……何だ、万里じゃないかネ。何か用でもあったのか?」
「ちょっこし虚圏に行きたいんだけど、黒腔借りても良いかな?有益な物とか見つけたらそっちに持って帰るからさ」
「やれやれ、私に負けず劣らず変わった趣向だヨ。ネム!早く準備をするんだヨ!」
「わかりましたマユリ様。万里様、お気をつけて。」
「おーす、それじゃちょいとブラブラしてくるね」
「全く…昔から変わった人だヨ。彼は……」
そんなこんなで万里は見事虚圏に到着したのであった。
真冬のゲレンデと例えるには少々薄暗い、1面真っ白な世界。よく見渡すとチラホラと虚が歩いていたりする。
空気中に濃密な霊子が漂っているので、普段よりも霊力の消費が穏やかかつ力強い。彼は物は試しだと思い、とある事に挑戦してみた。
「伝われ[不還刃]」
彼の斬魄刀の始解の能力、それは[大理石を操る]。即ちどんな形にも自由自在で成形できるのだ。
広大な虚圏の中で1人立ち止まり、大体のパーツを作り、組み立て、組み替えて作っていたシロモノは'バイクのような何か'だった。
形こそ普通のバイクに見えるが、実際には胴体と車輪、ハンドルのみだった。動力は彼の'赤火砲'を断続的に打ち続けその反動で動くという何とも筆舌し難い乗り物だった。
「おおー!これは中々速く移動できるぞ!この案は改良すれば実用化出来るに違いない!……メモっておこうっと」
暫く進んでいた所で、前方に何か人の様な姿が見えた。それも2つ。
「人形の虚かな?とりあえずあっちまでひとっ飛びするか!破道の六十三、雷吼炮!」
赤火砲でチマチマ移動するのが面倒くさかったのか、一気に雷吼炮の反動で前に飛び出す。その速度は思ったよりも素早く、その二つの人影よりも7m程離れた場所に頭から突き刺さってしまった。虚圏の大地が砂地で良かった。
埋まっていて上手く聞き取れないが、万里は砂の中で何処かで聞いたことのある声を聞いた。
「ギ……ギン、コレは……その………いったい何なんだい?遠くの方から鬼道の気配を感じたと思ったらいきなり目の前を人が飛んできてしかも大地に突き刺さるなんて…理解出来ないよ」
「ウチ…愛染隊長がふざけて鏡花水月使って退屈しのぎとばかりに遊んでるんやと思いましたわ……」
そう。万里の見た人影は現在進行形で尸魂界を支配する目標を達成する為に裏で頑張っていた愛染と市丸だったのだ。
次回に続きますm--m
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