地元の弁当屋の店長はどうやら元死神の給仕長だそうです。   作:すくのすくお

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4食目

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―――

 

 

 虚圏のとある場所。普通なら虚が少しばかり彷徨いているだけの空間だが、今この瞬間だけは異様な、とても異様な雰囲気が漂っていた。

 

「なぁ……藍染さん、どないします?」

 

「そう言われてもギン、困るんだが……」

 

 

 藍染とギン(と今は居ない東仙)。いずれ尸魂界を支配しようと目論んでいる彼等だが、突然目の前に人が降ってくるのには流石に心の準備が出来ていなかったのだろう。

 

 

 

「とりあえず、引き抜いてみるとするかい?」

 

「しゃあないなぁ。ホラ、行きますでぇ…っ!」

 

 

 

 

「プはぁ……助かった!………って誰かと思えば藍染クンと市丸クンじゃないか!久しぶり〜!元気だったかい?ご飯はちゃんと食べてるかい?」

 

 

「「…………」」

 

 

「「万里(さん)だった(やった)のか!!」」

 

 

 

 地面からまるでゴボウを引き抜くかのように抜き出し、虚圏の砂地から出てきたのは、ゴミでも虚でも無い、紛れもない元給仕長だったのだ。

 

 

「まぁまぁ、細かい事はともかく、何で君達がココにいるんだい?散歩とか何か?」

 

 

 全体的にとぼけた様子で話しかける万里。だが万里は100年前の藍染達の悪魔の如き所業を知っている。

 

 

 そう。死神の虚化の事だ。(万里の場合、双方の同意があったから問題は無いだろう……多分。)

 

 万里が空座町で弁当屋を開くずっと前の事。ある日突然空座町に大きな霊圧が幾つもやってきた。それが万里と平子達'仮面の軍勢'との接触、そして藍染が彼等に何をしたかを知るキッカケとなったのだ。

 

 

 

「ああ。少し虚の退治をね」

 

「そういう万里さんこそ、何してはりますん?こんな所で…」

 

「少しばかり新しい料理のアイデアが見つからないかな?ってね。例えば小型の虚の活け造りとか唐揚げとかね」

 

「「………」」

 

 

 藍染とギンの2人と長話をすると、精神の隙を突かれて最悪の場合'鏡花水月'を喰らってしまう可能性がある。なので万里は敢えて(若干本気だが)このような常人の発想ではない会話で気を逸らさせているのだ。

 

 

「………藍染さん、今日はいっぺん引き上げましょ。体の力抜けましたわ」

 

「そうだね。それでは失礼するよ。元給仕長さん」

 

「気をつけて帰りなよ〜!」

 

 

 

 藍染一味を見送った万里は、先程破損したバイクもどきに乗り虚圏を爆走していた。先程よりも強固かつ大きく作り直したためか、小型の虚なら体当たりだけで倒せる程のパワーを生み出す程に強くなったのだった。

 

 

 

 暫く進んでいると、広大な虚圏の真ん中に何か異様な物……人間?が倒れていた。万里はすぐさま倒れている人物の下へ駆けつけた。例え死んでいたとしても野ざらしにしておくのは何か可哀想だと思ったからだ。

 

 

 その倒れている人物の近くまで駆けつけ、よく観察してみる。筋骨隆々な体、完璧なキューティクルをもったとても長い紫色の髪、特濃ソースよりも濃い顔……

 

 

 原作を読んだことがある方ならもうお判りだろう。

そう。第2十刃の従属官の1人、シャルロッテ・クールホーンが倒れていたのだった。

 

 

「大丈夫かい!?」

 

 返事が無い。が、辛うじて呼吸は出来ている。

恐らく気絶しているのだろう。万里は横たわっているクールホーンの体を何とか持ち上げ……大理石で作った硬いベッドの上に横たわらせ、その体の上に毛布代わりにと自分のアロハシャツを被せておいた。

 

 

「うーむ……見るからに破面の1人だし、その上強そうだ。いったい何故こんな所で気絶していたんだ……?」

 

 

 ふとクールホーンの丸太のような太股を見てみると、そこに小さな傷跡が残っていた。まさかと思い後ろを見てみると、字面から蠍の尾のような物体が今まさに万里に襲いかかろうとしているところだった。万里は瞬歩でそれから距離を取ると、それは方向転換して万里を狙って近寄ってきていた。

 

 

「動きこそ遅いが一撃でも貰えばあの破面みたいに昏倒してしまうだろうな……距離さえ置けばこっちの物だ!」

 

 万里はそう言うと、左腕を蠍の尾のような物体の根元に向けて鬼道を放った。

 

「破道の五十四[廃炎]!」

 

 

 鬼道が命中すると、その蠍の尾のような物体は燃え上がりながら地面の中へと潜り込んでいった。恐らく虚の1体であると思うが、深追いは辞めておこう。

 

 

 

 その時、万里の伝令神機に連絡が入った。相手は浦原喜助だ。何かあったのだろうかと思い、急いで耳元に伝令神機を当てて話を聞いた。

 

 

「よーす、浦原くん。どうしたんだい?」

 

「万里サン、突然で申し訳無いんすけど……'朽木ルキア'って死神、知ってるっスか?」

 

「ああ、あの朽木家のお嬢ちゃんの事?前に白哉くんの所に出前に行った時に彼が気にしてたけど……その子がどうかしたの?」

 

「その朽木ルキアさんが………大罪人として指名手配になりました。最悪の場合、双極の丘にて死刑となります」

 

 

 

「………は?」

 

「罪状は'一般人に死神の力を無断で贈与した'からと言われてます。でもおかしくないっスか?それだけでは死刑にはならない筈っスよ?」

 

「確かにおかしいな。……よし、急いで現世に戻る事にするよ。明日の夜に浦原商店で話し合おう」

 

「了解っス。それではこちらでも色々調べておきますんで」

 

 

 

 

 電話を終えた万里は、来た道をそのまま戻って現世へと帰った。

 

 

 

――――翌日の食材の仕込みを忘れている事なんて、今の彼は知る由もなかった。




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