地元の弁当屋の店長はどうやら元死神の給仕長だそうです。 作:すくのすくお
浦原商店の人々と一護達を招いた鍋パーティー。
美味しい一時はあっという間に過ぎていき、時間も9時を過ぎた。
「さぁ、皆さんのお腹も膨れてきた頃でしょう。後片付けは店のほうでやっておきますんで、そろそろお開きにしましょうか」
一同が口々に「ご馳走様でした」「美味しかったです」と良い、店を出ていく。鍋パーティーの後半は例によって飲み会となってしまう筈だが、生憎今日は高校生達が目の前に居るので少しだけにしておいたようだ。
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10時を過ぎた。浦原商店の面々はジン太とウルルがつぶれてしまったので既に帰ってしまい、それに合わせて茶渡と織姫が帰宅した。
現在店内に居るのは一護とルキアと石田、そして汀華と万里だ。
汀華を含む高校生組は4人で会話に花を咲かせていて、万里はその会話をBGMにして厨房で食器を洗っていた。
暫くすると石田が「それじゃあ、少し家ですることがあるから帰らせてもらうよ」と言ったので快く見送り、その流れで一護とルキアも帰りはじめた。
「万里さん、今日は本当にありがとうございましたっ!」
「懐かしい顔に会えて良かった。ありがとう」
「皆が俺の料理を食べて美味しい顔を見せてくれる。それだけでこっちも満足だよ。……てーかちゃーん!見送ってあげなさいな」
「はーい!それじゃ一護君にルキアさん、私も途中までついて行くね?」
「おう。ありがとな、雨宮」
「礼を言うぞ」
万里は3人を見送ると、すぐに厨房に行き鍋を洗い始めた。
大鍋が3つに取り分け皿が24枚。普通なら食洗機に入れておしまいの人が殆どだが、万里は食洗機と言ったものがない尸魂界で、毎日50枚以上の皿をとても早く洗わなければならない過酷な環境に居たので彼にとっては慣れっこであった。
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所変わって一護達3人は夜の空座町を歩いていた。
3人は宴会場で話していた話題の続きを楽しんでいた……が、事件は突然起こった。
ルキアが突如何かを感じとったのか、一護と汀華に
「す…済まぬ。少しばかり急用が出来たので別のところへ寄らせてもらうぞ。2人はまっすぐ家に帰って、決して外へ出ないでほしい。絶対に付いてきてはならぬぞ。良いな?」
「お、おう……早目に帰ってこいよ?」
「そっか。じゃあ、また明日ねー!」
「また……明日な」
どこか影を感じる表情を見せたルキアは名残惜しそうに呟くと、どこかへと駆け抜けて行った。
どこか様子がおかしい……と思いつつも一護と汀華はそれぞれ別れて帰宅した。
途中まで送っていく、と言っていたが結局別れた場所はクロサキ医院のすぐそばだったので汀華は長い夜道を1人で帰らざるを得なくなった。
夜道に女子高生が1人で歩く。常識のある皆様には'危ない''心配だ'と思われるでしょう。
だが、彼女を甘く見てはいけない。
両親を亡くしてから、汀華は部活動は勿論のことスポーツを習うことすらさせて貰えなかった。それでも何か自分のためになる事をしたいと強く願っていた彼女は'ランニング'を始めた。最初の頃は少し走っただけでへばっていたが、高校生になるまでの間は家に'自分の居場所'が無かった為、毎日欠かさず延々と走っていた。
更に、高校生になってから同じクラスの'有沢たつき'といったクラスメイトに家庭問題を心配されながら足技を教わり続けた結果、'脚だけなら日本一強い'と評判になったりした。
………それにも関わらず、家庭問題は解決されずに悪化してしまったのだが。
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毎日万里の心のこもった料理を食べて順調に体力が回復している今、汀華の走る速さは長距離・短距離共に下手なアスリート程はあった。
「ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
走って千鶴苑へと向かう最中、彼女は今まで感じたことの無い感覚を感じた。所謂、霊圧のことである。
「なに……っ!?この感じ………一護君とルキアさんの雰囲気と同じ………っ!」
このまま'気の所為'と片付けて真っすぐ千鶴苑に帰る選択肢もあった。
疲れのせいとも考えることもできた。
怖い。怖い。あそこに行けば後悔する。
時々ふわっと見える変なオバケがいるかもしれない。
―――それでも、彼女はその霊圧の発生源へと全速力で駆け抜けていった。
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霊圧の発生源へと到着した汀華を待っていた光景は、今まで普通の、オカルトなど関係の無い生活を送ってきた彼女には全く理解出来ない光景だった。
腹部を切り裂かれたのか大量の血を流す石田。
大きなノコギリ状の剣を構えた赤髪をした黒い和服の男。
それと対峙する傷を負った一護。
その様子を怯えたような目で見るルキア。
そして先程からそれを冷たい目で見るマフラーを巻いた男。
「い……いったいどうなってるのよ!石田くん!一護君!何をしているのよ!」
「に………逃げろ……汀華っ……!」
一護が肩で息をしながら応える。
だが、そこで逃げる程汀華は薄情では無く、またそこで何もしない程汀華は臆病では無かった。
「私の友達をやったのはアンタ達なの……?」
それに応えたのはマフラーのような布を首に巻いた男だった。
「一般人には関係の無い話だ。今なら記憶を消して無傷で逃がしてやろう……」
「アタシは'アンタ達が私の友達をやった'のか聞いているのよっ!!」
「………そうだ。大罪人を捕縛する為、邪魔者を消しているだけの話だ」
ブチッ
汀華の中で何かが切れる音がした。
居場所が無かった自分を認めてくれ、仲良くしてくれていた友人。
その友人が命を狙われている。1人は重傷だ。
ならば私に出来る事はただ一つ。
今度は私が助ける番だ。
神様、どうか私に彼等を救わせてください。
汀華がそう決意した時、彼女の足元……靴が陽炎の様に揺らめいたと思った瞬間、ブラックダイヤモンドとクリスタルを思わせる2色の結晶へと変貌を遂げた。
「[クリスタライズ・テンペラチュア]。アタシに力を貸して」
その場にいた全員が汀華の方を驚いた目で見る。薄暗い夜闇の中に浮かび上がる淡い光。
突如、能力を手に入れた汀華。
彼女の足元から浮かぶ光が照らすものは
―――希望か、絶望か
続きますm--m
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