地元の弁当屋の店長はどうやら元死神の給仕長だそうです。 作:すくのすくお
「て……汀華……っ!?」
「何なんだよ……コイツの霊圧はっ……!」
傷ついた一護を庇うようにして恋次の前に立ち塞がった汀華。彼女の両足は黒と白の結晶で覆われ、ぼんやりと発光している。
「誰だか知らねぇが……邪魔をするなら退けるまでだっ!」
恋次が自身の斬魄刀'蛇尾丸'を大きく振り回し、汀華に斬撃を加えようとする。
「遅いわよ」
だが、汀華の能力'クリスタライズ・テンペラチュア'が彼女自身の元々持っていた脚力を大幅に強化しているのか、蛇尾丸を大きく上回った速度で一気に恋次に肉薄した。
「なっ……コイツっ……!?」
「一護君達の痛みを味わいなさい!'ブレイズスラップ'!」
汀華の足の黒い結晶が紅く輝いた。その瞬間、汀華は恋次の腹部へ向かって強烈な蹴りを叩き込んだ。
「グハァッ!?ち……畜生………っ!」
数メートル先に吹き飛ばされた恋次は、口から血を吐き出しながらすぐさま反撃しようとする。だが、蹴られた場所に違和感が感じられた。
「うおおおおっ!?!?熱っつ!!!」
「'ブレイズスラップ'は蹴りが当たった場所の温度を一気に高めるのよ。さあ……燃えろ!」
「くそおおおおおおおお!!」
汀華が宣言した瞬間、発火点まで達した恋次の皮膚が燃え上がった。
「人間風情が、図に乗るな。散れ、[千本桜]」
「きゃああっ!!」
炎に包まれた恋次を千本桜で起こした風でかき消し、そのまま汀華を攻撃する。
幾ら副隊長を圧倒したとはいえ、能力を手に入れたばかりの人間が隊長格の始解に対応できる訳がなく、身体中を切り刻まれてしまった。
血溜まりの中に倒れ込んだ汀華。後ろで何も出来なかった一護は彼女の名を呼び続けたが、返事が帰っては来なかった。
「畜生ーーーっ!」
白哉に切りかかろうとする一護。だが、それを止めたのはルキアだった。
「なっ………!?」
「兄様。私は目が覚めました。どうぞ私を連行し、その罪を死を持って償わせてください!」
「良いだろう。では恋次を担いで付いてこい」
「おい……ルキアっ!お前………!」
「一護よ。…………今生の頼みだ。もう………私と関わるな。………助けようなど、絶対に考えるなよ」
一護の叫びも虚しく、白哉はルキアを連れて尸魂界へと行ってしまった。
「畜生……!ルキアを助けるどころか……石田や汀華までやられちまった………!くそ……もう………意識が………」
雨が降っていた。
護れなかった自分がとても無力に感じられた。
「派手にやりあったぽいっスね……」
「まさかこうなるとは思わなんだからな……治療薬を取ってくるから、一先ずは応急処置をして浦原商店に運んでおいてくれ」
「了解っス。汀華サンの出血が酷いので、なるべく手早にお願いします」
―――雨が止んだ 気がした。
―
――
―――
――――
「うーん……うーん…………はっ!?」
「おや、気がついた様ですな」
汀華はあの夜、浦原商店で鬼道による治療と万里の'とっておきの薬'を使って何とか一命を取り留めた。
「あの……ここは?」
「おや〜♡目が覚めたみたいっスね!ここは浦原商店の中っス」
「あのっ!……一護君と石田君は……?それにルキアちゃんは!?」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。あの夜、後から駆けつけたアタシと万里サンは3人に応急処置を施しました。石田サンは幸いな事に血は出ていたものの当たりどころが良かったのか自分で動ける程度には回復したので、そのまま家に返しました。黒崎サンは死神としての心臓とも言われる機関を破壊されましたが、こっちの方で何とか人間の体に魂魄を戻せたので大丈夫でした。問題は貴女です。生身の人間が流していい量以上の血が流れていたので、万里サンの'とっておきの薬'で止血した後に誠に勝手ながら輸血までさせていただきました。」
「ゆ……輸血!?」
「と言うのは冗談っス♡本当はその'とっておきの薬'で一時的に血液の精製量を増加させたまでっス」
「な、なんだぁ……ってそれよりも!ルキアちゃんはどうなったの!?」
「………彼女は尸魂界へ行ってしまったようっス」
「…………っ!」
汀華が歯を食いしばっていると、隣の部屋から一護の悲鳴が聞こえてきた。
「なっ!?」
「どうやら彼も目覚めた様っスね。汀華サン、先程と同じ説明を彼にもしてくるので貴女はこの薬を飲んでいてください」
「これは……何の薬ですか?」
「なんてことは無い、ただの栄養剤っスよ♡」
「思いっきり紫色してるんですけど………」
―――
――
―
一護と汀華は同じ部屋に集められ、ちゃぶ台を挟んだ向こう側には浦原が座っている。
「お二人方、朽木サンを助けたいですか?」
「当り前だ!」
「勿論です!……でも、尸魂界に行く方法が………」
「無いと思いますか?尸魂界に行く方法……」
「有るんなら早く教えてくれよっ!その方法!」
「良いっスよ。但し、これから10日間、アタシと戦闘の訓練をしましょう。汀華サンには別のプログラムがあるので、それを受講して下さい」
「り、了解です……」
突然、一護が立ち上がって怒鳴った。
「そんな事してる暇なんて無いんだよ!今にもルキアは処刑されようとしてるんだ!」
「わかんない人だなぁ……今のままじゃ君達は一方的に負けるんスよ」
「なっ……」
「今回、貴方達には敢えて彼等と戦わせました。汀華サンの力は予想外でしたけどね」
「私の……能力………」
「あの時は偶々負けただけだ!次やったら勝て「解った筈でしょう?貴方は力不足だ。尸魂界に行っても死にに行くような物なんですよ。」
「クソ………!解った。やるよ、その特訓を!」
――――そして、一護の特訓が始まった。
―――
――
―
空座第一高校。
賑わう教室に少し遅れて入ってきたのは包帯で両手足と胴体を巻いた汀華だった。
「すいません先生、ちょっと坂道で転んでしまって……」
「はーい、怪我しない様に気をつけてねー?」
教室の中……と言っても包帯巻きが一気に3人も出ると雰囲気も少し変わってしまう。
だが、汀華や一護、茶渡や織姫に石田はそれよりも大きな違和感に包まれていた。
ルキアの記憶が自分達を除いて無くなっていたのだった。
万里のとっておきの薬の開発元は十二番隊だったりします