あくまで冒険者やってます   作:よっしゅん

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 いらないシーンとか色々消したり手直ししてたら予定より更新遅れちゃいました。
 今回から全角スペースを文頭に入れてますがどうでしょうか?見やすいですかね?もし見にくかったりしたら報告してくれると助かります。


第13話

 

 

 

「おまたせ。待ったかしら?」

 

「いや、全然」

 

 まるでデートの待ち合わせをしているカップルのおきまりのようなセリフだが、別にデートをするわけではない。

 結局ソフィーが準備を終えるのにかかった時間は一時間。すでに太陽は真上を陣取っており、レジスは小屋の外で待っていたため一時間も日向ぼっこをする羽目になった。

 準備を終えた彼女の格好は先ほどとは全く違い、動きやすそうな服装になっている。そして片手には彼女の身長の半分くらいの長さの杖を握っている。紛うことなき魔法使いって感じの格好だった。

 

「じゃあいきましょっか。未知のお宝が私たちを待っているわ!」

 

 お宝……その単語だけでも察せる人もいるだろう。そう、彼女の仕事とはいわゆるトレジャーハントのことである。

 彼女ソフィーは「ファウンダー」という組織に所属している。このファウンダーという組織も一言で表すなら、トレジャーハンター達の組織だ。

 この世界にはマジックアイテムなるものが存在する。それらの多くはユグドラシルにも存在していたものから、この世界特有のものもある。マジックアイテムは生活を豊かにするものから戦闘などに役立つものも多々あり、それらは、知恵を持つものが自ら作り出す。もしくは発見する。大きくこの二つの要因によってマジックアイテムは初めて使われる。

 前者は言った通り0からマジックアイテムを作ること。そして後者はすでに世界に存在しているものを。ファウンダーは後者の方法によって、世界のあちこちにある主に遺跡などからマジックアイテムを見つけ出し、回収するための組織である。

 もちろん回収したマジックアイテムを組織が独占しているわけではなく、むしろ進んで都市の市場に流したり、マジックアイテムを欲しがるものに取引をしていたりする。つまりは世の中に出回っているマジックアイテムのほとんどは彼らの功績によるものだ。

 要するにソフィーのいう仕事を手伝ってというのは、一緒にトレジャーハントしてくれという意味だ。

 

「それで、今回はどこに行くんだ?」

 

 そういえば重要な目的地について聞くのを忘れていた。場所によっては目的地に行く前に都市などに行って色々と買い込まなくてはならない。食料とか、着替えとか、食料とか、食料とか。……決して食べる必要がないとはいえ食事を抜きたくないとかそういうんじゃない。断じて違う。

 

「あら、そういえば言ってなかったわね。ここよ」

 

 ここよ。そう言って彼女は人差し指を地面に向けた。

 

「は?」

 

 思わず声に出してしまった疑問の声。自分は確かに目的地はどこか、そう尋ねたはずだ。そしてその答えはここらしい……

 

「だーかーらー、ここだってば。この山脈にある遺跡が今回の目的地よ」

 

「……ちょっと待て、お前ここに住んでるんだよな?」

 

「ええそうよ」

 

「……遺跡があるって知っててここに住んでるのか?」

 

「住み始めた時はもちろん知らなかったわよ。ほら、ちょっと前に大雨があったでしょ? その時に土で隠れていた遺跡の入り口を偶然見つけたのよ」

 

 なんてこった。目的地に行こうとしたら既に目的地に到着していたとは。

 

「ほら、はやくいきましょ」

 

「あーはいはい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソフィーが今回見つけたという遺跡の入り口はどうやら山脈の麓部分にあるらしく、二人で山降りをすること数十分。何事もなく入り口にたどり着いた。

 

「……なぁ、今更なんだが二人で行くのか?」

 

「本当に今更ね。別に二人っきりで行くの初めてじゃないじゃない」

 

「それはそうだが……ファウンダーから何人か連れてくることもできるだろ?」

 

 遺跡の探索……それを一言で表すとしたらそれは、危険という言葉が合うであろう。何があるかわからない未知の脅威……それは遺跡自体に仕掛けてある数々の罠だったり、そこに住み着いた怪物の類だったり様々だ。そんな遺跡に入るときには多少なりの人数はいた方がいいというのが、トレジャーハンター達の暗黙の了解というものだ。

 一人が遺跡で死んだとしよう。そしたら他のメンバーがそれを情報として外に伝える。すると次にその遺跡に来るときに、ここにはこんな罠がある。ここには近寄らない方がいい。そういった情報網の構築ができる。もちろん他にも理由は多々あるが、間違っても魔法剣士(ミスティックナイト)魔法詠唱者(マジックキャスター)がたった二人で遺跡に入ることは危険しかないのだが……

 

「それは無理ね。だってこの遺跡のこと組織にまだ知らせてないもの」

 

「は?……一応理由を聞いておこうか。なんで知らせてないんだ?」

 

「……手柄を独り占めしたいからよ」

 

 彼女は太陽にも負けない笑顔でそう答えた。

 

「お前な……一応命がかかってる仕事なんじゃ」

 

「守ってくれるんでしょ? 私のこと……」

 

 先ほどとは少し違う笑顔で彼女はそう尋ねた。こう言われてしまってはレジスはもう何も言うことはできない。

 

「……あぁ、守ってあげるよ。お前と私の二人の()()だからな」

 

「ありがとう……大丈夫よ、無茶はしないわ。これは私から貴女への約束」

 

 そして二人は、かつてレジスがソフィーに教えた約束の仕方……指切りをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は何者なのだろうか。ソフィーは遺跡に入って前を先導してくれているレジスの後ろ姿を見ながらそう考えていた。

 彼女を自分なりに一言で表すとしたら、迷いなく真っ白と答えるであろう。今は束ねている長い髪は、解けば腰まで届くくらいの長さ。銀と白の色をちょうど良い感じに混ぜたような色をしていて、老人のような白髪ではなく綺麗な色だ。肌も汚れ物を一度も触ったことがないような白さだ。おまけに細い眉毛やまつ毛までよく見ると白色をしている。噂に聞いたことがあるが、稀に生物は色素を持たないで生まれてくることがあるらしく、彼女はきっとそれに当てはまるのだろう。唯一白くないところで言えば、瞳の色だろう。まるで血が滲んだような真紅の瞳をしている。

 顔立ちも綺麗に整っている。体形も出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいるというまさに完璧な容姿をしている。同性の自分ですらその美しさに見惚れてしまうほどだ。

 名前に関しても、何処かの貴族の生まれであることが推測できるが、出身地を含めて彼女にそれを尋ねたことがあったが、「ここじゃない遠いところ」と言ってはぐらかされるだけだった。

 そして何より驚く事がその強さだ。普段二本の剣を背負っていて、見た目は剣士にみえる彼女だが実は魔法も使え、それも第二位階魔法まで習得しているらしい。もちろん剣の腕も、かの王国戦士長にも負けないほどの腕前をもっているのだ。

 

「……ほんとでたらめね」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

 思わず独り言が溢れてしまったようだ。

 

「ただの独り言よ。ほらほら、ちゃんと罠に気をつけて先導してね」

 

 そう、でたらめである。普通なら剣の技術と魔法の技術両方を会得するのは不可能に近いはずだ。するにしてもどっちかに偏ってしまうはずなのだが、彼女は違った。剣士としての、魔法詠唱者としての強さ両方を兼ね備えている。これをでたらめと言わずになんというのだろうか。

 それだけの強さを持ちながら彼女はあちこち旅をするだけの旅人なのだからなおさらおかしいと思う。冒険者になればアダマンタイト級は確実だろう。どこかの国の騎士か何かに志願すれば確実に良い地位につけるだろう。それなのに彼女は何かに属そうとはせず、あちこちを行ったり来たりしてるだけだ。彼女いわく地位や名声が欲しいわけではないと言っていたが、もう少し欲を持ってもいいのではないだろうかと彼女の友人として私はそう思う。まぁ彼女が望まなくてもこの辺では既に銀狼という名前で名声は得ているのだが。

 

「…………ねぇ」

 

 そういえば最近になって新たに一つ彼女の疑問が増えたのだが、この際だからここで聞いてみることにした。彼女の服の袖を軽く引っ張ってみて呼び止める。

 

「どうした?」

 

「……貴女って歳いくつなの?」

 

 新たな疑問とは、彼女の年齢についてだ。彼女と知り合ってもう十年ほど経つが、自分の記憶が正しければ彼女の外観はまったくと言っていいほど変わってない。寿命が人間に比べて長い森妖精の自分ですら、十年も経てば身長などが伸びたり顔つきが少し変わったくらいなのに。いくら同じ人間種とはいえ、森妖精の自分が成長して人間であるレジスが変わらないなんてことあるのだろうか。それとも人間の成長についての認識が間違っているのであろうか。

 

「なんだいきなり?」

 

 疑問の顔を浮かべる彼女の顔を見てやはり確信した……やはりまったく変わってない。

 

「いいから、いくつなのよ? ちなみに私はこの前で九十六歳になったわ!」

 

「それは……おめでとう?……歳か……」

 

 レジスは顎に手をあてて考えている仕草をとった。自分の年齢を思い出しているのだろうか? 実は自分より年上だったりするのかもしれない。人間にも何百年生きる人もいるらしいからありえない話ではない。

 

「……五十一歳……かな」

 

 なんだか自分の予想とは違って案外普通な……いや普通なのだろうか? 五十歳過ぎれば多少なりとも老いが出てくるはずだと思っていたが……

 

(もしかして人間じゃないとか……? 真っ白な肌に人間離れした強さ。まさか実は吸血鬼の類だったり……あ、なんか納得できそうね)

 

 驚異的な強さ、真っ白な肌、真っ赤な瞳。彼女の特徴的に吸血鬼のそれと結構似通ってる。もし本当に彼女が吸血鬼ならば彼女の謎全てに辻褄が合う。そうと決まればもう確かめずにはいられない。

 

「ねぇ! 口開けて!」

 

「今度はなに……って。は? 口?」

 

 吸血鬼には隠しようのない特徴がある、それは尖った歯だ。血を吸うために発達した吸血鬼の特徴的な歯は、人間の歯とは明らかに違った形をしている。これは下級吸血鬼であろうが上級吸血鬼であろうが人型をしている吸血鬼なら隠しようもない特徴だ。

 

「はーやーくっ」

 

「いったいなんだってんだ……」

 

 文句を言いながらちゃんと口を開けてくれる彼女はやはり良い友人だと思う。まぁ何はともあれこれでようやく彼女の謎に終止符がうてる……だがその答えは予想を裏切る答えであった。

 

「あれ……?」

 

 彼女の歯はいたって普通だった。大きく尖った歯が一本もないどころか、どの歯も白く輝いてみえるほど綺麗に規則正しく並んでいた。

 

「……もういいか?」

 

「え……あ、うん」

 

 彼女はそう言って前を歩き出す。結構いい線いってると自負していたがとんだ見当違いだったようだ。しかし吸血鬼でもないとすると彼女は本当に何者なのだろうか……まぁ彼女が人間だろうと何だろうと今更どうこうするというわけでもないし、それによくよく考えれば彼女のような強さを持つ人間は過去にも何人かいたし前例がないわけではない。ただ彼女は英雄級の強さを持っている、それだけのことだ。

 

「ソフィー、くるぞ」

 

 前を歩いていた彼女が急に立ち止まってそう言ってくる。何が?とは聞かない。何故なら彼女が言うその言葉の意味を既に知っているからだ。

 レジスが抜剣すると同時に自分もいつでも魔法を放てる準備をしておく。

 

「……やっぱりいつ見ても気持ち悪い外見ね」

 

 二人の前方からやってきたそれは、姿形こそ人に似通ってるがとても人だとは言い切れないほど醜い外見。それが目視できるだけ三体はいる。

 人に似ていると言ったがもちろん人ではなく、れっきとしたモンスターだ。正式名称は特にないが、洞窟の中などの地下空間に生息しているため、土人と呼ぶ人が多い。トレジャーハンターの自分にとっては馴染み深いと言っていいほど見慣れたモンスターだ。

 

「それにしてもまだ入り口近くなのにもうこんなにいるなんてね……」

 

 基本的に土人は洞窟や遺跡の奥深くに集まる習性がある。おそらく外の光を苦手としているため、できるだけ奥深くの暗い空間にいるのを好むためと考えられている。そんな土人は地下に生息しているためか、目が退化して視力はないのだがその代わりに聴力が優れている。生物の呼吸音すら聴き取り、それを元に襲いかかってくるため決して油断はできない相手だ。ただ、幸いにも戦闘能力自体はそれ程高くないので油断さえしなければ今更やられることはない。

 

「お前の大声に釣られたんじゃないか?」

 

「失礼ね。そんなに大きな声出してないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 剣に付着した土人の血を剣を振って軽く落とすと息を吐いた。あの後追加で五体ほど奥からやってきて、結局八体を二人で相手にした。まぁこんな奴らが何匹こようと敵ではないのだが。

 

「なんかやけに多かったわね」

 

「やっぱりお前が大声出すから……」

 

「はいはい悪かったわねー」

 

 だが確かにソフィーの言う通り、こんな入り口近くでこれだけの数の土人がいるというのはかなり珍しい。

 

「うーん……」

 

 もしかしたらこの遺跡はそれ程広くないのかもしれない。壁や天井、それに床を見る限り石のレンガ造りになっているところを見る限り人工的に造られたのはわかるが何に使われていたのかはわからない。単に小さな居住区だったのかもしれない。

 

「もしかしたらハズレかもな……って、ソフィー?」

 

 ここにめぼしいものはないのかもしれないと見当をつけて、それを伝えようとしたら彼女がいない。

 何かあったのかも思い、慌てて周りを見回してみると少し先の前方に彼女の後ろ姿を捉えた。少し早歩きで彼女のもとへ向かう。

 

「ソフィー? 一人で前に出すぎるな。何があるかわからないぞ」

 

「……うん、ごめんなさいね。でもこれが目に入っちゃったから気になっちゃって」

 

 ソフィーはこれと呼んだものを指を自分の視界の先に向けた。レジスは指の先を視界で捉える。

 

「これは……」

 

 その先にあったのは、数十体にもおよぶ土人の死骸だった。あたりの壁や床には土人の血とおもわれる赤色の液体が飛び散っていて、周りを染めている。もちろんレジスとソフィーがやったものではない。

 

「仲間割れなんてするやつらだったしら?」

 

「いや、そもそも知力自体が低いから仲間割れを起こすことなんて考えもしないはずだが……」

 

 しかし他にこの状況を説明するとなると……

 

「誰かに先を越されたんじゃないのか?」

 

「それはないわ。ここ見つけてから近寄った人なんて貴女以外いないはずだもの」

 

 他の誰かではないとすると、あと考えられることは……

 

「……だとすると土人以外にもここに何かがいるってことか」

 

 基本的に同じ場所に別の種族のモンスターが共存していることはあるにはあるが、それと同時に争うこともある。お互いにここが自分の縄張りだと言わんばかりに争い、縄張り争いに負けた種族が街道沿いに現れて人を襲うなんてことは多々ある。つまりは、ここで死んでる土人達もまた縄張り争いに負けたのかもしれない。

 

「どうする? 今なら引き返せるぞ」

 

「冗談言わないでよ。こんな事で臆しているようじゃトレジャーハンターなんてやってないわ」

 

 相手が未知である以上、何があるかわからない。ここで引き返すのも手の内だが、やはりと言うべきか彼女はやめる気はないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 未だに文章が安定しないなぁ。とりあえず次の話でソフィーちゃんとのお話は終わる予定で、2章も終盤にさしかかりました。
 本来ならすぐにでも続きを執筆したいのですが、前々から言ってた艦これの小説のほうもそろそろ動かしたいなと思ってるので更新遅くなりますごめんなさい。その代わり小説を執筆する時間を無理矢理にでも作るので更新が止まる事ないようにしたいと思ってます。
 目標としてはオーバーロードの次巻が出るまでには、せめて7巻あたりの内容に番外編として入れたいいなって考えてます。

誤字報告ありがとうございます。


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