あくまで冒険者やってます   作:よっしゅん

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前回の投稿が一年前って……うそやろ工藤


約束を果たすとは

 

 

 

 

 

「さてさて……まずはどこに向かおうか」

 

 潮風を全身で受け止め、海の香りを感じながら思考に耽る。

 

「お前はどこに行きたい? ソフィー」

 

「どこでも良いわよ、あなたと一緒なら」

 

 隣にいる森妖精の友人に聞いてみるが、案の定返ってきた答えは期待していたものではなかった。

 

 

 

 

 モモンガさんと再会できてしばらくの時間が経った。

 そして分かったことがいくつか。

 まずモモンガさんと自分がこの世界に転移してきた時期は別々、さらに転移前の現実世界の時間でも別々だった。

 モモンガさんはユグドラシルのサービス終了と同時に最近転移してきて、自分はサービス終了後に十年以上前に転移した。

 この事から推測するに、この世界に転移する条件としてはモモンガさんのような現役だけでなく、自分のような引退した者も転移する事があるということだ。

 つまり、自分やモモンガさんのようにこの世界にこれから転移、もしくは既に転移しているギルメンが居るかもしれない。

 だとするならば、探さなくては……そして再びアインズ・ウール・ゴウンを復活させるのだ。

 ゲームの中ではなく、異世界という現実で。

 

 そのため、モモンガさんと自分は各々の役割を決めた。

 モモンガさんはこの大陸で、まずは皆の居場所を……ギルドの復活、発展を目指すことにし、自分はこの世界のあちこちを今まで通り旅をして、ギルメンの行方を探す。

 一人で旅をすることにモモンガさんやNPC達から大反対されたが、何とか押しきった。

 

「……もっとも、一人じゃないんだけどな」

 

「何か言った? レジス」

 

「いや、なんでも」

 

 しかしまぁ、一人旅もそろそろ飽きてきたころだ。

 しかしNPC達を連れて行っても自分の心は休まらないし、ならば親しい友人を連れて行けば良い。

 幸いにも、旅をしながら宝を集められると、トレジャーハンターの彼女の目的にも一致しているため、彼女は自分の誘いに快く了承した。

 

 ……正直、彼女には不思議と好感が持てる。

 一緒に居るのは嫌ではない。

 もし、彼女も自分の事をそう思うのであれば、いつか正体を明かしても良いかもしれない。

 

「ねぇ、どこに行くの? できれば行った事がない所が良いんだけど!」

 

「そうだな……やっぱり先ずは海を渡ってこの大陸から出ようか。そしたら————」

 

 今後の計画を口に出そうとしたその瞬間、伝言の魔法が頭に鳴り響いた。

 

「…………なんだと? それは本当なんだな? わかった、すぐに向かう」

 

「……レジス?」

 

 急に独り言を言い出す自分に心配したのか、顔を覗き込んでくるソフィーに申し訳なさを感じつつも、自分は言った。

 

「すまんソフィー、出発は明日にしよう」

 

「えぇ!?」

 

 仮にも今日出発という約束を破ったことに、胸の内側からグズグスとなにかが染み出そうとするのを我慢しながら、新たな約束を持ち出す。

 

「悪い、急用が出来たんだ。大丈夫、また明日、同じ時間にここに集合しよう」

 

「……わかったわよ、けど少しでも遅れたら先に行っちゃうからね!」

 

「あぁ、約束だ」

 

 そして彼女と小指と小指を重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……疲れた」

 

 カルネ村という小さな村……今ではゴブリンやらオーガやら色々な種族が共存していて、発展を続けているが、それでも小さな村だ。

 何故か成り行きでその小さな村の村長になった少女、エンリ・エモットはそんな言葉を零しつつ、自室のベッドに倒れるように横になる。

 

 ――――ここ最近、この村は色々な事があった。

 その為か、気が付けば単なる村娘だった自分が村の長になったのだ。

 そしてついさっきまで、この村は王国の軍とちょっとした戦争をしていた。

 

「…………なんでこうなったかなぁ」

 

 突然だった。

 王国の兵士達はこの村を調査する為に来たと言っていた。

 しかし結果として、あちらは火矢を使って攻撃してきたため、やむなく応戦してしまった。

 何とか頼もしい援軍のお陰で、犠牲は幾らか出てしまったが、王国の兵士達を退ける事ができたのだが……

 

「…………お母さん、お父さん」

 

 今は亡き両親の顔を思い浮かべつつ、エンリは眼を閉じる。

 身体的にもそうだが、精神的にも疲れが溜まっているのは自分でも分かっている。

 だから今は眠ろう。

 少しでも前へ進めるように。

 

「うん、よく頑張ったな。その歳であそこまで勇気を出せるのは中々だ」

 

「…………え?」

 

 知らない声がした。

 妹でも、村の人達の誰かでも、ンフィーでも、ゴブリンの声でも、ルプスレギナさんでもない。

 初めて聞く、知らない女の人の声だった。

 

「――――あっと、怪しいものじゃないよ。ちょっとね、心配で顔を出しにきただけだよ。この村が襲われてると聞いてね」

 

「えっと……誰ですか?」

 

 声は外から……正確には窓の近くからする。

 その声色には敵意はなく、まるで親が子どもに話しかけるような、そんな気軽さだった。

 

「窓越しから失礼。昔、この村でお世話になった旅の者でね。今は君が族長をやっているとも聞いてたから、こうして挨拶も兼ねて急いでやって来ただけさ。それより、大丈夫か? 辛いなら無理はしなくて良いと思うぞ」

 

「い、いえ……お気遣いありがとうございます」

 

 旅の者?

 こんな小さな村に好き好んで訪れる旅人が居るとは思えないが、不思議と嘘を言っているようにも思えない。

 

「そ、そうでしたか……えっと、どうやってここに? 村の中に入るにはその……」

 

「あぁ大丈夫、ちょっとコッソリと入らせてもらっただけだよ。君の友達も、村の人達にも危害は加えてないし、多分誰も私の事には気が付いてないから」

 

 何でもないように言うが、今は特に警備を厳しくしているというのに、この声の主は忍び込んだという。

 まさか本当に挨拶のためだけにそこまで危険を冒したというのだろうか。

 

「えっと……と、とりあえず中に入ります? 外は寒いでしょう?」

 

 明らかに怪しいというのに、何故私はこんなにも心を許そうとしているのか。

 とても不思議な気持ちだ。

 

「いや、気持ちだけ貰っておくよ。本当に今日は君の顔を見に来ただけだし、友人を待たせてるんだ。もう行くよ」

 

 そして土を踏み直す音がした。

 おそらく声の主が座り込んでいた状態から立ち上がったのだろう。

 

「……今回はこの村の人達の気持ちを、勇気を讃えて私は見守っていただけだけど、もしまた今回のようなことがあったのなら、私は必ず手助けに来るよ。この村には……君の両親には恩があるからね」

 

「え……お母さんとお父さんに?」

 

 そして段々と遠ざかっていく足音。

 

「――――! ま、待ってください! もしかしてあなたは……!」

 

 ここでようやく私の頭は理解し始めた。

 昔、両親から何度も聞かされていた旅人の話を。

 

「……いない」

 

 慌てて窓を開けて、辺りを見渡すが、人影は一つもなかった。

 

「…………今度は、ちゃんとお話しできますよね?」

 

 聞こえる筈のない言葉を語りかけて、私は窓を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルプスレギナ、一つお前に質問をしてみて良いか?」

 

「はい、レジス・エンリ・フォートレス様。何なりとお申し付け下さい」

 

「では聞こう。戦いにおいて、自身が持ち得る全ての力を……即ち本気を出す時は一体どんな状況だと思う?」

 

「はい、我らがアインズ・ウール・ゴウン様の栄光の為に、その力を使う時だと思います」

 

「そうだな。それも間違いではない……では一つお前に教えよう。私が……俺が戦いにおいて本気を出す時の条件を」

 

「は……身に余る光栄です」

 

 我慢するな。

 もう既にこの手は汚れている。

 今更人殺しなんて、何とも思わない。

 

「まずこれは当たり前のことだが……一つは相手が自分より強者の場合だな。そしてもう一つは…………自分の大切なモノを、壊されそうになったときだ!」

 

 感情を爆発させろ。

 鎧を身に纏え。

 剣をその手に掴め。

 

「あぁ、確かにあのクズどもにも理由が、事情があったんだろうさ。だが知ったことか、結果として、アイツらは俺の大切なモノを……守ると約束したモノを、壊そうとした! 俺を約束破りにしようとした! 絶対に許せるものか……! そうだろうルプスレギナ!」

 

「……はい、仰る通りです」

 

 視線の遥か先には、カルネ村を襲撃した王国の兵士達の野営地。

 

「手加減などするものか、遊びも慢心も全て無しだ。今から俺はあのクズ共を殺す。二度とこんな真似できないように、念入りにな……ルプスレギナ、剣を」

 

「はい、こちらに」

 

 少し斜め後ろを歩くルプスレギナから愛用の剣を受け取る。

 そしてアバターの姿を本来のものに戻し、愛用のドス黒い鎧を装備する。

 

 誰に何と言われようと構わない。

 自分はただ、約束を果たす為にやるのだ。

 それがたとえ間違いだと分かっていても。

 

 

 

 

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