「
付き合いはまだ短いけれど、それでも彼女の性格や思考パターンが全く想像できないわけじゃない。
自分の評価や身体を省みない自己犠牲精神に溢れる反面、普段は極めて堅実で合理的だ。初戦の流れをなぞるのならば、瀬呂くんのテープによる罠でこちらの動きを誘導しつつ、猪地さんが探知能力を用いた指示により瀬呂くんが強襲、一瞬で僕たちを捕獲。それが一番固い筋だ。
でも、それはないという確信に近いものが僕にはあった。自身の勝利よりも、敵としての見本であろうという節が初戦から見受けられた。だからきっと彼女は同じ手は使わない。そして猪地さんは他人に対して好き嫌いが割とはっきりしている。あんな目に合わせておいて気が重い話だけれども、恩義を感じているらしい僕に対してはおそらく甘い。少なくとも瞬殺や完封狙いはないと僕は思う。
僕とかっちゃんの間の問題も知っている。それの解消の一歩として絶好の機会ということも意識しているはずだ。猪地さんになりきれ。彼女ならどうするか。
「あ、これは使えそうだ」
開始場所までの行きがけに前の戦闘での残骸、鉄筋コンクリートの瓦礫の中から短く折られた鉄筋を数本引き抜き、腰元のベルトに挟みこむ。それから一番短い一本の先にはガラスの破片をくくり付け即席のナイフにする。瀬呂くん対策に、だ。
前回の戦闘から察するに瀬呂くんのテープによる拘束は絶対のものではない。ちゃんと剥がせる。だが捕まったその隙に捕獲されたら全て終わりだ。僕が彼に捕まらないことが僕らの勝利における絶対条件。かっちゃんは心配不要だろう。爆風で軌道を逸らせるし、テープの破壊もおそらく可能だからだ。
切島くんの個性で容易に切り裂けていたことからも切断に弱いことがわかっている。そのための備えとしてのガラスナイフ。使えるものは全て使え。相手の個性には徹底してメタを貼れ。この二つは猪地さんと八百万さんが指し示してくれたこと。僕はその教えに素直に従うことにした。
「
個性の相性的にも瀬呂くんが単独でかっちゃんを抑えることはないはずだ。だからかっちゃんとの戦闘には必ず猪地さんが相手になる。恩人の飯田くんに対して喧嘩を吹っかけてきた相手だ。猪地さんは結構感情的な節もあるし、本気で潰しにかかって来ると見て違いない。
そこから先が問題だ。瀬呂くんが単独で僕を抑えるか、僕を敢えてフリーにして二人がかりでかっちゃんを捕獲し、瀬呂くんの個性で足止めを食らっている僕を後追いで止めに来るか、それとも――――――
「さっきからブツブツうっせえぞ! デク!!」
「うるさくてごめん、かっちゃん。でもあの猪地さんが相手なんだ。しっかり対策を練らないと。それで考えてみたんだけど……」
「ぁあっ、デクてめぇが俺に指図するつもりか。一体何様のつもりだ?!
まただ。僕の全てを否定する目。そして急に手の平を僕の鼻先に突きつけてくる。
「や、やめ……」
思わず目をつぶる。でも、いつもとは違い今回は爆発しなかった。
「俺が全部片付ける。糞ナードはすっこんでろ」
手を引っ込めてかっちゃんが言う。いつもの怒鳴り声じゃない。低く、小さく、感情を押し殺すように。プライドの高いかっちゃんのことだ、きっと轟くんと猪地さんのことで頭が一杯なのだろう。
ずっとわかっていたことだけど、今の僕さえ話し相手をする価値すらないってことらしい。土俵の端っこにすら上がれていないことが、たまらなく悔しい。
「話を聞いてよ、かっちゃん!」
「だから黙ってろって言ってんだろが!」
いつもの怒声を発するかっちゃん。最悪だ。話し合いの余地がない。
「てめぇにはその隠し続けてきた個性のこととかムカツクことばっかだけどよぉ、あのデカ女にはその数倍ムカついてんだ。あの女の鼻っ柱を完全に叩きつぶす。だから邪魔すんな!!」
「わかってる。僕は核だけを狙いに行くから戦闘は全部かっちゃんに任せるよ」
連携なんて土台無理な話だ。それよりはかっちゃんの自由にさせた方がいい。猪地さんは個性で基礎体力を底上げした上での格闘が戦闘での持ち味だ。かっちゃんが中距離戦に徹する限り、分はかっちゃんの方にあるだろう。瀬呂くん相手なら言わずもがなだ。
それにこの提案をしたのは今の僕が対人で個性を使うのは危険すぎるからだ。いくら考えども、結局これが無難なのだろう。
個性は使えないけれど、かっちゃんがケリを付ける前に核を確保して、僕だって役立たずじゃないってこと証明するんだ。
「言われなくても端っからそのつもりだ。だからいい加減本当に黙れ! いつもみたいに手前の顔面吹き飛ばしたくなっちまう。だがそんなことしたらあの糞女ども同士討ちがどうだとか、高笑いすんだろうがよ。必死に俺は今堪えてんだ」
ギリギリと歯ぎしりがハッキリと聞こえる。本当に全力で堪えている顔だ。それからかっちゃんの想像はきっと間違っていない。
「プークス。同士討ちって論外だよねぇ、百ちゃん」「えぇ、あり得ませんわ。これだから野蛮な方は……」みたいなヒソヒソとしたやりとりが行われる様が容易に僕にも想像がついた。そう言えば昨日あったばかりなのに才女同士だからだろうか、既にあの二人も凄く仲が良いよね。
× ×
「ヘイ、ヒーローズ! 悪いけどここから先は通行止めだよ」
「へへっ、後ろもこれで行き止まりだぜ! 爆豪、緑谷」
かっちゃんの後ろを追って侵入した直後、一階の大部屋で待ち構えていた敵チームの二人。侵入してきた扉は瀬呂くんのテープで塞がれている。勿論この部屋の先の階段へ繋がる扉も既にみっちりとテープが貼られている。だけど、この部屋そのものはすっきりしていている印象だ。
「小細工抜きでやろう爆豪。君の個性なら私を無視してこの先に進めるんだろうけれど、こういうわかりやすい奴の方がお好みでしょ?」
「どんな下衆ぃ手を使って来るか構えていたが、案外良い度胸しているじゃねぇか」
盾の先から見える指先で挑発する猪地さん。対峙するかっちゃんはそんな猪地さんを睨みつけながらもその口元はいつになく不敵に笑っている。
「私だってヒーロー志望だからね。この機会に戦闘力を誇示したいのは何も君だけじゃないんだよ」
「ハッ、今の手前は
猪地さんは盾を持った左半身を前にして右拳を顎のあたりに構える。
彼女に嬉々として突撃するかっちゃん。
地を這うような体勢のロケットダッシュから放たれる右の大振り。
間髪入れずに左の掌底からの爆撃。そして反動を利用して距離を一旦取って身構える。
「チッ」
「うん。流石災害現場用、強度は問題なしかな」
元の二倍ほどの直径に巨大化した円盾の影から猪地さんが言った。盾の縁から収納されていた金属部分が瞬時に拡張されるギミックだったようだ。
「そうか、猪地さんはレスキューヒーロー志望だったから火災や瓦礫に耐えられる強度を設定するはずだよね」
「成程。あれなら心配いらなそうかって……何よそ見してんだよ緑谷。いや俺もよそ見してたけどさ」
確かにその通りだ。二人の攻防に目を捕らわれていた。瀬呂くんが奇襲していたら一貫の終わりだったぞ。気を引き締めろ、油断しすぎだ。
「やるか、緑谷」
「うん、やろう」
瀬呂くんが言いながら身構える。瀬呂くんを捕獲するとまでは言わない。だけど最低でも瀬呂くんが猪地さんの援護に回れないように足止めするか、出し抜いて核を回収する。
「おりゃぁあああ!」
掛け声と共に右肘から射出されるテープ。
前の戦闘での癖と、この部屋の間取りで考えられる瀬呂くんの最適解は――――
「中段の横薙ぎ!」
腰を落として体勢を低く。
髪の毛の僅か上をテープが通過していった。
「よし、読みが当たった」
でも思っていた以上に正面から見ると射出速度が早い。
先読みしていなければきっと避けられなかった。そしてテープの巻き取る速度も想定以上だ。
今の内に距離を詰めるんだ!
「やるじゃねぇか、次はどうだ?!」
温存していた左肘から足元への横薙ぎが放たれる。
そして巻きとられた右から時間差で再び中段の横薙ぎが振るわれた。
高くジャンプすれば両方とも避けることはできる。でもそれは愚策。
空中戦になったら瀬呂くんの独壇場だ。次が避けれない。
だからここは――――最小限のジャンプで足元への一撃を回避。
中段の一撃を左手に持った鉄筋で絡め取り、右手のガラスのナイフで張り詰めたテープを切り取る。
「マジで!?」
道具の使用は瀬呂くんの想定外だったようだ。
ヘルメット越しに見える眉間に皺が寄った。
二つのテープは僕の後方に伸びきっている。
今がチャンスだ。もっと早く、早く!
吸い込んだ酸素を、湧き上がる鼓動を、ダイレクトに地を蹴る足へ。
よし、触れられそうな所まで来た。
あわよくばと思ったけれど、このまま行っちゃえ!
両手の道具を腰に差し直し、取り出した捕獲用テープを構える。
「うわぁあああああっ!」
両手を前方に伸ばしながら腹部をめがけてタックルを仕掛ける。
だけど、捕獲のその瞬間に瀬呂くんの姿を見失った。
勢いを殺せず頭頂部を思いっきり瀬呂くんの後ろにあった壁にぶつけてしまう。
「せ、セーフ!」
咄嗟に声のする方を向く。多少頭がクラクラするけれど、かっちゃんに殴られ慣れているからこの程度の負傷は朝飯前だ。朝飯前って変な話だけど。
どうやら瀬呂くんは下段に飛ばしたテープをわざと回収せず横の柱に貼り付けておいて、瞬時に巻きとることで回避したみたいだった。
瀬呂くんも戦い方が巧い。どうやったらより効率的に敵を捕まえられるか、懐へ潜られた時にどうするか、しっかりと自分の個性を把握して動いている。あのオールマイトが防衛の見本としてエキシビジョンマッチに選ぶだけのことはあるってわけだ。
そして良く見れば一度切り取った右肘のテープは未だに伸びきったままだ。
不味い。それが意味するのは――――――――
一気に巻きとり、床を滑るように急接近する瀬呂くん。
そして更にもう一本のテープが横薙ぎに振るわれる。
先程と同じように鉄筋で絡め取って断ち切ろうと試みる。
でも、射出速度がさっきよりも早かった。
「……もう一度」
「させねぇっ!」
鉄筋が触れたのはテープの中ほど。ナイフで断ち切る間もなかった。
鉄筋の先に延びていたテープの先が勢いよく巻き付き、僕の身体を拘束していく。
胸部から両方の上腕部、手首と骨盤にかけた辺りをテープで拘束された形だ。
「よっ。緑谷の簀巻き、一丁上がりってな」
「ちくしょう。僕はかっちゃんに認めさせなきゃいけないのに……」
奥で闘う猪地さんへ向かって親指を突き立てる瀬呂くん。
かっちゃんを相手取りながらも猪地さんも涼しい顔で親指を突き立てた。
反対にかっちゃんの顔は全く余裕がなさそうだ。心なしか青白くさえ見える。
左のアッパーを放とうとした瞬間にシールドバッシュを顔面に受けて、半ば倒れこむように後退した。
「すげぇよな猪地」
「うん」
感嘆の声に思わず頷く僕。瀬呂くんはゆっくりと僕の方に歩みよりながら言葉を続ける。
「あのやっべぇ爆豪を一人で抑えるって言ってたときは何言ってんだって思ったけど、本当にやってのけてるもんなぁ。あいつの個性で体調を見れるから、爆発のタイミングとか丸わかりらしいぜ」
ナイフの先は――――テープに届かない。切断は無理そうだ。
ならばどうする。考えろ、考えるんだ。
そのために会話で時間を稼げ。さっき習ったことだろう!
「そっか、かっちゃんの個性は汗腺に関わるから見れるんだ。それと、もしかして爆発がさっきから随分弱くなってるのも個性?」
このままだとかっちゃんも負けてしまう。そんな姿を僕は見たくない。
いつか僕は君に追いつくんだ。だからこれは僕のわがままかもしれないけれど、その日までは強くて負けないかっちゃんのままでいて欲しい。
「あぁ。パンチで触れた時に代謝を抑えて生命力を温存させるように働きかけてるんだと。噂の
「
「おっとあぶねぇ。うっかりまた見とれてた。ちゃんと捕獲しねぇと」
瀬呂くんが慌てて僕の方に向かって来る。
もう時間稼ぎは駄目か。結局思いついたのは一か八かの案。
これしかなさそうだ。覚悟を決めろ。
「じゃあこれで捕獲証明完了だな、っと」
捕獲用のテープを引き延ばしてくる――――――――今だ。最小限の力で!
「SMASH!」
「うわぁあああっ!」
左上腕に力を込めて拘束していたテープを無理やり引き千切る。
左腕の筋肉も内側から弾け飛んだ。でも、あの痛みほどじゃない。
衝撃で瀬呂くんも吹き飛ばされる。
「なになにっ?!」
「デクかっ!!?」
二人の注意がこっちを向いた。猪地さんが僕の方へ向かって駆け出す。
「捕まって、たまるもんか!!」
両脚に力を込めて目的の場所へと飛び出す。
またセーブできなかった。両足とも骨が逝ったみたいだ。これじゃもう走れない。
だけど、あと一発……残った右腕を構える。
見取り図は完璧に覚えている。二階から五階、どのフロアでも核を置くには適さない場所。
「それは――――
青い空が見えた。思ったより大きく穴が空いてしまった。
でも、五階に核のハリボテがちゃんと無事なのが確認できる。良かった。
入試のときみたいに両手両足の全部やってしまった。僕はもう動けない。だから後は――――
「かっちゃん! 行って!!」
力の限り叫ぶ。猪地さんは飛べない。無事な様だけど瀬呂くんはふっ飛ばされた衝撃で呻いている。今、かっちゃんが飛んでいけば僕らの勝ちだ。
「デクの力借りるくらいなら、負けた方がまだ……マシだ」
え。
「何を言ってるんだ! かっちゃん!?」
このままだと勝ち目がないのは目に見えているじゃないか!
「そうかい。ならもう終わらせるね」
両腕を降ろし、戦意喪失したかのようなかっちゃん。
その後ろから捕獲テープを一気に巻きつけようとする猪地さん。
「させるかっ!」
振り向きもせず、後ろに向けた掌から爆破。
猪地さんの捕獲用のテープが燃え尽きた。
「この体温で、まだこれだけのっ!?」
「クソナードの力なんかいらねぇ! 俺一人で充分だっ!」
「その失礼な呼び方は止めろって言ってんでしょ!」
かっちゃんが振り向いて、右の大振りを放とうとする。
「見飽きたよ、それ」
「がぁあっ!」
「瀬呂くん!」
右腕を掴みとり見事な一本背負いを決める猪地さん。
かっちゃんの身体が綺麗に宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
そしてそのまま腕を固め取る。
「ほらよ、っと」
そして復活した瀬呂くんが捕獲テープをかっちゃんに巻いて終了。
無論、一歩も動けない僕は巻くまでもない。
「
オールマイトの声が鳴り響く。
「緑谷くんがどれだけの覚悟をして作ったチャンスだと思ってんのさ」
オールマイトの声に重ねるようにして、猪地さんがぼそりと呟いた。
「それにしてもヒデェ怪我だな。緑谷。そりゃゾンビってTVで言われるわ」
「瀬呂くん、応急処置手伝って」
「おう、どうすればいい?」
「まずは緑谷くんの指を鉄筋で添え木にしたいからテープ出してくれる?」
「了解」
手慣れた手つきで猪地さんが骨折の手当てを始めていく。痛みで頭がクラクラしているからあんまりわからないけれど、搬送ロボットが来るまでには全て終わっていたからかなり迅速な処置だったと思う。
そしてリカバリーガールの治療に耐えられる程度の体力も分けてもらった。今度学食のサラダうどんを奢るように勝手に約束つけられちゃったけれど、対価としては破格だろう。
× ×
「かっちゃん!」
「あん?」
どうにか間に合った。追いつけてよかった。リカバリーガールに治してもらって教室に帰ったは良いけれど、かっちゃんは皆の引き止めにも関わらず、先に帰っていたところだったみたいだ。
噂では講評の時に八百万さんや飯田くんにボロボロに言われたらしかった。ちなみに核を破壊しかねない行為をした僕は論外扱いらしい。ちゃんと場所は吟味したつもりだったけれど。
いつもなじられる僕はともかく、プライドの高いかっちゃんにはきっと耐えられなかったんだろう。最初の戦闘では随分と褒められていたから尚更だ。
「ずっと言わなくっちゃって思ってたんだ。実は僕の個性は他人からもらった“個性”なんだ」
「ハァ? 急に何語りだしてんだ。気持ち悪りぃ」
振り返ったかっちゃん。影が差すその瞳は鋭くても、いつものような力が感じられない。
「誰からかは絶対に言えないんだけれど……」
「うっせぇ! だから何だってんだ!?」
「だからその、騙していたんじゃなくてつい最近……」
「俺は今日あの女に負けた。俺がもっと強ければ良かった。ただそれだけの話だろうが!」
遮るようにかっちゃんが吼える。話が噛み合う未来が見えない。
「てめぇの個性がどうだとか、今は知ったことじゃねぇ! てめぇには関係のねぇ話だ」
僕には関係ない、僕の今日の頑張りは何も関係ないのだと、かっちゃんはそう言うのか。
「氷の奴にかなわねぇかもって思っちまった!!」
拳を膝に叩きつけながら、叫ぶかっちゃん。
轟くんは強い。確かにかっちゃんでも勝てないかもしれない。
「眼鏡と、ポニーテールのデカ女共の言うことに何の反論もできなかった!」
泣いている。あの、かっちゃんが顔を手で押さえて、涙を流している。
かっちゃんが初めて味わっているだろう敗北感。僕が慰めの声をかけて何になるだろうか。
「絶対に俺はもう負けねぇ。こっからだ!!」
嗚咽を噛み殺してかっちゃんは叫ぶ。
「俺は! 俺はここで一番になってやる!!!」
そっか、かっちゃんに見えているのは轟くんや猪地さんたちの姿だけなんだ。
あれだけ僕は覚悟を決めて挑んだのに、君の隣に立つどころか眼中にも――――
「てめぇの力の世話になるような無様は絶対にもう見せねぇからな。デク!」
背中越しにかっちゃんはその言葉を残す。デクって言葉は麗日さん以外から言われるのは嫌だけど、その名を呼ばれて僕は少し安堵を感じたのかもしれない。
それにしても、かっちゃんはやっぱりすごいや。あれだけ叩きのめされたのに、もう切り替えて発破をかけている。
今はまだ君の足元にも及ばないけれど、いつの日かきっと僕は絶対に追いついて認めさせてやる。