ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。 作:投稿参謀
銀河帝国皇帝の懐刀、シスの暗黒卿ダース・ヴェイダー……あるいは、アナキン・スカイウォーカー。
『フォースにバランスをもたらす者』と予言された彼の人生は、苦難と喪失の連続だった。
母が、妻が、自分の手の届かぬ場所で命を失った。
師が、弟子が、自分の傍から離れていった。
だからこそ、息子と娘を失うことだけは絶対に阻止する。
例え、銀河を敵に回しても……。
* * *
「パパー! パパーーー!! うええええん!!」
召喚したはいいものの、意思の疎通が出来ず泣き叫び続けるサーヴァントに、切嗣はほとほと困り果ててしまった。
目の前の泣き喚く子供は、どう見ても『兵器』として役に立ちそうにない。
(……いっそ、令呪を使って自害させて、別のサーヴァントを呼ぶか……)
そんな考えが頭をよぎる。
例え相手が愛娘よりもなお小さな子供であろうとも、聖杯戦争に勝ち残るためには致し方ない。
考えてみれば、自動的に敵が一角減るのだから、全くの悪手でもないだろう。
…………罪悪感が無いワケではない。
目の前の存在が、何時か何処かの誰かの複製に過ぎないと分かっていても、無防備な子供を手にかけて平気でいられるほど、切嗣の人間性は壊れていない。
いっそ、壊れていれば幸福だっただろう。
しかし、切嗣は聖杯を手に入れなければならない。
アインツベルン家のためなどではなく、魔術師の目指す根源などのためでもなく、切嗣自身の願いのために。
愛する妻の前ではあるが……いや、彼女にも戦争の厳しさを教える良い機会だ。
唯一の懸念はアイリスフィールの身体への影響だが……。
「……アイリ、このサーヴァントは使えない。ここで自害させよう」
「切嗣!?」
感情の籠らない夫の言葉に、アイリスフィールは驚愕する。
「仕方ないさ。この子供で聖杯戦争を勝ち抜く手段を考えるよりは、もう一度サーヴァントを召喚し直す方が手っ取り早い」
「でも、こんな小さな子供を……」
「『これ』は子供の姿をしているが、本当に子供なワケじゃない。議論の余地はないよ」
妻の意見を封殺し、切嗣は令呪を使おうとする。
その間にも子供は泣き続けていた。
「正直、こんなことで令呪を消費するのは惜しいが……」
「うわぁあああん!!」
「令呪を持って命ずる……」
「助けてぇえええ!! パパァアアア!!」
子供の泣き声が最高潮に達した瞬間、切嗣と子供の間の空間が歪み『何か』が現れた。
「ッ!?」
「まさか、そんな……」
それは、人型をしていた。
身を包むのは黒い黒い装甲服とマント。
顔を覆うは髑髏を思わせるマスク。
マスクは呼吸器も兼ねているのか、独特の呼吸音が漏れている。
胸には何やら電飾が明滅していた。
明らかに、異質なその姿。
だがそれ以上に、それの放つ気配は禍々しくそいて圧倒的だった。
切嗣とアイリスフィールは確信する。
『これ』もまた、サーヴァントなのだ。
「召喚!? いや、そういう宝具なのか!?」
別のサーヴァントを召喚する宝具。
そんなのアリか。
「ここはいったい? さっきまでエクゼキューターの艦橋にいたのだが……」
一方、召喚されたサーヴァントと思しき黒い男は、キョロキョロと辺りを見回していた。
「パパー!!」
「! ルーク!!」
子供は、その黒い男の足に飛び付いた。
黒い男は振り向くやしゃがみ込んで、その子供……ルークを抱きしめる。
「ルーク! 無事だったのだな! 心配したんだぞ!」
「パパ、むかえに来てくれたんだね!」
「もちろんだ。パパはお前を助けるためなら、宇宙の何処にだって行くぞ!」
『パパ』のマスクから漏れる声が涙声になっている。
ギュウっと抱きしめ合う二人を見て、切嗣は現実逃避気味に「あー、僕もイリヤを抱っこしたいなー」とか場違いなことを考えていたが、思考を無理やり現実に引き戻す。
(よく分からないが、これは勝ち目が出てきたかもしれないな)
あの『パパ』は少なくとも子供の方よりは戦闘力があるだろうし、意思の疎通も出来そうだ。
と、なれば……。
「あー……感動の再会中に申し訳ないんだが、そろそろ君たちのクラスと真名を教えてくれないかな?」
「…………」
質問の答えは、無言で放たれた強烈な殺気だった。
横でアイリが息を飲むのが分かる。
切嗣自身、背中に嫌な汗が流れるのを感じた。……そんなことは久し振りで、少し驚いてしまった。
「……貴様がルークを攫ったのか」
続いて放たれたのは質問だ。
ここに来て切嗣は、相手が通常のサーヴァントのように聖杯から知識を得ていないのではと思い至る。
ならば、どうやってこの黒い男を利用するか……。
「私から……息子を奪うとは……!!」
この時、切嗣にはいくつかの選択肢が与えられていた。
一つ、聖杯戦争や令呪について洗いざらい説明する。
一つ、限定的に情報を開示し相手に『勘違い』してもらう。
一つ、一つ目の令呪を用いて、『パパ』にお帰り願う。
一つ、魔術と懐に忍ばせた銃で攻撃する。
しかし、残念なことにそのいずれの選択肢も切嗣は選ぶことが出来なかった。
なぜなら、何の前触れもなく首が締め付けられたからだ。
「がっ…………!?」
「貴様はシスの暗黒卿の極限の怒りに触れたぞ……!!」
黒い男は、その場で手をかざしている。
それだけだ。
それだけで、切嗣の首は大男に絞められているかのような圧迫感に包まれる。
息が出来ない。声も出せない。
何とか反撃しようと懐の銃に手を伸ばそうとした瞬間、今度は何かに突き飛ばされたような衝撃に襲われ、壁に叩き付けられた。
「ぐ……!」
「切嗣!」
アイリスフィールが悲鳴を上げて夫に駆け寄る。
黒い男は、手に何か……円筒状の機械のような物を握る。
その機械からブォンと独特と音がすると同時に、赤い……光の刃が現れた。
宝具であるかは分からない。一見すると子供用の玩具にも見える。
だが、それが人間とホムンクルスを一人ずつ切り刻むには十分な殺傷能力があることが、何故だか理解できた。
「ただでは殺さぬ。苦痛と恐怖の中で死ぬがいい」
「待って! 説明するわ! だから待ってちょうだい!!」
「その提案は却下されたぞ」
アイリスフィールの必死な言葉を傲然と一蹴し、黒い男はゆっくりと二人に近づく。
周囲の椅子や装飾品が、触れもしないのに歪み潰れ砕けていく。
「れ、令呪を持って命ずる……」
その時、切嗣が力を振り絞って令呪を発動した。
「そいつに、僕たちを傷つけさせるな……」
「…………?」
首を傾げたルークだが、父に駆け寄るとマントの端を引っ張る。
「パパ、そのおじさんたちをいじめるの?」
「このおじさんたちは、悪い人たちなんだ」
さらに首を傾げ、父を見上げるルーク。
黒い男は、ハアと息を吐いた後、光の剣を消す。
息子の前で、人殺しは出来ないと思い止まったらしい。
「よかろう……貴様たちの『説明』とやらを受けよう。我が息子に感謝するのだな」
「ああ、助かるよ……ここでは何だ、場所を変えよう」
切嗣はホッと息を吐いた。
数々の修羅場を潜り抜けてきた彼であるが、今回は危なかった。
……あるいはこの異常事態に置いて、切嗣もアイリスフィールも正常な判断力を失っていたのかもしれない。
令呪は確かにセイヴァー……ルーク・スカイウォーカーに効果を発揮した。
しかし、便宜上宝具扱いではあるがルークから独立した存在であるダース・ヴェイダーには、何の影響も及ぼしていないことに気づいていなかった。
その頃、遥か銀河の彼方では……。
ピエット提督「あの、ヴェイダー卿、消えちゃったんですけど……」
皇帝「しゃーないのお。デス・スター、発進じゃ!!」
ターキン総督「おやめください!!」
ピエット提督(胃が痛え……)
言ったはずだ。Fateについてはニワカもいいトコだと……!
……設定の祖語とか酷いことになってそうで怖い。
ちなみにこの作品だと、TYPE‐MOON作品の舞台になってる太陽系は、スターウォーズ銀河の端っこの方に浮かんでる設定。
続きは未定。未定ったら未定。