ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。 作:投稿参謀
そして、久しぶりなのに、クロスオーバーの体を成していません。
どこまでも続く熱砂と、それを照らす二つの恒星。
それがダース・ヴェイダー……アナキン・スカイウォーカーの原風景だ。
銀河のギャング、ハット族の支配する砂漠の惑星タトゥーイン。
アナキンはここで生まれ育った。
母と共に、奴隷として。
奴隷と言っても、地球における黒人奴隷などとは違い、それなりに自由と生活が与えられていた。
主人であるワトーは、酷い仕打ちはしなかったし、今にして思えばアナキンを気に入っていたのだろう。奴隷に対するにしては、優しいと言ってよかった。
それでも、体内に爆弾を埋め込まれ母共々こき使われる日々は幼いアナキンの中に屈折した物を育てていった。
いつか、母と共にこの砂漠の星を抜け出す……。
それだけが幼いアナキンの望みであり、そして必ず訪れる未来だと信じていた。
「僕は、いつか宇宙船のパイロットになるんだ!」
(僕は、いつか正義の味方になるんだ!)
「そして、ママを助けてみせる!」
(そして、世界を救ってみせる!)
幼い声に、別の誰かの思いが重なる。
しかし、それらの意味が全く違うことをこの記憶を観ている人物……衛宮切嗣は理解していた。
あの暖かく美しい島と、この厳しく寂しい砂漠とでは、まるで違う。
奴隷として貧しくも逞しく生きるアナキンだったが、やがて、転機が訪れる。
外の星からやってきた、風変りな人々。
その中の一人である美しい女性……パドメに、アナキンは一目で恋に落ちていた。
きっと、あの人と結婚するとそう誓った。
幼く無邪気な初恋だ。切嗣でさえ、微笑ましくなってしまうほどの。
このころのアナキンは、歪みを抱えてはいても、それ以上に心優しい少年だった。
外の人々の中でも、一際風変りな男……厳しくも優しいクワイ=ガン・ジンは、アナキンをここから連れ出そうとしていた。もちろん、母もいっしょに。
幼きアナキンには、それがどういう意味を持つのか正確には理解出来ななかったが、しかしこれで母と自分は救われたのだと思った。
……もちろんワトーは『財産』を奪われてなるものかとごねた。
結局、賭け事で決めることになり、アナキンがポッド・レースに出場することになった。
切嗣から見て、このポッド・レースは正気を疑うような内容だった。
エンジンに牽引されるだけの、剥き出しの操縦席。
狭く曲がりくねったコース。
複雑でとても覚えきれない操縦法。
勝つためなら反則ありありの参加者たち。
この凄まじい、記憶をなぞるだけでも吐きそうになるレースの果て、見事優勝を掴み取ったアナキンは、奴隷の身分から解放されることとなった。
母親を置き去りにして……。
ワトーは、奴隷二人の解放は最後まで認めなかったのだ。
だからこそ、アナキンは誓う。
いつか、母を迎えにくると……。
そして銀河共和国の首都惑星コルサントにやってきたアナキンは、銀河を護る騎士たち、ジェダイ評議会の前に立つことになった。
修行を始めるには年齢的に遅すぎるということで
この時アナキンは、クワイ=ガンの中に父性を見ていた。存在しない自分の父親を見ていた。
あるいはこのままクワイ=ガンの弟子となれば、この後とはまた違った人生があったのかもしれない。
しかしクワイ=ガンはジェダイの宿敵、シスの暗黒卿と戦い、死んだ。
そうしてアナキンは、クワイ=ガンのパダワンだったオビ=ワン・ケノービの弟子になることになった。
オビ=ワンの下で修業していた時は、アナキンにとって幸せな時間と言えた。
だが、彼はタトゥーインに残してきた母のことを忘れたことはなかった……。
やがて青年に成長したアナキンは、いつしか母の死を夢に見るようになった。
ただの夢というには、あまりにリアルで生々しい、そんな夢を。
このころ、アナキンはかつての初恋の相手であるパドメと再会する。
……いや、かつての、というのは語弊がある。
今でもアナキンはパドメに好意を抱いていたから。
切嗣は驚いていた。
このアナキンのあまりに強い愛にだ。
普通10年も経てば、初恋など苦い思い出に代わる。
しかし、アナキンは現在進行形でパドメへの想いを保って……いやむしろ強くしていった。
だがジェダイは恋愛を禁止していた。
それは執着が失うことへの恐れに繋がり、それが怒りや憎しみに至ることを防ぐためらしい。
切嗣からしてもれば、この掟はかなり理不尽だった。
地球の宗教関係者だって異性を愛し結婚することくらいあるのだ。
ジェダイというのは、あまりにも変化を嫌いすぎていやしないか?
この偏屈っぷりは、むしろアハト翁を思わせる。
とにかく、パドメを護衛することになったアナキンにとって護衛のために訪れた彼女の故郷は、心を震わせるには十分だった。
豊かな自然。
優しい人々。
何よりも、パドメと深く愛し合う彼女の家族。
それは、アナキンが心の奥底で何よりも欲していた物なのだ。
このナブーで護衛を理由に穏やかに過ごし、パドメと愛を育んでいたアナキンだが母が死ぬ夢は消えることはなかった。
パドメの提案により、タトゥーインへと帰郷した彼を待っていたのは、母が再婚して奴隷の身分から解放されたことと……砂漠の蛮族、タスケンレイダーに母が、攫われたことだった。
アナキンは母を救うべく走った。
昼夜を問わず、タスケンを追跡し、ついにその集落に行きついた。
手遅れだった。
母はアナキンの手の中で力尽き、物言わぬ骸となった。
その時、アナキンの身内にあったのは何だったのだろうか?
怒り、嘆き、悲しみ、憎しみ、絶望、喪失感……あるいは、暴力への渇望か、その全てか。
アナキンはその集落のタスケンを殺した。
男を斬り殺した。
女を串刺しにした。
子供の首を刎ねた。
殺して、殺して、殺し尽くした。
そして師であるオビ=ワンを恨んだ。
……他に、やり場のない怒りをぶつける相手がいなかったから。
「全部、オビ=ワンのせいだ!!」
(英雄どものせいで……)
「こんなの、間違ってる!」
(こんな世界は間違ってる……)
その叫びに、誰かの怒りが重なる。
この後、アナキンはオビ=ワンの危機を救うべく戦った。
恨んではいても、やはりアナキンにとってオビ=ワンは師であり、友であり、兄であり、父だった。
様々な危機はあったが、思わぬ援軍もあってオビ=ワンを救い出したアナキンは、パドメに想いを告白し、二人は秘密の結婚式を挙げた。
しかしこの時、すでに、アナキンの身内には愛する者を失う恐怖が根付いていた……。
そしてクローン戦争が始まった。
クローン・トルーパーたちと共に戦場を駆けるアナキンは多くの武功を上げ、恐れ知らずの英雄として名を馳せるようになっていく。
そんなころ、アナキンはアソーカ・タノと出会った。
この生意気で破天荒なトグルーダの少女は、何とアナキンの
衝突はあったものの、アナキンとアソーカは師弟として上手いことやっていった。
自分の似姿のようなアソーカを守り育てる間、アナキンはまるで父にように振る舞い尊敬と友情を得ていた。
…………しかしこの頃から、異変が起こり出していた。
最初に変化があったのは、他ならぬジェダイの騎士たちだった。
「……いやあああ! 何回も死因が変更された挙句、生死不明はいやあああ!!」
「シャアク・ティ!? 落ち着くんだ! ここに君を傷つける者はいない!!」
「……ああ、ごめんなさいマスター・プロ・クーン。……でも死の予感がするのです。それも何故か、別の方法で何回も死ぬことになるような……」
突如として錯乱する者たち。
「アイラ! もう我慢できん! 君に私の想いを伝えたい!!」
「だ、ダメよマスター・キット・フィストー……私たちは、ジェダイなのよ。掟に反するわ……」
「君も感じているはずだ! 残された時間が少ないかもしれないと! ならば、私は後悔しないように生きたい!! ……愛しているんだ、アイラ。残りの人生を私と共に過ごしてほしい……!」
「ああ……キット!」
掟に反し、オーダーを離れる者たち。
「ああ、何か碌な死に方しない気がする……こうなったら、好きな事を好きなだけしてみるか……ようし、スカイウォーカー! いっしょにスターファイターを魔改造だ!! 後、R2の面白い改造案があるんだが、試させてくれないか!!」
「ま、マスター・セイシー=ティン?」
我が道を突っ走る者。
「これが、未来か。ならば儂のすべき事とは……」
そして、苦悩する者。
「フォースが乱れている。こんな時こそ、ジェダイは自制しなければならない」
一方、混乱するジェダイの中にあって、評議会の重鎮たるメイス・ウィドウは平時と変わらない姿勢を貫いていた。
しかし異変はこれだけにとどまらなかった。
ある時のこと、アナキンが元老院の最高議長、シーヴ・パルパティーンの執務室を訪ねた時のことだ。
議長は何かとアナキンのことを気にかけてくれる親切な老人で、アナキンにとっては個人的な友人でもあった。
少なくとも、アナキンはそう思っていた。
「議長、失礼します。アナキンです。……議長?」
本来なら厳重に閉じられているべき執務室の扉が開けっ放しになっていたので、入ってみれば、床に老人が倒れていた。
白い髪を後ろに撫でつけ、赤いローブのような服を着た老人……他ならぬ、パルパティーン最高議長だ。
「議長!!」
アナキンは血相を変えて議長に駆け寄り、助け起こす。
「誰か! 議長が倒れた! 医務班を呼ぶんだ! 早く!!」
「い、いや、いいんだ。……少し眩暈がしただけだ」
人を呼ぼうとコムリンクを起動させたアナキンを、パルパティーンはやんわりと制してゆっくりと立ち上がり、医務班に断りの連絡を入れる。
「議長、ご無理をなされては……」
「いや、この通り、もう大丈夫だ。……実は昔から時折、こういうことがあるんだ」
執務室の接客用のソファーに座ったパルパティーンはアナキンを安心させるように微笑んだ。
「周囲を不安にさせないよう伏せているが、実は10年程前から……おお、確か君と初めてあった頃だな……時たま、幻覚を見ることがあってね」
「幻覚、ですか?」
「ああ、二人の幼い子供の幻だ。私の周りを駆け回ったり、あるいは膝の上に座って笑ったりするのだよ」
「は、はあ……」
アナキンには、柔らかく笑むパルパティーンがその幻覚を嫌がっていないように見えた。
「私には家族がいないからな。そういう幻を見るんだろう。孤独な老人には、ありがちなことだ……それはそうとアナキン、掛けなさい。今日は話があるんだ」
「はい」
パルパティーンのテーブルを挟んで対面にアナキンが腰かけると、パルパティーンは平時の余裕に満ちた姿をすっかり取り戻した。
そして、次に出たのは質問だった。
「アナキン、君はシスの暗黒卿について、どう思うかね?」
その質問の理由が分からず、アナキンは首を捻る。
「どう、と言われても、打ち倒すべき邪悪な敵としか……」
「ふむ、敵か……しかしこうも考えられないか? ジェダイとシスは、表裏一体であると。丁度、このコインの表と裏のように」
言葉の意味を測りかねるアナキンに、パルパティーンは謎めいた笑みを浮かべ、机の上に置かれた天秤の皿の上に置かれたアンティークなコインを手に取って見せた。
「このコインには二つの面があるが、どちらの面が見えていてもコインであることに違いはない」
「! ジェダイとシスが、根は同じ物だとおっしゃるのですか!」
「正確には、フォースの
何を言い出すのかと急に立ち上がるアナキンに、パルパティーンは笑みを崩すことはない。
「もちろん、物事はそう単純にはいかないだろう。……儂なりにフォースやジェダイ、そしてシスについて調べてみたのだ。そして得た印象は、フォースとは天秤であり、その両端に光明面と暗黒面が乗っている、と言うことだ」
パルパティーンは、どこからか何枚ものコインを取り出すと、天秤の皿に乗せていく。
「どちらかの量が多くなれば、あるいは重い物が乗れば、天秤は傾く……しかし、こうしたらどうなるだろうか?」
そう言って、パルパティーンは天秤の中央、支点に当たる部分を固定している留め金を外す。
すると天秤は傾きバランスを崩して、皿を下げている棒が机の上に落ち、皿からコインがこぼれた。
議長が何を言いたいのか、アナキンには分からなかった。
「片方に天秤が傾き続ければ、やがて待つのは崩壊なのだ。皿の上に乗っているのが、ジェダイでもシスでもそれは変わらん。……ではそれを防ぐには、どうしたらいいと思う?」
徐々に熱を帯びてくるパルパティーンの声に困惑し、アナキンは答えられなかった。
そんな若きジェダイに、パルパティーンは鋭い視線を向ける。
「一番簡単なのは、皿を空にすることだ。ジェダイもシスも滅ぼし、零にしてしまえばいい」
パルパティーンが天秤の両の皿からコインを全て落としてから支柱に棒を置くと、多少不安定ながらも天秤は静止した状態になった。
「そんな……」
「短絡的かね? では、天秤の皿に乗る重さを等しくなるように調整し続ける? ……無理だ。フォース感知者は、銀河中で生まれ続けている。その全員を管理し、光と闇に振り分けるなど、到底不可能だ。……だから」
そして、パルパティーンは天秤の支点を留め金で固定した。
「こうして、しっかりと支点を固定すればいい。これなら、どちらかに天秤が傾いても、最悪の崩壊は防がれる……光と闇の中間に立ち、フォースのバランスを保つ者。そんな人間がいればと、そうは思わないかな?」
「……まるで、マスター・ヨーダのようなことをおっしゃるんですね」
アナキンは苦笑した。
議長の言うことは、まるで夢物語だ。
「でも、そんな人間は存在しえませんよ。それはもう、神か何かです」
「さてそうかな? 私はむしろ、人間なればこそ可能だと思う。……あるいは、自覚は必要ないのかもしれん。結局のところ、どんな道を通っても最後は同じ結果に……いいや、だからこそ……」
「議長?」
ブツブツと呟きながら考え込むパルパティーンに、アナキンは不安になった。
議長の言う所の幻覚は、本人が思っている以上にこの老人の心身を蝕んでいるのでは?
そう思わずにはいられなかった。
「中々、興味深い話じゃのう」
その時、アナキンともパルパティーンとも違う、しゃがれた声が聞こえた。
いつの間にか、執務室の出入り口に緑色の小人のような人物が立っていた。
大きな耳に、皺だらけの顔。アナキンの腰ほどもない背丈。
その姿に、アナキンは驚いた。
「マスター・ヨーダ? どうしてここに?」
「議長に呼ばれたのじゃ。話が、あるとな。ジェダイのグランドマスターと、元老院議長、二人きりで話すのに、不思議はあるまい。ん?」
ヨーダはヒョコヒョコと歩いてくると、ソファーに座る。
アナキンは、少し拗ねた表情を作った。
「二人きり……つまり、僕は席を外した方がいいってことですね」
「すまないな、アナキン。元々、君との話は手短に済ますつもりだったのだが……つい、熱が入ってしまった」
「長話が好きなものじゃ、老人とは」
謎めいた表情を浮かべる老人二人に、アナキンは溜め息を吐いた。
そしてふと、この二人は意外と似ているのかもしれないと思った。
人を煙に巻く所なんか、そっくりだ。
「それじゃあ、議長にマスター・ヨーダ。失礼します」
「ああ、また」
「うむ」
そのまま、アナキンは一礼してからその場を後にした。
……後々、アナキンは思うのだ。
この時には、すでに事は始まっていたのではないかと。
そして、これはアナキンの知らない話。
故に、切嗣も知り得ない話。
アナキンが去った後、ヨーダは突き刺すような視線を目の前の老人に向けた。
「それで? 儂を呼び出し、何を話そうと言うのかのう? ……ダース・シディアス」
「無論、我らが行く末について。……貴様も見たのだろう? 未来を、な」
共和国元老院最高議長シーヴ・パルパティーン……またの名をシスの暗黒卿ダース・シディアスは、アナキンに向けるのとは違うゾッとするような笑みを浮かべる。
その瞳は、毒々しい黄色に輝いているのだった。
EP1~EP2、クローンウォーズは原作と同じになってしまうので、ザッと流す程度にしました。
そして、ここからSW側も原作剥離が酷くなります(今更)
一応、重要な情報はだいたい皇帝陛……もとい議長閣下が言ってくれました。