ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。   作:投稿参謀

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お久しぶりです。
スカイウォーカーの夜明けを視聴して、今後どうするにせよ一つのけじめとして投稿しました。

スカイウォーカーの夜明けのネタバレが内容として含まれますので、ご注意ください。


番外編:あるいは、あるかもしれない未来

 遠い昔……ではないけれど、遥か銀河系の彼方で……。

 

 

 灼熱の恒星に照らされて、何処までも砂漠が続く星、ジャクー。

 砂の海のあちこちには、島のように飛び出す岩山に混じっていくつもの宇宙船や兵器の残骸が横たわっていた。

 その光景は、太古の生き物の墓場のようにも見える。

 かつてあった大きな戦いで墜落したそれらからパーツを取るジャンク漁りが、この星の主な入植者だ。

 その他には現住生物と僅かな異星人しか、この星では暮らしていない。

 

 砂漠の遥か上空、成層圏を抜けた衛星軌道上に一隻の宇宙船が浮かんでいた。

 楔型の艦体が特徴的なその船……リサージェント級スター・デストロイヤーの底部ハッチから何隻かの着陸艇が吐き出された。

 

 長方形の箱のようなシルエットの着陸艇たちは、大気圏に突入すると摩擦熱をものともせずに眼下の星に向かっていく。

 やがて船団の行く手に、砂漠の中にある小さな村が見えてきた。

 大小いくつものテントからなるこの村は旧共和国と旧ジェダイ・オーダーの崩壊後、ジェダイの知識と文化の保護を目的として設立された団体『フォースの教会』の信徒たちが暮らしていた。

 

 村のすぐ傍に着陸した着陸艇の前部ハッチが開き、そして……。

 

「ここが『聖なる村』だ。昼まではこの村の見学、昼ご飯ののちに戦場跡を見にいく。村の人たちに迷惑をかけないように行動するのだ」

『はーい!』

「よろしい、では点呼を取る」

 

 銀色に光る装甲服を着た教師に引率された、20名ほどの幼い子供たちが降りてきた。

 陽光に照らされる着陸艇の両舷には、こうペイントされている。

 

『帝国立ファースト・オーダー幼稚園』

 

  *  *  *

 

(あっれぇ? おかしいなあ……)

 

 幼稚園生たちを引率する教員であるファズマは、お弁当の時間に一息つきながらも、この状況に、もっと言えば自らの境遇に強い疑問を感じていた。

 自分は冷酷非情な女将校になるために帝国軍に入ったのに、なんで幼稚園の先生なんてやってるのだろうか。

 もっとこう、ライバルを蹴落とすとか、自分の過去を知る人間を消すとか、そういうことをするはずだったのに。

 気付けば教員生活も早10年。もはや中堅の域だ。

 

(私の人生、こんなはずではなかったのに……)

「ファズマ先生!」

 

 銀ピカのマスクの下で溜息を吐いていると、園児の一人の声に視線を落とした

 黒い肌のその生徒は、孤児であるが優しい気質の持ち主だ。しかしファズマにしてみれば、気弱で場に流されやすいのが心配だった。

 

「フィンか。どうしたんだ」

「ええと……あの、その……」

「いつも言っているだろう、人に物事を伝えたい時は、はっきりと言え。お前なら出来るはずだ」

「は、はい! 先生、これ!」

 

 ファズマの厳しい言葉に、その生徒……フィンは意を決したように何かを差し出した。

 村の土産物屋で買った物らしい、首飾りだ。

 

「……私に?」

「はい! ……先生、いつもありがとう!」

「………………」

 

 半ば無意識にその首飾りを受け取って、ファズマは首を傾げた。

 安物とはいえ、幼い孤児にしてみれば結構な値段だろうに。

 

「おこづかいを貯めてたんだ! ボク、先生のことが大好きだから!」

「……そうか、ありがとう」

 

 ああ、なんでこんなことになったのだろう。

 自分は冷酷な女将校になるはずだったのに。

 こんな、餓鬼に囲まれた生活なんて、まったく望んでいなかったのに。

 

(でもま、いっか)

 

 顔をほころばすフィンを見ていると、この生活も悪くはないと思えるのだった。

 

  *  *  *

 

 幼い子供と言えど、人が集まればいくつかのグループに分かれる。

 快活なポー・ダメロンと気弱なフィン、強気な女の子のレイはいつも一緒にいるし、帝国軍人を父に持つハックスは同じく親が軍人の子供たちといることが多い。

 そして誰ともグループを作らずにいる者もいた。

 

 黒い癖のある髪で、同じく黒い服の男の子は、他の園児から離れ一人、陰気な顔でお弁当を食べていた。

 

「ベン、一人でどうしたの?」

 

 そこに声をかける者がいた。

 ベンと呼ばれた園児が振り向くと、彼より少し年上の女の子がいた。

 大きな青い瞳と、長く伸ばした雪のように白い髪のその女の子は、ニパッと笑っている。

 

「みんなと一緒に食べないの?」

「パドメ、ほっといてよ……」

 

 ブスっとしたベンの声に、パドメと呼ばれた少女はキョトンと首を傾げた。

 すると彼女の後ろから、もう一つ人影が現れた。

 

「駄目よパドメ。ベンはね、パパと喧嘩してナイーブなの」

 

 髪が黄色っぽい金色で瞳が赤いこと以外はパドメと瓜二つの少女だった。

 しかしあどけなくも優し気な表情のパドメに比べて、この少女は悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

 

「ソロおじさんがまた遊園地に行く約束を忘れてたんだもんね。おじさん、そういとこホント駄目よねー」

「ナタリア! 駄目だよ、おじさんの悪口言っちゃ!」

 

 パドメは自分の双子の姉であるナタリアに注意する。

 この二人はベンの母方の伯父の娘であり、幼馴染だった。二人からしてもベンは弟のようなものだ。

 ベンよりも年上だが、通っている学校がフォースト・オーダー幼稚園と合同で遠足をすることになったのでここにいる。

 一方で当のベンはブスッとしていた。

 

「いいよ。ホントのことだもん。前も、その前も、その前の前も約束忘れてたし」

「ああ、うん……」

「ママとケンカばっかりだし、家よりファルコン号が好きみたいだし、お爺ちゃんやおじさんも困らせてるし、あちこちにお金借りてるし、友達は山師とか、賭博師とか、ペテン師とかそんなんばっかりだし」

「お、おおう……」

 

 次々と出てくる父への悪口と言うか歳に似合わぬ愚痴に、パドメばかりか話を振ったナタリアまでも引いてしまう。

 断っておくとベンの父は家族を愛しているし仕事も出来るのだが、どうにもスリルや冒険を求めてしまう部分があり、あんまり褒められない仕事の友人が多い。

 

 母と結婚する時も、その父親……つまりベンの祖父と大いに揉めたそうな。

 まあ当時の父は住所不定で多額の借金を抱えた無法者だったので、しょうがない。

 ライトセイバーを持ち出しベンの名前の由来でもある人物に『ムスタファー以来の暗黒面全開』と評されるほどに怒りに燃える祖父に対し、父と親友である伯父や、その他友人たちが執り成してくれて『絶対に家族を大切にする』と約束し、何とか結婚に漕ぎ着けたのである。

 

 で、この体たらくなので『大丈夫? フォースのバランス崩れない?』と方々から心配されているのだった。

 

「パパなんか、大嫌いだ……ボクは、お爺ちゃんみたいなフォースの使い手になるんだ」

 

 父のようなちょっとアレな人ではなく、大好きな祖父ようになるのが幼きベンの夢だった。

 だがベンとて本気で父を嫌っているワケではなく、父の操縦するミレニアムファルコン号に乗せてもらうのが好きだし、彼から貰った金色のダイスを大切にしていた。

 

「うん、いっしょにジェダイになろう!」

「なに言ってんの。ベンはシスになるんだから!」

 

 パドメは懐から取り出した一本のシンプルなライトセイバーを起動し、ナタリアは腰に下げたグリップの湾曲したカープ=ヒルト・ライトセイバー二本を起動する。このセイバーは練習用兼護身用の殺傷能力のない物で、光刃の色はそれぞれ緑と赤だった。

 パドメはジェダイ、ナタリアはシスを志し、すでに訓練も始めていた。

 

 というのも二人の父は新生ジェダイ・マスターであり、祖父は元シスで、その影響を受けたからだった。

 なお母親はとある辺境惑星の出だが、色々と特殊な人だった。本来なら長生きすら出来ないような身の上だったと言うが、今日も元気に夫とイチャついている。

 

 二人の両親が結婚を決めた時、父方母方の祖父同士で壮絶な死闘を繰り広げたという話もあるが、その祖父たちこそが双子の名付け親でもある。

 

「ジェダイの方が、かっこいいよ!」

「シスになれば、電撃だって出せるのよ!」

「ジェダイ!」

「シス!」

「ぼくは……どっちも!」

 

 二人してライトセイバーを構えるに至って、ベンはすくっと立ち上がると、グリップの両側に小さな光刃が出現するクロスガード・ライトセイバーを起動させた。

 十字型の刃は白く光っていた。

 

『どっちも?』

「うん。お爺ちゃんはジェダイでありシスだもん!」

「ほんと、ベンはお爺ちゃん大好きねえ」

「うん!」

 

 ナタリアがちょっぴり呆れたように首を傾げると、ベンは胸を張る。

 双子の少女は顔を見合わせると、ベンの両隣に並んだ。

 

「ん、ならさ。三人で立派なフォースの使い手になろう! わたしはジェダイ!」

「わたしはシス! で、ベンはその間! 約束しよ!」

「うん、約束!」

 

 自然とライトセイバーを天に掲げ、三人の幼い少年少女は空を見上げる。

 青い空の向こうに広がる、遥か銀河系。さらにはその先。

 

 そこにはあるいは、フォースの力すら及ばぬ未知の種族がいるかもしれない。

 あるいは、歴史や概念すら破壊するような何かがいるかもしれない。

 

 それでも三人の目には、『希望』こそが映っているのだった。

 

 

 

 

オマケ:スカイウォーカーの夜明けのネタバレの可能性あり

 

とある誰かからレイと呼ばれる少女への手紙(銀河普通郵便)

『レイへ。

 お爺ちゃんだよ! 元気にしてるかな? お勉強はちゃんとしてる?

 今度の休みに皆で地球のフユキに集まることになったから、その時に会えるのを楽しみにしてるよ!

 その時はいっしょに買い物に行こう。何か買ってあげるから、欲しい物を考えておいてね!

 お父さんとお母さんには内緒だよ? あの二人はあんまり甘やかしちゃ駄目だって言うけどね、レイはお爺ちゃんの天使だからね!

 

 って言うか、二人が欲が無さ過ぎで、お爺ちゃん心配なんだけどね!

 

 それじゃあ、体に気をつけて』

 

 

同じ人物から、レイの両親への手紙(極めて高度に暗号化されていた)

『帝国内に入り込んでいた魔術師どもは、我が弟子ダース・クラウダスと帝国魔術院のエージェント・エミヤが適切に処理しておいた。

 お前たちには苦労をかけたが、これでようやくお前たちの市井に紛れる生活も終えられそうだ。

 連中がお前たちのことを嗅ぎ付けたのは、儂のミスだ。すまないと思っているが、どうしても孫の顔を見たくなってしまったのだ。

 政治的思想も儂への怨みもなく、単純にあの子をモルモットにしようしていた魔術師には正直未だに怒りを禁じえない。今は奴がモルモットだが。

 

 ともかく、我々が本来の関係性として一時でも過ごすには冬木はうってつけだ。

 あの町は地球において唯一宇宙港のある経済特区だが、帝国に友好的なトオサカとマトウの管理下にあるし、我が弟子の地元だ。

 エルメロイ()()()()()のおかげで聖杯の解体も完全に終わり、魔術協会と聖堂教会、それに国連とカルデアも手を出せない。そのように、根回しも済ませておいた。

 

 しかし連中は恥知らずで考えなし……特に野良の魔術師は……なので何をしてくるか分からない。そこで護衛は用意させてもらう。念には念を入れて、とっておきのをな。

 

……儂の知る中で最も強く偉大な『フォースにバランスを齎した者』アナキン・スカイウォーカーだ。

 

それでは、冬木で会おう。

 

PS:久しぶりに家族として話せること、楽しみにしておるよ』

 




EP9、ネタバレは避けますが、不満はあれど納得は出来ました……ただやっぱりEP8の尻拭い感がありましたが。

あとあるシーンを見て『あれこれ、第四次聖杯戦争時のサーヴァントくらいなら、マジでどうにか出来そうじゃねえ?』と思いました。

実はこの作中世界は型月時空から見ると剪定事象になっていたけど、新たな可能性を求めていたSW時空(フォースの意思)に吸収された(言わば接ぎ木した状態)というのを、考えています。
ので、フォースがサーヴァントに通じたり、型月太陽系がうっかりSW銀河の端に浮かんでるワケです。

さてこの世界のベン・ソロ君は、双子の幼馴染がいる限りダークサイドに堕ちることも光の誘惑に屈することもないでしょう。仮にそうなっても双子が(レイ以上の荒療治で)元に戻すはずです。
あと三人の間にあるのはあくまで兄弟姉妹の絆なので、誰かが別の人と結ばれても素直に幸せを喜び祈ります。

ちなみに双子のモチーフは、プリズマイリア版イリアとクロエ。

双子を誰かに殺されたりしたら?
そんときは、シスの域を超えたアナキン以上の最強のダークサイドの使い手が誕生して、ジェダイシス殲滅ルートに入るだけですから(フォースのバランス的には)問題ありませんね。

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