「なぁなぁ!物間君!チーム名決めようぜっ!」
「…何を言っているんだい?君は?」
『物間寧人』
豪華な「燕尾服」に革ベルトにバックルの様に付いた三つの「時計」の戦闘服。端整な顔立ちに呆れ顔を貼り付けて冷たく返事をしてきた。
俺達ヴィランチームは、貰ったヒーローチームの情報から各々の戦闘法・戦術を予想して対策。
先生に「ある作戦の許可を貰って」その準備も終わり、これからの戦い前に備えてストレッチをしていた。
「だってさ。せっかくコンビ組んだのに『Gチーム』なんて余りに味気ないじゃん?ここはババンっとカッコイイチーム名を決めてモチベーションを高めようかと思うんだけど…」
個性把握テストの有った日の帰り。一佳に言われた言葉を思い出す。
「他の奴に比べて距離があるんだよ…」
あの言葉を聞いてから彼のことを観察してみた…。すると、気付いた事がある。彼は基本的に静かだし、休み時間は一人でいることが多い。しかもだ、原作でよく見られていた煽る様な発言が殆どないのだ。
意外と彼はシャイなのかな?と思ったがそうでも無いらしい。俺や他の生徒が話しかけるとしっかりと話もするし、言動の端々から彼独特のユーモラスも感じる。それでもやはり、手短に会話を終わらせてしまう。
他の人から距離を取っている様子が如実に表れているように感じた。
よし!ここはチーム名を作って仲間意識を持たせる作戦に出るぞっ!
作戦名は…、そうだな…。
「チーム名を作って仲間意識を持たせる作戦」だっ!
うむ、読んで字の如く!シンプル・イズ・ベスト!
「馬鹿馬鹿しいね。…でも、君が決めたいなら好きに決めれば良いんじゃ無いかな?」
「ありゃ、つれない…」
…大佐、作戦は失敗のようだ…。
…大佐って誰だ?
しかし、チーム名を作ると宣言した手前、やめるのももったいない。何か考えよう…。
「うーん…よし!決めたっ!「チーム・サンジェルマン」ってどうよ?」
「…サンジェルマン?サンジェルマン伯爵から取ってるのかい?」
「そうそう!紳士っぽいのと道化師っぽいの居るから丁度良いだろ!それにヨーロッパに縁が有るところが益々いい!」
「…?なんでヨーロッパなんだい?」
「え?だって物間君って時折「バンド・テジネ」読んでるよな?だから、ヨーロッパに思い入れでも有るのかなって…」
「…なに、そんなに四六時中僕を観察してたの?」
「あっ!ゴメンっ、不快だったか!?ただ、せっかくクラスメイトになったんだから仲良くしたいなぁ…って思ってたらさ!?」
「…はぁ。…まぁ、いいよ。面倒くさいからチーム名それで」
「よし、決定だな!「チーム・サンジェルマン」頑張るぞ!」
結局の物間君は心を開いてくれませんでした。
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「すまんっ!俺のせいでっ!」
『
つなぎ服をベースに作られたコスチュームの彼は、今回チームとなった自らの仲間に頭を下げている。
「相手チームへの情報のリーク」
ジョーカー役の彼が持っているデメリット。「自分の手の内が相手に読まれる」ことがどれだけ危ない事か理解している彼は、この手痛い損失を悔いていた。
「ちょっと泡瀬っち!やめてよ!そうゆうのっ!アタシは全然気にしてないからっ!!」
露出の多い女盗賊風の格好をした取蔭が慌ててそれを制する。これから協力しあう仲間に距離感があるのは良くないと経験から知っている彼女は何とか彼にいつもの調子を取り戻して貰いたい。
「取蔭の言うとおりだ。あくまでも知られるのは“個性”の情報の極一部…。問題にはならないさ。それよりも、目の前のことに集中しよう」
『
全身を軽量級のプレートアーマーで覆った彼は、取蔭に同調する。
先生により、どれ程の量の情報が相手に流されたのかは判らないが…。少なくとも、“個性”の名前と効果は伝わっているだろう。最悪、発動条件や応用技まで知られているかもしれない。
しかし、なってしまったものは仕方ない。さっさと切り替えるべきだ。
「…そうだな。この分は戦力として巻き返すことにするよ」
「よし、すぐに作戦を立てよう!まずは互いの能力の確認からだな…」
ヒーローチーム3名は勝率を上げるために話し合いを進めていく。互いの持ち味から基本の戦術を決めていく。そして、議題はヴィランチームの戦術になるのだが…。
「…と言っても情報ってあまり無いよね?」
「そうだな…。まず『物間』だ。彼の“個性”について情報が全くない」
「個性把握テストでも“個性”使わなかったもんな…まぁ、俺もなんだが…」
「考えられるのは身体能力向上に応用出来ない“個性”…。例えば、幻覚出したりとか?」
「いや、決め付けるのは早い!回復系や防御系もあるし、探知系や変質系、場合によっては限定条件下でしか“個性”が使えないのかも知れない。ハッキリ言って相手の出方を見るしか無い」
「大入は「周囲に風を生み出していたな」。それが“個性”なんだろうな」
「けどさ?大入っちの戦闘服ケースって他の人よりデッカいよね?何が入ってたの?」
「着替えるときに聞いてみたんだが…「本番までのお楽しみな」ってはぐらかされちまった。くそっ!無理矢理にでも聞いとけば良かった」
「なんかズルイってそれっ!」
「結局武器らしい武器は腕の馬鹿でかい籠手だけで他には見あたらなかったな…」
「結局の所、情報が足りなすぎる…。「情報的不利」想像以上に厄介だな…」
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「さて…諸君!本日最後の戦いとなったっ!ヒーローチームCチーム with joker vs ヴィランチームGチームの戦いだっ!!」
最後の戦闘訓練。しかし、先程までの戦いの様に平等な条件下での戦いとはならない。
「joker ball」このルールが両チームに悪条件を突き付ける。
ジョーカーはヒーローチームに振り分けられ、「3人で勝負に挑む」。
2人で対処するヴィランチームには「ヒーローチーム3名の情報を与えられる」。
互いに異なるメリットを与えられた変則マッチ。その幕が上がろうとしている。
「…どっちが勝つべな?」
野生の巨漢、宍田がぽつりと漏らす。
「そーだなー…やっぱヒーローチームじゃねーか?数の有利は簡単には覆せねーだろ?」
それに答えるのは相方を努めた円場。
「…けど、ヴィランチームには相手の情報がある…。…完璧に対処したら、封殺も不可能じゃない…」
『そうだね。相性次第ではどうしようも無いときが有るからね!』
「…むうぅ…」
「しかし、真理だ。それに物間は未だに“個性”を使用した所を見ていない。相手には鬼が出るか蛇が出るか判らないだろう」
異を唱えるのは柳。それに賛同するは吹出と黒色。
「しかし、納得いきません!大入さんのこんな作戦を了承して宜しかったのですかっ!?先生っ!!」
「諦めた方がいいわよ、塩崎さん。先生が認めた以上、反則ではないわ…」
「…ん。でもいくらなんでもこんなペナルティーを背負って戦うなんて…」
「Yes…トテモRisky過ぎマス」
ヴィランチームの考案した戦術に納得のいかない塩崎。それを宥める小森・小大・角取。
「それにしても驚いたな。大入の“個性”がまさかこんな物だとは…」
「これは以外だよね。僕はてっきり風を使う“個性”だと思っていたよ」
「けど、これであの戦闘服ケースの理由に合点がいくな…」
「大入のケースの中身、マジで全部装備品だったな!流石にビビった…」
ヴィランチームの作戦から判明した大入の“個性”について議論を始める凡戸・庄田・鱗・回原。
「…ケッ。いくら装備が多かろうと扱うのは所詮一人の人間だ。そんなに上手く事が運ぶかよっ!」
「そうはいかねぇぞ。アイツは入試で0pのデカブツとやり合う程の男だっ!生半可な腕じゃ倒せねぇ…」
この戦いで見定めてやる…とモニターをにらみつける骨抜と鉄哲。
「…まっ、それでも勝っちゃうんだろうな…」
拳藤一佳は静かに呟いてモニターの向こうの彼を見ていた。