昼時の大食堂。雄英高校ではお馴染みの『LAUNCHRUSHのメシ処』、ここはヒーロー科の生徒だけでは無く、普通科・サポート科・経営科の全クラスが一堂に集まる広大な共有スペースとなっている。お昼時のピークともなると腹を空かせた育ち盛りの少年少女で賑わう。
幾つかのグループが立てる他愛ない会話のBGMに耳を傾けながら、待ち惚けを食らう少年が一人。『物間寧人』その人だ。少年の手には食事の乗ったトレイ、献立は「焼き魚定食」のようだ。
「悪い物間、待たせた!」
「遅れてごめ~ん!」
「いや、いいよ。そんなに待って無いしさ」
数分もしないうちに同じようにトレイを持った『泡瀬洋雪』と『取蔭切奈』が合流する。泡瀬の「山盛りのカレー」も取蔭の「牛丼」も出来立てで、食欲を刺激する香りを漂わせている。
この3名は朝のHRで議題に上がった。学級委員長を決める投票の集計をしていて、少し遅めの昼食となった。
「それにしても悪かったな…二人には集計手伝って貰って。正直助かったぜ」
「構わないよ。元々提案したのは僕だしね、当然さ」
「そうそう!アタシと泡瀬っちの仲だしね!全然気にしてないよっ」
「…それにしても集計結果、見事に偏ったよね」
「あぁ、もっとバラバラになるかと思ったけどな」
「でも、二人共熱かったもんね~。あんだけのもの見たら選んじゃうのも無理ないかな?」
「にしても泡瀬君?何で僕に投票したんだい?」
「ん?投票理由か?書いてあったけど朝のHRで進行が滞った時に、アイディア貰ったからな!あれはいい助け船だった…。まぁ、この話はその辺にしてさっさとメシ食っちまおうぜ!」
「…あれ?」
「どうした取蔭?」
「ほらあそこ…拳藤っちだ」
取蔭の指差す方を見るとそこには明るい色のサイドテールの少女『拳藤一佳』が居た。それだけでなく『柳レイ子』『円場硬成』『吹出漫我』も一緒に居る。
4名とも席について、談笑しながら昼食を取っている。
すると、こちらに気付いた拳藤が「こっちこっち」と手招きをする。
ボサッと立ち往生するわけにもいかないので、取り敢えずそのメンバーの方に移動することになった。
「お疲れさん。集計終わった?」
「ばっちりだ!物間と取蔭のお陰であっという間だったぜ。…相席してもいいか?」
「どうぞ、そのために呼んだんだから」
「そう言えば大入っちは?教室出るときは一緒…だったよね?」
「…大入…君は、さっきはぐれた…」
『大入くんはね。「今日はラーメンの気分だっ!!」って飛び出していったんだ』
「寄りにも寄って一番混んでる列に行かなくってもな-?ありゃ、暫くかかりそーだぞ?」
「…と言うわけで、福朗は置き去りにして、私達でさっさと食べちまおうって事になったのさ」
「大入君の扱いが雑すぎる…」
「けど待てよ?俺達がさっき窓口に並んだときには居なかったぞ?」
「じゃあ、きっとどっか別のグループに行ったか、先輩に捕まってるな…ご愁傷様」
「先輩?」
「…あぁ、言ってなかったけか。私と福朗が同じ中学校なのは話したよな?実はヒーロー科の二年にも中学時代の先輩が居るんだよ。その人…福朗の事がお気に入りでさ、捕まったら次の授業まで戻らないな…」
突如、誰かの携帯電話の着信音が鳴り響く。拳藤がポッケからスマートフォンを取り出すと画面をチェックする。幾つかの操作をして再びしまう。
「『見失った。見つけるの無理そ。先に食べちゃって』だってさ」
『もう、食べてるけどね』
「大入っち…」
「まっ、仕方ねーんじゃねーか?」
物間と泡瀬はそっと心の中で大入を哀れんだ。
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「うむ、完全に見失ったな…」
生徒のごった返す大食堂。俺は「塩ラーメン」を手に持ったまま佇んでいた。本来は一佳達とお昼の予定だったがラーメンが食べたくなり、一旦別行動。んで、そのままはぐれた…と。このままうろうろ一佳達を探すのもアレだな…麺が伸びるっ!
仕方ないな、一佳にはメールをして俺は孤独のグルメと洒落込もう。よし!メールを送信!
次は空いてる席を探そう…と思った矢先見つけてしまった。オレンジジュースを飲む眼鏡の少年・隣で白米を頬張る少女・モサモサした緑髪の後ろ姿。間違いない!…あれは
お 茶 漬 け トリオだーーっ!!
うっひょぉぉっ!!原作キャラだっ!入試でもチラッとみたけど本物だ!ヤバイ!
これはアレですよね!?「もう絡んじゃいなよyou!」って振りで良いんですよね!?よーし、俺行っちゃうぞ-!
「すみませーん!隣いいですか?」
「…!あぁ、すまない。どうぞ使ってくれ」
「ありがとう御座います」
飯田君に勧められて隣の席に着く。
うおおぉぉっ!隣の飯田君!生身に生声生飯田!開幕からテンションがおかしくなりそうなのを必至にポーカーフェイスで押さえ込む。
改めて3人を見る。飯田君の隣でポカーンとする麗日さん、緊張した面持ちの緑谷君。
そして、その隣でうどんを啜る。
…僕…ロリ?
「…ん?あっ!入試の時のおにーさんじゃないですか!その節はありがとうございました !!( ๑>ω•́ )۶」
「…えっ!なに、東雲ちゃん?知り合い?」
思考がフリーズしている俺を余所に会話は進む。
「…ふっふっふー。何を隠そう!この方が実技試験でお会いした、僕の恩人さんなのです ( ̄ー+ ̄)!」
「ということは!」
「はいです!デクちんと同じ0p敵を殴り飛ばした人なのです «٩(*´∀`*)۶»」
「「「何いいぃぃぃっ!!」」」
…うへぇ。
「…改めて自己紹介から。ヒーロー科1-Bの「大きな幸福、入って朗らか」『大入福朗』だ。よろしく頼む」
「あっ、僕1-Aの『緑谷出久』って言います。緑の谷に出るに久しい…」
「私1-A『
「同じくA組の『東雲黄昏』です。東の雲で「しののめ」、夕暮れ時の黄昏。僕ロリなんて呼んじゃあやですよ (´>ω<`)!」
「俺は同じくA組の『飯田天哉』。食偏に反るで「飯」に田んぼの「田」で「飯田」、天空の「天」に終助詞の「
「緑谷君に麗日さんに飯田君な、よろしく」
「ちょい!何故スルーしたし (。-∀-)」
「え~、だって僕ロリで記憶にインプットしちゃってるし…」
「ヒドい ((유∀유|||))!!
今すぐアウトプットして再インストールするです ٩( ๑`ε´๑ )۶」
((なんか馴染んでる…))
どういう訳か僕ロリが凄い突っかかってくる。コイツのお陰で、興奮気味だったさっきまでのテンションが一気にクールダウンした。落ち着いて会話できるけど…解せぬ。
そんなことに悶々していると飯田君が質問を投げかけてきた。
「さて、大入くん聞いても言いか?」
「何だい、飯田君?」
「君は本当にあの0pを殴り飛ばしたのか?」
「う~ん…。正確に言うと倒してないよ?」
「えっ?どういう…」
「あっちこっち何度もぶん殴ったけどさ。両腕全壊、履帯全損…けど、そこでタイムアップ。まだ、歩行自体は出来たし、相手に重火器が搭載されてたら、もっと抵抗されたろうね…」
「じゃあ、デクくんの勝ちだね!何てったって一撃でスクラップだもんね!」
そう言いながら麗日さんは粉砕!粉砕!と腕を振る。うっかり流しそうになるがツッコミ必要だよな。
「……………デクくん?」
「あっ、それ僕の事です。ほら「出久」って「デク」って読めるから…」
「あーなるほど。…マジかー…アレをワンパンかー…」
「大丈夫ですよおにーさん!あの時のおにーさんも格好良かったですよ (,,>᎑<,,)」
「うるさいやい」
「何でさっきから僕の扱いがヒドいんですか- ( º言º)クワッ!!」
「ボクッコ、キライ…ロリッコ、キライ…」
「ザ・偏見んんんっ ٩(๑`ε´๑)۶ムキーッ!」
「…なんて事だ。あの実技試験の構造を理解する者が他にも居たなんて!僕もまだまだ未熟ということか…。雄英高校に来てから僕自身の至らない点を痛感するばかりだ」
「「「『僕』…!!」」」
あっ、イベント踏んだ…
「ちょっと思ってたけど飯田くんて…坊っちゃん!?」
「坊!!!」
俺の入試試験の話に頭を抱える飯田君。そんな彼の失言に目聡く気付く3名。
彼等のGANRIKIに冷や汗を流す飯田君。その熱い視線に観念したかのように口を開く。
「………そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが…。
ああそうだ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」
「「「ええーー凄ーー!!!」」」「…凄いな!(存じておりますとも、ええ)」
「ターボヒーロー『インゲニウム』は知ってるかい?」
「もちろんだよ!!東京の事務所に65人もの相棒を雇っている大人気ヒーローじゃないか!!…まさかっ!!」
「詳しい…。そうだ、それが俺の兄さ」
「あからさまです!すごいです ฅ(º ロ º ฅ)!」
「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!!俺はそんな兄に憧れてヒーローを志した」
「でも、それだったら飯田くんも尚のこと委員長やりたかったんじゃないの?」
「「やりたい」と相応しいか否かは別の話だ。人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。…緑谷くんのここぞという時の胆力や判断力は『多』をけん引するに値する。だから俺は君に投票したのだ」
(君だったのか!!)
「大丈夫さ、君なら務まるよ緑谷くん。だからシャキッとしたまえ!」
「…うん!!」
「う~ん…」
「あっ!ごめんなさいおにーさん。置いてけぼりにしちゃって Σ(*゚д゚艸)」
「ああ、違う違う!大方、学級委員長決めの話だろ?ウチでも同じ事やってるし、大体予想は付いた。けど…」
「…?けど、なに?」
「俺からしたら飯田君も委員長の素質有ると思うよ?」
「…ドユコト ( ´•д•` )?」
「いや、会って数分もしない俺が言うのもアレなんだが…。要は飯田君は「自分よりも相応しいから緑谷君を推薦した」んだよな?それって「その方がクラスの為になる」って判断したんだよな?「決して利己的にならず、平等に冷静に、『多』の事を考えて」選択したって事にならないか?
だったら飯田君にも素質はあるよ。だって「皆の為に最善を尽くすこと」ができるんだから」
「大入くん…」
「なんて…少し屁理屈が過ぎたかな?つまるところ、飯田君にも良いところは有るんだよって話。僅かな時間しか交流してない俺が言うんだから、クラスメイトなら尚のこと実感してるんじゃ無いかな?」
「…ありがとう。自信が持てそうだよ」
「なんか初めて笑ったかもね飯田くん!」
「え!?そうだったか!?笑うぞ俺は!!」
「またまた~!テンさんはいっつもキビキビ張り詰めてるんじゃないですか~ (๑•̀ㅂ•́)و✧」
「キビキビっ!?」
穏やかな昼の一時。主人公組とも打ち解ける事が出来た良い日この日。
でも、俺は知っている。
『ウウ──z__ッ!!!』
鳴り響くサイレンの音
『セキュリティ3が突破されました』
だってこの日は…
『生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』