サクサク進めたいのに書きたいことが増えていくジレンマ。
『三名空中で爆ぜたーっ!!なんだこれ!爆発オチなんてサイテーっ!!!』
瀬呂に回収される爆豪。
全員が帰ってきた。
『早速上位4チームを見てみようか!!』
『1位大入チーム!!』
大入が獲得したハチマキを両手に握り締め高く掲げる。大入のパフォーマンスに合わせて歓声が湧き上がる。
大混戦の騎馬戦、大入チームの獲得本数は5本。全騎馬中の最多であり、仮に1000万点を奪われたとしても4位。勝利は約束されていた。
『2位爆豪チーム!!』
爆豪は激昂する。1000万点を手にする事が出来なかったのもそうだが、「最後の地雷による爆発」…あれは
あれは再現。
第一種目「障害物競走」で緑谷が行った最後の決め手。大入はそれすら模倣して見せたのだ。
──二の舞を演じる。
「クソ
2度目の煮え湯を飲まされた爆豪は屈辱に塗れていた。この瞬間、爆豪は大入を初めて「超えるべき壁」と認識した。
『3位鉄て…アレェ!?オイ!!!心操チーム!!?いつの間に逆転してんだよオイオイ!!』
3位に入ったのは騎馬戦中、丸で注目されていなかったチーム。騎手の彼『
『心操人使』
“個性:洗脳”
相手に暗示を掛けて洗脳状態にする。
それを使い、鉄哲チームのハチマキを掻っ攫ったのだ。自身が持つ、「“個性”を知られていないアドバンテージ」を大いに利用した立派な戦術だった。
しかし、洗脳され記憶を失った騎馬の面々。尾白、青山、発目の三名はその事実に気が付かない。何故自分が勝ったのかと困惑していた。
『4位轟チーム!!』
「くそっ…」
轟は悪態を吐く。大入チーム…大入に
もしの話だが、大入があのまま氷の外に完全逃走し、1000万点を0Pのチームに
あの極限の戦いでそこまでの点数管理が…やろうと思えば出来る。ランクを表示した掲示板には騎馬の合計点数が表示されていた。そこにポイントを獲得している騎馬は最終種目進出を決めた4チームしかいない。
後は「引き算と比較」なのだ。大入チームは1000万点の端数360Pをただ引くだけで良い。
そう言う芸当まで出来たのではないか?轟は懸念を強める。
氷樹の周りを飛び回り、轟と爆豪を誘導して、まとめて爆破するという離れ業をこなして見せたのだから。
『以上4組が最終種目へ…進出だああ───!!』
会場内に一際大きい歓声が湧き上がる。観客一同が皆の健闘を讃えていた。
『この後、一時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!』
『プレゼントマイク』の別れの言葉を皮切りに選手・観客一同が会場を後にする。各々、午後に備えて英気を養うためだ。
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会場から去る人の群れから離れた場所。学校関係者通用口に二人の影。緑谷出久と轟焦凍が居た。
「話って…何…?」
緑谷は問いかける。話しをするために呼び出されたのに、当の本人は彼を睨み付けたまま口を閉ざしている。
緑谷はその視線に威圧感を感じた。爆豪が常に燃え盛る「炎」の様な獰猛な威圧感であるなら…轟は「氷」、暗く冷たく何処までも底冷えするような静寂な威圧感。
今にも呑まれてしまいそうだった。
「お前らと居たあのB組の奴…アイツは何者だ?」
「…は?」
「俺はアイツに
緑谷はふと思い出した。轟は最後の一瞬まで左の炎を使おうとしなかった。それさえ使えば、大入の奪った絶縁体シートなど瞬く間に使い物にならなく出来たし、それ以外でも有利に運べる事柄は多かっただろう。
「…なぁ?お前は何かを感じなかったか?」
「…それ…つまり…どういう……」
「飯田も上鳴も八百万も常闇も麗日も…感じてなかった。最後の場面、あの場で俺だけが
──本気のオールマイトと
共感できる。緑谷は素直にそう思った。
「ヴィラン連合襲撃事件」、そこで目の当たりにした『オールマイト』と『改人脳無』の死闘…あの激戦を見ていたのは彼だけではないのだ…。
大入が轟からハチマキを奪うとき、あの時の彼は…。
「つまりアイツに同様の何かを感じたってことだ」
緑谷は今一度考える。あの時は勢いで騎馬戦のチームを組んだが…その実力は規格外だった。
結果として。1000万を一度も奪われず、ハチマキ3本を奪い、爆豪を三度撃退し、轟を二度撃退し、何度も周囲の攻めを防いでいる。彼の能力は計り知れない。
「まぁ、そんなことはどうでも良い」
「は?」
「お前、オールマイトの隠し子か何かか?」
唐突な話題変更に緑谷の頭が真っ白になる。頭には大会開始直前の轟が緑谷に向けて放った挑戦状を思い出した。
しかし、黙っているわけにはいかない…と緑谷は慌てて言葉を繋ぐ。
「ち、違うよそれは……。って言っても、もし本当にそれ…隠し子だったら違うって言うに決まっているから納得しないと思うけど、とにかくそんなんじゃなくて。…そもそもその…逆に聞くけど…なんで僕なんかにそんな……」
「「そんなんじゃなくて」って言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな」
少しだけ轟の表情に険しさが増す。
「俺の親父は『エンデヴァー』…知ってるだろ?万年No.2のヒーローだ。
もしおまえやアイツが俺には無い何かを持っているなら俺は……尚更勝たなきゃいけねぇ」
そして轟は語りだす。緑谷が想像すらしてなかった、轟の辛い過去の話だった…。
_________________
昼休憩中、LAUNCHRUSHのメシ処。食堂には生徒だけでなく、大会関係者等も昼食に訪れ、より一層の賑わいを見せている。この日のために調理スタッフも増員しているが、それでも追い着かず、一同フル稼働で動いていた。
そんな活気あふれる場に似つかわしくない物が一つ…1-Bのメンバーだ。第二種目、騎馬戦、蓋を開けてみたらB組メンバーは大入以外全滅…。
しかも、普通科・サポート科の生徒は頑張りを見せ、騎馬戦を通過。最終種目は正にA組祭と化してしまった。空気は沈みお通夜と化している。
B組協同戦線。彼らの敗因は仲間を集め過ぎた事と曖昧な結束力だった事だろう。
騎馬戦後半、最終種目に上がるために幾つかのチームとの足並みが合わずに仲間割れ。A組を充分に抑えることが出来なかった。もっと組織立って行動できたら、当初の目的も完遂できただろう。
そんなB組協同戦線。黒幕の物間寧人は…
「いやー参った。完敗だったよ」
笑みを浮かべていた。顔には絆創膏。頭・首・手の平に包帯をグルグルと巻き。手の痛みに苦戦しながらも食事を口にする。
物間の怪我は全身の至る所にあり、体力の消耗も酷く、『リカバリーガール』の治療は最低限。後は浅めの治癒を数回に分けて行うことになった。
「…なぁ、物間?」
「なんだい、鱗?」
「お前悔しくねぇのかよ?」
クラスメイトの『鱗飛竜』が尋ねると物間の笑みに影が差した。
「…確かに悔しいよ。
…でもさ、あの時の僕は全力だったんだ。持てる戦術、技術、能力、気力も全部注ぎ込んで…文字通り全身全霊を賭けて臨んだんだ…。
それでも負けた。彼らは僕の精一杯のその上を超えていった。
そこに言い訳を挿む余地は一切ないんだよ」
「…」
「でも、大丈夫。僕と彼らの距離はまだ短い。努力すれば追い着ける…追い越せる」
物間は負けた。しかし、それは僅差での話だ。自分の力量を感じ取るには納得のいく手応えだったのだ。
悔いもあるだろう、恥もあるだろう。しかし、それらを呑み込んでまた努力しようと、物間は気持ちを改めていたのだ。
「要はまた明日から頑張ればいいって事さ」
「…なんか、お前かっこいいな」
「そう?ただの負け犬の遠吠えだよ?」
「いや、そんなことねえよ…」
「…そうか」
そう言い終えると物間は口の中の傷に顔を顰めながら水を一口飲んだ。
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「ほい、終わったよ。グミお食べ」
「ありがとうございますリカバリーガール先生。グミ頂きます」
「にしてもお前さん随分やんちゃしたねぇ…」
競技終了後、俺は保健室に向かい『リカバリーガール』の手当てを受けていた。
障害物競走、騎馬戦。勝つためとはいえ、“個性”使用上限目一杯使って「武器の収集」「戦闘への使用」「風の力で飛行」をしていたのだ。俺の胃袋は限界だ。まぁ、彼女の“個性”の御陰で全快したが…。
『リカバリーガール』
“個性:癒し”
彼女の熱い口吻は肉体を活性化し、怪我を一気に回復させる。活性には怪我人自身の体力が必要。
「軽い胃潰瘍に、地雷による全身の擦過傷、後酷いのは右腕の火傷さね。しかも、怪我の大半が自滅って変な話ねぇ」
「うっ、そう言わないで下さい…。これでも“個性”はしっかりコントロールしているんですから」
“個性”の使用上限を上げるためには“個性”を限界まで使用して鍛える必要がある。
しかし、俺の“個性”の使用限界は「胃のダメージ」としてフィードバックされる。これがまた厄介な話だ。
胃とは言ってみれば消化器系の要とも言える部位。食事を消化・吸収し、体内へ栄養を巡らせる重要な働きをする。
そんな胃袋がダメージを受ければ、その分内臓器官の働きが鈍り、身体能力…特に自然回復力が目に見えて低下する。そんな面倒な仕様の“個性”なのだ。
原作読んでた時、A組の青山君の“個性”の事「なんじゃそりゃ」と笑っていたが…あれはもっとヤバい。彼は下腹部を押さえている事から小腸なんかの吸収系の消化器官にダメージがフィードバックされていると思われる。
回復が遅く、ジワリジワリと削られて行くのは、長期戦や連戦でかなりの痛手となるだろう。
最も、リカバリーガールの手厚い治療を受けられる現在には関係ない話であるが…。
「邪魔するぞ、リカバリーガール」
「おや、ブラドキング」
「先生…」
「やはり、ここに居たか大入」
「…俺に御用だったんですか?」
「あぁ、そうだ」
保健室に訪れたブラドキング先生。俺を見つけるなり、話し掛けてくる。…まあ、内容は見当はつく。
「何故
これだ…。今回の騎馬戦。唯一俺だけがB組から離れて騎馬を組んでいた。
「俺の戦術にA組の選手の“個性”が必要だったんですよ。御陰で騎馬戦も圧倒できました」
「あぁ、お前
「…っ!」
「お前が仲間ともっと協力すれば更に圧勝出来ただろう?」
「…教えて頂けますか?どのようにすればあれ以上の成果を?」
「…最大のポイントは大量のロボット。あれには肝を冷やされたが、あれは悪手だ。お前自身の“
次にお前が考案した飛行戦術。あれだって常時風を展開してまで、無理に飛行する必要は無い。騎馬に柳や塩崎を引き入れてしまえば良い。柳ならお前の出した「装甲板」を宙に浮かせて、それを足場に跳べばいい。塩崎なら腰に蔓を結び付けておけば、お前がロングジャンプした後に巻き取って貰う事が出来る。これに行動阻害の出来る骨抜や小森を組み合わせれば奇襲はもっと上手くいっただろう。
そもそも二部隊編成と言う発想が宜しくない。多方面から攻撃が来るこの騎馬戦で、防御を疎かにすると言う発想が危険だ。後半になる程ハチマキを持つ物は偏り、自然と狙われるのだから。実際にお前は、退場狙いの攻撃もされたんだからな」
「…」
「まとめるとだな…。お前が騎手になり、騎馬に骨抜・塩崎・柳を引き入れる。骨抜に地面に沈めて足止め。塩崎にはバリケードによる行動阻害、命綱としての移動補助。柳は「装甲板」を操作して貰い、防御全般と足場形成による移動補助。これが基本方針だ…。
A組の主要チームへの対処もそう難しくない。
先ずは1000万の緑谷。彼は防御優先の逃げ切り戦術になる。無理に狙う必要無く、疲弊した後半に包囲して叩けば良い。
次に爆豪。彼の飛行戦術は柳に装甲板を割り込ませれば大半を邪魔できる。騎馬の方は骨抜と塩崎で足止めするだけで足回りを殺せるし、回収用のテープに割り込めば退場もさせられただろう。
轟はもっと楽だ。雷撃には柳の「装甲板」による避雷針と塩崎による壁。氷の壁と拘束は全て骨抜で回避出来る」
「…凄いですね。そこまで思い付きませんでした」
「嘘をつくな。考え付いては居たんだろ?」
「…」
…確かに考えてはいた。
更に言うなら…。
まず、フィールドのど真ん中に陣取る。
次に骨抜に試合開始から10分程度掛けてフィールド
これに対抗できるのは。原作で発目さんのサポートアイテムを借りた飛行と黒影による攻防が可能な「緑谷チーム」、足場を氷で固められる「轟チーム」、単独飛行出来る「爆豪チーム」、遠距離がハチマキの強奪に直結する「峰田チーム」の僅か4チームだ。
後は柳さんと塩崎さんに足場を作って貰い、それを通路に攻撃を仕掛ければ良い。
首尾よくハチマキを回収したら。装甲板と蔓を集合させて、重ね合わせて編み込んだトーチカを作り、立て籠もる事で逃げ切りも出来た。
…でも。
「…なぁ、まだクラスメイトの事は
「
「そうじゃなくてだなぁ…」
ブラドキング先生は頭をガシガシと掻く。…考えて、言葉を選んでくれている。
でも、その気持ちを受け取ることは出来ない。
「信頼は
自分だけが破滅するならまだいい。もっと怖いのはその二次被害だ。
「ヴィラン二世問題」。犯罪者の子供というデメリットは非常に危うい。
何せそういう経緯を持った俺と交流を持つ言う事実自体がバッシングの対象になりかねない。深い繋がりを持てば持つほど相手にはそれ以上の迷惑を掛ける。俺の出生はそういうアキレス腱なのだ。
だから仲良くなりすぎては行けない。相手に迷惑だから。
ヒーローになるのだって「独立形態を取りやすい」というメリットを持っているからだ。
確かにヒーローは人気商売ではある。しかし犯罪を止め、正当な評価を受ければ報酬が得られる。アングラ系でメディアから離れるもよし、フリーで部下を持たずに単独行動するもよし、最悪流しの相棒として事務所を転々とするのも有りだろう。
兎に角、俺にとって周りとの適度な距離感はとても重要な事なのだ。
「…それはお前の経歴の事を言っているのか?」
「当然です。誰も好き好んでこんな脛に傷を持つ奴と連む必要はありません。相手にも迷惑ですから…」
当然、俺の出生は学校側も把握している。入学直後の二者面談でも話はしているし、何より天下の雄英だ、身元調査は厳重だろう。
「…すみません、午後に向けて準備もありますので失礼します」
強引に話を終わらせる。これ以上、ここに居たら感情的に喚き散らしてしまいそうだ…。さっきから頭の中で何を考えているのか分からなくなってきた。
俺は逃げるように保健室を後にした。
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大入の去った保健室。残っているのはリカバリーガールとブラドキングの二名…だけでは無い。
「やれやれ…難儀な子だねぇ。そうは思わないかい?」
「…」
リカバリーガールが椅子から立ち上がり、近くの医療ベッドのカーテンを開ける。すると、そこにはベッドに腰掛ける拳藤一佳がいた。その表情は暗く、悲しみを伴っている。
「随分と面倒な友人を持ったな…」
「…福朗は馬鹿なんです。親が悪者だからって福朗が悪者になるわけじゃ無いのに。…それを必要以上に気にして、周りを遠ざけて。福朗は周りと仲良くなれたと思ったら、ああやって自然と距離を取ろうとする。
独りは寂しい癖に、独りで居なきゃ行けないって意地張って、付かず離れずをうろうろする…そんな面倒な奴なんです」
拳藤は大入の秘密を知っている。「孤児」であることも「犯罪者の子供」である事も。
しかし、それを大入は知らない。彼の師であり親である『大屋敷護子』が三年前に拳藤にこっそり教えたのだ。彼の傍に居るなら必要な事だと…。
それ以来、拳藤はずっと大入の傍に居る。彼女が初めて行い、今も尚続き、完遂出来てはいない、たった一人のための「救済活動」。大入の闇は浅くは無い。
「私は福朗の力になれないのかな…」
活発な彼女。三年努力を続け、未だに彼を救うことが出来ない少女の弱音が漏れた。
「大丈夫だよ」
「そうだな」
「…え?」
少女の弱音に間を挿まずに異を唱える教師二人。彼女は思わず視線を投げかけた。
「だって、あの子はアンタから未だに離れては居ないじゃ無いか」
「…仮に君の話が本当なら、大入はもっと距離を大きく取るだろう。君と彼の関係は余りに近すぎる。心配ないさ、彼に取って君の存在は、思いの外大きそうだ」
「…そうですかね。…そうだといいな」
拳藤の願いが静かに溢れた。
余談 騎馬戦のポイント内訳
大入チーム 10,000,360p
鉄哲チーム 745p
爆豪チーム 705p
轟 チーム 650p
峰田チーム 570p
葉隠チーム 420p
物間チーム 325p
心躁チーム 270p
拳藤チーム 240p
小大チーム 230p
鱗 チーム 135p
角取チーム 80p
騎馬戦結果
1位 大入チーム 獲得点数10,001,385p
(大入、峰田、角取、拳藤、鱗の点数)
2位 爆豪チーム 獲得点数 1,450p
(爆豪、物間、葉隠の点数)
3位 心躁チーム 獲得点数 975p
(鉄哲、小大の点数)
4位 轟 チーム 獲得点数 920p
(轟、心躁の点数)