転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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お待たせしました続きです。




72:基本転生者は自重しない

「ショタ神いいいぃっ!!」

 

 

大入は二転三転と後ろに跳び、眼前の少年から距離を取る。

拳を構え直すと、一発の銃弾の様に全身を弾き出した。

 

 

「撃滅のっ!セカンドブリットぉっ!!」

 

 

二度目の自慢の拳。愉快そうに笑う少年の憎たらしい顔面に叩き込んだ。

 

 

「……ふん…」

 

 

少年は無造作に手を払うと、大入の拳擊は軌道を逸らし、真横に置かれた植木鉢を巻き込んで壁に激突した。

 

 

「抹殺のぉぉっ!ラストブリットぉぉぉっ!!!」

 

 

舞い上がった埃を突き破って、大入が最後の一振りを振り抜いた。

少年が人差し指を大入に向けると、指先を下に向ける。

すると、大入は不可思議な力場の前に、抵抗すら出来ずに地面に叩き落とされた。

 

 

「ぐあっ!!?」

 

「おにーさんっ (((°Д°; )))!?」

 

「やれやれ、喧嘩っ早いのう…。

昔のお主とは見違えるようじゃ。善き哉善き哉…」

「…ボス。流石にやり過ぎじゃあないですかい?」

「いやいや獅子王君。ちゃあんと加減はしとるよ」

「仕事中はコードネーム使って下さいよ、ボス…」

「すまんねライガー君」

 

 

そう言いながら少年は大入を拾い上げると、グレイトライガーと東雲の足元に放り投げた。

東雲は床に転がされた大入の元に慌てて駆け寄り、その体を抱き起こした。

 

 

「それと…。ボス、狭い部屋で暴れないで下さいよ。折角高い調度品使ってんですから」

「別にいいじゃろう?全部戻せるんじゃし」

 

 

そう言いながら少年は指を指揮棒の様に降る。

するとまるで時間が巻き戻されるかのように、散らばり、破壊された室内が修復され、遂には元通りの部屋になっていた。

 

 

モノ(・・)を大切にする心掛けってのを俺は言いたいんですよ…」

「部屋が…元通りに… ( ºωº )」

 

 

ライガーが少年に文句を吐き捨てると、大入に歩み寄り彼の容態を確認した。

調べると外傷は軽い打ち身程度で、大事には至っていない。しかし、強い衝撃によって昏倒してしまっているようだ。

 

 

「あ~あ、完全にノビちまってるね…。一先ず医務室に連れて行きますわ」

「うむ、目が覚めたらトレーニングルームに連れて来てくれ」

「あいよっ!」

 

 

大入を担ぎ上げると、ライガーは社長室を後にした。

部屋に残された少年と東雲。二人の間に暗い沈黙が流れる。

 

 

「さて、改めて自己紹介かのう。この『ネイチャーカンパニー』の代表取締役にして、『ヒーロー課』の最高責任者。

この儂が天災ヒーロー『ザ・ネイチャー』じゃ。よろしくのう…」

 

 

仕切り直す様に少年は明るい口調で自己紹介を始めた。

その様子に東雲の視線は険しくなる。

 

 

「……質問宜しいかしら?」

「なんじゃ?」

 

 

東雲の声から普段の無邪気さが消え失せ、以前大入に見せた、あの冷たい表情を浮かべていた。

 

 

「貴方…本当に神なの?私を(・・)…、いや彼もこの世界に連れてきた」

 

「早合点されては困るのう…。儂は神ではなく、その依り代(・・・)であるのに…」

「依り代…?」

「そうじゃ、お主等をこの世界に転生させた神。それが現実世界にアクセスするために用意された末端…それが儂じゃ。

言うなれば神の分身じゃな…」

 

「分身…」

 

 

神、世界、依り代、転生…。通常では聞くことも無いような符号が並び立てられる。

しかし、両者の間に齟齬は無く、言葉が交わされる。

 

 

少女『東雲黄昏』は転生者である。

前世では一社会人として世間の波にもまれ、日々を送る女性であった。

それがとある日に事故死。死後の世界にて目の前の神…正確には彼は端末の一つであり、その裏に潜む本体こそ彼女をこの世界に連れてきた張本人であった。

 

 

「…それで?そんな神様の使いが、何だって今更になって私達に接触してきたの?」

 

 

この世界にやって来て、早15年。

転生者としての記憶が蘇って、当に3年。

それだけの年月を過ごしてきた。現状に多少思うところがあるにしろ、満足のいく生活が出来ているのだ。

それが今になって、この神とやらは強引な手段を講じて彼等を呼んだ。いったいどんな思惑があるのか。

 

 

「いや、何。儂はな、お主等を一度鍛え直したいと思ってのう」

「……鍛え直す?」

 

「左様。だってお主等、自分の力を全然使えてないんじゃもの…」

 

「……何を言っているの?

確かに私はまだまだ未熟ではあるけど、“個性”を制御も出来ているわ」

 

 

前世と今世の違い。やはりそれは『“個性”』の存在だろう。

 

多種多様に分化した『“個性”』と言う名の超能力。世界人口の八割の人間がこれを所持、最早日常の中に浸透し、違和感なく受け入れられている。

誰にも負けない自分だけの唯一無二の“個性(能力)”。それを思う存分活かしたいという欲求は、人ならば誰もが夢想する。

 

そう言う世界だからこそ、敵が生まれ、英雄が生まれた。

悪の為に“個性(ちから)”を使い、

正義の為に“個性(ちから)”振う。

誰も彼もが“個性(ちから)”を振りかざす。

 

転生者から見れば相当に狂った世界だった。この世界は言い換えるならば、全ての人々が銃刀を持ち歩いる様なものだ。どこの世紀末だと言うのか…。

この世界で生き抜く為には「適応」が必要だった。いつ理不尽な危機が降り掛かるかも分からない世界。

だからこそ“個性(防衛手段)”の修練は転生者にとって必須項目と言えた。

 

結果的に東雲も大入も“個性”の扱いについて、かなりの練度を保持している。ヒーロー養成の名門たる雄英に合格出来るだけの戦闘力がそれを証明していた。

無論“強個性”を両親から受け継ぎ、素養もあった。しかし、此処まで駆け上がったのは他ならぬ彼女達の努力の結果だ。

 

 

「あ~違う違う。お主等に言いたいのはもう一つの“個性(ちから)”じゃ」

「………もう一つ?」

 

 

 

 

 

 

「そうじゃ…儂がお主等それぞれに付与した『転生特典』。それをまるで使えておらんからこそ、呼んだのじゃ」

 

 

しかし、二人の“個性”には、まだ先があったのだ。

 

 

────────────────

 

 

──……失敗した。

 

 

どうしてだ?

 

 

どこで間違えた?

 

 

如何すれば良かったんだ?

 

 

そんなもの分かっている。

 

 

答えは知っている筈なんだ…。

 

 

答えは…。

 

 

──……また失敗した。

 

 

どうしてこんな事も出来ないんだ?

 

 

なんでお前は役立たずなんだ?

 

 

なんでお前は無能なんだ?

 

 

………なんでお前なんかがいるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……知らない天井だ…」

 

 

口に出してから、はっとネタ被りだということに気がついた。自分って案外ワンパターンに嵌まりやすいんだなと、思わずショックを受ける。こういうネタに走る悪癖は簡単には直りそうに無い。

 

閑話休題。気を取り直して、現在の状況把握に努めることにする。

 

嗅ぎ馴れた消毒の匂いが鼻についた。ここが医務室に準ずる設備の部屋であることが十分に理解できた。

 

 

「…ここは?」

 

 

俺は職場体験の初日、件の研修先『ネイチャーカンパニー』に来た。そこで出会ったのは俺をヒロカアの世界に転生させた犯人。まさかのあのショタ神だ。

俺は反射的に殴り掛かったが、そこから記憶が無い。どうやら為す術無くやられたらしい。

 

いつの間にやら寝かされたベッドから身を起こし、周囲を観察する。

今自分が寝かされたベッドと同じ作りの物が4台、仕切り用のカーテンは開かれている。部屋の隅に薬品の入った戸棚が一つ、ガラス張りの戸の中には様々な小瓶が並んでいた。

 

 

「……いきなりエヴァネタを挟むの、おねえさんどうかと思うの…」

 

「…えっ!?」

 

 

慌てて声のした方を振り向く。するとそこには白衣の天使……ではなかった。

 

まだら模様に赤色の混じる長い黒髪。邪魔にならないように後頭部で一纏めにお団子にしたヘアスタイル。

その顔は目の下に隈、薄紫色の口紅、肌の色は少し青白い、そうなるように意図的に施されたメイクに加えて華奢と言うには細身過ぎる体付きが、彼女に病弱な印象を与える。

上から羽織るように袖を通した白衣の下には、ジャンプスーツに膝と胸部を保護するプロテクター、腰に巻いた多目的ポーチ。直感的にヒーロー職の人間だと理解した。

 

全体的には白衣の死神と言われた方が納得できる装いだった。

 

 

「…ボク?失礼な事考えてない?」

 

 

目の前の女性が目を細め、訝しむようにこちらを睨む。その視線にネットリと陰湿な物を感じた。

 

 

「い、いえっ!?スミマセン!顔色が悪そうなので過労かなと…」

「メイクのせいよ。私、病弱設定なの」

「設定て…」

 

 

設定言っちゃったよ、この人…。

オブラート無しの言葉に思わず項垂れる。病弱設定は紅月さんだけで充分ですよ…。

 

 

「……どこか痛むところはある?」

「いえ、特には」

「そう、ならいいわ」

 

 

香水の匂いがフワリと漂うと、その女性が目の前に近付いていた。

俺の体を触診し、怪我をしてないかチェックしている。骨が見え隠れするほどに細い指先が、体を優しく撫でていく。

 

 

「自己紹介がまだだったわね。

私は『チジュ』。ここで相棒(サイドキック)をやっているわ」

「やっぱりヒーローでしたか。俺は…」

「雄英ヒーロー科1年の大入福朗くんでしょ?体育祭、大活躍だったわね」

「き、恐縮です」

「…さて、問題ないなら合流しましょうか。取り敢えずコスチュームに着替えて貰おうかしら?ついてきて…」

 

 

チジュさんに先導され医務室を後にする。二人きりの廊下を静まり返った空気の中歩く。

 

 

「そういえば他の皆さんは?」

「施設内のトレーニングルームよ。ボクを医務室に連れてきたライガーは、ボクを私に預けてとっとと訓練に行ったわ。

もう、ああいうとこ無責任なんだから…」

「……でも美人さんに看病して貰ったので、個人的に俺得です」

「そう…褒め言葉として受け取るわ」

 

 

他の人の様子を聞くとチジュさんからはそう帰ってきた。ライガーさん、医務室に届けて丸投げて…。チジュさんは面倒事を押し付けられたせいか機嫌が悪く、呪詛を吐いている。

あまりに気まずい…機嫌をとってみるがどうにも芳しくない。

しかし、黙っているわけにはいかない。こちらも訊かなければいけないことがある。

 

 

「…あ、あの!」

「………何かしら?」

「何でエヴァネタを知ってるんです?」

「………」

 

 

ドラクエ、ロックマン、スーパーマリオ、○ォル○・○ィズ○ー…etc.この世界には転生前に存在した物の一部が変わらずに存在している。

しかし、知名度が少ないマイナー物になればなる程、中途半端に類似した物へと変わっていく。俺が使っている『スクライド』や『GEAR戦士電童』のサンライズシリーズなんかその最たる例だし、『スーパーロボット大戦』に至ってはタイトルが同じなのに中身は完全に別物になっている。

 

んでもってエヴァに関しては類似品までしか無い。何でかは知らんがそうなっている。

 

 

「…もしかして、貴方も俺と同じ境遇だったりしますか?」

 

 

俺のオタクネタに反応するって事は同じ転生者の可能性がある。

となれば一つ仮説が立つ。俺と僕ロリが呼ばれた理由は、俺達が『転生者』である為だ。

 

ショタ神が俺の前世の名前を言い当てたのに合わせて、聞き覚えの無い名を口にしていた。

『とうじょうじようこ』だったか?文脈から見ても、それが僕ロリの事を差した言葉で間違いない。

 

 

「察しが良くて助かるわ。そうよ、私も転生者よ」

「まじかー」

「というか、ここに居る相棒(サイドキック)は全員転生憑依組よ」

「マジですかっ!?」

 

 

白状した。それもあっさりと、何にも問題ないかのように。そんな彼女の答えに思わず素が出た。

序でと言わんばかりの追加情報に思わず頭を抱えた。この世界…メッチャ転生者おるやん…。

 

 

「…そうね、ざっと説明しましょうか?面倒だけど…」

 

 

そう言うとチジュさんは事情を説明し始めた。

 

どうやらショタ神…改めて天災ヒーロー『ザ・ネイチャー』は神の依り代らしい。所謂、安心院さんの悪平等(ボク)だったり、PAD入り女神の盗賊娘と同一の役割を持った存在。

彼の役割は送り込まれた転生者の総括。世界観や倫理観の異なる世界の人間が社会に適応するために経過観察をする役割を任されている……らしい。

そのショタ神の下で手足として動いているのが、このチジュさん達というわけだ。

 

 

「各々、転生憑依の事情はバラバラよ。

中にはガチモンのファンタジー世界から来てるのもいるし、他のホラーゲームみたいな世界から流れ着いた奴も居るわ。寧ろ、貴方のような原作知識持ちはレアケースね。普通なら世界の修正力やらなにやらが係るらしくて面倒なのだそうよ」

「あの…」

「あぁ、ストップ。原作知識は無闇に話さないこと。

あまり話しすぎると世界が歪むらしいから」

「はぁ…」

「それと、何で貴方達を呼んだのかも説明しないといけないわね…。

まず初めに。突然だけど、貴方達にはこれから『修業パート』に入って貰うわ」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

チジュさんに連れて行かれるままに、ネイチャーカンパニー内部にあるトレーニングルームへと辿り着いた。

バスケットコート2面分の広々としたスペース。そこには僕ロリとライガーさん、あのショタ神が居た。

 

 

「では…いくぞいッ!!」

 

「こいやあああァッ (屮゚Д゚)屮カモォォォン!!」

 

 

 

 

 

 

「そぉいッ!!」

   (  ´・ω) 

  γ/  γ⌒ヽ (´;ω;`)「うッ… 」

  / |   、  イ(⌒     ⌒ヽ

  .l |    l   } )ヽ 、_、_,\ \

  {  |    l、 ´⌒ヽ-'巛(  / /

  .\ |    T ''' ――‐‐'^ (、_ノ

    |    |   / //  /

 

 

 

 

 

 

「ぼ、僕ロリィーッ!!?」

 

 

目に飛び込んできたのはショタがロリに腹パンする光景だった。

あまりにも「よい子には見せられないよ」な光景になっていた。衝撃的な光景に思わず駆けだしていた。

 

 

「ショタ神テメェ!?ロリになんて事をッ!!

大丈夫かッ!?僕ロ……リ……?」

 

 

ショタ神の足元に腹を抱えて蹲る僕ロリ。

彼女の傍に辿り着いたものの、倒れた彼女に強烈な違和感を感じた。

 

 

「…ああ、大丈夫ですよおにーさん。僕は今サイコーに調子がイイですから…」

「お、お前…画風(・・)がッ!?」

 

 

僕ロリの顔を覗き込むと、その風貌見る影も無かった。幼女特有のクリクリと丸い印象は無い。以前仮面を剥いだ時の、抜き身の刃の様な鋭さは無い。

例えるならば『劇画調』。光陰の堀が深くなり、その全身に今までとは比較にならない風格を纏わせていた。

 

 

「凄い…ッ!?これが僕の中に眠っていた力ッ!!

丸で、今、この瞬間ッ!生まれてきたかのような生命の神秘を実感しているゥゥッ!!!」

「ま、待てッ!お前は何を言っているッ!?」

 

 

僕ロリが跳ね起きると、その勢いのままにショタ神を殴り付ける。彼女の渾身の一撃は、その小さな体躯からは想像もできないような馬力を発揮して、ショタ神を吹き飛ばした。

対し、そのままやられるショタ神では無かった。空中で器用に体勢を整え、怪我も無く着地した。

 

 

「……クハハハハッ!!良い塩梅のようじゃのおォ?折角じゃ、体験版として使って見るがよいッ!!」

 

 

ショタ神が愉快そうに笑うと、両手から青白い雷光が迸った。

それを振るうと、雷光は二本の鎗となって僕ロリ目掛けて放たれる。

 

 

「来いッ!『マスターハンド&クレイジーハンド』ッ…!」

 

 

僕ロリがそう叫ぶと、彼女の“個性”が現れた。

しかし、その光の拳は今までと違い、溢れ出るエネルギーを無理矢理拳の形に押し止めているかのように不安定で、尚且つ高出力の物に見えた。

 

 

「無駄ァッ!」

 

 

光の右拳が弧の軌道を描くと、アッパーカットで一撃目の雷鎗を弾き上げた。

 

 

「無駄ァッ!」

 

 

光の左拳が振り抜かれると、拳擊が二発目の雷鎗に重なり、鎗を地面にねじ伏せた。

そのまま、僕ロリは前進。ショタ神へと急接近した。

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!!」

 

 

ガトリングガンの様に苛烈な拳によるラッシュがショタ神へと殺到していく。

 

 

「WUYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!!」

 

 

僕ロリのラッシュにショタ神がラッシュで応戦する。拳同士がぶつかり合う度に衝撃が大気に伝播し、衝撃波となって全身にビリビリと伝わった。

 

 

 

 

 

 

「なんだ…これは…?一体全体ッ、何がどうなっているッ!!」

 

 

著しく世界観が崩壊していくのを感じた。俺の脳味噌はヤムチャ視点と化してて、置いてけぼり状態となった。

 

 

「おう、ジャックくん!目が覚めたか!」

「ライガーさん…」

 

 

突如として勃発したジョジョごっこに呆然とする俺。

グレイトライガーさんが、俺の傍に歩み寄り、豪快な笑い声を上げていた。

 

 

「…何ですか?これ?」

「あぁ、何でも嬢ちゃんの『転生特典』だそうだ」

「…転生特典?それって所謂、転生物のお約束って奴ですよね?転生に合わせてチートな能力をプレゼント…って奴」

「おう、それだそれ。

嬢ちゃんに付与された二つ目の“個性”…。

その名も“波紋法”ッ!!」

 

「…………………は?」

 

「特殊な呼吸法で生命力を向上させッ!太陽の力をその身に宿す力ッ!しかも“波紋法”の力は手足から放出し、水や油に伝播させることも可能ッ!柔軟で強い“個性”だな…」

「……………」

 

 

そう、僕ロリの能力を解説したライガーさん。

 

 

……。

 

 

あぁ、うん、そうだな…。

 

 

それどころでは無かった。俺は激情に任せて叫びたかった。

 

 

 

 

「ジョジョじゃねーーかっ!!?」

 

 

思わず叫んだ。

 

僕ロリに付与された転生特典“波紋法”は、俺が見間違えるはずないものだった。

前世に存在した漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の一部・二部で用いられた秘術。吸血鬼を殺すために主人公が学んだ技、それが波紋法。チベットを発祥とし、仙道に通じる秘術とされている。

 

そこまで考えて、ある重大な事に気付いた。

彼女の名前。確か…『とうじょうじよう(・・・・・・)こ』…。

 

 

………。

 

 

 

 

「やっぱりジョジョじゃねーーかっ!!?」

 

 

思わず二度叫んだ。

 

ショタ神、絶対にノリで転生特典決めてるよ、コレ!

 

 

「ふしゅー…… :( ´ω` ):」

 

「あ、力尽きたわ」

「あれま」

「僕ロリっ!?」

 

 

両手両足に頭、一つ追加でお腹。五体投地をプルスウルトラした、六体投地と言う名のうつ伏せでぶっ倒れる僕ロリ。

慌てて駆け寄り、再び抱き寄せる。彼女の様子を窺うと例のジョジョ状態は納まったようだが、目をグルグルと回して気絶していた。

 

 

「…まぁ、物理による強制発動ならこんなもんじゃろう」

「ショタ神ぃ…っ!」

 

 

ショタ神が衣服のホコリを払うと余裕綽々に俺達を見下ろす。その態度に思わず歯を食いしばった。

 

 

「さて、次はお主の番じゃ大入くん」

 

「……やってやる。僕ロリの仇、獲らせて貰うからな…」

 

「ほっほっほっ!やってみなさい」

 

 

僕ロリを抱き上げると部屋の隅へと連れて行き、優しく下ろした。

 

 

「…すみません。僕ロリをお願いできますか?」

「おう!しっかり守ってやるから!思いっきり揉まれてこい」

「どうせ面倒見るのは私でしょ?」

「ガッハッハッハ!頼んだぞっ!」

「チジュさん、お願いします…」

「…しょうが無いわね。お姉さん、カワイイ子のお願いはなるべく叶えることにしてるの…」

「ありがとうございます」

 

 

二人の相棒(サイドキック)に彼女を預けると、再び部屋の中央…ショタ神の正面に対峙した。

 

 

「…始める前に一つ質問じゃ」

 

 

ショタ神が問いかける。その顔は童心と好奇心隠しきれない、少年の年相応のものだった。 

 

 

「…なんだ、ショタ神?」

「お主、チジュから説明は受けておるな?今回の研修…その目的を」

「…俺達を一段階上に押し上げるための修業回…そう聞いてる。まさか、それが転生特典だとは思いもしなかったが」

「左様。

しかし、お主の転生特典は一体何だったと思う?」

「………“波紋法”って事は無いよな?」

「当たり前じゃ、あれは彼女に適正が有ったからこそ、付与したんじゃ。お主には同じ事は出来んよ。

第一にお主は“もう一つの個性”を使っておるわい。無意識下の不完全なレベルではあるがのう」

「…は?」

 

 

彼の一言で張り詰めた空気が破裂しまい、思わず声が漏れた。

なんて言った?

俺が転生特典を既に使っている?

 

 

「疑問に思った事は無かったかのう?

雄英高校入学試験の実技。何故あのデカブツを殴り飛ばしたお主の体は無事だったのか?

雄英体育祭の最終種目二回戦。何故あの回避不可能な攻撃を回避し出来たのか?

同じく決勝。何故あの準決勝で重傷を負ったにも関わらず立ち上がることが出来たのか?

その時、お主には『説明不可能な力』が働いてはいなかったかのう?」

 

「それは…」

 

 

確かに疑問に思った。あれらの瞬間は自分の限界を超えていたと思う。しかし、それは火事場のクソ力の様な物と考えていた。

 

 

「言わせて貰うがのう、大入くん。それこそがお主の『転生特典』じゃ」

 

 

しかし、ショタ神はそれを否定する。それは転生特典なのだと、“個性”なのだと言ってきた。

 

 

「名は体を表すとはよく言ったもんじゃのう…。お主の転生特典は、お主の前世…願いと記憶から生まれた“個性”じゃ」

 

 

ショタ神が、一度呼吸を整えた。そして、こう告げた。

 

 

「お主の“もう一つの個性”は…。

お主が思い描く、理想のお主になれる“個性”じゃよ」

 

 

ショタ神が悪戯っぽく笑った。まさしく、この状況を楽しんでいやがった。

俺は無言で拳を構える。既に戦いの準備は出来ていた。

 

 

「先ずは、思うがままに暴れてみるが良いっ!!全力で遊んでやるからのうっ!!」

 

 

ショタ神の掌から炎が生み出る。

 

そして業火が俺を襲った。

 

 

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