今回は『ラブライブ!〜いつでもそばにいる君と〜』を書かれているアラタ1021さんです!少し大人にだなんて……/////破廉恥ですぅ!(大歓喜)byシベリア
ハーメルンで活動させてもらっている作家のArataと申します笑 絵里推です、たまに見かけるかもしれませんがよろしくお願いします
「明日の日曜日なんだけど、時間あったら車見に行かない?」
「は?車ぁ?」
十二月。
都内では連日気温が五度を下回り、雪もしばしばエアコン無しでは過ごせなくなりつつあるこの季節。
絵里の進路が決まり、おれもそろそろ目標を定めて考え始めなくてはならないと思い始めていた矢先。勉強を終えたおれの元にやってきた絵里が唐突に言い放ったのだ。
今いるのは香川家のリビング。横長のソファに隣合って座り、勉強を終えたばかりで少し崩れた姿勢になってしまっていたおれは、あからさまな反応で聞き返したところ。
「ええ、車。ちょっと見に行きたくて」
「なぜまた突然?」
一応理由を聞いてみる。
いきなり車って、こちとらびっくりなんだけど。
まぁ、そりゃ確かに絵里は今年で十八歳。すなわち運転免許が取れる年齢になったわけだし、女の子でも車を運転する昨今気になる話題でもあるのだろう。
意外といえば‥‥かなり意外だけど。
「まあ、端的に言えば欲しいからなんだけど」
「そりゃあそうだな」
「一応私が通う予定の大学は二年生から車での通学ができるって、入学案内にも書いてあったわ」
「ふぅん。そういう経緯か」
「でも、車なんて初めてだから一人で行くのが不安で‥‥。 お願い! 一緒に来てくれない?」
顔の前で両手を合わせ、可愛いくお願いの表情を作り出す絵里。伺うような表情と、懇願するように開いた綺麗な片目。
おれももう時期受験生になるわけだし、できる限り勉強以外に時間を割くのは避けたいところだが‥‥。
こんな顔してお願いされたら、断れたもんじゃない。
「別にいいけど‥‥。明日いきなり買うの?」
「そんなわけないじゃない。とりあえず下見よ下見。まだ免許も取ってないんだから」
「なるほどな」
日常談が何気なすぎて、つい不必要な砕けたことを聞いてしまう。
明日かぁ。一緒に車を見に行くってことは、一応‥‥絵里とデートできるってことになるのかな?
まあまあ、そんなことを考えずともここんとこ進路を意識しすぎて疲労も溜まっていたことだし、ついでに断る理由もない案件。俺だって、いつか車の免許とるわけだしな。
しゃーなし。付き合ってやるか。
「んま、特に予定もないし行ってみるか」
おれは澄ました声で了承した。
そんなわけで明日の日曜日、俺と絵里のカーショップデートが始まる。
※※※
ーー都内某所。
駅前のロータリーで絵里を待つ俺の姿があった。我ながらおしゃれなコートに身を包み、一応スタイリングしてきた髪型をスマホのインカメラで再三確認する。
やはり日曜日。しかも駅前というのもあり、辺りはおれのように待ち合わせをする者の他、ほとんどがカップルや家族連れで埋め尽くされていた。
買い物にはしゃぐ子の手を引く家族連れ。
クリスマスが近づきいちゃつき始める数多のカップル。
少し遠くには、五人ほどの学生の集団があった。年末も近いし、カラオケにでもいくのだろう。
人間関係には色んな形があることをこの光景を見て改めて感じつつ、俺は道行く人の中から待ち人の姿を探す。
言っちゃあなんだけど、今この辺を歩いている連中なんかより絵里の方が数億倍可愛いから、近づいてきたらすぐ見つかると思う。
ポッケに入れたスマホを取り出し、ホームを一押しして時間の確認をする。
時刻は約束の十分前。少しばかり早く来すぎたかもしれない。
ま、絵里もああいう性格してるから遅刻することはほとんど無いが、わざわざ先に来て待ち時間を作るほど品行方正でもないので恐らくは約束の時間に来ることだろう。
早く来てしまった分少し暇だけどね。
どうしよう、なんかゲームでもしてようかな。
そうこう考えてどうにか手持ち無沙汰を解消しようと試みる。
が、スマホ取り出そうとポケットへ手を突っ込んだ矢先、おれのチャンカパーナはやってきた。
「お待たせナオキ。ごめんね、誘った私が遅れるなんて」
待ち人。ーーことおれの彼女は小走りで、その長い髪を揺らしながらおれの眼前へと現れた。
彼女は透明感のある青い瞳でこちらを見つめ、申し訳なさそうに謝りの言葉を言う。
うん。その姿を見て改めて思うけど、やっぱりそこら辺を歩く女の子よりも絵里は断然可愛い。
「や、別に大丈夫。おれも二分前くらいに来たし、そもそもまだ約束の時間よりも前だしな」
彼氏と言えばこれ。待ち合わせの決めゼリフ、というか言ってみたかった台詞を照れ隠しの表情で言ってみるおれ。実際はもう十分前から待ってたけどな。そこはかとなく悔しいので内緒にしておこう。
「そっか、なら少し安心」
少し笑ってみせる絵里。
何気なく正面に立った彼女からはやはり女性らしく、それでいて俺にとってどこか落ち着ける芳香が香っていた。シャンプーや、微量の香水が混ざりあった香り。それは絵里、否。おれの彼女の魅力をより一層引き立てる材料。
それと何よりおれを刺激するのは‥‥いつもちょっと違う見た目だ。
どこから説明していいのか分からんが、まず目を惹いたのは髪型。
何万回と見てきた見慣れた金髪は、いつものようにポニーテールではなく完全に下ろされた状態になっていた。
長くしなやかな、それでも枝毛一つない絵里の髪。
女の子の髪型はよく分からないけど、いつものストレートと違い毛先の部分にはゆらゆらとしたウェーブのような加工がされてある。
‥‥綺麗。おれの感想は実に単純なものだった。
なんというかな、見た目やらスタイルが良いせいか普通に芸能人とかモデルみたいな雰囲気のあるやつだ。
もし何も知らずにモデルだと名乗り出られたら手放しに信じてしまいそうなものである。
まあ、実際スクールアイドルではあるけど。
続いて服装だが、こちらもいつもよりおしゃれな感じがする。
上位はクリーム色が基調になったユキノコ柄のシンプルなセーターを着、下衣はスタイルの分かりやすいピチッとしたジーパン。
悪く言えば地味目で、特に飾り気もない服装。だが、確かに俺の彼女は美しかった。顔やスタイルがいいせいか、これ以上ないくらいに着こなしている。
「‥‥髪型」
「え?」
「その髪型、すごい似合ってるな」
「なっ、あっ、ありがと。なんか、いつもよりいきなりね‥‥」
いきなりって言われても‥‥。他にタイミングはあるのだろうか。
彼女はおれの言葉に頬を桃色に染め、あからさまに目を逸らした。
そんな彼女の手を、おれは何の前触れもなく握る。指を絡め、いわゆる恋人繋ぎ。
「わっ、も、もう。今日ちょっと大胆過ぎない?」
「いいのいいの。さ、行こっか」
少しわざとらしく、おれはデートへと持ち込む。最高に可愛い彼女を連れて。
※※※
一件目のカーショップは、おれと絵里が落ち合った駅前の近くにある割と有名なメーカーの店舗。
一応今日は複数の店舗を回っていく予定だが、絵里の欲しい車のジャンルが分からないため一件目は一通りいろんな種類を展開するメーカーを選択してみたつもりだ。
二人手を繋いだまま、自動ドアをくぐり抜ける。
するとすぐにコンシェルジュがおれ達の元へ近づいてきた。手もみをしながら、いわゆる商売人の笑顔でこちらへ声をかけてくる。
「いらっしゃいませお客様。本日はどのようなお車をお探しでしょうか?」
「あっ、えっと‥‥、絵里、決めてる?」
「そうね‥‥。一応下見に来た感じなので、細かいところまでは決めてないんです。良かったら、どんな車種があるか拝見させてもらってもいいですか?」
分からず絵里に振ると、彼女はスラスラと会話を始めオーダーを告げる。
あ、決めてなかったんだ。まあ、それもそうだよな。初めて車見に来た訳だし、いろんな種類が見ることが出来た方がおれ的にも助かる。
絵里がコンシェルジュとやり取りを済ますと、早速彼は案内を始めてくれた。
「かしこまりました。それではご案内させていただきます。こちらへどうぞ」
「は、はい」
絵里も初めての経験で少し緊張しているのか、一度深呼吸をしていた。
そうそうする買い物でもないしな。無理もないだろう。
そんなやりとりがあってから、おれと絵里はしばらくコンシェルジュの案内に従って店内を見て回った。客層フロアは二階まであり、軽自動車から普通四輪、小型のスクーターやバイクに類する商品まで幅広く品揃えがされてあり、オプションのタイヤやらハンドルカバーを始めカーナビなどの様々なツールも別途で販売されているらしい。
店内の照明は白色のせいか雰囲気は全体的に明るく、おれと絵里の他にも数組の客が他のコンシェルジュに案内され車を見て回っていた。
その客のうち一組が家族連れだったのだが、優しそうな両親二人が子供を連れていた光景を目にしてついつい、おれと絵里もいつかあんなふうになるのかななんて想像してしまい、少し顔が熱を覚える。
想像しちゃうんだよねぇ、こういうの見ると。
「こちらが当店イチオシの車種でございます」
「へぇ、軽なのに大きいのな」
「そうね。私この車好みかも」
コンシェルジュによって案内された車種は、昨今話題のいわゆる電気自動車。いまさら説明するまでもないが、通常の車と違ってエンジンに使用する動力がガソリンではなく電気になったものである。最近では数も増えてきており、そこそこの値段で販売されているため若者に人気がある。
「絵里さ、色とかはどんなのがいいの?」
「そうねぇ‥‥。個人的には薄色がいいかな。白とか、水色とか」
「うーむ。なるほど」
何気ない会話。特に見つめ合いながら話したわけではないけど、彼女の幸せそうな横顔はおれの頭に焼き付いた。
い、いつかこの車で絵里と旅行とか行くのかな‥‥。
不意にそんなことを想像して俺は無意識に頬を染めてしまう。
そして気づけば、絵里も何故か幸せそうに頬を赤らめていた。
もしかしたら、絵里も同じこと考えてたり‥‥。
いや、想像だけにしておこう。
※※※
それからしばらくして一件目のカーショップを後にしたおれと絵里は、秋葉原から電車で二駅ほどの地点にある中古車販売店へとやってきていた。
「おお、結構多いんだな〜」
「そうね。なんだか展示場みたい」
おれと絵里は敷地外からその全貌を一見し、揃って感嘆の声を上げる。
その店の雰囲気は先程の店とは大きく異なり、中古だけに車の量や種類、そして規模も圧倒的に大きい
先程のようにコンシェルジュが出向いてきそうな高級感こそないが、おれや絵里のいわゆる庶民的感覚にはそぐわれる。
店舗全体の面積はかなりの物で、販売以外にも奥の方で修理や洗車も行えるらしく、かなり車に特化した場所になっていた。
「どこから見たもんかな」
「そうね、とりあえず軽で絞ってみましょ」
そんな絵里の意見により店内の案内掲示板に沿って歩き始める。先程の店と違い、店舗の規模の割には客数は少なく、ついでに屋外のためかかなり落ち着いた雰囲気さえあった。
しばらく歩き回り、ようやく軽自動車の売り場が見えてきた。敷地の広さだけに販売している車の幅も広く、かなりの品揃え。さてと、どれから見たものか。
「あ、あれなんか可愛いかも。見てみましょっ?」
「お、おう」
おれが車の量に若干狼狽えていると、絵里は好みの車種を見つけたのかおれの手を引いて歩く速度を早めてきた。
どんどん見えてくる数々の車。そんなものに目をくれることもなく、おれは絵里のいつも以上に魅力的な笑顔に惹かれっぱなしだった。
てかこいつ‥‥。何でこんなに可愛いんだよ! そんな謂れのないことを思い始めるおれ。
カーショップということ以外はいつもとさほど変わらないデート。なのに、彼女はなんでこんなにも魅力的なのだろうか。
なんだかペースをもっていかれているようだ。
「なあ絵里?」
「何?」
手を繋ぎ、並んだ軽自動車を見ながら声をかける。
「ダイスキ!」
「なっ! なによいきなり!」
「ちょっと言ってみたくて」
「もう、不意打ちしない!」
ペースを掴まれた仕返しとばかりに、予告無しに言葉を放ってみたところ効果は覿面だったらしい。
林檎みたいに頬を赤く染め、可愛らしい反応を見せてくれる絵里。
よしゃ。仕返し大成功!
そう心で思い、一通り満足したところでいつもの会話へ戻る。
「もしおれが免許とったらさ、おれは君と旅行に行きたいな」
おれは数多の車を眺めながら言った。
「そ、そうね。‥‥私も、よ」
「ガソリン代は絵里持ちで」
「台無し! 今の雰囲気なんだったのよ!」
「あはは‥‥。おれ達相性いいよな! ボケとツッコミに関しては特に」
「今そんなこと言うところじゃないでしょっ! 雰囲気返しなさい!」
カップルらしい浮いた雰囲気にしてからの手のひら返し。
あっはっは。やっぱり、この子といると楽しい。幸せというより、まるで家族みたいな落ち着きがあるんだよね。
※※※
結局、二軒目の中古ショップでは軽自動車関連のパンフレットを幾冊貰うだけで終了した。
時刻は午後四時。真冬の太陽は短く、この時間でも既に日が傾き始めていた。
なんというか、今日はすごく楽しかった。
なんだかんだ言って久しぶりの絵里とのデートだし、なにより車を見に行くってのが新鮮で良かったのかもしれない。
かなり前から一緒にいるせいか、車を運転できる年齢まで一緒にいた事を考えると、少し感慨深くなる。
「なあ、絵里」
「何?」
帰りの電車を待つ駅のホーム。
おれは何の前触れもなく彼女の名を呼んだ。
「今日は、楽しかった。ありがとう」
「急に真面目ね。私もよ」
「そっか、それは良かった」
おれは、おれ達は、いつまでも二人で歩いていく。
「次は、二人で同棲する部屋探しに行くか!」
「ふふっ。悪くないわね」
肩と肩を優しく寄せ合う。
冬の夕日に照らされた、二人の影が笑った。
Fin
いかがでしたでしょうか? 自分は企画参加が初めてなので、人の主人公を動かすという作業に不慣れだったので少し違和感はあったかもしれませんが、少しでも絵里が可愛いって思っていただけたのなら幸いです。一応自分の作品もこのサイト内にあり、今のところもう一人の作者さんの企画にも参加させてもらう予定ですので、その時は是非暇つぶしにでも読んでやってください笑