後半1発目です。
期待に添えるかわかりませんが、全力でナオ絵里の絡みを書きました。
楽しんでいただければ幸いです。
「おとーさん! 灯里、遊園地いきたい!」
ナオキが幼い少女にそう言われたのは突然のことだった。
「そうだな……最近、一緒に出かけてないから行くか! 絵里も行くよな?」
「当然よ。ナオキと灯里で行って、わたしだけのけものにするなんて許さないんだから」
「やった! おとーさん、おかーさん、だーいすき!」
ちなみに絵里から灯里と呼ばれたこの少女、当然だが攫ってきたわけではない。ナオキがロリコンであることも……たぶんないと信じたい。
灯里はナオキと絵里の愛の結晶、ふたりの娘だ。今年、小学生になった彼女はナオキと絵里の愛情を一身に受けてすくすくと成長していた。
色白で、将来美人になることを今から感じさせるかわいさは絵里から。肌の白さに映える黒髪はナオキから。他にも2人のいいところばかりを拾ってきたと言っても過言ではないような灯里は2人の自慢だった。
そして翌日、彼らはDDT、Dream Dome Tokyoと呼ばれる屋外遊園地に遊びに来ていた。
「さあ、灯里、最初なに乗る? なんでも好きなやつ言ってくれ」
場内の案内マップを灯里にわたし、決まるのを待つナオキ。
「ここ、前もよく来たな」
「ええ、私とナオキの2人でね。
まさか、娘とここに来るとは思わなかったわ。今の家からだとちょっと離れてて、行きにくいから、引っ越したあとは来なくなっちゃったものね……」
「ああ、そうだな……ひさしぶりに手、繋ぐか?」
どちらからともなく、おもむろに手を合わせようとする2人。
そこに……
「2人だけずるーい! 灯里も手、つなぐー!」
2人の間に入ってそのまま手を繋ぐ灯里。彼女の表情からは、幼いながらもなにかしらの感情を抱いていることを伺える。
予想外の邪魔に少し驚くが、すぐに優しい表情で灯里を見た。そのときの2人はまさに親であった。
直接2人で手を繋ぐことはできなくなったが、2人の大切な子供がずっと2人をつなぎとめてくれる――絵里とナオキの間で2人と手を繋ぐ灯里の様子はそんなことをナオキに思わせた。
「それで、なに乗るかは決まった?」
「うん! この動物の!」
「えっと……ああ、アニマルアドベンチャーか。よし、行くか!」
灯里が最初に選んだのは船型の乗り物に乗ってジャングルの中を探検するというアトラクション。ガイドが行く先々にいる動物について解説してくれるらしい。
「はーい、今日担当させていただく早瀬めぐみです。少しの間ですが、よろしくお願いしますね」
「よろしくおねがいします!」
灯里が元気よくあいさつした。
「はい、元気のいい挨拶ありがとうございます。でもね……元気よすぎてこの船から落ちちゃうと……」
「お、落ちちゃうと……?」
「お水の中にいるさめさんに食べられちゃうかもしれないから気をつけてね」
「き、気をつける……」
少し怖そうに身を丸めた灯里はそう言いながら絵里とナオキの間にすわり直し、絵里の手を握った。
「ふふふ、あらあら……大丈夫よ、お母さんもお父さんもついてるからね」
「う、うん……」
そんな様子を微笑ましく見つつ、ナオキはめぐみとアイコンタクトをとる。彼女はやりすぎちゃいました、と言うかのようにほんの少しだけ舌を出した。
「おお、灯里! 灯里がすきな狐がいるぞ!」
「え? どこどこ?」
「あ、お父さんよく気づきましたね。あの木の上にいるのがそうですよ。
灯里ちゃんと一緒でこのジャングルのアイドルです」
「えへへ。でもアイドルはおかーさんだもん」
「そうなの? 灯里ちゃんもかわいいよ」
「ううん、おかーさんね、昔アイドルやってたの! みゅーずっていうんだって!」
「へぇ、そうなんだ! すごいねぇ!」
めぐみはμ'sのことを知っていたようだが、騒ぎにならないように上手く話を流した。
「ここにいるのはゾウさん。でも、突然入るとお水で攻撃してくることも……今日は大丈夫かな……?」
緊張した面持ちでより強くナオキたちの手を握る灯里。
そして……
――パオォォン!
「わあぁぁ! ゾウさん怒らせちゃった! 急いでここを出ないと!」
「ゾウさんごめんなさい!」
灯里はゾウにきっちり謝った。
その後もライオンやサイなど様々な動物のところを回った3人は昼食のためにレストランに入った。
「灯里、なに頼む?」
「んとね〜、これ!」
灯里が指したのはDDTのキャラクターをモチーフにしたお子様ランチだった。
「ハラショー! かわいいわね」
「でしょでしょ~!」
楽しそうな灯里をみて笑顔になる2人。
「おとーさんたちは?」
「私はこのセットにしようかな」
「じゃあおれはもう一個の方で。絵里、少し交換しようぜ」
「ええ、もちろん」
「ずるい! 灯里も~!」
「おう、みんなで分けような」
笑顔を見せる灯里。料理を食べずともこの笑顔だけで二人の気力は十分回復するようだった。
「お待たせしましたー!」
最初に運ばれてきたのは灯里のお子様ランチ。メニューで見たときの通り、キャラクターをしっかり再現していて料理の盛り付けとは思えないくらい可愛く盛り付けられていた。
「はらしょー!」
絵里の口癖は灯里にもしっかり受け継がれていた。
「いいわよ、先に食べて」
「うん、いただきます! はむ……」
「どう? おいしい?」
「ふん! ふごふおいひい!」
口の中にものが入ってるうちにしゃべったため何を言っているのかいまいちわからなかったが、言いたいことは伝わった。
「そうか。でも口の中に入ってる間はしゃべらない方がいいぞ」
「んく……はーい」
今度はしっかり飲み込んでから言った。
そうこうしているうちに二人の分の料理も運ばれてきて、3人はゆっくりと食事をとった。
「午後は何乗りたい?」
絵里にそう聞かれた灯里はまた園内マップを広げて悩み始める。
「んーっと、んーっと……」
しばらくにらめっこし続けた灯里は
「これ!」
とあるアトラクションを指さした。
「こ、これ……?」」
「ほ、本当にこれ乗るのか……?」
灯里が指さしたものを見て親が2人とも固まった。
「え……? だ、だめ……?」
「う、ううん! 全然いいわよ!」
「あ、ああ、もちろんだ……」
「よかったー! じゃあ行こっ!」
真ん中にいる灯里がナオキたちを引っ張って先を急ぐ。
そんな状態でも親2人はまだ動揺を隠せていなかった。
(どうするのよ、これ)
(そんなのおれらが我慢するしかないだろ。でもなんで灯里、よりによってあれを……)
(本当にね……)
アイコンタクトでこんな会話をしているうちに連れてこられたのは『ゴーストコースター』と呼ばれるアトラクション。幽霊屋敷に迷い込んでしまった人たちが壊れたおもちゃの車に乗せられて、屋敷の中を冒険するというもので、要はおばけ屋敷+ジェットコースターというナオキと絵里、それぞれの苦手なものが合わさったアトラクションだった。
いかにも、という外見にさっそく怖気付く絵里。だが、親としてのプライドからかナオキに泣きつくことはなかった。
一方、ナオキはというと……
ーーキャー!
「っ!! だ、大丈夫、大丈夫……」
落下の時の悲鳴、喜んでいるのかもしれないが、だけですでに怖がっていた。
それでも何とか堪えているあたり、ナオキも親としてのプライドが出てきたのかもしれない。
「なにしてるのー? 早く行こうよー」
「え、ええ、そうね」
「お、おう、い、行くか」
「うん!」
2人とは反対でなにも怖がってない灯里は嬉しそうにまた2人を引っ張るように歩いていく。覚悟を決めたように2人はアイコンタクトをとって中に入った。
「く、暗いわね……」
「だっておばけさんの住んでるところだもん。当然だよ!」
「そ、そうね……」
絵里は相変わらず暗いところがダメだった。
「あ、動くよ!」
「う、動いた……」
動き始め、ナオキに緊張が走る。
「あ! おばけさんいっぱい!」
「お、おば、け……おば、け……」
「おかーさん? 大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫よ……?」
「あ、だんだん登ってってるね。そろそろ落っこちるのかな?」
「…………」
「おとーさん?」
ナオキは安全バーを握りしめて目をつぶって黙り込んでいた。
「落ちるよ、おとーさん!」
「え?」
灯里にそう言われ、目を開けてしまうナオキ。その瞬間、コースターが落ち始めた。
「うわあああああああ!!!」
「きゃー!」
怖がって絶叫するナオキと対照的に、とても楽しそうに声を上げる灯里。
ちなみに絵里はおばけの恐怖にひたすらあがらっていた。
そして……
「あ"がり"ぃ〜!」
「よしよし、おかーさん。怖かったねえ」
「ごわ"がっだよ"ぉ〜」
結局、絵里は灯里に泣きついていた。
「おとーさん……?」
「お、おれは大丈夫や、おれは……」
ナオキもナオキで前ほどではないが、やはり苦手なのは変わらず、グロッキーになっていた。
無邪気に2人の心をえぐった灯里は絵里に泣きつかれながら、ナオキを心配そうに見ていた。灯里はなんで両親がこんな風になっているのかよくわかっていないようだった。
そのあともいくつかアトラクションに乗って、最後に灯里が選んだのはメリーゴーランドだった。
メリーゴーランドの白馬に乗りながら手を振る灯里にナオキたちは柵の外から手を振り返す。灯里の顔には最高の笑顔が光っていた。
「ふふ、来てよかったわね」
「ああ、そうだな。久しぶりに怖がる絵里も見れたし」
「もぅ! それは言わないで!
……それをいうなら私だって、ナオキの絶叫聞いたし?」
「んなっ!? 絵里!」
「ふふっ、お互い様、でしょ?」
「そうだな」
ようやく直接繋いだ手。楽しそうな灯里を見ながら少しだけ2人の時間を楽しんだ。
「じゃあ帰るぞ〜」
「はーい」
ナオキは車に乗ってもまだテンションが高い灯里と絵里を後部座席に乗せて車を出発させる。
「また行こうね、おとーさん、おかーさん!」
「ええ、そうね」
「おれの休みがわかんないけどなぁ……」
「もう、そんな夢のないこと言わないの」
「そうだよ!」
「おう、なんかすまん……」
女子2人に責められるナオキ。ナオキの扱いは相変わらずだった。
「あ、でも灯里……」
「すぅ……すぅ…………」
気づけば灯里は絵里のももに頭を預けて横になっていた。
「寝ちゃったみたいね。あれだけハイテンションだったもの、無理ないわ」
「ああ……絵里も眠たかったら寝ていいぞ」
「ううん、私は大丈夫」
そのあとも小声で何気ない会話を続ける2人。
なんの変哲もない当たり前の日常。
それを壊す破滅の音は突然やってくる。
ーードンッ!
鈍い音と共に衝撃が走る。
車がどうなったのかはわからない。
ただわかったのは追突され、車ごと吹っ飛ばされたということだけだった。
「え、え……り……あか、り……」
ナオキが目覚めて最初に見たのは白い天井だった。
状況が飲み込めない彼はとりあえず周りを見渡す。
自分の喉に刺さる管に違和感を覚え、手足はいろいろなところで固定されていた。わずかに動く手が届く範囲にあったボタンらしきものをとりあえず押すと、すぐに何人もの人が部屋になだれ込んできた。
なだれ込んできた人たちはナオキの状態を確認してから、ナオキの喉に刺さっていた管を外した。
「ゲホッ、ゲホッ……ぁ、ぁの……」
ナオキの声がかすれる。
「あ、無理にしゃべらないでください。あなたはもう1週間も喋っていなかったんですから……」
「ぃ、いっしゅう、かん……?」
「覚えていらっしゃいませんか? あなたは事故にあったんですよ」
そう言われ、顔をしかめるナオキ。
そして、彼はすぐにそのことを思い出した。
「そ、そうだ! ゲホッ……えりとあかりは……」
「……」
担当医は一瞬黙る。そして、すぐに口を開いた。
「奥様とお子さんのことですよね。
残念ながら、お子さんは即死でした。運ばれてきた時にはもう……
奥様にはできる限りの処置はしましたが……」
「え……?」
「……もう、今日の夜は超えられないと思ってください」
声は出せない。
だが、愛する者を同時に失う悲しみというのはどのようなものなのか。
絶叫したいが、できない。吐き出したい悲しみを吐き出せない彼はただ泣いた。
声を上げることもなく、静かに。
心情を察した担当医たちが部屋を出て行く。
ひとり残された薄暗く静まり返った部屋はまるで彼の心を暗示しているようだった。
いかがだったでしょうか?
後味悪く思っていただけたら嬉しいです笑
私のはこんな最悪の展開でしたが、私のあとの作者さんたちはみなさん、素晴らしくて、読んでいてとても楽しい小説を書いていると思います。私も期待してます!
明日以降も楽しみですね!