知識活かして気楽に旅 作:あきかたなさかな
「カゲ!」
「……」
ポケモン図鑑を開き、目の前に現れたヒトカゲに向ける。
図鑑登録完了。
タウンマップに目を向ければ、こと細かく捕獲の仕方が表示されていた。しかもグラフィックはヒトカゲ。
……捕獲しろってことか。
躊躇っていると、
「……ゼニ?」
「ダネ! ダネダネェ」
ゼニガメとフシギダネが出てくる。
さも当然のように、捕獲のグラフィックは3体の初代御三家にすり替わっていた。
……この中から1体選べっていうのか。
「……2匹欲しくて迷っちゃうよぉ!」
神様にアピールしてみた。
すると、リュックサックの中から、シュッという音がした。
中を確認してみると、モンスターボールが5個から10個に。2匹捕まえてもいいってことか?
……。
…………。
……………………。
「ピカチュウ、どうしよう」
「……ピ、ピカ」
ど、どうしようね。そう返されたってどうにも出来ない。
もう一度タウンマップを見てみると。
・御三家
いくらでも捕獲していいよ。一ヶ月に一度出してあげられるなら、ボックスに送っても大丈夫!
優しいなぁ、この神様。
だけど、どうしようもない。
「……なあ、3匹さんや」
「カゲ?」
「ゼニ!」
「ダネェ」
「一緒に、昼食食べないか?」
どの子がいいか決めるために、しばらく一緒に過ごしてみることにした。
ダウンジングマシンをフル活用して集めたきのみ。苦かったり硬かったりするものが多いが、幸い俺は人間だ。道具を使う術を学んでいる。
リュックサックのポーチの中に入っていたナイフできのみを割り、ピカチュウとヒトカゲによって火を通され、水と混ぜられる。それに塩やら砂糖やらを入れて混ぜ、よくわからない固体に丸める。
お皿は、フシギダネが持って来てくれた葉っぱ。コップも、葉っぱを簡単に加工したものにゼニガメの水を入れている。
「それでは! いただきまーす」
「ピカピカチュー」
「カゲカゲー」
「ゼニ!」
「ダネダネェ」
洒落たものでも何でもないが、楽しい昼食が始まる。
正直美味しくはないが、苦いものには砂糖を入れ、甘いものは絞って3倍に薄め、飲み物にしているから飲み物の方が美味しい。
元がきのみであるからか、ポケモン達には、よくわからない固形物も好評だったようだ。
最後に、ポケモンセンターで購入してきたミックスオレを1缶開け、4人で(1人と3匹で?)分けて飲んだ。一番量が少ないが、やっぱりこれが一番美味しい。
後片付けは俺とゼニガメで担当することになった。
しっかり者のピカチュウも手伝おうとしてくれたのだが、どのポケモンがいいか決める為にもコミュニケーションを取っていて欲しい、と頼むと、快く引き受けてくれた。
ゼニガメと葉っぱの汚れを洗い流し、きのみの種を木立の中に埋める。ゼニガメのみずでっぽうで適量の水を撒き、完了。みんなの所へ戻る。
「ピカッチュ?」
「ダネェ!」
「カゲー……。カゲ?」
芝生の上で遊んだり、おしゃべりしている中にゼニガメも入っていき、4匹で何やら話し出した。
俺は不要のようで、ダウンジングマシンで集めたものの整理をする。
きのみがいくらかと、きずぐすりがたくさん。かわらずのいしやしんぴのしずく、げんきのかけらやモンスターボール。そこまでの大物は見つかっていないが、何もないのとは全然違う。
だんだん暗くなり始めたので、そろそろ野宿の準備を始めた方がいいだろう。
そう思い、4匹に声を掛けようとしたとき。
「……メタングか。メタグロスじゃなかったのは残念だが、使えるだろう。持ち帰ってゲーチス様に判定して頂こう」
「ああ、それがいい。ゲーチス様も、お歳のせいもあってジャイアントホールには近付かないしな。ラッキーだ。結構重症みたいだが、まぁ死んでも損失はない。おい、余っているモンスターボールを寄越せ。俺のはさっき無くなったんだ」
「…………俺のもさっき無くなったんだが」
「………………」
「…………………………」
「だ、大丈夫だろう! コイツは大きいと言っても1メートル強だ。引きずったり押したりすれば何とかなるだろう」
「いや、それなら台車の方が楽じゃないか? 今持ってくるよ」
「ああ、頼んだ」
不穏な会話。ゲーチス、という単語から見る限り、かなりの確率でプラズマ団の下っ端だろう。
いつの間にか耳を済ませていたピカチュウら4匹は、真剣な目で俺を見た。
それを真っ直ぐ見返し、ポケモン図鑑を手に取る。
「まずは作戦会議だ。それぞれが使える技を見せてくれ」
ピカチュウの偵察により、プラズマ団の下っ端1は気絶したメタングと共に待機中、下っ端2はシッポウシティにまで台車を取りに行ったようだ。……応援を呼べばいいのに。
手柄を取られたくないのか、シッポウシティにまで取りに行った下っ端2に心から感謝し、カラクサタウンに買い物に走る。
ちょっくら失礼して、ピカチュウとゼニガメに、それぞれある技を覚えさせた。
「準備は完了だ。どうせ欲しいと思っていたポケモンだし、何とかプラズマ団の下っ端1を倒すかまくかしてGETしたい。向こうが嫌がれば、ジャイアントホールに届けに行けばいいしな。作戦通りに行くぞ」
全員がこくん、と頷く。
ピカチュウは肩に、ゼニガメは抱き上げる。ヒトカゲとフシギダネは両脇をガッチリ固め、歩き出す。
みんな顔に不安が出ているが、それは当たり前だ。ピカチュウは、一応レベル上げをしたが、精々2桁にいった程度。御三家達は、みんなレベル5だ。
トレーナー歴半日の俺に、ちゃんと指示が出せるかは不安だが、何とかしないとならない。
全てはメタングの為に。
俺は、一歩足を踏み出した。