知識活かして気楽に旅 作:あきかたなさかな
「そういや、あのプラズマ団も、モンスターボールを買いに行けば良いだけなのに、わざわざシッポウシティまで台車を取りに行ったんだよな」
「ピカ……」
「ご苦労なこった。まあ、ありがたいけどな」
メタングを押したり引いたりしているプラズマ団の下っ端を見ながら、ライブキャスターのデジタル時計を見て時間を測る。
「頃合いだな。ヒトカゲ、フシギダネ、出番だ」
「カゲ!」
「ダネェ!」
2匹が下っ端に襲い掛かり、たいあたりを繰り出す。
「なんだお前達! メタングのことが無ければ捕まえてやるのに……。邪魔だ! 退け!」
「さっさとトドメをさすぞ。ゼニガメ、あまごい。ピカチュウはかみなりだ」
ゼニガメのあまごいで雨雲が現れ、ピカチュウがかみなりを落とす。目標? 下っ端に決まっている。
下っ端が電撃によってフリーズしている間に、用意しておいたモンスターボールをメタングに当てる。
コロン、コロン、コロン、カチ!
点滅が止まり、捕獲に成功したことを告げるロック音が聞こえた。
とりあえず、此処は———
「メタング、GETだぜ!」
ポーズつきでやっておいた。
「そろそろもう一人の下っ端が引き返す頃だ、さっさと撤退しよう」
「……そろそろ選べってか」
「カ、カゲ!」
「ゼニ……」
「ダネェ」
御三家が、そろそろ選べと迫ってきた。
確かに、これ以上引き伸ばすのも酷だろう。だが、残りの2体に申し訳ない。
アフターケアがこれまた面倒くさい。だが、しないわけにはいかない。
「うーん、どうしようかねぇ」
「え、何この子達! ポケモン? ポケモンなの!?」
「……そうだけど」
「かわいい!」
気付いたら、どうみてもベルにしか見えない人が立っていた。その傍らには、ミジュマルが。
俺は、たった今閃いた案を実行に移した。
「今、3体の中からどれがいいか選んでいるんだ。別の地方の御三家のポケモンだし、どうだ? ベルも1匹貰っていかないか?」
「え、いいの!? えっと……」
「俺、サトシ。こっちが相棒のピカチュウで、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネだ」
「私ベル。よろしくね。本当に貰っていいの?」
「ああ。だが、ライバルとか戦いたい相手との相性を考えて選ぶんだぞ」
「私の戦いたい相手は……トウコっていうの。ツタージャを持ってるの」
「じゃあ、ヒトカゲがオススメだな」
「貰っちゃっていいの?」
「ヒトカゲと仲が良くなれそうならな」
早速ヒトカゲと戯れるベルを見て、大丈夫そうだと安心する。
「フシギダネ、お前は、預かってくれるトレーナーが見つかるまで俺が責任を持って預かる。じゃあ、ゼニガメ、俺と一緒に頂点を目指してくれるか?」
「ゼニ!」
その日、俺の家族は3人になった。
*
「……で、ツタージャにひのこをする。それまでにダメージもあったから、ツタージャは倒れる、と」
「なるほど!」
「だが、もう一体も忘れちゃいけない。多分、今カラクサタウンに居るなら、チョロネコかヨーテリーあたりを持っているだろう。そっちは、ミジュマルに交代して落ち着いて倒せばいい。脅威なのはツタージャなんだから」
「そうだね! ありがとう、サトシ!」
「どういたしまして。じゃあさ、今のうちに特訓してから行こうぜ」
「いいね!」
草むらのど真ん中に移動し、ポケモン達に指示を出す。
「フシギダネ、お前は正確には俺のポケモンじゃないが、ツタージャ役をやってくれるか?」
「ダネェ!」
「じゃあ、ピカチュウとゼニガメは連携の練習をしていてくれ」
「ピカチュ!」
「ゼニ!」
ポケモン図鑑で、フシギダネの使える技を調べる。
・たいあたり
・なきごえ
・やどりぎのたね
・つるのムチ
念のためだが、ピカチュウは
・10まんボルト
・でんこうせっか
・アイアンテール
・ボルテッカー
・かみなり
で、ゼニガメは
・たいあたり
・しっぽをふる
・みずでっぽう
・からにこもる
だ。
タウンマップによると、『サトシのピカチュウ』(つまり俺のピカチュウ)は、神様のチートにより10個まで技が覚えられるらしい。しかもその精度は落ちない。
ありがとう、神様。ピカチュウが好きで助かったよ。
それはともかく、ベルのヒトカゲをメッタメタにするべく前を見据える。
「始め!」
「ヒトカゲ、ひっかく!」
「なきごえだ!」
フシギダネのなきごえで攻撃力が下がりながらも、ヒトカゲはひっかくを繰り出した。
「もう一度なきごえ!」
「ヒトカゲ、たいあたり!」
「おーい、ヒトカゲはたいあたり覚えないぞ」
「う、嘘!? じゃあ、ひっかく!」
「フシギダネ、いけるよな?」
「ダネェ!」
フシギダネが頷き、ヒトカゲに狙いを定める。
「つるを使ってヒトカゲを持ち上げろ!」
「ダネェ!」
「カ、カゲ!?」
「ぐるぐる回してぶん投げろ!」
「ダーネェ!!」
「カーゲー!?」
ヒトカゲが悲鳴をあげながら飛び、木の幹にぶつかる。
「やどりぎのたね! 続けてつるのムチ!」
「ヒトカゲ!」
「おーいピカチュウ、ヒトカゲの回復頼んだ! ベル、まだまだ特訓はこんなもんじゃないからな!」
「えぇ!? お、お願い、ミジュマル!」
「相性はいいぞ、フシギダネ! つるのムチ!」
「ぎゃあ、ミジュマル!」
「ヒトカゲの準備は大丈夫か? よし、ヒトカゲ来い!」
「え、ええと」
「相性を考えろ! 普通炎技使うだろ!」
「え、かえんほうしゃ!」
「まだ無理だろ。ひのこだ、ヒトカゲ! フシギダネ、避けろ!」
「もうやだー!!」
もうカオスだな、これ。
「まあ、良かったじゃないか。タイプ相性も徹底的にやったし、な?」
「……トウコに勝てるよね?」
「トウコも師匠見つけてるかもしれないぞ」
「うぅ」
「チェレンもな」
「うぅ……」
「あとは、ベル次第だ。俺はもう此処を発つが、もう少し居たいなら、此処でミジュマルVSヒトカゲで特訓すればいい」
「うん。私、もう少し此処に居るよ」
「じゃあ、また何処かで会おうな」
「うん」
荷物をリュックサックにしまい、ポケモン達を伴ってカラクサタウンへ進む。3体とも、強くなりたいという気持ちからか、お互いに歩きながら技を出し合ったりしている。
例えば、電気耐性をつけるため、ゼニガメは常にピカチュウに微電流を流し続けて貰い、フシギダネは力をつけるためにピカチュウを背中に乗せて歩く。ピカチュウは って? 最強なんだ、俺のピカチュウは。
歩き続けること数時間。カラクサタウンに到着した。
俺はポケモンセンターでポケモンを回復したあと、とある青年を見つけ、声を掛ける。
「チェレン、トウコに勝ちたいか?」
「当たり前だろう」
答えるチェレン。俺は、悪魔の言葉を囁いた。
「俺と特訓をしないか?」
「いいだろう」
「何体ポケモンを持ってる?」
「一体。ポカブだけだ」
「じゃあ、トウコのツタージャ役をフシギダネにやってもらうか」
「フシギダネなら楽勝だ」
ポケモンセンターに併設されているフィールドに入り、モンスターボールからフシギダネを出す。
「フシギダネ、やどりぎのたね!」
「ポカブ、ひのこ!」
流石にチェレンは相性をわかっているらしく、炎技で対抗してくる。
「つるを使え!」
フシギダネはつるでポカブを拘束し、持ち上げて地面に叩きつけた。
「ポカブ戦闘不能、だな。駄目だな、臨機応変にしなきゃ」
「そんな手を使うなんて、誰も思わないだろう」
「頭を柔らかく使わなきゃいけないんだ。それじゃないと、とてもトウコには勝てないよ」
「頭を柔らかく……」
「タイプ相性はトウコに不利。不利な方は、どう戦おうとするか。それを考えるんだ。思いつかないなら、ポカブに頼って一緒に考えればいいだろ」
「ポカブと一緒に……」
「あとは、単純にレベル上げだな。筋はいいから、伸ばせば何とでもなる。一番道路辺りに戻って、特訓してきたらどうだ?」
「……わかった。ありがとう、えーと……」
「サトシだ」
「助かった、サトシ! じゃあ、またリベンジするから!」
「待ってるよー」
ベル、チェレンはこれで強くなった。あとは……トウコだな。
「君がトウコか」
「そうだけど」
カラクサタウンの外れでひたすらレベル上げをしていたトウコに声を掛ける。
「ただレベル上げをしたって強くならないよ。努力値って知ってる?」
「何よ、それ」
興味あるけどプライドで聞けない。そういう顔のトウコに、努力値について説明する。
「これさえあれば、ポケモンの力はもっと引き出せる。やってみたら?」
「……ありがとう。試してみる」
「あ、その前にバトルしない?」
「いいわね。やってやろうじゃないの」
結果は圧勝。もう一度、チョロネコとも戦うと、またも楽勝。
プライドをズタボロされて放心中のトウコに、ライブキャスターの番号を書いた紙を握らせる。
「いつでも連絡してね」
幼馴染み達は焚きつけた。これで、イッシュの平和は守られるだろう。