貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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ランタナの開花がきたので衝動的に書きました。
需要があれば続きます。




本編
キルタンサスとリンゴちゃん


「すぅー……はぁー……」

 私は目の前の天幕の前で大きく深呼吸した。

 

 ここはリリィウッドの無垢なる森林区。

 手つかずの原生林が生い茂るこの森はこの国出身の人間でも迷うほどであると言われている。

 

 実際、私もここまで案内の花騎士が迎えに来てくれなければ延々と原生林の中を彷徨っていたことだろう。

 私は彼女に案内とアドバイスを受け、現在この地に野営を張っている騎士団の仮設執務室にやってきた。

 

 

「失礼します。

 本日付でこの部隊に配属されましたキルタンサスです」

「どうぞ」

 返事はすぐに返ってきた。

 その声を聞いただけで深呼吸と同時に吐き出した緊張があふれ出てくる。

 

 

 私が天幕の中へと入ると、折り畳み式の机を前に書類仕事をしているサーコートを纏った一人の男性が座っていた。

 彼がこの騎士団の団長だ。

 

 年の頃は三十代前半だと伺っていたが、幾多の戦いによるものか老けて見える。

 この年齢まで騎士団の団長を続けているのは珍しいと言えた。

 

 なぜならば、大抵は害虫との戦いで散るか、適当な花騎士を見初めて引退するからだ。

 だが、それは花騎士も同様だ。

 適当に花騎士を十人集めれば、その殆どが若い小娘ばかりだ。

 害虫たちとの終わりなき戦いの環境は、花騎士の代謝を強いているのだ。

 

 そんな過酷な環境で、彼の害虫との戦いのキャリアは十年以上。

 私の目に狂いはないと、私は確信した。

 

 

「ようこそ、我が遊撃騎士団へ。

 この部隊の転属を希望したモノ好きがどんな奴かと思えば、可愛い子じゃないか」

 彼は私を見ると、ニコリと笑ってそう言った。

 

「うん、俺があと五年若ければなぁ」

「容姿ではなく、実力を見てほしいんだけど」

 だが、可愛いと言われたことは素直に嬉しかった。

 

「おっとすまんすまん。

 だが、この部隊に転属が許されたってことは初めから実力は信用している。

 出身はブロッサムヒル、活動歴もそこそこ。転属数度に国家防衛で活躍もしている。

 優秀だな。だがここには君より優秀なのはゴロゴロいる」

 私の履歴書を見ながら団長はそう言った。

 

 

「勿論、ここがどんな騎士団か理解しているな?」

「はい」

「俺たち遊撃騎士団の仕事はシンプルだ。

 あそこで害虫を見かけた、探して駆除しろ。以上だ。

 他の騎士団のように護衛や国毎の雑事は受け付けない。

 俺たちは常に最前線だ。全騎士団のうち死亡率は最も高く、特定の拠点や定期的な休みなんて存在しない。

 害虫が出たと聞けばどこにだって行く。害虫より仕事に殺されるとはよく言われる。

 我々がこの原生林に居るのも、そう言った任務を終えたばかりだから」

「ですが、最精鋭だと伺っています」

「違うな、使える奴だけが生き残った結果だよ」

 多くの生死を見てきた歴戦の団長は、そう断言した。

 死に慣れた視線が、私を穿つ。

 ……私は無意識に拳を握っていた。

 

 

「上等じゃない。私の力を発揮できるふさわしい場所ってことじゃない。

 あなたの方こそ、私にふさわしい団長なのかどうか見極めさせてもらうわ」

 私は胸を張ってそう答えた。

 それを聞いた団長は大きくうなずいた。

 

「うんうん、その意気込みやよし」

 団長は深く頷くと、机の上に置いてあった呼び鈴を鳴らした。

 

 

「はーい、お呼びですか団長」

 すると、まだ幼げな印象を受ける花騎士が入ってきた。

 

「こちら、本日付でこの部隊に配属になったキルタンサスだ。

 こっちが我が隊の補佐官であるリンゴちゃんだ」

「あ、ご到着なされたんですね。

 どうも、会えて嬉しいです」

「あ、うんこちらこそ」

 彼女は私を見るととてもうれしそうに笑った。

 最前線たるこの隊は常に人手不足。人員が増えたことがうれしいのかもしれない。

 

 

「リンゴちゃん、とりあえず他の連中に彼女を紹介しておいてくれ」

「わかりました。ささ、キルタンサスさん、こちらへどうぞ」

「ええ」

 そうして私はリンゴと共に天幕を出た。

 

 

「キルタンサスさん、団長にいろいろ言われませんでしたか?」

「色々って?」

 仮設執務室の天幕を少し離れたところでリンゴは口を開いた。

 

「うちの隊の死亡率は随一だとか、休みなしのブラック騎士団だとか。

 全然そんなことないですからね?

 今の団長が来る前まではそうでしたけど、今の団長のお蔭で大分改善されたんです」

「ふーん、そうなの」

 と、私は口ではそう言ったが少しだけ彼女の言葉に安堵を覚えた。

 

「やっぱり有能な人なのね。

 首都の方ではあんまり良い噂は聞かなかったけど、これなら信頼してあげても構わないかしら」

「よくない噂ですか、あはは……」

 リンゴは曖昧に笑って顔をそらした。

 

 

「サクラさん」

 その名を聞いた瞬間、私の身が引き締まった。

 名前を呼ばれた当人は荷造りの手を止めてこちらを見た。

 

「あら、リンゴちゃんじゃない。

 そっちは新しく入ってきた娘かしら?」

「はい。キルタンサスさんです」

「そう。私はサクラ。よろしくね」

 にこにこと柔和な笑みを浮かべる彼女に私は上ずった声で、よろしくお願いします、と言った。

 

 彼女は花騎士サクラ。

 この人は同郷の私は勿論、花騎士なら誰でも知っている有名人だ。

 今はこの部隊に居たんだ……。

 

 

「サクラさんはこの部隊のまとめ役をしてくださっています」

「しているというか、自然とそうなってしまったというか……」

「サクラさんは本当に頼りになる人ですから」

「そんなに大した女じゃないのよ。

 でも頼りにしてくれるのはうれしいわ」

 そう言って頬に手を当てて笑みを浮かべる姿は男性だけでなく女性までも魅了する。

 

「そうそう、撤収作業は八割がた終わったわ。

 明日には次の予定地には移動できるわ」

「わかりました。ではそのように団長に伝えますね」

「次はこちらですね」

 事務的なやり取りを終えると、リンゴは次の場所へと移動を開始する。

 私は彼女に追従すると、

 

「案内が終わったら、団長さんの天幕で聞き耳を立ててみなさい」

 こっそり、と小さな声で私だけに聞こえるようにサクラさんが耳打ちした。

 

 え、と振り返ると、彼女は意味深な笑みを浮かべて、仕事に取り掛かってしまった。

 

 

 

 

「ランタ~ナ、ランターナ♪

 愛の騎士、ランタ~ナ♪」

 リンゴに連れられて各所に顔合わせをしていると、ヘンテコな歌詞を口ずさむ少女が原生林の方からスキップしながらやってきた。

 

「あ、ランタナちゃん」

「むッ、このおいしそうな匂いは……リンゴじゃないか!!」

 妙にテンションの高い少女は、此方を見つけるとスキップを維持しながらこっちにきた。

 

「おッ、見たことがない花騎士が!!

 お前は誰だ!? 私ランタナ。これから一緒に戦うの?」

「ランタナちゃん、一人で森に入っちゃダメだって団長に言われたじゃないですか」

「一人じゃないよ、ペポも一緒だったもん」

 リンゴが眉を寄せてそういうと、涼しい顔でランタナは(うそぶ)いた。

 

 その時だった、ガサガサと林の中から枝葉まみれの女の子が這い出てきた。

 

「はぁ、はぁやっと追いついた、

 もうランタナちゃん、一人で勝手に森に言っちゃダメだって言われたじゃない」

「ペポも一緒だったじゃん」

「私は後から追いかけただけだって!!」

「そうだっけ?」

 皆の視線が彼女に突き刺さる。

 

「退かぬ!! 媚びぬ!! 省みぬ!!

 ランタナに逃走は無いのだぁーー!!!」

「思いっきり逃げてるじゃないの……」

 状況を不利と見てランタナは逃げ出した。

 

「もう、勝手に森に入るなって言われてたのに!!」

「ペポさん、団長は彼女にこう言っていました。

 行くなよ、絶対に行くなよ、と……つまりあれは森の中を偵察して来いってことだったんですよ!!」

「じゃ、じゃあ、私がランタナちゃんを追いかけていくのは団長の想定済みだったってことですか!?」

 憤慨するペポはリンゴの言葉を受けて驚いたようにのけ反った。

 

「だったら私に一言言っておいてくれればよかったのに……」

「お二人は団長のお気に入りですからねぇ」

「ここの部隊に来てからランタナちゃんが二人に増えたような気がします」

 ペポは脱力してぺたりと地面に座り込んだ。

 

 その後、自己紹介をしてこの場を離れた。

 

 

 

 

 

「とりあえず、顔合わせはこんなものでしょうか。

 私は団長に報告があるので、キルタンサスさんは明日正式にみんなの前で入団を発表すると思います。意気込みなんかを考えておいてくださいね」

「わかったわ。これからもよろしくね」

「はい。明日からキルタンサスさんと一緒に戦えると思うととても心強いです」

「当然よ。ま、まあ、思った以上ににぎやかなところだけど、この部隊に入団できて光栄だと思っているわ」

「ええ!! 食事の時間は七時からですので、それまでは自由にしていてください」

 そう言って、リンゴは嬉しそうに去って行った。

 

 そこで私はサクラさんに言われたことを思い出した。

 あの意味深な言葉の意味はなんだったのだろうか。

 

 気になった私はこっそりとリンゴの後を付いていき、彼女が仮設執務室に入るのを見届けると、気配を消して耳を澄ませる。

 

 

「団長、報告に上がりました」

 リンゴの声だ。

 天幕に防音効果など無いに等しい。

 騎士団なんて大抵は女所帯なためか、プライバシーなんてものは考慮されていないのだ。

 

「リンゴちゃんか、報告は後でいい。

 それよりも君はキルタンサスについてどう思った」

 厳かな声で、団長は言った。

 私は無意識に唾を飲んだ。

 

「それは団長、あなたと同じご意見なのでは?」

「そうか、やはり君もそう思ったか」

「はい。やはり……」

 思わず体が前のめりになる。

 二人は私に一体どんな印象を受けたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ツンデレ来たーーーー!!!」」

 

 ……はぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンゴちゃん、同士リンゴちゃんよ。

 君は彼女のツンデレは天然ものか、それとも養殖だと思うか?」

「まず間違いなく天然ものですよ団長さん!!」

 同士リンゴちゃんは興奮した様子で硬く拳を握りしめて断言した。

 

「まず雰囲気からして違います。

 私初めて知りました。本物のツンデレって雰囲気からして既にツンデレなんですね!!」

「うむ、昨今のツンデレは無理なキャラ付けの為に養殖化されて久しかった。

 養殖ものというより出涸らし染みていたが、天然ものはなんだって素晴らしいな!!

 あのランタナのボケがツンデレの真似事をしているのを見たが、すぐさま鼻で笑ってやったよ」

「それはそれで見てみたい気もしますが、あんな可愛くて奇麗な娘がツンデレとかもう奇跡ですよ、もう!!」

「確かに、確かに!!

 それで同士リンゴちゃんよ、君は彼女の比率はどう見る?」

「そうですねぇ……」

 リンゴちゃんは腕を組んで考え始めたが、すぐに答えは出たようだ。

 

 

「3:7でしょうか」

「馬鹿な、ツンデレなのにデレの比率がツンを上回っている、だと……!?」

 俺は全身に電撃を浴びたかのような衝撃を受けた。

 

「あり得るのか、そんなツンデレが!!

 それはただの恥ずかしがり屋の女の子じゃないのか!?」

「それを分ける定義を一緒に模索していきましょう、団長さん!!」

「リンゴちゃん君はいつも俺に新しい息吹を吹き込んでくれる……」

「何を言っているんですか、団長さん。

 団長さんはまだまだ若いですよ!!」

「いいんだ。同士リンゴちゃん。

 若い頃に比べると枯れてきた自覚はある。だが……」

 俺は立ち上がり、声を大にして言った。

 

「俺はまだ、可愛い女の子をつまみ食いし足りない!!

 あんなツンデレの女神に愛されたような女の子を前にして、口説かずにいられようか!!」

「流石です、団長!!

 キルタンサスさんは団長さんの好みにドストライクですもんね」

「うむ、流石同士リンゴちゃん俺のことをよく分かっている」

 俺は椅子に深く座り直し、深く頷く。

 

 

「ツンデレとはかくあるべきだ。

 長髪、貧乳、低身長の三拍子が揃っている。完璧だ」

「今のままでも十分お美しいですけど、金髪ツインテールだったらより完成度は高かったかもしれませんね」

「いや、それは固定観念だろう。

 髪型と髪の色を固定してしまっては幅が狭くなりすぎる。

 そうなっては今日までツンデレは広がりを見せなかっただろう……」

「な、なるほど」

「しかし、良いものは良いものだな。

 いい加減テンプレートなツンデレは使い古されてきて、変化球ばかり増えてきたと思っていたが。

 そして最後にもう一つ、これはあまり好みが分かれるがツンデレの要素として決定的なものがある」

「それはなんでしょうか?

「それはな……」

 俺がもったいぶっていると、仮設執務室の入口がバッと開かれた。

 

 

「だぁあれが、ツンデレよぉ!!!」

「ありがとうございます!!」

 顔を真っ赤にしたキルタンサスに思いっきりぶん殴られた。

 

 

 

 

 

 

「照れ隠しで思わず手が出ちゃう……完璧だ……」

「だ、団長さーん!!!」

 俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




基本的に持っているキャラだけしか登場しません。
ちなみに、ペポとランタナのコンビが一番のお気に入りです。
ランタナのネタ成分をもっとマシマシすべきか・・・

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