貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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遅ればせながら、あけましておめでとうございます!!
今年もどうぞよろしくお願いします!!



年末年始の団長

『団長たちのクリスマス』

 

 

 クリスマス、聖樹祭当日。

 

 今年のリリィウッドは聖夜に新たなる試みとして世界花をクリスマスツリーとして飾り、大々的に歌や音楽などのイベントで盛り上がり、プレゼントなどを送ろうという企画だった。

 

「クリスマスの夜に仕事しないといけないって嫌だよねぇ」

 そのお祭りの実行委員長を押し付けられたチューリップ団長は実に不満そうだった。

 

 毎年クリスマスに何かしらやらかすこの男は、だったら仕事を押し付けちゃえばいいじゃない、という発想と当人の実務の手腕を買われて仕方なく聖夜を盛り上げる為に手を尽くしていた。

 

「プロテアさんはお休みなのになぁ」

 ぐちぐち言いながらも、彼は一応真面目に仕事に取り掛かっていた。

 自分に実務以外に取り得がないのを分かっているからだった。

 

「今日の聖樹祭にプロテアさんも来るって話じゃなきゃ、もっと手を抜いたのに」

 そんな彼だったが、ふと奇妙な音が聞こえてきた。

 

「なんだ、この音は、う……た?」

 彼の記憶が続いていたのは、この時までだった。

 

 

 

「おい、団長、こっち来てくれ」

 その日、ハナモモ団長は聖樹祭の警備担当だった。

 今年は大きな祭りが催されるので、この国の騎士団長は総動員で各々の役割をこなしていた。

 

「衛兵長、どうかしたんですか?」

 彼を呼んだのは、以前ハナモモ団長が衛兵隊に居た時に知り合った代々騎士の家系だという男だった。

 

「これ、あんたのところの団長だろ? どうにかしてくれ」

 彼は面倒そうに言って、部下に連れてこさせたのは何とチューリップ団長だった。

 

「放せ!! 俺はクリスマスをなにもしらずに楽しむ人々に啓蒙活動をしなければならないのだ!!」

 何やってんだこの人は、とハナモモ団長は思った。

 

「クリスマスは宇宙から来たサンタクロースを崇める冒涜的儀式なのだ!!

 嗚呼、サンタクロース、サンタクロース!!」

 無駄に冒涜的発音でサンタクロースと叫ぶ彼を、衛兵長が当身で黙らせる。

 

「一応この人、今は貴族だしな?

 どうしちまったか知らないが、特になんかあったわけじゃねえし、そっちで引き取ってくれ」

「多分、変なキノコでも食べたんだと思います。

 確か、魔法的耐性が体質的に皆無らしくて」

「ああ、混乱魔法とか掛かるとこんな感じになるしな」

 こんな経緯で彼を預かったハナモモ団長は、とりあえず彼を休ませられる場所へを探そうとしたが、持ち場を離れられるわけもないので、仕方なく指揮所近くへと運ぶことにした。

 

 現在、リリィウッドの周囲に大量の害虫が発生しており、聖樹祭の運営を行っているテントを借りて緊急でその対応をする指揮所となっていた。

 ハナモモ団長が中に入ると、幾多の騎士団長たちが指示を飛ばしていた。

 

「害虫の総数はどうなっている!!」

「街道付近で観光客を乗せた馬車が孤立してるだと!?」

「ここを取り仕切ってたあの馬鹿はどこ行った!! 確認事項が山ほどあるというのに!!」

 指揮所は怒号が飛び交っていた。

 お祭りと言えば害虫、害虫と言えばお祭りというくらい害虫とは人々の熱気に引き寄せられる。

 まるで火に入る虫のように。だから害虫の襲撃自体は予想済みだった。

 だがその想定をはるかに超える量の害虫がやってきており、花騎士たちの謎の不調もあって前線は大苦戦中であった。

 

 

「あの、キンギョソウ団長。チューリップ団長を休ませる場所はありませんか?」

 指揮所の中央は相変わらずリリィウッドの貴族出身者たちが取り仕切っているので、少し離れたところに居る同僚にハナモモ団長は話しかけた。

 

「な、我らが若芽よ、その男をどこで見つけた!?」

「何だか悪い物でも食べたのか、おかしくなっていた所を衛兵の皆さんに保護されたみたいで」

「であれば、害虫の齎すこの不協和音の所為であろう。

 この不協和音はどうやら精神に作用し、憎悪を増幅させ魔力の行使を阻害すると先ほどナズナ団長より報告が有ったばかりだ」

「なるほど、あの人も相変わらず仕事が早い」

 感心しながらハナモモ団長は毛布を敷いてチューリップ団長を寝かす。

 

「戦況の方はどうなっていますか?

 あの変な音の所為なのか、警備の皆がちょっと不安がってるみたいで」

「芳しいとは言えぬ状況ではあるな。

 これほど広範囲の魔力阻害は前代未聞でもある。

 とは言え、恐らくこれは偶然の産物であろう。意図してこんなことができるのなら、人類はとっくに滅んでいる」

 そう語るキンギョソウ団長だが、彼に焦りは見えなかった。

 

「ナズナ団長がもう既に何らかの手を打つようだし、我らは我らのすべきことをすれば良い」

「……はい」

 ハナモモ団長は恐れや不安を飲み込み首肯し、持ち場へと向かって行った。

 そんな時だった。

 

 

「ハローハロー、何だか苦戦中だって聞いたから顔を出しにきたぜ」

 我らのリンゴ団長が現れたのだ。

 

「今更誰が来たかと思えば……」

「ここは我らの国だ、他国の人間は引っ込んでいろ!!」

「然り、我らには我らが果たすべき責任がある」

 だが貴族系の団長たちはあっさりと彼の助力を突っぱねた。

 

「ほーう、だがどうにも押し返すのが難しいって状況のようだが?

 定石なら防衛に専念して他国の救援を待つのも手だが」

「そんな無様な戦略が取れるか!!

 他国の観光客も無数にいると言うのに、時間のかかる策は取れん」

「分かってるって。

 だが花騎士たちが全力が出せないなら出せないなりの戦略ってのはあるだろう。

 ある日突然世界花の加護が消えました、戦えません。もう人類は滅びます。そうなったって素直に諦めるか?

 俺は諦めない。戦う人間が俺が最後になっても戦うぞ」

 除け者にされても特に激せず、リンゴ団長はそう諭した。

 

「一般人より上等な教育を受けてるなら、面子やプライドよりも優先すべきがなにか分かるだろう?」

「……だが、貴公が参戦したところで戦術的価値は低いのも事実だ」

「相手は推測するに指揮官型ではない。

 まるで呼び寄せられるようにこのリリィウッドに集まっている。

 津波に戦略を用いるのは愚かだ」

 彼らは決して無能と言うわけでは無いし、冷静でないと言うわけでもなかった。

 この状況でどう戦力を配分すると効果的か一番理解しているのは彼らだった。

 

「なれば、我に一計がある。この男の扱いを任せては貰えぬか?」

 ここで、成り行きを見守っていたキンギョソウ団長が口を挟んだ。

 

「貴方様がですか?」

「不服か?」

「……いえ、お任せします」

 団長たちは目線を逸らして承諾した。

 立場が面倒な男に扱いが面倒な男を丸投げした形だった。

 

「貴公にしては穏便な対応であったな」

「俺は別に噛みつきたいから味方に噛みついてるわけじゃないからな」

「であらば、優秀な猟犬たる貴公に噛みつく相手を用意してやろう」

 二人は指揮所を出ると、キンギョソウ団長は本題を切り出した。

 

「彼らは貴公を投入する戦略的価値は低いと言ったが、戦術的価値は決して低くないと我は見ている」

「と言うと?」

「貴公とその部隊なら前線の負担を可能な限り減らせると言うことだ」

「つまり、連中の進路を荒らして回れってことだな。

 だが、知っての通り、害虫どものデバフの所為であまり無茶はできんぞ」

「それに関しては我に用意がある」

 彼はそう答えると、部下を呼び寄せ呪符らしき束を持ってこさせた。

 

「害虫どもの妨害を逃れた者は、古き魔女の加護があったと言う。

 それを聞いて我は思い当たった。

 今どきの魔法は対人を想定していない故に、妨害対策が皆無であることにな」

「害虫相手に魔法の発動の妨害を考えるだけ無駄だしな。何より火力と魔力の運用効率に全振りする必要もある」

「急造の上この程度の数だけしかないが、魔力妨害対策の呪符を用意した。効力は数時間は持つだろう」

「十分だ、それだけあれば暴れられる」

 そして、リンゴ団長はニヤリと言うには獰猛な笑みを浮かべた。

 そのまま彼は振り返り、着飾られた世界花を仰ぐ。

 

「この世界の天におわす神々よ、地に根を張る六つの世界花よ。

 我が非道、我が冒涜、我が悪逆を照覧あれ。

 今宵の供物にて神々の衣服の裾を血飛沫で汚し、大地を血の海で満たして見せよう」

 そのように気合が入っているリンゴ団長を見やり、頼もしいなと呟くキンギョソウ団長だった。

 

 

 

「なあ害虫ども、俺には分かるぞ」

 リンゴ団長率いる部隊は早速主要な街道の害虫を蹴散らすと、続々とやってくる害虫たちに向けて道を遮るかのように数本の若木を並べさせた。

 

「クリスマスが憎いんだろう?」

 彼の部下達が奮戦して増援を倒している中で、笑いながら害虫の死骸をむしり取っていた。

 

「憎いってことは、恐怖の感情もあるってわけだ」

 団長は死骸を次々と若木に飾り付け、その首を頂上に乗せた。

 この世におぞましき、害虫の骸で彩られたクリスマスツリーが出来上がった。

 

「当然、絶望もあるんだよなぁ!!」

 恐ろしいことに、この狂気の所業を前にして害虫たちは気圧されたのか、進行するのに尻込みしているような様子を見せていた。

 

「ほら来いよ、お前たちもクリスマスに混ぜてやる!!

 お前たちがクリスマスツリーになるんだよ!! ぎゃははは!!」

「殺した相手を飾るって、いつの時代の蛮族ですか」

 当然彼の部下たちはドン引きだった。

 

「ほうら、今日の俺は素敵なサンタさんだ!!

 悪い子には石炭をプレゼントするぜ!!」

 団長は害虫ツリーを作り終えると、今度は石炭をやすりで削った粉を警戒して近寄ろうとしない害虫たちに投げ込み始めた。

 全く何の意味のないその悪意に満ちたその所業に、やっぱりみんなドン引きだった。

 

「団長さん、どうして今日はこんなにぶっ飛んでるの?」

「あれですよ。今日は団長さん、何人かと2時間おきに何人かとデートの約束してたらしいんですけど、害虫の襲来の所為で全部ご破算になったらしくて」

「要はただの八つ当たりなの!?」

 と言った事情をリンゴから聞いたキルタンサスは呆れ顔だった。

 

「よいしょ、よいしょ、ふう、意外に石炭削るの疲れるな。

 おーい、リムちゃん、こいつを連中にプレゼントだ!!」

「任せるです、悪い害虫ちゃん達にプレゼントですぅ!!」

 団長はたっぷり石炭の粉を詰めた弾薬をリムナンテスに渡すと、彼女は早速バズーカ砲に装填して撃ち出した。

 頭上から炸裂して広範囲にばら撒かれる石炭の粉に、害虫たちもたまったものではないのか、狂騒から覚めて逃げ出そうとする始末。

 だが彼らの背後には未だクリスマスの憎悪に狂った害虫たちが列を成して逃げ場などなかった。

 

 

「すごいわねー、害虫たちが団長さんを恐れをなしているわー」

「サクラさん、棒読み、棒読み」

「みんなー、今がチャンスよー」

 ちょっと目のハイライトが消えかかっているサクラの号令により、混乱気味の害虫たちの掃討が始まった。

 勿論、一連のくだりは団長の憂さ晴らし以外の何物でもなく、戦略的どころか戦術的意味など無い時間の浪費に過ぎないのだが、害虫を知り尽くしているこの男がやると割と効果が出てしまうのが彼の部下の悩みどころである。

 

「おら、お前らも石炭削るの手伝え。

 今夜の俺たちは闇属性サンタだ!!」

「あっはっはー、サンタさんが闇属性*1なはずないじゃない!!」

「おッ、そうだな」

 がりがりと嫌がらせに全力投球な団長を、ランタナ辺りが手伝い始めた。

 

「連中にも粘膜がある。目や口が有る以上、こういった粉物は一定の効果があるんだ。

 だからお前たちもリムちゃんの弾薬作るの手伝え。

 そっちは呪符の効果が切れた時に使うから卵の殻に粉を詰めておけ、あとでニシキギに撃ち出させる」

 よくもまあそんな次々と嫌がらせが思いつくなぁと思いながらも、彼の今日の護衛担当は手伝うしかなかった。

 狂気の中に合理的理由を見出すのがこの男のズルいところだった。

 

「と言うかこんなの作って良いんですか?

 この木、枯れちゃわないですか?」

「でぇじょうぶだ、世界花の加護が有る」

「世界花の加護で何でも解決しようとしないでくださいよ!!」

 首から血が流れ滴っている害虫ツリーを指差しペポは渾身のツッコミを入れるのだった。

 

 そんなこんなでリンゴ団長たちは害虫たちのデバフが無効化されるまで害虫の主な流入口を閉鎖し続けることに成功したのである。

 

 

 

「うーん……」

 結局、チューリップ団長が目を覚ましたのは全てが終わった後だった。

 

「あれ、やわらか……」

「ようやく目を覚ましましたね、団長さん」

「ふぁ!?」

 彼は目を覚ますと、目の前にはプロテアが居た。

 と言うか外で膝枕されていた。

 

「プロテアさん、どうしてここに?」

「覚えていませんか? 害虫の声にやられて気を失ってたんですよ?」

「え、マジですか……」

 それを聞いた団長は気恥ずかしくなって赤面した。

 

「すみません、ご迷惑を掛けたようで」

「私は、ただこの様子だともう無理はできないだろうから、連れて行ってくれって言われただけですよ」

「ああ、やっぱり……」

 ついには彼は恥じ入るように萎縮した様子になった。

 

「肝心な時にお役にたてず申し訳ないです」

「そう自分を卑下しないでください。せっかくの聖夜がもったいないですよ」

 そう言って、彼女は飾り付けられた世界花を見上げた。

 遠くから聖歌隊の歌声も聞こえる。

 

「ほら、今夜は月も綺麗ですよ」

「はい、もう死んでも良いです」

 団長は唐突に訪れたささやかな幸せを噛み締めるのだった。

 

 

 

『お正月のリンゴ団長』

 

 

 クロユリは時折、悪夢を見ることが有る。

 死んでいった仲間たちが夢に出てきて、再び害虫と戦い無残に死んでいくのだ。

 

「またこの夢か」

 いつからだか、彼女の夢の内容が変わっていた。

 戦うのは死者ではなく生者であり、いつだって自分は悲惨な最期を遂げていた。

 

 だがいつの間にか死者たちはあの男に率いられ、殺されても殺されても地面から這い出て蘇り、笑いながら殺したり殺されたりを繰り返す。

 その様子をじっと見ていると、サボってんじゃねぇ、とあの男が怒鳴り散らしてくる。

 いつの間にか自分は戦いに交じっており、気付けば目を覚まして朝を迎える。

 

 だから悪夢の度に、夢の中で害虫に殺されるたびに目を覚ますことは無くなっていた。

 

「待って、クロユリちゃン」

 今日もまた、夢の中でも殺し合いに身を投じようとしたクロユリを呼び止める声が有った。

 振り返ると、青いイモムシ型害虫が彼女の手を引っ張っていた。

 

「お前は、イソガシ!!」

 なぜか知り合いのような気がして、彼女はその害虫の名前を呼んだ。

 

「あっち行っちゃダメだヨ。

 あそこはブラックを超えた地獄だヨ。

 あっちに行ったら最期、戻ってこれなくなるんダ」

 ほら、あれを見て、とイソガシは指……? うん、まあ、指差した。

 あっちの方では相変わらず害虫と団長たちが殺し合いを演じていた。

 

「あれはブラックを超えたカロウシ。

 死ぬまで働くカロウシイソガシ達の戦場だヨ」

「カロウシイソガシて……」

「あそこまでする必要ないんだヨ。

 逃げたって誰も責めないんダ。だからこっちにおいでヨ」

 優しい言葉を掛けてくれるイソガシに、ふとクロユリは思った。

 

「そう言えば、お前も害虫だったな」

「え?」

「死ね」

 クロユリはイソガシを切り捨てると、振り返って死者たちの饗宴に交じる。

 敵も死者、味方も死者。さて、死人同士はどうやって決着を付けるのか。

 

「じゃあこうしよう」

 クロユリがそう考えていると、団長はこう提案してきた。

 

「カモーン、博士」

「博士?」

「そう、ローズマ博士だ」

 団長がそう言うと、どこからともなくローズマリーが現れる。

 

「ムシケライ、縮めて虫けら。

 このスプリングガーデンの無意味で無価値で醜悪な無様な生き物。

 海に、森に、町に。その種類は1000以上」

「おい、良いのかその導入」

「だから私たちは虫けらどもを捕まえて、別の虫けらどもを殺し合わせるのだ」

 実に合理的だと、ローズマリー扮するローズマ博士は言う。

 

「さあ、ローズマ博士から貰ったこの虫けらで早速殺し合いをさせようぜ!!」

「ライバルポジションはお前か!!」

 その後、クロユリはスプリングガーデンの国々の王宮に虫けらバトルを挑みに行き、勝利の証のバッチを貰い、霊峰の最上に有る虫けらリーグに挑むことになった。

 

 虫けらリーグの四天王、氷害虫使いのビバーナム、格闘害虫使いのサボテン、オバケっぽい害虫使いのペポ、進化竜を虫けらってことにして待ち受けるランタナ。

 そして最初に争った団長こそが、一足先に四天王を破りクロユリを待ち受けていた!!

 

「一足遅かったなクロユリ、ここに至るまで虫けらどもを出会う端から殺し、手持ちの虫けらどもを使い潰してきたが、俺の方が早かった」

「いやに展開が早いな。夢は無駄に展開が先延ばしになったりあらぬ方向に行くものだろうに」

「作者のポ〇モン知識は紅玉青玉で止まってるんだからぼろが出ないように巻でいくんだよ、いくぞ!!」

 クロユリと団長の戦いの行く末は如何に!!

 

 

「夢か……」

 と言う所で、クロユリは目を覚ましたのだった。

 

 

 

 

「おーい、お前ら、羽子板で羽根突きやろうぜ」

 スプリングガーデンのお正月もそうそうに、団長はペポとランタナを誘って羽根突きを始めようとしていた。

 

「団長さん、元気になりましたね」

「年末に流感*2に掛かった時はどうなることかと思ったけどねー」

 おかげで今年は初詣に皆で行くということが無く、皆でおせちやお餅を消化する作業に入っていた。

 

 無邪気に団長から遊びに誘われたことを嬉しがっている二人だったが、ここでふとランタナが墨と筆を持ってきた。

 

「落としたら顔に筆で正の字を書くんだからね!!」

「えー、やっぱりそれするのー!!」

 当然でしょ、とランタナが言うのでペポはがっくりと肩を落とした。

 

 その時、普通に遊ぶつもりだった団長の脳内のリンゴちゃんが木の上からコロリと地面に落ちた。

 団長は万有引力を閃いた偉い学者の如く、邪悪な思いつきを閃いた。

 

「流石に俺は女の子の顔に書くのは気が引けるな。

 代わりに足に書くなんてどうだ?」

「え、まあ、私は構いませんけど……」

 そこでペポはハッとこの男から常々受けている邪な感情を察した。

 

「そんなこと言って、書くときにパンツとか覗く気でしょう!!」

「じゃあランタナ、お前が書けばいい。俺は後ろから見てるから」

「それなら、まあ」

 結局罰ゲーム有りのまま始まることにペポは落胆したのだった。

 

「えいッ」

「そりゃあ!!」

「あーん、二人とも私を集中攻撃して!!」

 そして奮闘虚しく最初の罰ゲームをする羽目になったペポ。

 

「それじゃあ早速」

「おいランタナ、どうせ書くなら太ももにな、もっと上あたりだ」

「オッケー!!」

「ううう、くすぐったいよー」

 ふとももに一画目を書かれるペポ。

 

「もう、まだまだですからね!!」

「おッ、まだまだ元気いっぱいだな、そう来なくちゃ」

 団長はニヤニヤ笑いながら続きを行うのだった。

 

「何やってるんですか、団長さん」

 一時間後、外を通りかかったサクラは3人の惨状を目の当たりにした。

 ランタナの足には正の字が三画目まであり、顔には頬に×が書かれていた。

 団長は顔中真っ黒で、何回負けたか不明だった。

 そしてペポは太ももの内側に正の字が三つ書かれている。

 

「なにって、羽根突きだが? お前もやるか?」

「いえ、だからって団長さん、そこに書くのはちょっとセクハラでは?」

「えー? セクハラ? なにそれ、団長よくわからなーい。

 足に正の字を書くのがどうして駄目なのー、サクラ教えてー」

「えッ、これセクハラだったんですか!?」

 純情なペポは今更のように団長に辱められていたことに気付いたようだった。

 

「えーと、うん、多分ね」

 サクラは言葉を濁しながらそう言った。

 ペポの様子を見て何がどうセクハラなのか説明するのは何だか自分が純情じゃないとでも言う様な気がしたのだった。

 

「もうもうもう!! 団長さんったら!!

 私、お風呂入ってきますね。ほら、ランタナちゃんも!!」

「ぷぷぷ、ペポってば本当に気付かなかったの?」

「ランタナちゃんまで!! 知ってたなら教えてよ!!」

 ぷんぷんしながら宿舎に戻るペポとランタナの二人。

 

「さて、俺も顔を洗って続きを別の誰かとするか」

「全くもう、病み上がりなんですからはしゃぎすぎないでくださいね」

「お前は俺の親かよ」

 若干嫌そうにする団長を見て、サクラはふふふと笑った。

 

「俺の生きがい邪魔しやがって」

「ご主人!! 終わったならボクとも遊んでよ」

「はいはい、まあお前でもいいか。今顔洗ってくるから他の奴探しとけ」

「うん!!」

 顔を洗いに行った団長を見送ると、近くで“待て”をしていたらしいイヌダテは振り返り。

 

「サクラさんも一緒に遊ぼうよ!!

 きっとご主人も喜ぶよ!!」

「まあ、団長さんがまた変な事するかもだし」

 サクラはまた今年も変わらない日々が続くことを確信しながら彼女に頷くのだった。

 

 

 

 

 

*1
闇属性サンタ:花騎士のお隣、オトギフロンティアに闇属性のサンタのキャラ・クラースが存在する。実装当初、サンタが何で闇属性なん? と思ったプレイヤー達はそのイベントストーリーで彼女が弟子に対する鬼畜の所業を見て、ああこの人闇属性だわ、と口を揃えたとか何とか。尚、後日彼女の光属性版が実装された模様。やっぱり性格が悪いから闇属性じゃなかったんだね!!(白目

*2
要するにインフルエンザのこと。





最近A型のインフルエンザが流行ってるらしく、私も年末は寝て過ごしました。
皆さんもどうかお気を付け下さい。

次回はこの間の続きです。

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