虹メダルを使う覚悟してたんですが、いやぁ、ラッキーでした!!
まあ、金確定十一連のアレで十人被りましたけどね!! 虹メダル美味しいです(涙目
去年の冬の虹チケ誰にするかまだ悩み中の模様。
『ナイトシェードは大変な物を盗んでいきました』
「呆れた……」
別室に移動して事情を聴いたキンギョソウは言葉と同様の視線を団長に向けた。
「そんな下らない理由でワルナスビさんに変な呪いを掛けたの?」
「ふむ……」
団長は一旦壁に『メタ発言な』『ランタナ時空重点』という物々しい書初めを掛けた。
「仮にだが、我が眷属よ。
これから先に、包帯姿で安全ピンとドクロの意匠の花騎士が実装され、周りのみんなが先進的だ、可愛くてセンスが有る、と持てはやしたとしよう。お前を変だという面々が、だ。
――――貴様ならどうする?」
「全員張っ倒す」
即答だった。
「これはそう言う尊厳の問題なのだ。
我とてこうした直接的でスマートではない手段は取りたくなかった。
だが、だがな、怪盗で吸血鬼であるぞ?
どちらが格好いいとかではなく、合わせ技とか卑怯ではないか!!
何より悔しいのは、それがめちゃくちゃ格好いいことだ!!」
熱弁だった。団長の魂の主張だった。
「ならば、消すしかあるまい。
我が脅威になる前に、
「じゃあ仕方ないね!!」
「仕方ないね、じゃないですぱ!!」
団長の主張にあっさり迎合してしまったキンギョソウであったが、身内があんな状態のラークスパーは溜まったモノではなかった。
「ネタが被ったから消すとか、どんな邪悪な発想ですぱ!!
そんなこと許されないですぱ!!」
「ほう」
団長は憤るラークスパーを見やると、本棚から一冊の本を取り出した。
「なんですぱ、それは」
「サウザントウォー・アイアスの既刊本のうちの一つだ。
これが発刊された同時期にナイトシェードが活動を始めた。そうだな?」
団長は背表紙の裏の初版の日にちなどが記されたページを示した。
「確かにそうですぱが、その本が私達と何の関係があるですぱ?」
ラークスパーが頷き問うと、団長はその本の別のページを開いた。
「そ、それは!?」
「黒猫怪盗スバルちゃんの登場回*1だ。
設定もナイトシェードと似ているが、こちらは獣人設定で猫耳付きだ!!
まさに深刻なネタ被り。しかし属性的にこっちの方が優れているな!!」
団長の開いた本のページにはラバースーツのケモミミ美少女の挿絵が描かれていた。
その事実に直面したラークスパーはわなわなと肩を震わす。
「み、認めないですぱ!! 絶対マイスターの方が優れているですぱ!!」
「だがこちらは主人公たちを単騎で戦略的勝利に貢献しているぞ。
それに比べ、こちらは二人で惨めなコソ泥どまり。それともこちらと比べてほしいか?」
そう言って今度は本棚から怪盗ロマンのシリーズ本を一式持ってくる団長。
「ぐ、ぐぬぬですぱ……」
「大丈夫、ラークスパーさん」
言葉に詰まるラークスパーに、キツネノボタンがこう言った。
「ケモミミが足りないなら、わたしがお二人の弟子になれば完璧……大勝利」
「どさくさに紛れてなに言ってるですぱ!! そんなこと言っても弟子になんてしないですぱ!!」
「ラークちゃん、もうその辺にしようよ」
いよいよ、呪いを掛けられた張本人たるワルナスビが終始興奮気味の相棒に語りかけた。
「本の中の登場人物と比べられたってどうしようもないよ。
それに団長さんたちもそろそろお仕事だし、私たちもいつまでもこうしてちゃダメだよ」
根はまじめなワルナスビらしい言葉だった。
「そう、ですぱ、けど……」
「それに私、本当はずっとラークちゃんを悪いことに巻きこんじゃって良いのかなって思ってたの。
ラークちゃんのお蔭で今までやってこれたけど、本当は迷惑に掛けてるじゃないかなって」
「な、なんでそんなことを言うですぱ……」
しかし、いつも自信満々に高らかに笑うワルナスビの見る影もない姿に、ラークスパーの目尻に涙が浮かんだ。
「だって、私はラークちゃんと一緒じゃないといつもダメダメだし……」
「もう聞きたくないですぱ!!」
ついに彼女の弱音に耐え切れず、ラークスパーはその場から逃げ出した。
「ラークスパーさん!!」
キツネノボタンは咄嗟に追いかけて行ったが、ワルナスビも追いかけようとして不意に立ち止った。
「我がことながら恐ろしいな。
普段なら意識しないであろう心の奥底の闇を呪詛によって表面化してしまうとは」
まるで他人事のようにそんなことを言う団長に、流石のワルナスビもムッとして振り返った。
だが、団長の彼女を見る視線は実験動物を見るかのように冷たく、そして冷めていた。
「我に怒りを向ける暇があるのか? 悪を冠する者よ。
個性と言う仮面を引きはがされ、か弱き少女の素顔が露わになり、そして友を傷付けてしまったのは他ならぬ貴様の弱さであろう?」
その言葉は的を射ていた。彼の呪いは彼女の強さを封じただけで、空いたところに弱さが出て来てしまっただけなのだから。
それでも、それはワルナスビの他ならぬ本音には違いなかった。
「まったく我もつまらぬことをしてしまった。
屈服させるのならいざ知らず、消し去ってしまってから心躍らぬと気付くとは」
「やっぱりあなたって最低のド外道だよね」
「知っている」
彼を睨んだ後すぐに親友を追いかけるワルナスビの背を二人は静かに見送るのだった。
§§§
「お墓を建てるですぱ……私の知っているマイスターはいなくなってしまったですぱ」
「ラークスパーさん……」
騎士団支部の裏で、ラークスパーは失意に満ちていた。
その果てに土を盛ってそこに木の枝を紐を結んだ簡素な十字架を突き立てた。
そんな哀れな姿を見て、キツネノボタンも掛ける言葉が無かった。
そんな時だった。
「あーっはっはっは!!
見つけたぞ、我がスクワイアよ!!」
「そ、その声は!!」
ラークスパーがハッとして振り返ると、マスクを付けてポーズを決めているワルナスビが居たのだ。
「我こそは深遠なる闇よりいでし、漆黒の華!!
あの程度のちゃちな呪い、と、とっくに打ち破ってしまったわ!!」
だが、その声色は誰が聞いても震えていて、マスクで隠れていない顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。
「だから、だから……あ、あれ?」
そしてへなへなと、ワルナスビはぺたりと地面にへたり込んだ。
「ど、どうして、ち、力が入らない……」
「もしかして、無理やり元に戻ろうとしても呪いがそうさせないんじゃ」
「そ、そうかも……」
がっ、とついには地面に両手に突いてしまうワルナスビの姿に、キツネノボタンが呪いの更なる効果を察した。
「ちょ、ちょっと待っててね、ラークちゃん。
私、呪いになんて負けてないから。ほ、ほら」
それでも何とか立ち上がろうと、産まれ立ての小鹿のように震えながら立ち上がりポーズを取ろうとするワルナスビ。
「あッ」
しかし、呪いの力は恐るべきもので、そんな健気な努力も許さぬとばかりに彼女の足がもつれた。
「もう止めて欲しいですぱ、ワルナスビ様!!」
そうして倒れそうになる彼女を抱き留め、涙ながらにラークスパーが叫んだ。
「でも、でも、ラークちゃんは」
「違うんですぱ、私が間違ってたんですぱ!!
マイスターは、ナイトシェードはやっぱりここにいたんですぱぁ~!!」
「え、だけど呪いが……」
「呪いだなんて関係ないですぱ!!
私が憧れた、大好きなワルナスビ様はここにちゃんといるんですぱ!!」
そしてラークスパーはたった今作ったお墓を取り壊した。
「ラークちゃん……」
彼女の想いに、ワルナスビも感銘を受けて両目を腕で拭った。
「くくく、素晴らしい友情であるな」
そんな感動のシーンの最中に、団長はキンギョソウを引き攣れやってきた。
「憧れの人物が自分の理想と違うと分かると即逃げ出す腰抜けと思っていたが、盗人は盗人……それも仕方あるまい。
所詮ナイトシェードは我との戦いの敗北者であるからな」
現れると同時にそんな安っぽい挑発を繰り出す団長だったが、ラークスパーの反応は顕著だった。
「ラークちゃん!?」
「はぁ……はぁ……敗北者ですぱぁ?」
彼女は顔を強張らせて団長の前に出た。
「取り消すですぱ!!」
「乗っちゃダメだよ、ラークスパーさん!!」
キツネノボタンが止めようとするが、彼女は聞く耳を持たない。
「どこに間違いがある?
貴様の憧れのマイスターは、我の呪いに掛かってその有り様。
祖父も越えられず、何も得ず、終いには逃げ出すまぬけな従者。
実に空虚ではないか。空虚な盗人人生であったな」
「マイスターは私に生きがいをくれたですぱ!!
私はマイスターの偉大さを知ってるですぱ!!」
「結果として何かを成そうとも、正しくなければ価値は無い。
正しい行為でなければ価値など無いのだ」
敗北者敗北者、怪盗大怪盗!! と言い合う二人だったが、頃合を見て団長はこんなことを言いだした。
「マイスターはまだ負けてないですぱ!!」
「ふむ……確かに昨夜のあれは少々不意打ち気味であったな。
ではこうしよう、お前たち二人がこの呪いを解いてみると言うのは。
三日後までに自動的に解除されるまでに見事その呪いが解ければ我は敗北を認めよう。
まあ、どうせ無理ではあるだろうがな」
「やってみせるですぱ!!」
まさに売り言葉に買い言葉で、ラークスパーは団長の挑戦を受けた。
「だけど、掛けた本人も解けない呪いなんてどうやって解くんだろう」
「ではヒントをやろう。
銃や魔法に於いて、最も重要なモノは何だと思う?」
「え? 安全性だよね?」
あっさりと即答するワルナスビに、団長は頷く。
「そうだ、破壊力や殺傷性より、使用者にとって安全であることが何よりも重要なのだ。
故に、大半の呪いは自身に誤って降りかかった場合に備えて特定の条件で解呪できるように設定されている。
時間制限もまたそのひとつである」
「ああ、そっか」
合点が行ったと言うように、ワルナスビも頷く。
「この呪いを作った我が祖先も遊び心が有る人物でな。
ある特定の行動によって簡単に呪いが解呪できるのだ」
「特定の行動?」
「それを見つけだし、実際に解いてみせよ。
そしてここからが解呪のヒントだ。――古来より行われてきた呪いを解く方法、である」
「古来より行われてきた?」
「呪いを解く方法ですぱ?」
ワルナスビとラークスパーはオウム返しになりながら首を傾げた。
「え、もしかしてそれって……」
子供の頃から多くの本に触れてきたキツネノボタンはそのヒントを聞いて顔を赤らめた。
「え、キツネノボタンちゃん分かったの?」
「うん、だからワルナスビさん、私を弟子に」
「だぁ~めぇですぱぁ!! キツネノボタン、お前に頼らなくても私とマイスターで呪いを解けるですぱ!!」
そう言ってラークスパーはワルナスビを連れてその場を去って行った。
「くくくく、はははは!!」
「ねぇ、どうして本当は簡単に呪いが解けるのにしなかったの?」
ずっと黙って聞いていたキンギョソウが可笑しそうに笑っている団長に尋ねた。
「キンギョソウさん、多分呪いを解呪する条件って――――」
「え、マジ? 性格悪ッ、どっちにしろあの二人じゃ無理じゃん」
キツネノボタンから解呪の方法を聞いたキンギョソウは、あの二人をからかって遊んでいる団長を見て呆れた表情になるのだった。
§§§
「え、呪いを解く方法を探してるって?」
まず二人が尋ねたのは、祖母は有名なまじない師であるという花騎士ビンカだった。
「そうですぱ。今日予定が無ければお婆さまにお会いして相談しようと思っているんですぱ」
「それはちょっと無理かな~。
お婆ちゃん、毎日のように遠くから相談事をしにくる人たちで予定がいっぱいだから。
でも、半年ぐらい先だったら大丈夫かも!!」
「そうなんだ……」
高名なまじない師に相談すれば呪いを解く方法のとっかかりを掴めるかと思った二人は落胆して肩を落とした。
「ああ、その代りと言っちゃなんだけど、私が相談に乗るよ!!
なにせお婆ちゃんの孫だからね!! いろんなまじないに詳しいし!!」
落ち込む二人をみてビンカは慌ててそう答えて胸を張った。
「本当ですぱ!?」
「大丈夫、昔から色んな悪意や害意を遠ざけるおまじないってのがあるんだから!!」
それを聞いた二人は、何だかそれっぽくて期待感が湧いてきた。
「ささ、それじゃあこれを持って、こうやってこうするの!!」
ビンカは不思議な踊りを踊った!!*2
ワルナスビの魔力が3下がった!!
ラークスパーの魔力が5下がった!!
「ワルナスビ様、呪いは解けたですぱ?」
「ううん、全然」
「あ、あれ? 間違えたかな? もう一回、もう一回試させて!!」
結局呪いは解けず二人はその日、最終的にどうにもならず涙目になって謝り出すビンカを宥める事となった。
翌日。
「呪いを解く方法?」
その日、リリィウッドで魔女の会合が行われると言う情報を掴んだ二人は、それに参加するらしい黒い魔女の異名を持つアルテミシアを見つけだし、話を聞くことにした。
「ふーん、なるほどねぇ、見たことの無い独特な魔法を感じると思ったら……」
「わかるんですぱ!?」
「そりゃあねぇ」
くすくす、と彼女はワルナスビを見て怪しく笑った。
花騎士の中でも魔法の知識と扱いならば十指に入るだろう彼女は、ワルナスビに掛けられた呪いを感じ取ったようだった。
「悪いことは言わないわ、長続きするようなモノでもないようだし、余計な手出しをしない方がいいわ」
「え、どうしてなの?」
「相手を呪い殺そうって類の呪詛はね、二段構造になってたりするのよ。
無理やり解こうとするとそれをトリガーにより強力で殺傷性が高い呪いが発動する場合があるの」
それを聞いた二人は、昨日散々呪いを解こうとしたので真っ青な表情になった。
「うふふふふッ、でもそんな呪いは余程殺意を抱かれない限り使われることは無いわ。
強力過ぎる呪いは身を滅ぼすもの。人を呪わば穴二つってね」
二人の反応を楽しんだアルテミシアは、いじわるくそう付け足した。
「その呪いを掛けたの、リリィウッドの人間でしょう?」
「え、どうしてわかったんですぱ?」
「この国の魔女に聞いたことが有るの。
この国の人間は殺傷性の高い呪いより、精神の変調をきたす呪いが主流だって。
リリィウッドの貴族の間で呪いに掛かる事は不名誉なことだから、殺してしまうより気を狂わせた方が良いんだとか。
殺して騒ぎにするより、その方が世間体を気にして病気として身内が処理してしまうからって」
「お、恐ろしい話だねー……」
今まさにそう言う呪いを掛けられているワルナスビはアルテミシアの話にぶるりと震えた。
「そう言うわけだから、呪いを掛けた人間を刺激しないように効力が終わるまで待ちなさい。
まあ、どうしても呪いを解きたいのなら、その呪いについて記載された文献が無いとまず無理よ」
二人の反応が楽しかったからか、彼女にしてはひねくれず純粋に善意でそう言った。
「この呪いを解くには、古来より呪いを解く為に行われた方法が必要らしいんですぱ。
アルテミシアさん、何か心当たりはあるですぱ?」
「えッ、そんな単純なことでいいの? ああ、道理で……」
ラークスパーが尋ねると、アルテミシアは驚き、二人を憐れむ様に見た。
「その呪いを掛けた奴って、かなり性格が悪いわね。私、ちょっとムカついたわ」
「もしかして、それが何か知ってるの?」
「少なくとも、今のあなた達には不可能な事よ。大人しく、効力が切れるのを待ちなさい」
そう言葉を残して、アルテミシアは去って行った。
二人は釈然としないまま、遠ざかる彼女の背を見送るのだった。
更に翌日。
ついにタイムリミットが近づいてきた。
しかし呪いを解く方法は未だつかめずにいた。
そんな折である。
「カーパスさん、ほら見つけましたよ。ワルナスビさん達です」
「ふむ、どことなく元気がないね。やはり呪いに掛かったと言うのは本当かな」
ストレプトカーパスとメギの二人がやってきたのは。
「……カーパスとメギ!! 何の用ですぱ!!」
ワルナスビとラークスパーはと言うと、手がかりが掴めず街中で項垂れている最中だった。
「仮にも好敵手である二人がその様ではボクたちも忍びないってだけだよ」
「そう言うことですので、私達も協力してあげますよ」
「ぐぬぬ、お前たちに塩を送られる筋合いはないですぱ!!」
「まあまあ、ラークちゃん」
探偵組二人の申し出に憤るラークスパーをワルナスビは宥めた。
「私は二人がちゃんとすごいことを知ってるしいつも敵対してばかりだけど、こうして一緒に何かするならとても頼もしいし、嬉しいな」
「ま、マイスター……」
天使のような無垢な笑顔でそんなことを言うワルナスビに、ラークスパーだけでなく探偵二人も見とれてしまっていた。
「ラークスパーさん、この子どうなっちゃってるんですか?」
「これが呪いですぱ。マイスターは呪いによって闇の力を操る人格を封じ込められてしまったですぱ」
「なるほど……」
それを聞いたメギは、ワルナスビの顔に両腕を回してギュッと抱きしめた。
「カーパスさん、もうこのままでいいんじゃないでしょうか」
「いやいや、そう言うわけにはいかないだろう」
「このままでいいじゃないですか。この調子なら変な悪事も出来なさそうですし」
「君にそういう気*3があるのは何となく察していたが、流石にそうは言ってられないだろう?」
「マイスターを放すですぱ!!」
メギの豊かな胸部でもがいていたワルナスビをラークスパーが引き離して助け出した。
「とにかく、ボクたちは呪いにまつわる謎を解く為にやってきた。
まずは場所を移そうじゃないか」
割と暴走気味なストレプトカーパスが場をまとめると言う珍しい光景だった。
「ここは、図書館ですぱ?」
道すがら呪いについて聞いた探偵二人に連れられ、四人は図書館へとやって来ていた。
「ヒントは古くから行われてきた呪いを解く方法なのだろう?
なら、そうした文献を紐解くに限るだろう?」
「だけど、呪いに関する本は私たちも探したけど、大した情報は見つからなかったよ」
「この国の書物は、ね」
ストレプトカーパスは不敵に笑うと、図書館内部の童話などのコーナーに進んで行った。
そしていくつかの童話や絵本などを手に取って、テーブルに持って行く。
「カーパス、お前とあろう者がおとぎ話を頼るですぱ?」
「ここにあるのはウィンターローズの童話や絵本だ。
かの国は昔の出来事を詩や物語にして残す文化が有るだろう?
ならそこにヒントに対する答えはあるはずだ」
そう言う彼女は、既にある程度の推測を元に行動しているように見えた。
仕方なく他の三人は絵本を手に取った。
そして約一時間後。
「ふむ、やはりか」
幾つかの絵本などが広げられたテーブルを見渡し、ストレプトカーパスは確信を抱いた。
「物語の主人公、またはヒロインが呪われ、それを解く為に行動する物語は大きく分けて三つのパターンに分類されている。
まず一つ目は、呪いを解く為の人物やアーティファクトの探求。これが一番少ないパターン」
彼女は人差し指を立てる。
「二つ目のパターン。
呪いを掛けてくる相手を打倒、または殺傷する一番オーソドックスなパターン」
中指を立てる。
「そして三つ目の一番多いパターン。
呪いを掛けられた美女または姫君が王子などの身分の高い男性の口付けによって呪いが解かれるパターン」
「そんなにもったいぶらずとも分かるですぱ!!」
最後に薬指を立ててそう説明するストレプトカーパスに突っこみを入れるラークスパー。
勿論、もう既にワルナスビは顔を真っ赤にしていた。
「三日と言う期限で探し出すのが不可能なアイテムが必要な可能性もあるが、そんな根本的に不可能な条件をあの団長は突き付けはしないだろう。
そして自身の打倒や殺傷をさせたいわけでもない筈だ。
つまり……」
「もう分かったってば!!」
「新手の羞恥責めですか? カーパスさん」
手で顔を覆って声を荒げるワルナスビと、呆れ顔のメギだった。
「とりあえず、女性同士で大丈夫か試してみましょうか?」
「メギ、マイスターに無体はさせないですぱ」
ワルナスビに向け身を乗り出そうとするメギとの間にラークスパーが素早く割って入る。
「ど、どうしても唇が必要なら、こ、このスクワイアの唇をマイスターに差し出すですぱ!!」
「あなたこそなに興奮しているんですか?」
若干興奮気味な怪盗従者に探偵助手の容赦ないツッコミが走った。
「そもそも、この呪いはキンギョソウ団長の家系の人間が、変人の伴侶に愛想が尽きたと言われた時に自身に使うモノなのだろう?
だとするならこの呪いの解呪の条件とは」
「呪いを掛けた張本人とのキスであると?」
「そう考えるのが一番自然ではあるね」
名探偵の名推理の結果に、メギは呆れ果てた様子だった。
「夫婦円満の為に呪いまで持ち出しますか、普通」
「今回はそれ以外の目的の為に使用されているがね」
「それで、どうするんですかワルナスビさん。完全に舐められていますよ」
「…………私は」
そしてワルナスビは、答えた。
§§§
その日の夜、団長は一人執務室で待っていた。
その手には怪盗からの予告状があった。
内容はこうだった。
『今夜、高貴なる者の口付けを頂きに参ります。 怪盗ナイトシェード』
「……来たか」
瞑想を止め、窓へと目を向ける団長。
「ふ、ふははは、は、予告通り、怪盗ナイトシェード、参上……」
ラークスパーに肩を貸してもらい、何とかたどり着いた様子のワルナスビを見やり団長はため息をこぼす。
「我の負けか」
「ふふふ、マイスターの登場に恐れをなしたですぱね!!」
「まさか本当に我から口付けを奪おうとしていたのか?
止めておけ、そんなに安い体ではなかろう。どうせ、もうじき呪いは解けるのだ」
団長はそう言って、少し笑った。
「正直、舐めていたよ。そうまでして呪いに抗するとは。
素直に負けを認めよう。二人を嘲笑った言葉も撤回し、謝ろう。すまなかった」
彼は潔くそのように述べた。
「や、やったよラークちゃん!!」
「マイスターが勝つのは当然ですぱ!!」
二人は抱き合って、喜びを分かち合った。
しかし。
「しかし、先日の夜の約束は守ってもらう」
「え、でも私達が勝ったんじゃ」
「それは先日の夜の約束だ。その翌日の朝は何の約束もしてはおらぬだろう?」
したり顔で団長は言った。
「それとも、誇り高いナイトシェードが一度した約束を反故にするのか?」
「ぐ、ぐぬぬですぱ」
「さあ、約束を履行して貰おうか!!」
団長は邪悪な笑みを浮かべ、本棚から怪盗ロマンシリーズを一通り持ってきた。
「では、貴公の祖父の直筆のサインを貰ってきてもらおうか。
あ、こっちの色紙にはキツネノボタンの分をだな」
「ファンか、ですぱ!!」
実は大ファンだった。
後日。
「ふふ、ふふふ……」
直筆サイン済み怪盗ロマンシリーズが納められた本棚を眺め、ご満悦の団長。
「男って本当に馬鹿だよね……」
その様子を見ているキンギョソウは呆れ顔である。
「……そうかもしれぬな」
仕事の合間の息抜きに、絵を描き始める団長。
ふぅ、と悩ましげに溜息を吐くと彼の目線は虚空を彷徨いだす。
「ナイトシェードは大変なものを盗んで行ったんだね」
「彼奴らは何も盗んで行ってはおらぬぞ」
ううん、とキンギョソウは団長の描いた絵を覗き込んだ。
「盗まれたのは、団長の心だよ」
そこには、鉛筆で書かれた笑顔のワルナスビの姿があった。
次は団長とキンギョソウの馴れ初めをR版でやる予定。
ちなみに、言うまでもないでしょうがキンギョソウ団長的にワルナスビは好みドストライクです。
今更ですがキンギョソウ団長が実はド外道だとキンギョソウは言いましたが、団長たちを某運命の属性に当て嵌めるならこんな感じ。
リンゴ団長:秩序・中庸
チューリップ団長:混沌・善
キンギョソウ団長:秩序・中庸
ナズナ団長:秩序・善
ハナモモ団長:秩序・善
普通なら騎士団長は秩序・善であるはずなんだけどなぁ(白目
悪属性が居ないだけマシだよね!!