貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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はぁ、ナツメちゃんを甘やかしたいんじゃ~。
そう言えば、近日ガルシンが復活するとか。なんだかいよいよって感じですね~。


短編連作 イベント編その4

『 死神のグルメ 』

 

 

 相変わらずこの国は騒がしい。

 

 私たちはバナナオーシャンに仕事で来ていた。

 仕事と言っても害虫討伐ではない。

 

 天の恵みか、それとも根源の世界花が守られたおかげか、ここ最近この国では異常な豊作に恵まれているようだった。

 元々バナナオーシャンの世界花は他の世界花に比べて直接実を付けるといった目に見える恩恵を齎すことで知られているが、今回ばかりは私も聞いたことが無いレベルで食物が余っていた。

 

 それはこの国の政府も匙を投げるレベルで、既に各国では穀物を初めとした食料の値段が暴落しているらしい、とチューリップ団長がぼやいていた。

 文字通り、山のように食料が積み上がっている。

 

 これをどうにかするのが、今回私たちの──より正確に言うならチューリップ団長の仕事だった。

 突発的なイベントを仕切らせたらおそらくどの騎士団長よりも有能なのは私もこの身を持って思い知っている。

 そんな彼が山のような食料を見上げて途方にくれていた。

 そうしている内に、運ばれてきた食料の山がもう一つ増えた。

 最終的にこの山は10を超える見込みだそうだ。

 

「こんなの、どうしろっていうんだよ……」

 彼もこの国の食料自給率を大幅に超えた食料に眩暈がしているようだった。

 他国に出荷しようにも、輸出できる物が無いというレベルなのだからそうもなるだろう。

 

「とりあえず、そっちで炊き込みご飯を作ってるからそれでも食おうぜ」

 うちの団長がそんな彼の肩をぽんと叩いてそう言った。

 

 ……そろそろ食事の時間か。

 道理で、腹が減ったわけだ。

 

 

「みんなー、ご飯ができたわよー」

 サクラがそう呼び掛けると、手伝いに来ていた騎士団の面々が目の色を変えて殺到し始めた。

 私はとっくに有難味を感じたことはないが、彼女──他にも手伝いはいたが──の料理はとても価値があるらしい。

 

「ああ、皆、焦らないで!! 全員がおかわりできる分ぐらいあるから!!」

 と、彼女が言うとおり、サクラは炊き込みご飯の入った巨大な窯を身の丈ほどもあるしゃもじでかき混ぜていた。

 なかなかにインパクトのある絵だった。

 

 私は喧噪を嫌って少し離れた位置で行列の行く末を見守ることにした。

 ここからでも炊き上がった新米と香ばしい香りが漂ってくる。

 このままでは埒が明かない、と団長たちがお盆で数人単位で一まとめで取りに来るようにと呼び掛けることになったようだ。

 

 私はどこかのグループに入るのも億劫だったので、最後でいいかと思っていたら。

 

「クロユリ~。あ、いたいた!! 一緒に食べよう」

 どうやら、いつものおせっかいが私の分まで持ってきたようだった。

 私はため息を吐いて、一応礼を述べておくことにした。

 

 

 サクラ特性炊き込みご飯

 色取り取りの具材が入った炊き込みご飯。

 おこげの香りが食欲をそそる。人参が桜の形と芸が細かい。

 

 超具だくさんけんちん汁

 具が山盛りになっているけんちん汁。

 これだけでもご飯が食べられる。

 

「「いただきます」」

 私とゼラニウムはさっそく今日の昼食に手を付けた。

 

 まずは、やはり汁物からだろう。

 やたらと具の多いけんちん汁を啜ると、優しい醤油の味が口の中に広がる。

 ああ、これだ、この安心できる味だ。

 

 いちょう切りにされた人参は柔らかく、大根もしっかり味が沁みている。

 さといもを口の中に放り込めば、とろける様に口の中で消えて行った。

 彩りを加える為でもあるがこのしゃきしゃきした触感の長ネギはやはり無くてはならないだろう。

 ごろりと入っているしいたけの味も汁に染みていて美味い。ぷりぷりしたこんにゃくは手でちぎって入れらていた。

 そしてこの木綿豆腐のほろほろした触感が嬉しい。けんちん汁はこうでなくてはな。

 

 胃の中の下地を整えた私は、いよいよ炊き込みご飯に取り掛かる。

 誰に頼んだわけでも無いのに大盛りの山頂に箸を入れた。

 

 ……ああ。美味い。

 ほかにおかずが無くても幾らでも食べられる。

 

 人参、しめじ、たけのこ、糸こんにゃく、鶏肉、お米のアンサンブルだ。

 数多の食材が一つの味付けと調理法によって合唱を奏でている。

 

 うちの部隊は団長の方針で任務先でも食事にはこだわる方だった。

 可能な限り調理した食事を取り、士気を高める。かつての私には無縁のものだった。

 あの男曰く、美味い物を食べなければ生きている意味が無い、とのことだ。

 私は干し肉を戻したスープのような雑多な味も好きだが、こういった手の込んだ料理もまたいいものだな。

 

「美味しいね~、クロユリ」

 ゼラニウムもほぅとため息を吐いてそう言った。

 私は、ああ、と短く返した。

 

「あら~、どうしましょう。炊き込みご飯が売り切れだわ」

 私たちがゆっくりと食事をしていると、炊き込みご飯は花騎士たちと表現するのもおこがましいイナゴの群れによって平らげられてしまっていた。

 ……まあ、別にいいが。もう一杯ぐらい食べておけばよかったか。

 

「安心してください、サクラさん!! 

 こんな時の為に、こんなものも用意しておきました!!」

 そう言ってリシアンサスが持ってきたのは、生めんのうどんだった。

 なぜそんなものまであるのか、などとは言うまい。

 

「これを、どばー!!」

 そしてそれを、まだまだ残っているけんちん汁にぶち込んだ。

 ごくり、と誰かが唾を呑んだ音がした。いや、私だったか。

 

 飢えたイナゴと化した花騎士の群れが、或いは生者の肉を欲するゾンビのようにけんちんうどんに押し寄せて行った。

 

「クロユリの分も貰ってくるね!!」

 それを見たゼラニウムも、けんちん汁をかき込んでそっちの方に行ってしまった。

 はぁ、花騎士をしているうちは静かに食事を取るのは無縁なのだろうか。

 

 

 〆のけんちんうどん

 余った次の日にはうどんを投入!! 

 麺と一緒に具材をかき込むのだッ!! 

 

 

「ああぁ、冬の作業にこのけんちんうどんは反則だよぉ」

 ゼラニウムがまったりしすぎて目が開いているのかどうかわからないくらいになっていた。

 だが確かに、先ほどは具が多すぎて汁物を食べている感じが少なかった。

 幾ら食材を消費したいからと言ったからとて、バランスがあるだろうに。

 

 この辺りは常夏の国バナナオーシャンだが、流石にこの時期は冷える日もある。

 今日のように冷える日は暖かいうどんは身に染みるようだ。

 

「「ごちそうさま」」

 そして、私たちの今日の昼食を終えた。

 

 

 食事を終え、私は雑務に戻った。

 他の面々も食事を終えて仕事を始める。

 

「俺、最初聞いたときは食料が余ってるから無償で提供するって話だったんです、だから景気付けに他の団長さんたちを呼んだんですよ……。

 食料の無償提供はありがたいですし……。まさか丸投げとは……」

 やっぱりタダで美味い話はないんですね、タダで美味しい物貰ったのに、と笑うしかない様子のチューリップ団長。

 どうやら、この食料の山脈はうちの騎士団に寄与されたと言う体でその消費を丸投げされたらしい。

 

「それで、この量どうしましょう?」

 向こうで食料の運搬の指揮を取っているナズナ団長の代わりに、補佐官のナズナがやってきて彼に問う。

 

「クジラ艇に積んでコデマリちゃんにチャージさせて副砲みたいな運用とかどうです?」

「団長さん、コデマリちゃんは幾らでも食べれるかもですけど、食べる為の口は一つなんですよ」

「冗談ですよ」

 冗談でも言わないとやってられないのか、チューリップ団長は投げやりな様子でそう言った。

 

「……タチバナさんに相談して、お祭りという体でグルメフェス的な催しでもしましょう。

 人件費と場所代とその他経費を回収できる程度は参加費は取りたいですが、ここは赤字覚悟でやりましょう。

 これを無駄にした方が世間体に悪い」

 そうと決まれば、チューリップ団長は早かった。

 彼の手腕に口を挟む者はよほどのことが無ければ居ないのだから。

 

 まずは年中お祭りをしているこの国の飾り付けや屋台などを使いまわすべく手配、同時にステージや看板などの作成と同時にチラシを作成。

 宣伝と同時に料理の心得のある花騎士や料理人を招致、臨時のアルバイトを雇い僅か一週間でイベント開催にまでこぎ着けた。

 

「……何と言うか、お疲れ様です」

「いえ、今回は比較的楽でした。

 二年前の光華祭に比べればこれくらい」

 それにまだイベントは始まったばかりですよ、と彼は肩を竦めてナズナに言った。

 私が思うにこういった無茶振りを何とかしてしまうから、更なる無茶振りをされるのではないだろうか。

 その悪循環を指摘するほど、私は彼と親しくはなかったのだが。

 

「とりあえず、タチバナさんのおかげで国家主導、騎士団運営ってことになったんで、後のことはナズナ団長たちに任せます。

 俺はハナモモ団長と手分けして使い切れそうにない分を各地に運ぶ手配をしなければなりません」

 彼はこれから、地図にない小規模の村に食料を届ける差配をするらしい。

 そんな彼の部下がやってきて、彼に耳打ちをした。

 

「え、大食い大会にコデマリちゃんが出てる!? 

 誰だよ彼女の参加を許したの!! あの子はレジェンド!! チャンピオンにして殿堂入りでしょう!? 

 俺は『花騎士コデマリが食べるだけ』って感じのショーをやらせて特別スペースに隔離しろって言ったよね!?」

「いえ、それが当人が皆で一緒に食べたいと言ったらしくて……」

「大食いってつまり身体能力を競う競技でしょう? 

 彼女のあれはもはや競うとか競わないとかそういうレベルじゃないじゃん!?」

 もう知らない、とチューリップ団長は逃げ出していった。

 ……流石に私も同感だった。優勝賞品がことごとく彼女に掻っ攫われる未来しか見えない。

 

 

 

 §§§

 

 

 お祭りの運営として裏方で働いていた私やほかの部隊の面々だったが、休憩の時間くらい存在する。

 私も祭りに集まってきた人々の間を縫いながら、屋台を見て回る。

 

 祭りの参加者は参加費を払うだけで、この会場にある食べ物を食べ放題だった。

 その参加費もちょっとしたバイキングやビュッフェ一回分程度で、どれほど採算度外視なのかわかると言うものだ。

 交渉の結果、赤字分がバナナオーシャン負担となったおかげか、チューリップ団長も途中から生き生きしだしたので結果的に異様な速さでこの祭りが開催できたのだ。

 

 私は開錠の中央あたりでパンフレットを広げた。

 これにはどこにどんな屋台があるか網羅されている。

 ご飯物、揚げ物、汁物、炒め物、より取り見取りだ。

 

 その中で私が目に入ったのは、串カツだった。

 よし、これにするか。

 

 

「いらっしゃいませ~」

 私が屋台の前に来ると、見知らぬ花騎士が応対してくれた。

 

「現在込み合っていますので、相席でも構いませんか?」

「ああ」

 彼女に案内された先の席には、今度は見たことがある花騎士が座っていた。

 

「あ……」

 以前ミズウォルム討伐戦を指揮していたフリチラリアだった。

 ビールのジョッキを片手に三本まとめて串カツを頬張っていた。

 

 私は何やら気恥ずかしそうに目を逸らしている彼女に対して目礼だけして、そんな彼女を見ないようにメニューを見やり、何を注文すべきか思案する。

 そこで、私は注文待ちしている花騎士に疑問を口にした。

 

「肉類は無いのか?」

「ええ、ここは野菜とか魚介類だけですね。

 豚とか鶏肉とかは、から揚げとか串焼きとか他の屋台がありますし」

「そうか」

 忘れがちだが、肉類を食べないという人間はかなり多い。

 ここの揚げ物はこういった棲み分けが成されているようだった。

 

「では、ピーマン、玉ねぎ、レンコン、ホタテ、エビを二本ずつ」

「かしこまりましたー!!」

 注文を受けて、彼女は調理担当にそれを伝えに言った。

 

 じゅ、っと間もなく油に食材が投入され、油で上がっている小気味よい音が聞こえてくる。

 

「えーと、結構食べるんだね!!」

 すると、敢えてちゃんと挨拶をしなかったと言うのにフリチラリアが話しかけてきた。

 

「まあ、な」

「それはよかったよ。食欲があるってことは、それだけ生きたいってことだからね!! 

 ……あ、ええと、その、あなたの噂はよく聞いていたから」

「そうか」

 目の前にはリリィウッドの神官たちの頂点に位置する家の者だ。

 それでいて元老院にも所属しているのだから、自国の花騎士の良い噂も悪い噂も聞こえてくるのも当然だろう。

 

「良い騎士団長に恵まれたみたいだね」

「はッ、死に際でもそんなお世辞を言える男では無いがな」

 そうこう雑談しているうちに、店員が串カツを運んできた。

 この速さは見込みで既に揚げてあるものを持ってきたようだ。

 

 

 串カツ

 串物の二大巨頭。

 ソースの二度付けは禁止!! 

 

 

 サクッ、と口に運んだ串カツが音を立てる。

 ああやっぱり、揚げ物は最高だ。

 

 今度はソースを付けてもう一本。

 サクッ、もう堪らない。

 

「ごくり……店員さん、私にももっと持ってきて」

「はーい!!」

 フリチラリアがおかわりを頼んで、更に盛られた串カツが運ばれてくる。

 サクリ、という彼女が串カツを噛み締める音がこちらまで聞こえる。

 更にはそれらをゴクゴクとビールで飲み干している。

 

 私は内心罵倒の言葉を吐き出したい気分だった。

 仮にも大会スタッフとして動いている私に、今から酒を飲むわけにはいかないからだ。

 

「ぷっはー、最高!!」

 そして私の視線がよほど恨めしげに映ったのか、彼女は猫っぽい笑みを浮かべてビールを両手にもらってきた。

 

「ほら、クロユリちゃんも呑もうよ」

「いや、私は……」

「なんらとー、フリちゃんのお酒が飲めないのかー!!」

「はぁ……」

 私はなんだか面倒なのに絡まれた自覚をしつつ、目の前の酔っ払いの相手をすることにした。

 

 不思議と、懐かしい気分になった。

 

 

 この後、酔っぱらって帰った私は団長たちにクソ真面目なお前が酔っぱらって帰ってくるとは、と驚かれたような記憶が脳の片隅に残ったような気がした。

 そして何だかひと騒動あって害虫を斬ったような覚えもあったが、まあどうでもいいことだろう。

 

 

 

『 サクラのバカンス……そのちょっと前 』

 

 

 それはミズウォルム討伐が終わってすぐ後のことだった。

 

「団長さんはおられるか?」

 珍しくリリィウッドの腰を落ち着けていた我らがリンゴ団長の元に、ウメが尋ねてきた。

 

「おや、ウメちゃんか。君が俺に用ってことはサクラに関してか?」

「ご明察です」

 彼女が団長の執務室に通され挨拶もそこそこ、彼女は用件を切り出した。

 

「最近のサクラはブロッサムヒルだけでなく他国にも慰問に出かけているのは知っていますよね?」

「当然だろう? あの国から俺を通して彼女に伝えた仕事だからな。

 あのクソミミズの群れを蹴散らしたからか、今のところ他の害虫どもの活動は控えめだ。

 俺の部隊の他の連中には休みを与えたと言うのに、あいつも相変わらずと言うか。

 ……まあ、あいつはマグロみたいな女だからな。動き続けていないと呼吸ができないんだろう」

「団長さんまで諦め気味では困る。

 実は、アイビーちゃんに提案されたんだが……」

 と言って、ウメはアイビーが持ってきた提案とやらを話し出した。

 

「それってあの子が一緒に遊びに行きたいってだけなんじゃね?」

「それは、まあ、そうかもしれないが、私は良い機会だと思うんだ」

 何でもそれはアイビーが豪華客船「クイーン・スワトリア号」のチケットを二枚確保したので、サクラにバカンスをプレゼントしようという算段だった。

 

「そう言うわけで、どうにか団長さんにはサクラを任務から外してもらおうと思っていたのだが」

「なるほど。だとしたら、おあつらえ向きの理由ができたところだ。

 遠征中に溜まっていた報告書を読んでいたら、ちょっと個人的に気になる案件が出来てな」

 ウメは顔を顰めている団長を見て、サクラめ何をしたんだ、と少々不安になった。

 

 

 それから数日後。

 

「サクラ、お前に謹慎を言い渡す」

「……理由を聞かせてもらっても良いですか?」

 慰問の仕事が一通り終わって部隊に戻って早々団長に呼び出され、そんな言葉を投げかけられてもサクラは不思議そうに小首を傾げただけだった。

 

「サクラよ、この間フィリアの花園周辺の害虫討伐の最中に、別の調査隊に戦力として貸し出したよな? 

 正直、お前が居ない間、すごく大変だったんだぜ。目の前で見る見るうちにフィリアの花園が枯れていくんだからな」

「はい、今思えばミズウォルム出現の前兆だったのかしら」

「だろうな。そして、お前の報告書には件の調査隊との合同任務の際、ミミズ害虫の討伐に一方面を独りで担当したとあるんだが、これはどういうことだ?」

「それはその、戦力的にそうするしかなかったといいますか」

 団長の追及に、珍しくサクラの目が泳いでいた。

 

「ああ、仕方がなかったのかもしれない。

 だが俺は教えたよな、俺の規則は絶対だと。そう言うわけで、しばらく休暇がわりに謹慎でもしておけ」

 あくまで自分は怒っていないよ、と態度で示しつつ団長はサクラにそう告げた。

 

「謹んで、お受けいたします」

「そうそう、アイビーちゃんがサクラが帰ってきたら教えてほしいって言ってたぞ。何でも急な用事があるだとか。行ってやったらどうだ?」

「まあ、アイビーちゃんが? わかりました。そうしてみます」

 サクラは一礼して、執務室を去って行った。

 

「リンゴちゃん」

「はい」

 団長が補佐官を呼ぶと、分かっているとでも言うようにリンゴは本棚をドアに前に移動した。

 そのすぐ後だった。

 

 ドンドン!! と凄まじい音でドアを叩く音が聞こえたのは。

 

「開かないわ!! 団長!! 居るんでしょう!!」

「サクラさんが謹慎ってどういうことなの!!」

「ちゃんと説明しなさい!!」

「そうよそうよ!!」

 と、外から姦しい声が聞こえてきた。

 

「出たな、サクラの追っかけ四馬鹿め」

 団長は視線だけ本棚にふさがれたドアを向けて、すぐに事務作業の続きを始めた。

 

「だれが四馬鹿よ!!」

「私たちはサクラさんを見る会、サクラさんの公式ファンクラブよ!!」

「会員ナンバーも一桁で、階級も親衛隊なんだから!!」

「わかったらさっさとサクラさんの謹慎を取り消せぇ!!」

 ゴンゴンと危険な音を発するドアを本棚を背に抑えているリンゴは衝撃に耐えていた。

 

「何がサクラさんを見る会だ。

 お前ら四人に忘年会代を部隊費で計上させようとした件で問題になったの忘れたのか? 

 あれの火消しにチューリップ団長がどれだけ骨を折ったと思ってるんだ。

 最終的に誤解だったとはいえ、サクラに迷惑を掛けことには変わりない」

 団長が淡々とそう告げると、ドアの向こうが静かになった。

 

 ちなみにその問題とは、部隊ごとにグループを作って部隊費で忘年会をすることになっているのだが。

 それを彼女たちは自分たちのファンクラブの忘年会と題して行ったのが、なぜかマスコミに漏れて一悶着起こったという話だった。

 

「丁度良かった、お前らに挽回の機会をやろう。

 ウメちゃんが人手が必要としていると思うから手伝ってこい。いいな?」

 ドアの向こうでどんよりした空気を発しているだろうモブ四人にため息を漏らしつつ、団長はそう告げた。

 

「サクラさんが豪華船かぁ、やっぱり水着とか着るんでしょうか。

 あ、想像したら鼻血が……」

 ドアの向こうの気配が消えたのを確認すると、リンゴが恍惚の表情でそう呟いた。

 

「今年の夏もクソ暑いからな。

 ここリリィウッドだぞ? 木陰ばかりだってのにどうしてこんなにクソ暑いんだろうな」

「私もここ毎年の暑さは全然経験がありませんよ」

 団長はリンゴにハンカチを渡しつつ、二人そろってため息を吐いた。

 今年の夏はウィンターローズ以外どこも暑くて仕方がなかったのである。

 

「あ~、海の家を手伝うことになった先月が懐かしい……」

「私もです、あの頃に戻りたい……」

 色んな女の子の水着姿を思い浮かべつつ、二人は残りの仕事を片付けるのだった。

 

 

「そうだ、どうせだからサクラの奴がちゃんと休暇できるかデバガメしようぜ!! 

 未知なるロリの予感がキュピーンとやってきた!! 

 ……それにどうせサクラのことだから、バカンス先でも害虫退治するだろうし」

「それは良い考えですね!! 

 あ、でも、あの豪華客船のチケット、物凄く高いんですよ? 

 仮にチケットを買えても、もう売り切れているでしょうし……」

「くくく、我に秘策あり、だ!!」

 

 こうして謹慎を受けたサクラだったが、彼女のバカンス先で想像もしていない出来事に遭遇することになる。

 そう、豪華クルーズ船の行き先で溺れている団長とリンゴの二人が救助されるという珍事に……。

 

 

 




今回のイベント前半、コデマリちゃんが出た瞬間、知 っ て た ってなりましたww
これを投稿し終えたら、後半やってきますww

それでは、また次回!!
アンケート結果は参考になってます、ありがとうございますね!!

この小説に求めていることは?

  • イベント関係のお話
  • オリジナルのシリアスな話
  • ギャグ系のぶっとんだお話
  • ほのぼの日常回
  • R版だよ言わせんなはずかし!!

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