決して、最初に入ってから半年くらい放置していた神姫に嵌ってソルちゃんをprprしていたわけじゃないですよ!!
ざぁざぁ、とその日のリリィウッドは土砂降りの豪雨に見舞われていた。
スプリングガーデンも台風の季節。
商店は軒並み仕事にならぬと、店を閉める有様だった。
それは騎士団も同じで……。
「大雨か、こりゃあ明日もだろうな」
「それでは屋内の訓練施設を探しますか?」
「今からは無理だろう。ああいうのは予定が埋まっているのが相場だ」
団長は執務室の窓から外を眺めながら、リンゴの提案を却下した。
「大雨の中、びしょ濡れになって行軍の練習をするというのもオツだが、流石にそれは可哀そうだな」
「えへへ、訓練中に土砂降りになってくれればよかったのに。
皆さん予想外の雨に降られて、びしょびしょになって、服が透けて肌に張り付いて……むっはぁ、滾ってきましたよぉ!!」
「そしてみんな仲良く大浴場に直行、と。
同士リンゴちゃんは皆と風呂に入り、俺は代々団長たちに受け継がれてきた覗き穴で絶景を楽しむ、と」
むふふふ、と二人は怪しげな笑みを浮かべて妄想に耽った。
「そうと決まったら、皆で雨に向かって走るぞ!!」
「熱血ですね!!」
欲望に塗れたそれを熱血と言うのだろうか。
残念ながらそれを突っ込む人間はここには居なかった。
そうして二人は外に走り出したのだが、数秒もせずに宿舎へととんぼ返りした。
「……止めよう、不毛すぎる」
「……そうですね」
滝の様な大雨に、我に返った二人はとぼとぼと玄関ホールへと戻ってきた。
「さて、どうする、休みにするか?」
「でも雨だから騎士団は活動できない、なんて子供みたいな言い訳できませんよ」
いつもならスパッと休みだ、と言う団長も、本拠点であるリリィウッドで仕事も残ってるのに休みとは言えなかった。
「なんか活動してますって建前はないかなぁ」
そんな風に真面目に不真面目なことを考えていると。
「団長さん、これなんてどうです?」
「おや?」
リンゴが休憩室の本棚から一冊の本を持ってきた。
それは、『花騎士卓上演習 2.0版』と題された代物だった。
それは士官学校の教材にもなっている、花騎士の戦い方や運用の仕方を忠実に再現した騎士団本部が発行している教本だった。
教本と言っても要するにテーブルトークRPGのルールブックなのだが、これの旧版は教材なのを良い事にこれを使って遊んで、仕事してますよーとのたまう騎士団が多発し、一時期禁止令まで出たぐらいの代物だった。
「いいな、それ。それにしよう」
「でも、お叱りは来ませんか?」
「禁止令が出たのは十年以上前だぞ?
とっくに緩和されてるし、理由を添えて月末の活動報告にちゃんと書けば問題ない」
「分かりました、じゃあ名簿の印刷とダイスを調達してきますね」
「じゃあ俺は任務の内容を考えておく」
こうして二人は翌日に向けて動き出した。
「というわけで、それぞれ適当に五人になれ。余ったところにリンゴちゃんが入る。
一人は団長として、部下たちを率いて害虫退治をするって名目で話を進める」
翌日、多目的室に集められた部隊の面々は、今日の活動について説明を受けていた。
「質問です、自分と全く同じ風に花騎士を作らないとだめですか?」
「いや、とりあえず自分の名前で作れば、出自、武器や戦い方は問わないことにする。
それを縛ったら面白くないしな」
「振り直しは何度までですか?」
「三回まで認めよう、あと初期の経験値に加えて3000ポイントと5000ゴールドを追加してもいい。
だいたい三回ぐらいの戦いを経た騎士団の部隊ってことにしておけ。
初期のポイントじゃ個性が出ないしな」
何人か経験者がいるようで、彼女らの質問に答える団長。
「団長役はできれば経験者が一組ずつ一人はバラけてやってくれ。
勿論、花騎士の作成も分からないところは教えてやれよ。
それじゃあ、開始な」
団長は手を叩いて、開始を促した。
「ええと、それじゃあ私が団長ということで、皆さんよろしくお願いします」
リンゴが入ったのは、ペポ、ランタナ、キルタンサス、ニシキギのあんまり社交的ではない四人のグループだった。
「ええと、皆さん卓上演習は初めてでしょうか?」
リンゴの質問に一様に頷く四人。
「じゃあ、花騎士の作り方について説明しますね」
名簿用紙を配り、教本を開いてリンゴは四人にキャラの作成ルールについて説明した。
「ねぇねぇ、出来たけどこんな感じでいいの?」
意外にも一番早く終わったのはランタナだった。
「どれどれ、……えぇぇ」
見せられた名簿用紙の内容を見て、リンゴは顔を引き
「出身はバナナオーシャン、年齢は……12歳ですか」
「私は永遠のロリっ子だからね!!」
「経歴は、これダイスを振ったんですか?」
「うん、その方が面白そうだったし」
「ええまあ、そうですが……」
リンゴは名簿用紙の経歴欄に目を落とす。
大恋愛をしたことがある
監禁されたことがある
大好きな食べ物がある(あった)
「……好きな食べ物は何にしたんですか?」
「ペポ」
「ああ、カボチャですか」
「ううん、ペポ」
ランタナは真顔でそう言った。
リンゴは無言になりこれ以上深く言及しなかった。
「それにしても、これはまた尖った性能ですね」
ランタナの作った花騎士の武器は、当人と同じく短剣。
スキル構成は器用さに全振り、クリティカル特化型だった。
もっとネタに走るかと思っていたが、運に作用される以外は結構まともな構築だった。
「え、ええぇ……」
その時、経歴表と睨みあっていたペポが何とも言えない表情になっていた。
そのまま、彼女は無言で経歴を書き込む。
ランタナが横から覗き込むと、ペポの経歴はこのようになっていた。
神の声を聞いたことがある(と信じている)
自分にそっくりな人物を知っている
臨死体験したことがある
「ペポはどっちでも痛い子だなぁ」
「もう、痛いとか言わないでよ!!」
「臨死体験して神の声を聞いたのか。
ペポよ、お前には双子の妹が居るのです、探しなさい、とかどうよ?」
「妹を探して花騎士に、ってこと?
経歴は動機づけに最適だって言ってたけど。
それじゃあランタナちゃんは、大恋愛したけど相手に監禁されて、逃げだしたところを私と仲良くなって、一緒に花騎士になったってことにしておく?」
「うんうん、そうしよう。
……私も大概ヤバイな」
「あ、そういう風に各々関係性があると助かります。
皆さん、同じ騎士団に所属するメンバーです、じゃあ味気ないですし」
リンゴはみんなに向けてそう助言した。
「あのぉ、武器は数値だけ差し替えることも出来るみたいですけど、このウォーハンマーをカバンにしてもいいですか?」
「構いませんけれど、収納能力は無いってことで。
持ち物は専用のアイテムに持てる数の分だけですからね」
「ああ、やっぱり駄目だってランタナちゃん」
「ちぇッ」
「ランタナちゃん、もしかしてあなた、この卓上演習やりこんでますね!!」
「答える必要はない」
ドヤ顏で言うランタナに、道理で手馴れてるわけだ、とリンゴは思った。
「ランタナは団長同士の集まりの時に何度か一緒に遊んだことがあるんだよ。
こいつのプレイははっちゃけてて面白いからよく誘われるんだよな」
「あ、だんちょ、なんでバラすかな……」
横合いから団長がリンゴの推測を裏付ける言葉が入った。
「そうだったんだ、知りませんでした」
「ペポはこういうの得意そうじゃないからな」
それに男ばかりの集まりだし、と彼はペポを誘わなかった理由を述べた。
親友が自分以外の人たちと仲良くしているのに少しだけ寂しくも嬉しいペポだった。
「あのぉ、これでいいでしょうか」
「はい、どれどれ」
おずおずとニシキギが差し出してきた名簿用紙を受け取った。
経歴に目を落としたが以下の通りだ。
一定期間の記憶がない
負けず嫌いと称されたことがある
商売を手伝ったことがある
普通すぎて逆に笑いどころが無かった。
気を取り直してリンゴは能力やスキルについて見てみることにした。
「……ああ、前に出る構築にしたんですね」
「はい、いっぱい避けれるようにしました。
皆の注目を集めるのは嫌ですけど、お話の中なので自分とは違う感じにしてみました」
「とてもいいことだと思いますよ。
……それにしてもなんという紙装甲、回避盾の宿命と言えばそうなんですが……」
「も、もし、ファンブルして、大ダメージとかもらっちゃったらって思うと、ドキドキしちゃって」
「……」
嬉しそうにそう言うニシキギに、リンゴは愛想笑いを浮かべて何も言わなかった。
「みんな近接ばかりじゃない、仕方ないから私は武器は遠隔攻撃にしようっと」
キルタンサスは他の三人の構築を見て、歩調を合わせる方向にしたらしい。
単純にどうするか決めきれなかっただけなのだが。
「弓に、銃に、魔法杖、どれがいいかなぁ」
拳で戦うキルタンサスには縁遠い武器ばかりである。
「何かオススメはあるかしら?」
「遠隔武器なら銃が強いですよ、弓は不遇武器なので初心者にはお勧めできません」
「うん、じゃあ、武器は銃にするわね。
年齢、出身を決めて、と経歴は……」
キルタンサスは意気勇んでダイスを振った。
内容は以下のようになった。
田舎で育った
大病を患ったことがある
本から大きな影響を受けたことがある
「田舎者……」
キルタンサスはそっと出身国をブロッサムヒルから別の国に変えた。
ブロッサムヒルにも田舎と呼べるような場所はあるが、イメージに合わなかったのである。
・・・
・・・・
・・・・・
それでは、皆さん名簿用紙を書き終えたようなので、任務を始めます。
これから任務が終わるまで、私のことは団長と呼んでください。
皆さんはバナナオーシャン出身の様なので、バナナオーシャンの騎士団本部から始めましょうか。
ペポ「え、全員バナナオーシャン出身なんですか?」
ランタナ「あ、ホントだ」
ニシキギ「私は世界花の加護で回避に補正が貰えるのでバナナオーシャンにしました」
キルタン「私はみんなが同じだったから揃えたの」
なるほどなるほど。
ええと、皆さんはそこそこ戦いの経験を積んだ花騎士です。
それぞれお互いに顔を知っていますが、全員が一度に同じ部隊に配属されたことはありません。
そんな皆さんですが、各々の実力を評価されて今日は執務室に集められました。
そこで待っていた私が、一堂に会した皆さんを前にしてこう言います。こほん。
「皆、よくぞ集まってくれたな。
今日はお前たちに任務を頼みたい。
ブロッサムヒルの南にあるミムイス湖畔周辺の廃砦に、害虫が住み着いたという報告が来た。
ブロッサムヒルの騎士団は大規模な作戦を前に小回りが利かず、こちらにお鉢が回ってきたというわけだ。
幸い連中は砦から出てきてはいないが、いつ周辺住民に危害を加えるとも限らん。
お前たちにはこの廃砦に赴いて、害虫たちを追い払って貰いたい」
……以上が導入になります。
何か質問は有りますか?
ランタナ「自己紹介……」
あ、ごめんなさい、自己紹介入れるの忘れてました。
とりあえず任務の質問からどうぞ。
キルタン「ええと、敵の規模は分かっているの?」
「残念ながらわかってはいないが、報告によればそんなに数は多くなさそうだと。
だが、統率された動きが見えるから、親玉はいるだろう、とのことだ」
と、団長は言います。
ペポ「だから四人で砦を攻略しろ、なんて無茶な任務が下ったんですね」
ニシキギ「でもちょっと残念です……」
キルタン「それはあんただけでしょう」
他に質問は有りませんか? 無いですね?
それではみなさん、団長が来るまでの間に、自己紹介をして待っていたということで。
ランタナ「わかった、一番手はこのランタナだ!!
私、ランタナ!! かつては別の騎士団に居ました!! だけどロリコンなだんちょと大恋愛の末に婚約したのは良かったんだけど、だんちょは束縛系男子で私は監禁されちゃった!?
これはヤバイと感じた私は一瞬の隙を見て逃げ去り、匿ってくれたペポと一緒に何とか花騎士として復帰できました!! 皆ランタナ、ランタナをよろしくおねがいします!!」
いきなりテンションが高いですねぇ。
キルタン「というか、妙にリアルな設定ね。主に誰かさんの所為で」
団長「聞こえてるぞ、そこ」
ペポ「それにしても、復帰した辺りくだりが曖昧じゃないですか?」
その方が後々任務のシナリオに絡めやすくなりますし、設定はやっているうちに勝手に生えてくるものですから。
ペポ「あ、そうなんですね、じゃあ次は私が。
私はペポって言います。十六歳です。昔ちょっとした事故で臨死体験をして、幽霊が見えるようになりました。
その時に神様の声が聞こえて、お前には双子の妹が居る、という啓示を受け、花騎士をしながら妹を探しているって設定です」
ランタナ「痛い子だなぁ」
ペポ「痛いって言わないでよぉ」
じゃあ、次はニシキギさんお願いします。
ニシキギ「は、はいぃ、ニシキギです。
ええと、実家は商店です。町内会での我慢比べ大会でギリギリを狙ってたら、気を失って一時期記憶喪失になっちゃいました。
だから皆からは負けず嫌いだって思われてますけど、実はちょっと違ったり。
危険なことが好きなので、前に出て避けて避けて敵を引き付けますね!!」
はい、ありがとうございます。
上手く設定を絡めた感じですね。
じゃあ最後、キルタンサスさんお願いします。
キルタン「わ、わかったわ。ええと、わ、私はキルタンサスよ!!
子供の頃に大病を患って、治療の為に田舎へ引っ越したわ。
その間にたくさん本を読んで、花騎士になることを決意したって感じかしら。
……こんな感じでいいの?」
はい、実に王道な感じが良いと思いますよ。
買い物したいものがあれば、今のうちにリストにして提出お願いします。
……はい、承りました。
それでは、害虫退治に行きましょー!!
皆さんはミムイス湖畔周辺に何事も無く到着しました。
ランタナ「およ? 道中に判定無しとか、この任務はちょろ甘ですね」
ごほん、えーと、まずは状況描写から行きます。
廃砦は石造りの三階建てで、朽ちてなお防御力は衰えているようには見えない。
一階部分はツタで殆ど覆われており、害虫に占領されていなければ一種の趣すら感じるだろう。
入り口には鉄で補強された木造の門が鎮座しているが、ところどころ穴が開いており、砦の現役時代の名残を思わせる。
さて、どうしますか?
ニシキギ「うーん、とりあえず足跡を探して、どれくらいの数が居るか『知覚』してみます」
分かりました、判定どうぞ。
ころころ、……失敗です。
どうやら足跡が多すぎて分からなかったみたいです。
ニシキギ「あれ、ダメですか? 出目が結構よかったのに」
キルタン「知覚の高いニシキギでもダメなら、分からなそうね」
ランタナ「ねぇねぇ、出入口は一つなの?」
はい、この正面の門ひとつだけですね。
ペポ「うーん、ここから出入りしているんじゃ、足跡が入り乱れすぎて分からないってことかな」
ランタナ「それじゃ、ニシキギちゃん、十フィート棒で罠を探して。
害虫が飛び出しても、回避が高いニシキギちゃんなら避けれるし」
ニシキギ「うん、罠があるかな、奇襲があるかな、ドキドキします……」
ころころ、……成功。罠は無さそうですね。
害虫の気配もありません。
ニシキギ「じゃあ、門に耳を当てて聞き耳を立てます」
知覚で判定ですね、ころころ、……成功。
少なくとも、扉の向こう側には害虫は居なさそうです。
キルタン「とりあえず、慎重に中へ入ってみましょう」
ニシキギ「ツタを登って窓から入るなんてどうでしょうか?」
ランタナ「ちょっと待って、私に良い考えがある」
ペポ「ランタナちゃん?」
ランタナ「砦の外のツタを集めて、入り口で火を燃して煙で炙り出そう。
逃げ場のない密閉空間に立てこもるなんてお馬鹿だなぁ」
ニシキギ「えげつないですねぇ」
キルタン「石造りだから簡単に延焼しなさそうだから、いいんじゃない?
出来るの、団長さん?」
はい、できますよ。
任務内容には、砦に突入せずに有利になるような行動は団長の裁量で認めるようにって書いてますし。
ランタナ「あ、この反応は当たりだね、ささ、待ち伏せしよう」
メタ読みは禁止です!!
えー、花騎士たちの炙り出し作戦により、扉の奥から無数の害虫たちが大慌てで逃げ出してきます。
ペポ「奇襲します!!」
はい、戦闘開始です。
~~一方的な虐殺の為、省略~~
キルタン「これで十五匹目、まともに戦ってたら危なかったわね」
ランタナ「団長って正々堂々戦って倒しまくって勝てるシナリオ絶対に作らないしね」
メタ読みは禁止ですってば!!
それより、いよいよボス害虫の出番です。
ボス害虫は配下を倒され、激怒してその巨体をあなたたちに向けてくることでしょう。
戦闘開始です!! 先制判定どうぞ。
ころころ、はい、そちらの先攻です。
キルタン「『弱点看破』を使います」
はい、判定どうぞ、ころころ、……成功です。
ボス害虫の弱点は斬撃だと分かります。
ニシキギ「前に出て挑発をします」
ころころ、判定成功、無事成功です。
ランタナ「よっしゃ、ボス害虫にローグエッジを使用する!!」
ころころ、命中しました。
ボス害虫の回避、ころころ、失敗、ダメージどうぞ。
ころころ、クリティカル!! ころころ、クリティカル!! ころころ、クリティカル!! ころころ、……おお、ようやく止まった。なんというリアルラック。
ランタナ「まだまだぁ、華霊石を砕いて、判定を振り直し!!」
ですよねぇ、ころころ、クリティカル!! ころころ、止まりました。
ランタナ「ダイスの女神が、ランタナ、もっと割るのです、と囁く。手持ちの全部使って回すよ!!」
~~ランタナ劇場により、ボス害虫は瀕死に~~
うう、ボス害虫は虫の息です……。
これめちゃくちゃ硬くて苦労する相手なのに……。
ペポ「あ、本当だ、私の攻撃入ったのに、まだ生きてます」
ランタナ「打撃武器は強武器なのに全然ダメージ通ってないのかぁ。
やりすぎかと思ったけど、やって正解だったかも」
キルタン「じゃあ、フォースショットでトドメ刺しますね」
はい、ころころ(諸々判定)、はい、ボス害虫は倒れました。
任務達成です。
ニシキギ「あうぅ、ボス戦でいっぱい避けたかったです」
キルタン「雑魚戦で思う存分活躍したじゃない」
ペポ「敵の攻撃でクリティカルが出た時はひやひやしましたよ」
ランタナ「ペポはカバンで安定して害虫を撲殺してたし。
何だかんだでみんな活躍したよね。経験者としてランタナは一安心です」
「よし、皆終わったようだな」
阿鼻叫喚、大惨事、そこらかしこで起こってた悲鳴が収まると、団長は結果を聞いて頷いた。
「五班のうち、無事全員生き残ったのはリンゴちゃんのところだけか。
みんな馬鹿正直に砦に突撃して四方八方から袋叩きにあったようで俺は嬉しいぞ」
にやにやと団長は不満そうにする部下たちを見て笑った。
「私も団長さんや後輩たちに何度か誘われてやったことありますけど、初心者にはツラい難易度でしたねぇ」
「だが、卓上演習だからと油断した結果だろうな」
と経験者故に団長役をしていたサクラとクロユリの意見は分かれた。
なんとあのシナリオ、正面から突撃すると真正面の部屋に息を
左右の道もあり、どの道でも戦闘が発生し、手こずれば背後から奇襲に遭うという初心者には鬼畜な内容だったのである。
つまり片っ端から戦えば、物量に負けて全滅するのである。
「普通に考えて、四人で砦を攻略するのは無謀だ。
害虫との戦いは常に相手より多い数を用意するのが基本だからな。
ボス害虫だけ倒せば、群れは瓦解するため、どうにかおびき出して倒すのが正解だった。
或いはランタナ達のように各個撃破するかだな。
それでも真面目に連戦してたら、かなり苦労するように設定していたが、まあそれは運もあるか」
それを聞いても部下たちは不満そうだった。
「お前たちは、自分の作った花騎士の死に際のセリフはどうだった?
仲間を逃そうとしたのか? 一矢報いる為に突撃したのか?
そこに陶酔は無かったと言えるか? この世は決して物語のようにヒロイックに事は進まない。
時には上手く死ぬのもプレイの一環だ。それはそれでお前たちは楽しいかもしれないが、俺は全く面白くない。
お前たちが作ったお前たちの分身が、架空の存在とは言え害虫に蹂躙されて死ぬ姿は、見ていて俺は少しも楽しくはなかった」
団長は笑みを浮かべてこそいたが、目は笑っていなかった。
「生き残った者だけが勝者だ。
どんなに無様だろうと、逃げても、土壇場で戦うことを放棄しても、俺はお前たちを責めない。
それで俺が死んだとしても、それは使えない武器を手にした俺が悪いのだ。
害虫をぶっ殺すことが栄誉と考えている未熟な花騎士も多い。
だがそうじゃないだろう?
何を倒したかではなく、何を守ったかが花騎士の真価なのだ。
無様でも、逃げても、最後まで誰かを守り続けられたのなら、そいつは英雄なのだ。
俺からは以上だ、これにて卓上演習を終了する」
ぱんぱん、と手を叩いて場の空気を入れ替えると、団長は多目的室から去って行った。
「ただの遊びだったら、楽しんでもらえるような構成にできたのにねぇ」
残念ながら、今日のは演習だった。
あの難易度も止む無しかしら、とサクラは思った。
「むぅぅ、団長ったら酷い!!」
「私たち初心者なのにね!!」
「ぼっこぼこにされたわ!!」
「悔しいったら悔しい!!」
見事に全滅した班の四人が悔しそうに地団駄を踏んだ。
「でも、みんなでワイワイ自分の分身を作るのは楽しかったわね」
「次は負けないように作戦考えておきましょう」
「こうなったら新しく作って鍛えに鍛えた名簿用紙を持ち込んでやりましょうよ」
「私は教本を読み込むわ!!」
彼女たちだけでなく、他の皆も悔しそうに反省点などを見直していた。
「最初にあの子たちと皆でやったのを思い出すわねぇ、クロユリ」
「……そうだな」
今はこの部隊を離れた彼女たちは元気にしているだろうか、とクロユリは想いを馳せるのだった。
以上、花騎士たちがTRPGをしたら、でした。
彼女たちの大参事表はSW2.0の経歴診断サイトで実際にやったものです。
設定が近いのが出て笑いました。
TRPGになじみの無い人も多いと思います。私もそうです、経験など無いです。
ですが、某動画サイトにはリプレイがたくさん揃ってるので、検索してみると時間を忘れることができるでしょう。