貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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今回はチューリップ団長視点の表と、プロテアさん視点の裏から同じ時間軸を進めたいと思います。
プロテアさんのキャラクエには彼女が元老院入りの経緯が詳しく書かれていましたが、ネタバレになりますのでもう少し彼女が普及しただろう折にその辺はやろうと思います。でも伏線だけ張っとく。

※今回は独自設定、独自解釈、そしてチューリップ団長の偏見が多分に含まれてます。その辺をご留意のほどをお願いします。




プロテア、襲来(表)

 チューリップ団長の朝は朝食を作った後、騎士団支部に出勤し部下たちを前に連絡事項を伝えることから始まる。

 

「我が騎士団は義理チョコの受け渡しは禁止です。

 好意も無いのに一か月後にお返し目的でチョコを配るなんて浅ましいと思わない?

 ましてや三倍返しなんてほざくのならそいつの品性すら疑うね。

 勿論、友チョコ本命チョコ大いに結構。ああ、固形チョコを買うなら我が騎士団協賛店やギルドで購入して売り上げに貢献してください。以上」

 とまあ、そんな感じでどうでもいい内容も多いが。

 

 

「ええと、午前は今度の行事の練習を様子見か」

 彼は背後に影のように控える部下から手帳を受け取り、これからの予定を確認する。

 そのまま彼は練習場へと向かった。

 

 

 

「1、2、3、4!! とッ!! ねぇ、今のステップに問題ありました?」

「いいえ、大丈夫です」

「よし、もう一度、1、2、3、4!!」

 騎士団共用の体育館では、ポピーをはじめとした花騎士たちが舞踊の練習をしていた。

 

「皆さん、精が出ますね」

「あ、これは、団長さん」

 中心で見事な踊りを披露していたポピーが、様子見に来た団長に一礼した。

 

「この度は伝統ある舞台の踊り子に推薦していただき、ありがとうございます」

「この間の光華祭の結果を踏まえてのことですから。

 舞踊部門で審査員特別賞を取ったとか。これはあなたの実力がもぎ取った結果ですよ」

「過分な評価を頂き、身に余る光栄です」

 団長の本心からの賞賛に、ポピーは照れ笑いで応じた。

 

 

「この際ですから、本格的に舞踊の道に行ってみてはどうでしょうか。

 俺が文化の発展の為に戦いの道以外に進みたい花騎士を支援し配慮しているのは知っているでしょう?」

「いえ、それはとても魅力的な提案ですけど、戦いの中に私を必要としてくださる人もまだまだいますので」

「そうですか。花騎士としても優秀なあなたがそのような姿勢であるのならば、皆の気も引き締まることでしょう」

 部下には横柄な態度で舐められないようにと心掛けているチューリップ団長がこのように敬意をもって接しているのだから、彼女の凄さが分かるというものだった。

 

 そんな風に雑談をしながら他の踊り子たちの様子を見ていると、音も立てずに彼の部下が走ってきて、片膝を突いた。

 

「申し上げます」

「うん? どうしたの?」

「元老院議員、プロテア殿がお目見えになり団長との面談を求めています」

 それを聞いた団長は部下の方に視線を向けた。

 

「お帰り願え。火急の要件じゃないんだろう?」

「そのようには伺っていませんが、よろしいのですか?」

「いかに元老院議員と言えども、アポも無しにいきなり訪ねて来るとか非常識でしょ。

 もう一度だけ言うよ、お帰り願え。

 こっちは予定が詰まってるからとでも言っておけ」

 彼はそう強く言いつけると、部下は深く一礼して帰って行った。

 

 

「……ったく、元老院とか厄介ごとの臭いしかしないんだけど」

「よろしかったんですか?

 プロテア様と言えばこのリリィウッドでも有名人。私も先日遠くからですが御姿を拝見する機会が有りましたが、噂通りのように思えましたよ?」

「あはは、だったら尚更じゃないですか」

 不思議そうにしているポピーに苦笑いし、それじゃあ、と彼は体育館から離れて行った。

 

 

 

 

 §§§

 

 

「よっこらしょ、と」

 チューリップ団長は自分のオフィスの椅子に座った。

 

「プロテアだかシェルラだか知らないけど、何だって元老院議員が俺に用があるのさ。

 お前たちは聞いているか?」

 彼は自分一人のオフィスで、そのように声を発した。

 

「いいえ、ただ、何やら困っておいでのようでした」

 どこからかくぐもった声が、彼のオフィスに響く。

 

「先方は?」

「後日改めて、と」

「じゃあその日は外部で急用が入って居ないってことにしておけ。

 リリィウッドは最前線だ。外での急用の理由には事欠かないだろう?」

「御意のままに」

 その答えに彼は満足そうに頷き、給湯器でコーヒーを入れ始めた。

 

 

 その二日後。

 チューリップ団長は書類仕事をしていると。

 

「団長、プロテア様がご面談を希望されています」

「またかよ、もう三度目じゃねえか!!」

 部下からの連絡に、彼はイラッとして怒鳴り散らした。

 

「本日は特に用事が無いことを確認の上で来訪らしく」

「用事が無いだけで仕事が無い訳じゃないっつの、こっちはヒラの騎士団長だからって舐めてんのか」

 彼は手をパンパンと叩いた。

 

 すると、天井のタイルの一つが外れて、そこからフック付きロープが下りてきた。

 

「先方には探したけど居なかったと言っておけ」

 チューリップ団長はフックに足を掛け、ロープを両手で掴むとするするとロープが引き上げられ、彼は天井に消えて行った。

 かたん、と外されていた天井のタイルが塞がれる。かなり凝った趣味だった。

 

 それを呆れながら部下は見ているのだった。

 

 

 

 そして、その翌日。

 

「団長、またです」

「またかよ」

 最早団長は怒る気すら失せたようだ。

 

「段々間隔が短くなってきてる。

 何だかしらないけど切羽詰ってるのか?

 まあいい、俺には関係ないことだしね、いつも通り適当言って」

「……それが、キンギョソウ団長とナズナ団長からの紹介状を持ってこられまして」

「はぁ?」

 何言ってるのお前、と言った表情で部下を見る団長。

 しかし部下も、なんで元老院議員が一介の騎士団長に会うのに紹介状が必要なんねん、と言った表情だった。

 

「こ、これで断ったら二人の顔に泥を塗ることに……くそ、政治家らしい手を使いやがって」

 険しい表情で親指の爪を噛んで団長は貧乏ゆすりをし始めた。

 

「そんなに元老院議員と会うのが嫌なのですか?」

 見かねた部下がそんなことを言う。

 

「じゃあお前は突然元老院の人間に家宅訪問されて、ようこそいらっしゃい、って歓迎するのか?」

「いえ、流石にそれは」

「あ、そうだ、良い事思いついた。

 そっちがその気なら、こっちはこうだ」

 にやり、と意地の悪い顔をしながら、彼は部下に伝言を伝えた。

 

 それを聞いた部下は、また呆れた表情だった。

 

 

 

 §§§

 

 

「始めまして、お初に御目に掛かります。

 元老院の末席を汚しています、花騎士のプロテアと申します」

 チューリップ団長のオフィスにやってきた彼女は、実質最高権力者に近いと言うのに深々と頭を下げてそう言った。

 元老院の人間にのみ着用を許される白とセーフカラーのコートを憎々しげに見つめられているとも知らずに。

 

 

「ど、どうも……多国籍騎士団経理担当の――――です」

 自分の目の前で頭を下げる女性に慄きながら、チューリップ団長も自己紹介しながら頭を下げた。

 

 

 自己紹介はそれで終わった。

 なぜなら、彼のオフィスにはこの二人しかいなかったのだから。

 

 普通なら彼女が騎士団の施設内だというのに護衛も無しに一人でいるのはあり得ざることである。

 しかし彼は、「機密がありますので、護衛はこちらで用意した者でお願いします」と嫌がらせ全開の伝言を伝えさせたのである。

 真っ当な貴族なら激怒して帰って抗議文を送るくらいの失礼な対応だ。

 冷静に考えればチューリップ団長も失礼すぎると分かっただろうに、彼は思いのほかテンパってたようだった。

 

 当然ながら、彼女の親衛隊からは猛反対を喰らった。

 信頼する護衛に、明確な悪意を感じるから帰るべきだとも言われた。

 

 だが、今更後には引けないと、プロテアは単独でやってきた。

 貴人として褒められた行動ではないが、覚悟は示した。

 

「なかなかこちらの都合が付かず申し訳ございませんでした。

 それで、早速ですが一体どのようなご用件でしょうか」

 彼はさっさと終わらせて帰らせることにした。

 

「実は、元老院メンバーの一人に不正疑惑が掛かっているのです」

 プロテアは強張った表情でそう切り出した。

 

 

 

「なるほど、水運ギルドの粉飾決済や不正会計を元老院の人間が指示したと」

「御存じの通り、水運ギルドはリリィウッドでも由緒あるギルドの一つ。

 しかしここ最近は他国からの進出によって業績低迷気味でしたから」

 彼女の話は大まかにそう言うことであった。

 

 リリィウッドは湖上に存在し、いくつかの区画によって分かれて町が存在している。

 故に古くから物資の移動に水運が用いられてきた。

 

 しかし昨今の害虫出現の増加などで商人たちに倦厭(けんえん)され、リリィウッドは大陸の中心部分にあるのに今やその栄華はブロッサムヒルの欲しいままだ。

 仕事数が落ち込み、業績低迷するのも当然と言えた。

 

「不正の証拠ではなく、不正に関わってるかどうかを調べて来いとは、何とも元老院らしい仕事だ。

 こんな仕事を任されるなんて、プロテア殿も随分と可愛がられていらっしゃられるようですね。

 恐れながら、宮廷でくっちゃべ……暇を持てあま……優雅に過ごされておられる貴族の方々に委任すればよかったのでは?」

「たはは……」

 チューリップ団長の嫌味100%ジュースの提供に、プロテアも苦笑いを隠せない。

 

 とは言え彼の言うとおりだった。

 政治家が農耕改革をします、と言っても、その政治家が田畑を耕すわけではあるまい。

 元老院という組織が宮廷貴族に仕事を依頼し、彼らはそれで年俸やら報酬やらを受け取っているのだから。

 

「この一件はその元老院メンバーの名誉に関わる問題なので、信頼できる人間にのみに話せ、と言われていまして」

「なるほど、宮中に信頼できる人間は居ないと。

 だからと言って見ず知らずの人間である私にそれを話す理由にはならないと思いますが」

「それは、こちらでナズナ団長と呼ばれている彼に、ことリリィウッドに関して彼以上に信頼できる仕事をする者は居ない、とお墨付きを頂いて、紹介いただいた次第で」

「ええ、まあ、私以上の適任は居ないでしょうね」

 チューリップ団長は机の中から呼び鈴を鳴らす。

 

 すると、オフィスの一角にある掛け軸の下から黒づくめに革製の犬用口輪を模したマスクで顔の半分を隠した女が現れた。

 しかし最も目を引くのは、マスクの下、喉元にある素人目にも発声が困難だろうと思えるほどの痛々しい傷跡だった。

 彼女は十数枚の資料をデスクに置いて掛け軸の下の扉へと消えて行った。

 

「ええと、彼女は?」

「監査、内偵、潜入、対スパイ、対人護衛を専門とした我がシルビア隊の多くに精通した最精鋭、通称『番犬』の一人です。

 見ての通り口を聞く自由など無いので、この話が漏れる心配は有りません」

 ギョッとしているプロテアに、団長はデスクに置かれた資料をそのまま彼女に差し出した。

 

「どうぞ」

「……拝見します」

 プロテアはその資料を手に取り、中身を開く。

 

「これって!!」

 プロテアは目を見開く。

 そこには、水運ギルドの実情が赤裸々に記されていた。

 水運ギルドがいつから落ち目になり、不正をするようになったその日や誰がどのような指示を出したかまで、予測されていたかのように的確に必要な情報が揃っていた。

 

 

「今度のギルド総会で告発する予定でしたが、元老院に露見しているのでしたらその必要も無いでしょう。

 どうぞ、ご自分の手柄になさってください」

「では、お言葉に甘えさせてもらいます」

 プロテアはまるで狐につままれたような表情をしていた。

 仕事を頼んだと思ったら、もう既に仕事は終わっていたのである。

 

「正直な話、無理難題を言い付けてしまったと思っていた自分を恥じています。

 あなたはこの伝統に縛られるリリィウッドで多くの新しいことをしていると聞きました。

 元老院所属の私よりもずっと多く……」

「ええ、あなたが私の部隊の花騎士なら、迷いなく花騎士に専念した方がいいと助言したことでしょう」

 どこか複雑そうな表情をしている彼女に、彼は露骨にお前は政治家に向いていないと言った。

 

「ところで、その資料の礼代わりと言ってはなんですが、元老院でどのような発言をしているのか、教えて貰ってもよろしいでしょうか」

「私のことより、元老院内の内情の方に興味があるのではありませんか?」

「ええまあ、流石に元老院内部にまで耳を向けるほど命知らずではありませんから」

 不思議そうにするプロテアに、団長は苦笑を向ける。

 

「バナナオーシャンには全長が人よりも大きな陸亀が生息している場所があるそうですね。

 その亀はたやすく人の手足を食いちぎるほどの凶暴さもあるとか。

 しかし、亀は亀。近づかなければ、噛まれません」

「元老院の人間は亀だと?」

「長生きで多くの英知を宿す御方たちにふさわしい表現かと」

 慇懃(いんぎん)に愚鈍だと暗喩(あんゆ)しているのを(はばか)らず、彼は(うそぶ)く。

 

 

「……私で良ければ」

「それはありがたい。おっと、私としたことが。そこにお座り下さい」

 こうして二人は少しの間、話をするのであった。

 

 

 

 

 §§§

 

 

「あなた、最近えらい人物を引っ掻き回してるって聞いたけど、今日会ったんでしょう? どうだったの?」

 その日の夕食、チューリップ一家はいつものように卓を囲んでいた。

 

「ああ、プロテアサマのことかな」

 チューリップ団長、一家の弟分は長姉の追求に露骨に顔を顰めてそう言った。

 相手に敬称を付けていても、それは敬意ではなく近づきたくも無いといった敬遠だった。

 

「へぇ、あの有名な元老院最年少の花騎士って人でしょ?

 どんな人だったの? 教えなさいよ」

 長女に加えて次女も興味津々の様子だった。

 

「元老院も後継者不足ってのを肌で感じたね。

 あんな小鳥ちゃんを前任者の後釜に据えないといけないんだから」

「随分と辛辣ですね」

「あれなら黄姉さんを座らせた方がマシだよ」

「それはそれで恐ろしい気が……」

 末妹はその物言いに苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「あれはフクロウの群れの中に居るオウム……は流石に言いすぎか、さしずめカナリアってところかな。

 炭鉱の中の鉱毒でそのうち死にそうなところなんてまさにそれっぽい。

 あんなのにぴーちくぱーちく喚かれてたら、そりゃあ周りも顔を顰めるだろうさ」

「ふーん、あんたはああいうのは嫌いなの?」

「人気は有るんだろうね、人気しかないとも言えるけど。

 どうせ就任して日が浅いから、就任当初の美化された報道が尾を引いてるだけだろうね。

 と言うか、あんなのを有り難がる国民の程度が知れるよ」

 もうボロクソである。

 彼は一度会っただけの人間にどうしてここまで嫌えるのかってぐらいにこき下ろしていた。

 彼がキリンソウの前に居たのなら、ここまでで十回ぐらいは切り殺されていそうだ。

 

「あれを政治家だなんて、他の元老院メンバーは誰一人として思ってないだろうね。

 せいぜい顧問、そう、さしづめ花騎士の視点で意見を求められるだけの顧問花騎士と言ったところさ。芸人やプロレスラーが政治家する方が全然マシだよ。

 あれでよくも発言権が認められてるってもんだよ。

 せっかくの発言権も、実行力も伴わないどこかで聞いたことがあるような奇麗ごとばかりじゃ世話ないね。

 人々の幸福を語る前に明日のパンの値段の話をしろよ、未来の平和を語るより防衛費を捻出しろよ、最前線だぞ、ここは」

 一人で勝手に熱くなって喋りまくる彼に、四姉妹も変な物を見る目で彼を見ていた。勿論彼はそれに気付いていない。

 

「俺は彼女の就任当時、歴代最年少の若手元老院議員!! これは新進気鋭な野心家で最終的に他のメンツを皆殺しにしてクーデターを起こすか、理想主義の役立たずのどちらかだって言ったけど、まさか後者だとはね、最悪のパターンじゃないか。

 あんなのが国益を守ってる国に住んでるなんてゾッとするね。

 リンゴ団長も自分とこの女王様と大層そりが合わないらしいけど、俺もそうだって一目見て分かったよ」

 くどくどくどくどく、と自分勝手な批判を夢中で繰り広げるチューリップ団長。

 

 

「ねぇ、これどういうことなの? こいつが他人をここまで悪く言うの初めてじゃない?」

「もしかしてあれじゃない、好きな子ほど意地悪するあれよ」

「でも初対面のはずでしょう?」

 その横で顔を突き合わせている四姉妹は困惑気味だった。

 

「これはあれですね、自分と正反対の人間に対する本能的な嫌悪感と言ったところでしょうね……」

 唯一無表情の三女の言葉に、他の三人はなるほどと納得した。

 

「ですが、まあ、人間と言うのは自分に無いものを求めてしまうものです」

 そして彼女に限らず彼女ら全員はそう言う類の悪感情は、反転してしまえばどうなるのかよく知っている。

 そして案外、些細な切っ掛けでそうなってしまったりするものなのだ。

 

「これは、面白くなってきたわね」

「ええ、ホワイトチューリップ。経過報告をよろしく」

「任せてください、赤姉さん」

 こういう時だけ見事な結託を見せる四姉妹だった。

 

 

 

 

「ふぅ、今夜もまだまだ仕事だよーと」

 食事を終えると、診療所を出たチューリップ団長は近くのセーフハウスにやってきて、くつろいでいた。

 

「今日もお水をあげましょうねー、すくすく育て、姉さんたちー♪」

 窓際にある四つの植木鉢に一輪ずつ四色のチューリップの花が植えられており、最近の日課である水をやり終える。

 植えられているチューリップの色は何かは言うまでもない。

 

「よしよし、おいで」

 椅子に座って、手招きすると近くに待機していた『番犬』が擦り寄ってくる。

 膝の上に頭を乗せてくるので、彼はその髪を撫でる。

 

 

「全く、元老院とかやってらんないよ。

 あれだけ冷たくしたんだし、二度と来てほしくないね。

 何の為に今まで連中を刺激しないようにしてきたと思ってるんだっての」

 先ほどあれだけ愚痴ったというのに、まだ彼は言い足りないようだった。

 

「まあ、もともと政治になんて期待してなかったけどね。

 大人しく花騎士だけをしてればよかったのに」

 だが、先ほどの勢いはなく、意気消沈としていた。

 主人の様子を察して、『番犬』は更に身を寄せる。

 

 

「……恨み言の一つくらい言ってくると思ってたのに」

 小さな、小さな彼の本音を聞く『人間』は居なかった。

 

 

 

 

 §§§

 

 

「キンギョソウ団長、どうしてあんなのに紹介状を書いて寄越したのさ」

 翌日、チューリップ団長は早速彼の元に苦情を言いに行った。

 

 

「そう邪険に扱うな。

 あれは我らがクルセイダーの希望の星ぞ」

「天高く輝いてるだけで何の影響も(もたら)さないって意味ならそうかもね」

 嫌味を隠そうともしないチューリップ団長を見て、彼はくっくっくと怪しげに笑う。

 

「と言うか、二人はお知り合いだったんですね」

「万魔殿との交信は先の日が初めてである。

 かつて、新しき魔界の神を信仰し、贄を捧げようと祈祷したが、神託は下らなかった」

「以前に後援者になろうとしたけど袖にされたって?

 あいつ、政治家に必須なのは人脈と資金だってわかってなかったんだろうなぁ」

「魔界の神々は信者の影響を受けやすい。

 それを嫌ったのなら、仕方なかろう」

「それで実力も実行力も無い政治家が出来るわけか。

 俺の故郷にいっぱいいたよ、そんなの。そのうち不倫やらなんやらで辞職するまで見えたね」

「ふむ……」

 辛辣な物言いを隠さないチューリップ団長を、何事かキンギョソウ団長はジッと見やる。

 

 

「……どうかしたんですか?」

「虚構の十字架を背負うのを(いと)うならば、虚構を現世のモノとせねばなるまい」

「…………」

「いずれにせよ、上手く使えよ」

 そう言って彼は一枚の書類をチューリップ団長に差し出す。

 

 

「……んなッ!?」

 それは、受理済みの異動届だった。

 ちなみにその役割上、この騎士団の人事担当はキンギョソウ団長だったりする。

 

 その時、計ったかのようにドアをノックする音がする。

 いや、計っていたのだろう。

 

「失礼します、団長さん。

 こちらにいらっしゃると伺いました。

 明日からそちらでお世話になります、花騎士プロテアと申します」

 こちらの応答を聞かずに入ってきた彼女に、チューリップ団長は愕然とした表情をしていた。

 

 

 

「諦めよ、神託は下った。運命は汝の名を指し示している」

 イタズラを成功させた子供のように、キンギョソウ団長は楽しそうだった。

 

 

 

 

『プロテア、来襲(裏)』に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 




多分、こうなる。

好感度-100%

「あんなのが政治家とかマジ受けるわww」


反転


好感度+100%

「リリィウッドのみなさーん、俺に、彼女が、出来ましたー!!(拡声器」


リリィウッドの皆さん「……うぜぇ」
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