貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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今回は某お船アニメでもあったカレー回です。
日常系の話は苦手なのですが、久々にほのぼのした感じにしました。



定番のカレー回

「団長さん、カレーが食べたいです……」

 むっはー、し過ぎて診療所で安静にしているリンゴは、お見舞いに来た団長にそう言った。

 

「きっと、皆でベルガモットバレーの景色を楽しみながら、カレーでも食べるんだろうなぁ。

 モミノキ先輩にもご迷惑をお掛けしてしまいましたし、団長さん、私、悔しくて、情けなくて……」

「分かるぞ、分かるぞ、リンゴちゃん。

 参加できなくて悲しいよなぁ、自分が情けないよなぁ、悔しくてたまらないよなぁ」

 団長はリンゴの手を取り、我が身のことのように男泣きしていた。

 

「俺も、俺も、ロータスレイクの可愛い女の子の情報を知りたかったぞ」

「団長さん、非力な私を許してください……」

「許してやるよぉ!!

 待ってろよ、リンゴちゃん。最高のカレーを用意して待っているからな!!」

「あのぉ、病室ではお静かにお願いします」

 騒がしい二人にホワイトチューリップが注意するが、二人はすっかり自分たちの世界に入っていて、彼女はため息を吐くのだった。

 

 

 

 

「そう言うわけで、仕方なく非番のお前たちと一緒にカレーを作ることにした」

 そんな感じの発端で、団長はランタナ分隊たちを招集した。

 

「なんで私達まで呼んだんですか?

 カレーを作るだけなら団長さんだけでも良かったのでは?」

 と、ペポが(もっと)もなことを言った。

 

「いや、どうせだから部隊の皆の分まで作ろうと思ってな。

 ほら、カレーとかって一度にたくさん作った方がおいしいらしいし」

「名案ですね。ですが、厨房のお鍋の大きさにも限界がありますよ」

 プルメリアが言う通り、団長が借りた仮宿舎の厨房にはそこそこの大きさの鍋しかなかった。

 

「ではコンロは三つありますし、三種類のカレーを作るのはどうでしょう!!」

「お、それはいいな。楽しそうだ」

 リシアンサスの提案に団長は指を鳴らす。

 

「と言ってもカレーの種類なぁ。

 キーマとかそう言うのか?」

「だったら、カボチャカレーなんてどうでしょう。

 カボチャがルーに溶けて美味しいですよ」

「食べ方にも工夫しましょう、私ハンバーガー作るので、カレーをソース代わりにするんですよ!!」

「それ普通にハンバーグカレーで良いだろ」

「はいはい、私トロピカルフルーツカレー作る!!」

 そんな感じで次々と意見が出揃い。

 

 

「じゃあ、俺がリンゴカレー、ペポがカボチャカレー、ランタナとキウイちゃんがフルーツカレーを作るってことで。

 リシアンサスはハンバーグやカレーに付けて食べるパン。

 プルメリアちゃんはご飯を炊いたりそれ以外って感じか」

 という風に役割分担ができた。

 ちなみにフルーツカレーの所だけ二人なのは、どこかの誰かを見張る為である。

 

「足りない物も多いな。

 玉ねぎやじゃがいもは貯蔵があるが、ニンジンとかは足らなそうだな。

 肉とかも全然足らないし。

 鶏肉で良いよな? カレーはチキンが大正義だ」

 団長は足りない食材などを聞いて、メモしていく。

 

「よし、じゃあ調達してくるから、ペポは手伝ってくれ」

「わかりました」

「じゃあ、私たちは皮むきとか下ごしらえをしておきますね」

「おう、よろしく」

 しっかり者のプルメリアを残すのだから大丈夫だろう、と団長は頷いてペポを伴い買い出しへと向かった。

 

 

 

 §§§

 

 

『ぴんぽんぱんぽーん、お昼の十二時をおしらせしまーす。

 本日は商業区のお肉屋さんのひき肉がお安くなってます。

 八百屋さんもバナナオーシャンから新鮮な果物を入荷したそうです。是非ともご贔屓に。

 あと俺に、彼女が出来ましたー!! ぴんぽんぱんぽーん』

 

 団長とペポはそんなチューリップ団長の放送を聞きながらリリィウッドの商業区を歩いていた。

 住人達の反応は大半が呆れか無関心、一部の男性たちは歯噛みしている。

 俺たちの天使を~、とか、裏切者め~、とか怨嗟の声を背に、二人は買い物を続ける。

 

「さて、あいつはどう転ぶかね」

「何がですか?」

 リンゴなどを手に持って鮮度を確認している団長に、ペポは問う。

 

「男ってのは誰かを好きになると、いやがおうにも変わるものさ。

 女の子は“変化”だが、男のは“覚悟”だ。

 男の価値はその覚悟をどれだけ貫けるかで決まる」

「では団長さんはさぞ沢山の覚悟を為さったんですね」

「辛辣だなぁ、ペポは!!」

「少なくとも覚悟は数じゃなくて質みたいですね」

 がっくりと肩を落とす団長に追撃し、ペポは美味しそうな果物を選んでいく。

 

 だが彼女は知らない。

 団長はそう言った素っ気ない態度の方が興奮する変態なのだと。

 だからさっさと勝負を決しないのだと。

 

 

「果物はこれくらいでいいですね。

 あ、団長さん、これ持ってくださいね。

 私の両手が塞がっているとセクハラするでしょう?」

「ちッ」

 彼女の先読みに舌打ちしつつも、団長は果物が満載の紙袋を両腕で抱えた。

 こんな風にペポは幾度ものセクハラで彼好みの人間になっていることに全く気付いていなかった。

 

「次は野菜ですね、あッ」

「あら?」

 二人が近くの八百屋に向かうと、そこには顔見知りがいた。

 

「団長さんにペポちゃん、お買い物ですか?」

 エプロン姿のサクラが八百屋で店番をしていたのだ。

 

「……お前何してんの?」

「八百屋のご主人がぎっくり腰で動けないらしくて、診療所から戻ってくるまでの間、お手伝いしているんですよ」

 団長は今日は非番のはずのサクラを呆れた目で見ていた。

 当のサクラは何でもない風にそう答えたが。

 

 このリリィウッドでもサクラのネットワークは着実に広がっているようだった。

 

「お前は仕事してないと息ができないのか。仕事人間め」

「あらあら、害虫退治を取り上げたら抜け殻みたいになってしまう団長さんに言われてしまったわ」

 団長の嫌味に鋭く切り返すにこにこ笑顔のサクラ。

 仲の良い二人である。

 

「お前が店番してるなら、チューリップ団長に宣伝して貰えばよかったのにな。

 確実に売り上げが伸びるぞ」

「実は以前、チューリップ団長さんが宣伝効果があるって私が手伝っている店を放送したことが有るんだけれど」

 少し困ったように頬に手を当て、サクラはこう言った。

 

「三十分もしないうちに、そのお店の商品が全部無くなったわ。

 それ以来、商業関連のギルドが話し合って、私が手伝ってるってその店のことを宣伝するのは禁止になっちゃったのよ。

 一度にお手伝いできる時間も決められちゃったし」

「然もあらんな」

 経済効果というものを肌身で知ったサクラだった。

 

 サクラがいかに人気者かは、当人が一番理解していないのだ。

 リンゴ団長は、チューリップ団長が彼女のストーカーが湧かないように密かに対策しているとさえ聞いたことがある。

 彼とてサクラのファンを名乗る人間に襲われたことなど、一度や二度ではない。

 

 

「それで、何をご用命ですか?」

「ええと人参を十本と、カボチャは二つもあれば十分かな」

「あ、カレーを作るんですね? それも皆の分まで。

 お手伝いが終わったら私も手伝いに行きますね」

「なんでわかるんだよお前。これだからお前を誘わなかったんだ。口を出されるのは嫌だったからな」

 なんだか嫌そうにしている団長だったのだが、サクラは顔色一つ変えずにこう返した。

 

「団長さん、どうせ市販の固形のカレー粉を使うんでしょう?」

「うぐ……」

「ウメちゃんが送ってくれたカレーのスパイスが有りますので、それを使いましょう。

 スパイスの配合表もあるので、足らなくても買い足せますし。

 リンゴちゃんもそろそろ退院ですし、いいとこ見せたいですものね」

 サクラが言葉を重ねる度に、たじたじになる団長。

 すっかり行動パターンを見透かされているのだった。

 

「完敗ですね」

「ちくしょう……」

 そして八百屋を後にし、肉屋に向かう二人だった。

 

 

 

 §§§

 

 

「よし、サクラが来る前に作り終えてやるぞ」

 謎の対抗意識を燃やす団長と、ペポは仮宿舎の厨房に戻ってきた。

 

「どうしてそんなに邪険にするんですか?

 サクラさんに手伝ってもらった方が絶対おいしくなりますよ」

「ペポの作ってくれたカボチャカレー、サクラが手を加えただけあって美味しいな」

「……」

「料理ってのは男にとっても女にとっても神聖な儀式だ。

 少なくとも俺は自分の味付けに口出されるのは我慢ならん」

 流石にその言葉を否定するほど、ペポは乙女心を捨てていなかった。

 

「とは言え、うちの部隊にメシマズが居ないのはサクラのお蔭みたいなもんだからなぁ」

 野営が基本な団長の部隊は、持ち回りで料理当番が回ってくる。

 

 どんなに美少女でもマズイ料理を食わせる女はゴメンだと考える団長は、部隊規則にもきっちりと勝手な料理のアレンジを禁ずと定めている。なお、破ったら罰点4である。

 補給の限られる遠出で全員分の料理をダメにされると考えたら、そりゃあそのくらいの罰則になるもんである。

 

「正直、私もこの部隊に来てから格段に料理上手くなりましたしね。

 ランタナちゃんも食べ物で遊ばなくなったし」

「あいつ、妙に器用なところあるから、変にアレンジしても普通に食える物作るのが性質悪いよな」

「必ずしも美味しいとは限りませんけどね」

 微妙にずれた味覚をしているランタナの毒見役にされているペポは、げんなりとした様子でそう言った。

 

「ちょっとー、私の芸術的料理センスに文句言うとはどういうことだー!!」

 厨房で調理していたランタナが聞いていたのか、ぷんぷんと怒りながら文句を言ってきた。

 

「調子はどうだ?」

「今、玉ねぎを切ってます。

 カレーには玉ねぎをいっぱい使いますから」

 カットされた大量の玉ねぎを示しながらプルメリアはそう言った。

 

「私達はジャガイモを剥いているよー」

「じゃんじゃん剥いちゃうから、こっちは任せちゃって!!」

 包丁を器用に使ってジャガイモの皮を剥くランタナとキウイ。

 こちらは問題なさそうだった。問題が起きるような場面でも無かったが。

 

「こちらは後ひき肉があれば、いつでもパテの作成に取り掛かれますよ!!」

「おう、ひき肉安かったからいっぱい買ってきたぞ」

「うわーい!! これだけあれば百人分くらい作れそうですね!!」

「大げさだ」

 リシアンサスは早速合挽き肉を使い、ハンバーグの具材を混ぜ合わせ始めた。

 

「私もカボチャの下ごしらえをしないと」

 流石に花騎士だけあって、ペポも硬いカボチャを難なく包丁で切っていく。

 

「頼まれてたフルーツはこれでいいか?」

 果物のパイナップルやキウイ、リンゴやバナナなどを台所に並べて団長は確認を取った。

 

「うん!! これで美味しいフルーツカレーが作れるよ!!」

「正直、味が想像できないな……」

「バナナオーシャン風だから一味違うからね!!」

 横目でキウイが食材を確認しながらそう言った時、悲劇が起こった。

 

 ざくッ

 

「あッ」

「あ……」

 包丁の刃がキウイの指を切ってしまっていた。

 

 

「う、うあーん、指切ったぁ、私ダメな子だぁー!!」

「あああ、悪い悪い、包丁使ってる時に迂闊に話しかけちゃダメだよな」

「私、ちょっと絆創膏取ってきますね」

 泣き出すキウイ、おろおろする団長、対応が早いプルメリア。

 

 こんな感じで騒がしい調理風景だった。

 

 

 

「へぇー、団長さんは水を使わないんですね」

「ああ、水分は全部果汁100%のリンゴジュースで賄うのだ。

 こうするとコクが出るんだ。まあ、リンゴちゃんの受け売りだが」

 鍋でぐつぐつと煮える具材を見ている団長。

 芳醇なリンゴの香りが厨房を満たしている。

 伊達にリンゴ団長と名乗ってはいないようだ。

 

「ペポもそのまま鍋に入れるのと別に、カボチャを茹でているのか?」

「ええ、最後の方に入れるんです。やっぱりルーに溶け込んでるのとは別に、カボチャの触感を楽しみたいですから」

 横の黄色く濁り始めた鍋を見ながら、そんな女子力の高い会話をする二人だった。

 

「うーん、こっちも良い香りがしてきた」

 一口大に切ったフルーツたちをバターで炒めているキウイが涎を垂らしそうになりながらそう言った。

 

「デザートを作ってるようにしか見えん……」

「団長さんって、グルメなのに南国風カレーって食べたことないんですね。

 確か、以前あちらで団長をしてたんでしょう?」

「生憎、カレーはどこでも食えるから余程の名物でもなきゃ食わなかったな。

 と言うかバナナオーシャンは美味しいものが多すぎて食いきれなかった」

 鍋をかき混ぜながら物思いに耽る団長だった。

 

「うーん、こっちも果肉を入れようかな。

 リンゴの残りをすりおろして入れるか」

 そう言って火を弱火にして、すりおろし器を探す団長だったが、どうにも見当たらない。

 

「あれ、無いなぁ」

「あ、じゃあ、これで代用したら?」

 そう言ってキウイは、リンゴをまるまる左手でぶしゃっと握りつぶした。

 右手は包丁で切ったので使わなかったのが、その凄さを際立たせていた。

 

「握りつぶしたのは左手だ、利き腕じゃないんだぜ」

 唖然としている団長の横でランタナが遠い目でそう言った。

 

「発酵はこのくらいで良いですかね。

 パンは後は焼くだけですよ!!」

「ごはんも後は炊くだけです」

 リシアンサスもプルメリアも着々と準備を終えていく。

 

 

「あらあら、すごくいい匂いですね~」

 そうして完成も近づいていく最中、満を持してサクラがスパイスを持ってやってきた。

 

「あ、サクラさん!!」

「みんな、スパイスを持ってきたわー」

 どっさりと缶に入ったスパイスをサクラは厨房に置いた。

 

「おう、悪いな」

「味付けに口を出されるのは我慢ならないんじゃなかったんですか?」

「スパイスを持ってきてくれるって言うんだ。

 俺だってそこまで頑なじゃない」

 とは言え、ここまで作ってしまえば二人のカレーはもう殆ど手を加える余地などなかったのだが。

 

「サクラ、切る物が多くて遅れ気味の二人を手伝ってやれ」

「分かりました」

 最後まで全員分のジャガイモを切っていたランタナとキウイは、二人掛かりでもまだ材料を炒める段階だった。

 

「あらあら、フルーツカレーですか?

 私も作るのも食べるのも初めてだわ」

「入っているお肉も鳥のささ身だし、油も最低限だからとってもヘルシーで身体に良いんだよ!!」

「なるほどねぇ」

 思わずキウイの素晴らしいボディに目が行くサクラだった。

 

「ぐぬぬ、ふざけるタイミングが見つからない……。

 このままでは、このランタナの存在意義が!!」

「つまみ出されたいか? その場合、お前は飯抜きだが」

「あっはは!! やだなぁ、今更そんなことするわけないじゃん。

 ドジっ子アピールするならもっと早くやってるし」

 作業量的にも、現場の空気的にもボケるタイミングが無かったランタナ。

 指を切るというアクシデントもキウイに取られてしまったし。

 

 サクラも来た以上、これ以降は描写不要なほど順調にことが進んだ。

 と、思いきや。

 

 

「あれ、これちょっと分量が足らないかも」

 スパイスを調節しながら鍋を混ぜているキウイがそんなことを言い出した。

 

「あ、本当ね、これ以上スパイスを入れたらフルーツの旨味が消えてしまうわ」

「どどど、どうしよう!? 私こんなにいっぱい作るの始めてだったから……やっぱり私ダメな子だぁ~」

「まあまあ、こういうことは実際作ってみないと分からないことだもの」

 味見をしたサクラの反応に、キウイは涙目になって落ち込む彼女を慰めつつ、彼女はこんな提案をした。

 

「いっそのこと、スープカレー風味にしてしまいましょう。

 コンソメかブイヨンを入れればらしくなるはずだわ」

「……うん、じゃあそれにしよう」

 あっさりと路線変更と軌道修正をこなすサクラ。

 多少失敗してもスパイスの量で誤魔化せるのがカレーの良い所でもあり、悪い所でもある。

 それではあまりにも可哀そうで、芸も無いのでいい感じにアレンジを加えたのだった。

 

 その後、皿の用意でドジっ子アピールを画策するランタナの監視をする団長など、特に何も起こらずカレー尽くしは完成したのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 ジュージュー、とハンバーグが焼ける音が食堂に響き渡る。

 

「いやぁ、カレーってホント素晴らしいですよね。

 何にでも合うって言いますか、ハンバーグを乗せても美味しいですし。

 作り方に正解が無いから家庭ごとに味が違いますし。

 同じ料理なのに飽きずに食べ続けられるのって凄いですよね」

「ああ、先人たちの知恵は凄いよな」

 リシアンサスの横でハンバーグを焼くのを手伝っている団長はしみじみと頷いた。

 

 団長が謹慎中なので、ハナモモ団長のところで護衛の仕事をしていた部隊の面々は疲れ切った様子で夕飯のカレーにありついていた。

 それはもう、皆猛烈に食べまくっている。

 どのカレーも飛ぶように彼女たちのお腹の中に消えて行く。

 

「カレーは飲み物だって言葉もあるが、この光景を見ていると頷けてしまうな……」

「ご飯もパンも、足りるでしょうか」

 残り少なくなるご飯やパンを見ながらプルメリアが懸念する。

 先に堪能していた調理班の面々は、給仕に回っていた。

 

「はーい、カボチャカレーお待たせです」

「ありがとうペポちゃん」

「ルーにカボチャが溶け込んでて美味しいわよ」

「具のカボチャもほくほくしてるし」

「私フルーツ風のスープカレーとか初めてだわ」

「異国情緒溢れるね」

 と言った感じで、配膳をしているペポ達は皆が喜んでくれて嬉しそうだった。

 

 

「何だか非番の日に大仕事させちまって悪いな」

「気にしないでくださいよ。

 と言うより、団長さんがお料理できるのが一番意外だったと申しますか」

「まあな、料理ができないとスプリングガーデンの男は肩身が狭い。

 俺も一人暮らしが多かったし、ナデシコちゃんやディプラデニアちゃんに教わったり……」

 そして何かを思い出した団長はずーんと落ち込み始めた。

 

「あれ? あれれ、どうしたんですか団長さん!?」

 厨房の隅っこで小さくなる団長に、リシアンサスは大慌て。

 

「それにしても、これ……余るのかしら」

 ルーの残量を見て、サクラはリンゴの分を取っておかないと、と決意するのだった。

 

 

 

 

「皆さんズルいです。私も皆さんと一緒に楽しくおしゃべりしながらカレーを作ったり食べたかったのに」

 しかし、後日退院したリンゴはそのように述べた。

 

「あー……」

 団長は何とも言えない表情で顔を逸らした。

 今リンゴが食べているカレーは、先日のを寝かせたモノではなく、新しく作り直したものである。

 

 冷蔵庫なんて文明の利器の無いこの世界では、カレーは痛みやすいので作ったその日かその翌日に食べきってしまうのは常識だった。

 いくら魔法で保存が効くとは言え、費用もばかにならない。

 

 思いのほか長引いた療養生活で、結局食べてしまわないともったいないということになったのだった。

 病み上がりだからかいつもなら言わないだろう我がままをいう彼女に、団長も痛ましくなった。

 

「よし、じゃあこうしよう」

 彼は手を叩き、妥協案を提示した。

 

 

 

 

 

「バーベキュー串焼けたわよー」

「トウモロコシもそろそろいい感じよ」

「この分厚いステーキ肉、カットしておくから好きな焼き加減で食べてね」

「シシトウが焦げそう、みんな食べて」

 その日の夕方、仮宿舎の庭でみんなでバーベキューをすることになった。

 リンゴちゃんの退院祝いと銘打って、思い思いの材料を持ち寄って。

 

「ほら、リンゴちゃん、レバー食べて。

 今のうちにしっかり血を補給しないと」

 サクラがレバーを取り皿に乗せて、リンゴの元へと持ってくる。

 先日のカレーを作ったメンバーは、今日は焼かずに食べるに徹して貰えていた。

 

「うう、ぐすん、皆さん、ありがとうございます。

 私嬉しくて、何だか前も見えないし味もわかんないです」

 号泣しているリンゴの姿に皆可笑しそうに笑いながら、その日のバーベキューは夜まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 




皆さんの感想や評価に励まされました。
お蔭でこんなに早くこの話を書けました。感謝です。

それにしてもそろそろこちらもネタ切れしてきた感じなので。
そろそろR版に行きましょうか(ぼそり


それにしても、先日感想欄みたらbadに1の列が。
噂のbad爆撃って奴ですね。

私の所に、まさか来るとはと思いましたよ。
某作者さんのところじゃないっていうのにねぇww
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