かつて花騎士二次で、女の子の比率より男より多い小説はあっただろうか?
挑戦することを止めないスタイルで行きます。
リリィウッドの中央の繁華街からほど近い区画。
その街並みを歩くまだ幼げな印象を受ける少年がメモを片手に周囲をきょろきょろと見回していた。
「あれ……確か、この辺だって聞いたんだけど」
少年の表情にはだんだんと焦りが帯びてきた。
周囲を見ても誰もいない。彼は次第に涙目になり始める。
「うん?
どうかしたんすか、そこの君」
すると、建物の間の細道から一人の青年が歩いてきた。
「あ!! その恰好、騎士団長の方ですよね!!」
「そういう君もどこかの団長さん?
ああ、君が新しくうちに来るっていう新人さんっすか!!」
少年は同輩を見つけて喜色を示し、青年は合点がいったと手を叩いた。
「多分そうです、多国籍遊撃騎士団の拠点を探してたんですけど、見つからなくて……」
「ああ、この辺りって細道多くて分かりづらいからねぇ。
案内してあげるよ、こっちだよこっち」
青年はサーコートのマントを翻し、来た道を戻っていく。
少年は安堵のため息を吐いて、彼の後を追って行った。
「自分はチューリップ団長って呼ばれてるけど、君の補佐官はどんな子だい?」
「ええと、ハナモモちゃんって言います」
「じゃあ、ここでは君はハナモモ団長な。
ここの創設者が男の名前なんて覚えたくねぇ、みたいな事言い出して、こんな呼び方が定着しちゃったらしいんだ。
実際に覚えやすいから困る」
「あはは、面白い人だったんですね」
創設者の逸話に、少年……ハナモモ団長も苦笑いを浮かべた。
「個人的にはチューリップってなんか子供っぽいから嫌だったんだけど、そういうことは当人たちの前で言わない方が良いよ。
俺の場合、何日か生死を彷徨ったから」
「は、はは……」
当代の団長も逸話を残しているようだった。
拠点となる建物に入ると、二人は会議室というプレートが貼られたドアの前にやってきた。
「まず最初に一言、これから会う人はちょっと変わってるけどいい人なんで、分からないことがあったら俺とか他の団長に聞いてね」
「え、どういうことですか?」
チューリップ団長は答えず、会議室の中へと入りこんだ。
「あ、あの、チューリップ団長さん!?」
中は真っ暗で、ハナモモ団長が勇気を出して踏み込むと、ぶわっと照明が点いた。
「っくっくっく、ようこそ、我らが混沌の旅団の根城へ」
部屋の中央に設置された円卓の奥に、片仮面を付けた男が両肘を立て組んだ手を口元に近づけたポーズを取ったままそう言った。
「…………ここって、多国籍遊撃騎士団の拠点ですよね?」
呆気に取られたハナモモ団長はようやくその言葉を絞り出した。
「左様。我らは四つの事象を司りし軍勢を統べる者である」
「それぞれの役割をこなす団長の集まりってことね。
ささ、この人のことはいいから、そこに座ってよ」
「あ、はい……」
チューリップ団長に促され、ハナモモ団長は席に着いた。
そこらの花騎士に負けない個性の持ち主だな、なんて考えながら。
「さっそく会議を始めようと思うが、ナズナさん……ナズナ団長は今日も不在ですか?」
「はい、私が代理として会議に出席します、リンゴ団長さん」
「はぁ……分かった」
この場に居る唯一の女性の言葉に、一番年長であるリンゴ団長は深くため息を吐いた。
「漆黒の呪いに蝕まれているのか?
(訳:風邪でも引いたんですか?)」
「いえ、単に私に任せた方が早いというだけですね。
今頃なら、共同訓練所で皆を訓練している頃かと」
「召喚に応じぬのか。
(訳:顔ぐらい見せればいいのに。)」
「ええ、私も顔ぐらい出せばいいのにと言ったんですけど」
ナズナも困ったように首を傾げた。
「えーと、まず自己紹介から始めようか。
ようこそ新人団長。俺はリンゴ団長だ。主に危険度の高い討伐任務を受けたりしている。
その年齢で団長になるのも大変だろうが、困った時はいつでも頼ってくれ」
「あ、はい、ありがとうございます」
ハナモモ団長は今現在進行形で困っていることを打ち明けるべきか悩んでいた。
「自分はさっき紹介したけど、改めましてチューリップ団長です。
主に備品管理とか補給とか、共有財産の管理とか治安維持とか担当してます。
あと、技術者とかに資金援助して武器の開発とか、うちの姉さんたちの研究とか色々ですね」
「うちの騎士団の大黒柱だよ、彼が居なかったらうちは全く回らない」
「そんな大げさですよ……」
リンゴ団長に褒められ彼は照れたが、満更でもない様子だった。
「あ、私はナズナと申します。
私自身は花騎士ではありませんが、団長補佐としてお側に置いて頂いているので、私たちの部隊の団長はナズナ団長と呼ばれています。
主に国からの任務遂行などを担当しています」
ナズナは椅子から立ち上がると、礼儀正しく一礼してから着席した。
「ククク……我こそは
我が任務は地獄の底を暴き立て、混沌の軍勢を呼び寄せることだ」
「え、えーと……」
ハナモモ団長はたまらず周囲に助けを乞う視線を向けた。
「彼はキンギョソウ団長だ。
主に調査任務を請け負って、それを報告するのが仕事だ」
「あ、ありがとうございます」
「これから慣れればいい。
こいつのあれは昔呪いを受けたとかなんとか」
そう言ったリンゴ団長自身が一番信じていないだろうことは明白だった。
「あの、えーと、僕は多分ハナモモ団長ってことになると思います。
まだ団長になったばかりの若輩ですが、よろしくお願いします」
彼はそう言って深々と一礼した。
「後進育成の一環だったっけか?」
「ええ、なんかうちの騎士団ってそういうの期待されてるらしいんですよ。
複数の団長で分業するって、あんまり無いらしいっすからね。
分業ってのは社会の発達の為に必要不可欠なんで、今までなかったのが不思議ですけど」
「たしかに、個々の専門性を上げた方が効率や成功率はいいと思いますね」
「種蒔くのも花が芽吹くのに必要なことよ。
(訳:後輩も大事にしないとですしね。)」
と、そんな感じで一通りの自己紹介は終了した。
「さて、と。じゃあ今日の議題として、今月の予算の割り当てと行きましょうか」
その瞬間、空気が変わったのをハナモモ団長は肌で感じた。
「足りません、全然足りません。
まだまだあるでしょう?」
「ナズナさん、悪いですけどこれ以上出せません」
会議は白熱していた。
騎士団の財布の紐を握っているチューリップ団長からいかにしてカネを引き出すか、各々アピールしまくったりして、会議は一時間以上経過していた。
リンゴ団長とキンギョソウ団長は満足のいく予算を得られたらしいが、ナズナはそうもいかないようで、この会議の大部分はこの二人の舌戦の場となっていた。
「維持費、運営費、その他雑費を差し引いて、大所帯のあんたの所に六割以上の予算を割いている。
十分特別扱いしてるのにもっと予算を増やせ?
うちの騎士団を破産させるつもりですか!!」
「例のあれを改修する必要が出てきました。
劣化した部品交換の為にも更なる予算の増額を求めます」
「設計図があったからあんな国家規模の開発をうちの騎士団が支援したってことお忘れなく。
開発だけでここ数年分の貯金が消し飛んだのに、もっと寄越せって笑えないっすよ。
これ以上は一騎士団じゃ賄えません。国に持って行ってください」
「そうしたら接収されるのがオチじゃないですか。
研究の為にとか言って解体されますよ、きっと」
「そうした方が設計者も本望でしょう。
ワンオフよりそれを基にした量産型にこそ技術の発展には意味があるんですから!!」
「量産するにしてもそんなことができる国なんてありませんよ。
将来のことより今目の前に迫っている危機の方が大事じゃありませんか?」
等々、こんな調子で終わる気配がない。
リンゴ団長は船をこぎ始めたし、キンギョソウ団長は真っ黒なノートに何か執筆をし始めた。
「あの、大丈夫なんですか、この調子で」
「んあ……? ああ、やらせとけよ、いつもこの調子なんだ。
ナズナ団長も彼女に任せた方が多く予算を引き出せるから団長会議に彼女を出してくるんだろうしな」
そうしてリンゴ団長は欠伸を一つ。
「団員の方はどうだ? 集まりそうか?」
「とりあえず、数人は……。
まだ騎士団って規模じゃないですけど、徐々に実績を増やして集めるつもりです」
「そうか、まあ誰もが通る道だ。
とりあえずフォス街道辺りで実戦経験を積んで、比較的安全で補給路が盤石な場所で任務を受けるといい。
あの辺りなら花騎士たちの庭みたいなもんだから、まず失敗しないだろうしな」
「わかりました。そうしてみます」
頷くハナモモ団長だが、その表情には不安の色を隠せていない。
「……では、とりあえず交換部品の分だけ増額と言うことで」
「わかりました。残りは実績を積んでから、と言うことにしましょう」
と、こちらも決着がついたようだった。
「クックック……時は満ちれり。
頂きに至った太陽を貪ろうぞ。
(訳:そろそろいい時間なので昼食とかどうです?)」
「うん? ああ、もうそんな時間か。
皆メシに行こうぜ。もちろん、経費でな」
「一人1500ゴールドまでですよ」
「あ、私も行きます」
「ハナモモ団長も来るよな? いくぞ」
「あ、はい、ぜひとも」
そうして五人は移動を開始した。
「いやぁ、ナズナさんは相変わらず手ごわいですねぇ」
「いえいえそちらこそ、まだまだ余力があると見ました」
適当な定食屋の席についても、二人の攻防はまだ続いているようだった。
「二人とも、そういうのは後に引っ張るな」
「あ、はい。すみません。
それにしても、こうやって男同士で何か食べに行くなんて随分久しぶりで……。
周りが女性ばかりだと気を使うし」
「一応私も女なんですけど……」
「それは言葉の綾ですって」
チューリップ団長は笑ってそう言った。
「ほら、こっちって極端に男女比が偏ってるじゃないですか。
女性の方々も露出度高い服装とか平気でしているので、時々目のやり場に困ったりするんですよ」
「小心者だなチューリップ団長は。
堂々としていればいいんだよ、そういうのは」
「あ、でも、そういうのは凄く分かります。
僕も年上の女の人とどう話したらいいか……」
「悪魔を幾度も退ければ竜の心臓を得られるものぞ」
「実戦を積み重ねれば度胸や自身が付くってことですか?
何だかわかってきたような気がします」
「順応早いな、ハナモモ団長。
伊達にその年で士官学校を出たわけじゃないわな」
そうして男同士で交流を深めていると、ナズナが口を開いた。
「ところで、皆さんはどうして団長に?
常に危険と隣り合わせなのに、この道を選んだんですか?」
その問いに、男四人は唸った。
「俺は単純に女の子が好きだったからだ。
団長になればモテるしな。出会いもあるし」
「意外と不純な動機なんですね」
リンゴ団長の物言いにナズナも苦笑いだった。
「我は高貴なる者の務め故に。
幼少よりそう定められしものなり」
「ああ、キンギョソウ団長って良いところの出でしたもんねぇ。
ノブレスオブリージュってヤツか」
チューリップ団長の言葉に、キンギョソウ団長も例のポーズでこくりと頷いた。
「自分は皆さんに世話になったので、それを返す方法として団長の道を歩んだっていうか。
ぶっちゃけ団長になるのも皆さん頼りだった上に大したこと出来てないんですけどね」
「そう自分を卑下するもんじゃない。
ハナモモ団長はどうだ?」
「僕は出稼ぎみたいなもんです。
僕の住んでいた村では若い男手は僕だけだったんで」
「君も大変だなぁ……」
そうやって雑談していると、ところで、とチューリップ団長が口を開いた。
「例のあの日、我々に警備の依頼が舞い込んできたんですが、いかがしますか?」
彼は妖しい笑みを浮かべて皆に問いかけた。
「……それってマジか?」
リンゴ団長は神妙な表情になって問い返した。
「ええ、年に二度の祭典です。
今年は各騎士団も張り切っているそうですよ。
本来警備は僕らの担当ですが、ほら、例年通りならあいつらも来るでしょう?
ナズナさんは売り子をするそうですけど、警備に参加は?」
「うーん、そうですね、団長さんと相談してみます」
「くくく、地獄の宴の開幕ぞ!!」
「キンギョソウ団長は乗り気のようですね」
「勿論、俺ん所も総動員するぞ。
そう言う話なら皆も納得するだろう。どういう口実で入り込もうか考えてたんだ」
「あのー……」
頭を突き合わせて不気味な笑みを浮かべて会話をする四人に、ハナモモ団長が付いていけずに困惑を露わにした。
「いったい、何の話をしているのですか?」
「決まっているだろう。
年に二度、夏と冬に行われる同人文芸の祭典……――コミックフェスティバル、コミフェスの話だよ!!」
そう語るチューリップ団長は、熱く拳を握りしめ、高らかに語った。
予想以上に下らないや、とハナモモ団長は思った。
「早速、段取りを決めましょう」
「帰ったら会場の地図を確認して襲撃に備えねばな」
「私も食べ終わったら団長の所に行って了解を貰わなければなりませんね」
「我も眷属を召喚せねばなるまい」
四人は周囲の目なんかものともせず、熱く語り出した。
「(これが都会の騎士団なのかなぁ……)」
これから彼らの元でやっていけるのか、心配になるハナモモ団長だった。
多国籍遊撃騎士団、団長名簿
リンゴ団長…我らがロリコン主人公
チューリップ団長…財務担当、二番目に若い
ナズナ団長…ストーリーモードやクジラ艇任務に出てくる団長
キンギョソウ団長…邪気眼。一度やってみたかったキャラ。アイビーじゃないところがミソ(そもそも持っていない
ハナモモ団長…新米、常識人枠
これ以上オリキャラは増えませんし、いろいろな視点で多くのキャラを出したいので、このような設定にしました。
ほら、花騎士ってキャラゲーなんでいろんなキャラでないと面白くないですし。