貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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筆の調子がよろしいです。
連載を維持したいから書くのではなく、書きたいから書く、理想の状態です。
あと五話分くらいネタがあるのですが、どこまでこの調子を維持できるでしょうか……。

あと、弱点属性増やしたデンドロ師匠が強すぎる件について。
斬属性弱点付与のキャラが待たれます。


食べ物についてあれこれ

『サクラの苦手な物』

 

 

 突然だが、リンゴ団長たちが寝泊まりする仮宿舎の厨房には料理人は居ない。

 専属の料理人を雇っておらず、持ち回りで部隊の面々が各々が料理をしているのだ。

 

 なので、各々のやる気によって食事の内容にばらつきがあるのである。

 

「うーん……」

 この完璧超人サクラにも、苦手なものくらいはある。

 彼女は皿に盛られたネチョネチョした物体をかき混ぜていた。

 サクラにしてはお行儀の悪い光景だった。

 

 その日の朝食は、オートミールの粥にドライフルーツなどを入れた物に、目玉焼きとウインナーが二本。

 朝食としてはポピュラーだが、少々手抜き感が見え隠れする。

 

 この日は早朝から害虫討伐の為に出発する為、手軽に作れる朝食になったのだろう。

 

「おい、誰だ俺の皿にレーズンを入れたのは……」

 嫌いな食べ物の前に食欲の湧かないサクラの耳に、食堂に響く団長の声が届いた。

 

「俺はレーズンが大嫌いだと皆に言った筈だろう。

 あの食感がガキの頃から大嫌いだったんだ!!

 それにお粥とか食べ物じゃないだろ。最悪の組み合わせだ!!

 あと酸っぱい物!! 特にキムチ!! あれは汚物だ、臭いを嗅いだだけで吐き気がする!!

 害虫とどちらが嫌いかと言われたら同じくらい嫌いだ!!」

「食事くらい静かにしろ」

「じゃあクロユリにやる……俺は食パンでも探す」

 団長はオートミールをクロユリに押し付けると、いそいそと厨房に行ってしまった。

 

「何よあれ、失礼ね!!」

「食べやすいようにこっちだって工夫してるのに!!」

「団長だからって傍若無人よ!!」

「そーだそーだ!!」

 いつものモブ四人が団長の行動に抗議を挙げた。

 今日の朝食担当は彼女たちだった。

 

「…………」

 サクラは私の分もと言えず、遅々としたスピードでオートミールを口に運び始めた。

 彼女たちのあこがれの的として振る舞ってあげている手前、不満を漏らせなかったのである。

 

 フォークでウインナーを刺して口に運び咀嚼する。そうして雑多な味と感触を胃の中に押し込む。

 おかずの方が食べる量が多いくらいだったが、我慢するしかなかった。

 

 厨房から食パンを取ってきて目玉焼きとウインナーを挟んでマヨネーズを掛けて食べている団長を内心恨めし気に見ながら、サクラは何とかドライフルーツと一緒にオートミールを飲み込む。

 

「サクラさん、どんどん食べてくださいね!!」

「こっそり大盛りにしておきましたから」

「まだまだあるんで、おかわりしますか?」

「もぐもぐ……」

 四人が悪意のない笑みでサクラにそう言った。

 

「う、ふふ、ありがとう、四人とも」

 サクラにしては珍しく、その表情は強張った笑みだったという。

 

 

 

 §§§

 

 

『大喧嘩?』

 

 その日、部隊の空気はギスギスしていた。

 

 害虫討伐を終えたリンゴ団長の部隊だったが、終始何とも言えない重い空気が満ち満ちていたのである。

 誰もがその原因を何となく察していたが、誰も口にできる雰囲気ではなかった。

 

 その日の野営の夕食のメニューは、酸辣湯麺だった。

 酸っぱい物が大嫌いな団長は、努めて無表情で麺だけを啜っていた。

 

 その翌日の朝食のメニューは団長直々に作った鳥そぼろと卵そぼろのご飯だった。

 あらかじめ混ざった状態で提供されたそれを強張った表情でリンゴは食べていた。

 

 その日の昼食はリンゴが買ってでて、キムチチャーハンだった。

 団長はクロユリにそれを押し付けた。

 

 その日の夕食はキムチ抜きのビビンバだった。誰が作ったのかは言うまでもない。

 当然あらかじめ混ぜられて提供されていた。リンゴはそれをこれ見よがしにクロユリに押し付けた。

 

 

「お前たち、いい加減にしろ!!」

 そしてクロユリがキレた。

 

「ふん、だ」

「つーん、です」

 お互いに別方向にそっぽを向く団長とリンゴ。

 

 この二人、任務の最中も最低限の言葉を交わす以外、ずっとこの調子だった。

 いつもはバカみたいに仲良しの二人は、なぜか物凄く険悪な雰囲気だった。

 

「食べ物で喧嘩しないでください、二人とも」

 いい加減仲裁すべきだろう、とサクラが間に入って来た。

 

「大の大人二人が子供みたいな喧嘩などして、恥ずかしくないのか」

「別にー、俺は悪くないし」

「団長さんが意地張ってるだけですから」

 まさに子供みたいな物言いに、クロユリもイラッとした。

 

「まあまあ落ち着いて、二人とも一体何があったの?」

 拳を振り上げようとするクロユリをなだめて、サクラは二人に問う。

 

 

 両者の主張を総合すると、このような話になった。

 

 先日、団長とリンゴは昼食に焼肉屋へ外食しに向かった。

 そこでリンゴはここの石焼ビビンバがオススメであると言って、微妙そうな団長を押し切って注文した。

 

 そうして料理が運ばれてきたのだが、コップの水が無いことに気付いたリンゴが水を取りに向かった。

 その隙に団長は大嫌いなキムチをリンゴの器に移したのである。

 

 ここで終わっておけば良かったのだが、この団長、自分のキムチを移した証拠隠滅の為にリンゴのビビンバを混ぜたのである。

 そして戻ってきたリンゴに素知らぬ顔でいかにも親切なことをしたと言わんばかりの態度で、混ぜておいたぜ、と言ったらしい。

 

 そしたらリンゴは。

 

「私、ビビンバを混ぜて食べない派なんですけど!!」

 と、激怒したらしい。

 

「ビビンバ混ぜなかったらビビンバじゃないだろ!!」

 これに団長も逆ギレし、事態は(こじ)れに拗れ続け、今に至るという。

 

 

 その話を聞いた全員がこう思った。

 

 くだらねぇ、と。

 

 

「ようはだんちょが大人げなくて、リンゴちゃんが意地っ張りなだけじゃん」

 これにはランタナも呆れ顏だった。

 

「どっちもどっちじゃないですか。

 っていうか二人もこんな風に喧嘩とかするんですねぇ」

「ですがまあ、一応喧嘩ができる間柄で安心しました。

 仲が良い事だけが全てじゃないですから」

 呆れているリシアンサスに、微笑ましそうに見ているプルメリア。

 二人とも、いやさこの場に居るこの当事者以外の全員がどうせすぐ仲直りするだろうと確信していた。

 

「ほんと付き合いきれないわ。

 あとは二人で勝手にすればいいじゃない」

 大した喧嘩じゃないと分かったからか、キルタンサスがその場を離れると皆も解散しだした。

 

「…………」

「…………」

 残された二人はやっぱりそっぽ向いたままだった。

 

 

 

 その日の夜。

 

「ざぐらざぁん……」

 その涙声を聞いたサクラは、ようやく来たかと腰を上げた。

 

「どうしたのリンゴちゃん」

「ひっぐ、わだじ、だんぢょうざんとげんかなんてはじめでで、ぐすッ、どうやっでながなおりすればいいんでじょう……」

 喧嘩を長引かせる燃料が途切れたからか、サクラがドアを開けると号泣しているリンゴが立っていた。

 

「ぜんぶわだじがわるいんでずぅ!!」

「よしよし、大丈夫よ。ちょっと素直になれなかっただけなんだから。

 私が付いて行ってあげるから、ちゃんとお互いに謝りましょうね?」

 そんな風に彼女を慰めながら廊下を歩いていると、ある部屋を通り過ぎる時にこんな声が聞こえた。

 

「どうしよう、どうしようどうしようクロユリぃ、俺リンゴちゃんに嫌われたら死ぬしかないよぉ。

 そう思ったら不安で不安で眠れないんだ、たぢげでぇ~」

「知るか、阿呆!!」

「そんな冷たいこと言わないでぐれよぉ~」

 なるほどそっちに行ったか、とサクラは思った。

 どうせそのうち気の弱い団長の方から罪悪感に押しつぶされて折れることは目に見えていたのである。

 

「うう、だんぢょうざーん!!」

「リンゴちゃん!?」

 そうしてなんやかんやで二人は仲直りしたのである。

 

 

 と思っていたのだが。

 

「団長さん!! カレーをごちゃ混ぜにして食べるのは美しくないと思いますよぉ!!」

「カレーの食べ方なんて自由だろうが!!」

 また喧嘩してる二人だった。

 

「昔、何かの心理テストでカレーをごちゃ混ぜにして食べる人は浮気をしないって書いてましたけど、当てにならなそうですね……」

 そんなことをぼやくペポだった。

 

 

 

 §§§

 

 

『通じ合っている二人』

 

 

「あ、やばい、バター切らしてた」

 食料庫を漁っていた団長はバターが無いことに気付いた。

 

「しまったなぁ、バターが無いとオニオンスープの味の決め手が欠けるんだよなぁ」

 今日は安く玉ねぎが手に入ったので、気が乗った団長は厨房で夕飯の準備をしていた。

 

「しょうがない、路線変更しようか。

 飴色に炒めたみじん切りの玉ねぎにトマトジュースを入れてー」

「え”ッ、トマトジュース入れるんですか……」

 微妙に嫌そうにしている、料理を手伝っているペポ。

 

「ははは、そういやペポはトマトジュース嫌いだったな」

「普通のトマトは大丈夫なんですけれど、ジュースになると……。

 理由はうまく説明できないんですけど」

「分かるわ、俺もガキの頃イチゴが嫌いだった。

 イチゴジャムは好きだったのにな!! あとウナギは食えなかったのに蒲焼きのたれはご飯にかけて食ってたりもしたぜ」

 そんなことを話しながら団長はコショウと塩で味を調え、レモンとオリーブオイルを少々スープに加えた。

 

「よし、トマトのオニオンスープの完成だ」

「普通に野菜スープで良いんじゃないですか?

 あ、でもでも、これなら私も食べられそう」

「カップにバゲットを入れて、チーズを乗せてオーブンで焼くといい感じになりそうだな」

「あ、それ美味しそうですね!!」

 そんな話をしながら二人は夕食の準備を進めて行った。

 

 

 

「……オニオンスープグラタンか」

 今日の夕食を前にして、クロユリは険しい表情をしていた。

 スプーンで焼けたチーズが乗ったバケットを押して沈めると、赤いスープの水位が上がってくる。

 

「トマト風味みたいだが……」

 味噌汁に玉ねぎを入れる家庭があるそうだが、クロユリはああいう玉ねぎの使い方が嫌いだった。

 同じ理屈でオニオンスープが嫌いなのである。

 

「だーんちょー!! なんで今日はオニオンスープなのさ!!

 どうせ作るなら玉ねぎが完全にぐずぐずになるくらいまで煮てくれれば良かったのに!!」

「好き嫌い言っちゃダメだよランタナちゃん」

「しかもこれ、バターが入ってないじょ!! 私の舌は誤魔化せん!!

 コクが足りませんなぁ、マイナス30点」

「やっぱりバターが無いと旨味がなぁ。やっぱり時間を掛けても買ってくれば良かったか」

 なんてやり取りをしている団長たち。

 

「……」

 クロユリは無言でオニオンスープを食べ始めた。

 あの子供っぽい文句を言うランタナと同類になりたくなかったのだろう。

 

 

「おい、クロユリ。ちょっと付き合えよ」

 その日の晩、団長はこっそりとクロユリの部屋へとやってきた。

 

「一体何の用だ」

「いやな、何だか食欲無さそうだったからよ。へっへっへ、干し肉をくすねて炙ってきたんだが、食うか?」

「……ああ、どうせ酒もあるんだろう? 付き合ってやる」

 

 

 

 §§§

 

 

『好みが逆の二人』

 

 

「お、ポインセチアじゃないか!!」

「あ、団長さん!!」

 以下略。

 

「全く、こっちに来てたなら言ってくれば良かったのによ」

「あんたが居るのに言うわけないでしょ!!」

 いつものやり取りをして、いつものように団長に食って掛かるホーリー。

 

「まあまあ、落ち着いてくださいよホーリーさん。

 ここはお茶でもしながら近状でも話し合いましょう」

「わぁ、それはいいね!!」

 二人の間に割って入るリンゴの言葉に、ポインセチアは賛成した。

 

「おお、じゃあオススメのカフェがあるんだ。行こうぜ!!」

 と言うことで、4人は近くのカフェに向かった。

 

「えーと、日替わりケーキセット4つで」

 4人が席について団長が注文し、お互いに色々話し合っていると、ウェイトレスがケーキと飲み物を持ってくる。

 

「えッ、コーヒーなの?」

「チョコレートケーキ……」

 運ばれてきたのはいかにも濃そうなコーヒーと、チョコレートがたくさん掛かったすごく甘そうなチョコレートケーキだった。

 

「おっと悪いな。ここの日替わりセットは変わっててな、飲み物も日替わりなんだ。

 別の飲み物を頼むか、ポインセチア」

「ううん、せっかく持ってきてくれたんだし、飲むよ」

 そう言ってポインセチアはコーヒーに角砂糖数個やミルクを投入し、チョコレートケーキをフォークで切り分け、口に入れてからコーヒーを含んだが。

 

「ふぇーん、やっぱり苦いよぉ」

 >< みたいな両目に波線みたいな口元になりながらポインセチアは言った。

 

「リンゴちゃんよ、これが萌えだ」

「むはッ、素晴らしいですね……」

 団長はこれを狙ってやったらしい。

 リンゴは鼻から洩れる淑女を拭いていた。

 

「ああもう、飲めないなら私がもらうわよ。って、甘ッ」

 ホーリーにとっては角砂糖数個入りのコーヒーは甘すぎたようだった。

 

 二人の凸凹なやりとりを肴に、団長とリンゴは楽しそうにお茶を楽しんだのだった。

 

 

 

 §§§

 

『チューリップ団長の逆襲』

 

 

「あ、今日の御夕飯はおいしそうですね!!」

「でしょう? 奮発したよ!!」

 ホワイトチューリップの嬉しそうな声に、チューリップ団長も顔を綻ばせた。

 

 本日のチューリップ家のメニューはこちら。

 シイタケとシメジの炊き込みご飯。

 エノキと卵のスープ。

 エリンギのステーキ風ソテー。付け合せに茹でたチンゲンサイ。

 

 きのこきのこきのこ。

 きのこ尽くしだった。

 

 そのメニューに顔を青くしているのは上の姉たち三人である。

 なんとこの姉妹、ホワイトチューリップ以外キノコ類がダメなのだった。

 

 こうしたメニューの日は、必ず理由があった。

 

「姉さんたち、何をしたのかしら」

 パープルチューリップが上二人の姉に若干鋭い視線を投げかける。

 

「うーん、薬品庫を爆発させちゃったからかしら」

「それじゃない? 私に心当たりはないし」

「あれちょっとした好奇心だったのよ……」

「でもその爆発の混乱に乗じて薬品をちょろまかそうとしたでしょう?

 被害総額数百万ゴールド、周辺住民の避難、お城に対して釈明。今日はものすごく疲れたよ」

 笑顔で料理を運んでくる団長の表情には青筋が浮かんでいた。

 てへ、とイエローチューリップは可愛らしい仕草をした。

 全く反省の色は無さそうである。

 

「全く、危険だったり貴重な薬品は別の場所に厳重に保管しといて良かったよ」

「うーん、男の人のキノコなら」

「姉さん下品ですよ」

 長女の下ネタを遮りつつ、末妹も料理を運ぶのを手伝っていた。

 

「まあ、仕方ないわ。せっかくだから最後まで食べましょう」

 全員が席に着くと、レッドチューリップはそう言った。

 なんだかんだで全員、残さず食べ終えたのだった。

 

 

 

 §§§

 

『プロテアの初デート?』

 

 

 その日、チューリップ団長は念願のプロテアとの初デートに漕ぎ付けていた。

 一か月前から時間を調整し、ようやく一日の共通の休日を獲得したのである。

 

「姉さん、どうかな、決まってる?」

「ええ、ばっちりよ、行ってきなさい」

 しっかりと身だしなみを整えた団長は、レッドチューリップに太鼓判を押されて、よし、と頷いた。

 

「あと、デートの秘訣とかあるかな」

「それは勿論、良い雰囲気になったら連れ込み宿に」

「姉さんに聞いた俺が間違いだったよ」

 そんなやり取りを挟んで、団長は診療所から出て待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

「プロテアさーん!!

 ゴメン、待たせちゃったね!!」

 待ち合わせ時刻の十五分前、プロテアは既に待ち合わせ場所で待っていた。

 その表情は、何だか微妙そうだった。

 

 二人が待ち合わせしている広場には、厳重な警備体制が敷かれていた。

 彼の部隊の花騎士たちが睨みを効かせて野次馬をけん制していた。

 当然彼女の親衛隊も参加している。

 

「これ、デートなんですか?

 私ってこういうの初めてなので……」

「一応デートだけれど、ちょっとしたパフォーマンスの面が強いかな。

 ごめんね、プロテアさん。今度は別の国でちゃんとしたデートコースで埋め合わせするから」

「ええと、私は構いませんけれど……」

 この人の集まり様は何なのかと、プロテアは周囲を窺っていると。

 

 

「この裏切りものぉ!! 俺たちはリア充どもを憎んでたじゃないかぁ!!」

「俺たちは仲間だと思ってたのによぉ!!」

「よくもプロテアさんにちょっかい掛けたなぁ!!」

 とか、叫んでいるいかにもモテなさそうな集団が存在していた。

 

「これ見よがしに、明日はプロテアさんと初デートするとか放送しやがって、バカにしてるのかぁ!!」

「そんなことしたんですか……」

 思わず遠い目になるプロテアだった。

 

「まあまあ、皆落ち着いて。

 俺は愛に目覚めたんだ。この世は憎しみばかりじゃないんだって。

 こんな俺にもプロテアさんという女神が舞い降りて来てくれたんだ。皆だってそのうち良い人に巡り合えるって!!」

 団長はわざわざその集団に近づいて、警備網越しにそんな煽る様な発言をした。

 勿論当人は大真面目で悪意なんて無いが、リア充にそんなことを言われたら非モテ集団は激怒する。作者だって激怒する。

 

「ふざけんなぁ!!」

「バカにしやがって、見下してんのか!!」

「野郎ぶっ殺してやらぁー!!」

 狂気に血走った目になる彼らだったが、まあまあ、と団長は何かを取り出した。

 

「俺はみんなにもこの幸福を分けてあげたいんだ。

 これ、今度俺が主催する婚活パーティの招待状ね。

 花騎士の子とかいっぱい来るから、どうぞみんな持ってって」

 彼がそう言って招待状を配りだすと、非モテ集団の勢いが収まっていく。

 

 最終的に取り合いになったが、ちゃんと全員に配って彼らが帰って行ったのを見届けた団長は一言。

 

「皆、赤姉さんに揉まれて強くなるんだよ……」

 初心な彼らが心の傷を負うだけなんだろうなぁ、とその光景を見たプロテアは思った。

 地獄への道は善意で舗装されているとはどこの言葉だったか。

 

 非モテ集団を処理を終えると、今度は反対側へと向かった。

 そこには異様にお行儀のいい記者の集団があった。

 

「皆さんいつもご苦労様です。

 今回の記事は手加減してくださいねー」

 団長が冗談めかしてそう言うと、彼らは苦笑を漏らした。

 

「チューリップ団長!!

 先日貴族位を拝したとのことですが、プロテア様とのお付き合いはやはりご自身の箔付けの為ですか?」

 と、そこで若い女性記者がいきなり失礼な質問を投げかけた。

 彼女の質問に他の記者たちの表情が強張った。

 

「質問の時間はあとで取るからその時にね。

 そう言えば君の顔は初めて見るね。新人さんかな」

 団長は彼女の名札に目を落とすと、笑顔のままこう続けた。

 

「君の新聞社の大口スポンサーは俺の友達のギルドでね。

 俺を面白おかしく報道するのはいいけど、一行でもプロテアさんを中傷する記事を見かけたら、俺、ちょっと怒っちゃうかもしれないなー。

 この間、赤姉さんを淫売呼ばわりした失礼な記者が居てさ。そいつ天罰が当たったのか転んだところを馬車に利き手を踏まれたらしくてさ、切断を余儀なくされたらしいよ。

 今頃逆の手で文字を書く練習をしているのかな? はははは」

「は、はい……」

「俺もいつも読んでる伝統ある新聞が廃刊になるところとか見たくないし、頼むよ?」

 ぽんぽん、とガクブルしている女性記者の肩を叩いて、団長は踵を返した。

 

「あなたの書く原稿、楽しみにしているからね!!」

 それだけ言うと彼はプロテアの元に戻っていった。後ろで誰かが膝を突く音など気にせず。

 

 

「ちょっと脅かし過ぎでは?」

「良いんだよ、あれは寄生虫みたいなもんだから。

 害虫を討伐するのが騎士団の仕事でしょう?

 俺は仕事をしているだけだよ」

「もう……」

 プロテアは呆れたように溜息を吐いた。

 この男が各新聞社や雑誌社の弱みを会社単位や編集者レベルで握っているのはよく知っているからだ。

 

 そうやって情報統制を繰り返し、今では元老院でプロテアも今までのように軽く見られることが無くなっただけに強く言えないのだった。

 

「これからいろいろ食事して回るけど、マズイとか言っちゃダメだよ。

 その店潰れるから。有名人の影響力とか凄いからね。嫌いな食べ物とか有るなら事前に言ってよ」

「大丈夫です、私嫌いな食べ物とか有りませんから」

「うーん、それはそれで残念だなぁ。

 まあそれが終わったら今度プロテアさんが主催するお祭りについての取材をさせて……」

 そうやって二人は予定を確認し合い、色気のない初デートは始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




なんとかゲーム内のリソースをかき集め、ヨメナちゃんを執念で引きました!!
勝った、物欲センサーに勝った!! なお、もう石は空っぽ……。
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