貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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あれからまた33連しましたが、ネリネちゃんをねりねりすることができず無念です。
それにしてもペポのお友達の幽霊の名前が発覚したつい先日。
どうせならもっと早くしてほしかった私団長。
ですが、おかげで書きたかった話が書けそうです。

あと、感想で思いのほかアイギスやってる人多くて驚きました。


短編連作 追憶編その10

『ハナモモの追憶 衛兵編』

 

 

「おじさん、こんなところに寝ていると風邪引きますよ」

「ぐがー」

 夜の城下町。夜の娯楽が少ないスプリングガーデンではとっくに誰もが寝静まる頃だろうと、衛兵たちの仕事は終わらない。

 

 

「このオヤジ、これで三日連続だぜ」

 ハナモモ団長と共に酔っ払いの中年男性の肩を支える衛兵仲間はそう吐き捨てる。

 

「わざわざ通報を受けて飛んでくる身にもなれってんだよ」

「まあ、仕方ないですよ。寝ている酔っ払いから財布を抜き取っていく人も居ますし」

「ここまで飲むんならそれも自己責任だと思うけどな」

 懲りずに毎日衛兵の世話になっている酔っ払いを運ぶ二人を、ハナモモはどこか不満そうに背後から追従していた。

 

 団長とハナモモが衛兵隊に配属され、五日が過ぎた。

 衛兵の主な仕事は治安維持である為か、夜の巡回には酔っ払いの保護など日常茶飯事だった。

 

「さっさと担当の人に引き渡して上がりましょう」

「そうだな。こんな酔っ払いから根掘り葉掘り話を聞きたくないから詰所勤務はしたくないんだ」

 衛兵にも部隊によって仕事は割り振られており、団長たちの部隊の仕事は町内の巡回などでこの酔っ払いが誰それと言った聞き取りは各地にある最寄りの詰所に詰めている別の衛兵の仕事だった。

 

 害虫と戦う花騎士とは違い、衛兵の相手は人間だ。

 こうして夜に巡回するのも、盗難等の被害を抑止する意味合いが大きい。

 酔っ払いの対処もその一環だ。暴力沙汰もあるにはあるが、少なくとも団長とハナモモはまだ遭遇していない。

 

 そして万が一、害虫の侵入を発見すればそれを速やかに花騎士に伝えるのも巡回の衛兵の仕事であるが、それも万が一の仕事である。

 そうなった時点で大抵の場合町の外を巡回する花騎士が突破されて既に大騒ぎになっているし、祭りごとでもないのに夜中に害虫が街中に侵入するなど連中の性質から言ってまず無いのだ。

 とは言えどんな小さな確率でも、有り得るのなら警戒しなければならないのが公僕の仕事である。

 万が一が起こるのは、万が一のことだと油断した時なのだから。

 

 実直で地味な仕事を苦にしない団長はこの文字通り日の当たらない仕事に何も言わないが、花騎士として緊張感の絶えない仕事をしていたハナモモは以前の職場との落差に居心地の悪さに似た何かを感じていた。

 勿論、ハナモモとて職業や仕事に貴賤が有るとは思っていない。

 ただ漠然と、この平穏な仕事は自分の役割ではないと心のどこかで思ってしまうのだ。

 花騎士として活躍したいとか、称えられたいとか全く別の、そんな場違い感を覚えていた。

 

「(リンゴ団長さまもこんな気持ちなんでしょうか……)」

 ハナモモは未だ記憶から拭い去れない言葉を投げかけた男のことを思い出す。

 毎日のように害虫討伐に向かうあの男は、今の自分のように命のやり取りから切り離された空間に居ることが耐え難いのではないか、と。

 こうして暢気に酔っ払いの相手をしている間にも仲間たちは戦っていると思うと、罪悪感にも似た焦燥を覚えてしまう。

 そんな感情を何百倍何千倍も煮詰めたようなそれを常に抱いているのだとしたら、それは果たして正気と言えるのだろうか。

 

 

「ハナモモちゃんはやっぱり、今のお仕事不満なのかな?」

「どうしてそう思いますの?」

 夜の巡回が終わり、次の昼勤に向けて体を休めるべく宿舎に向かう最中、団長が投げかけてきた疑問にハナモモはそう返した。

 

「だってほら、寝る時間も不規則だし、時々そわそわしてるから」

 ハナモモにとっては意外にも、彼は彼女の事をよく見ていた。

 彼女は不規則な生活による肌の質が一段階低下していることを気にしていたり、街中なのにいつもの癖で害虫の襲撃を警戒してしまうのも気付いているようだった。

 

「決して不満が有るわけではありませんわ。それは本当ですの」

「そ、そう?」

「ただ、少し歯痒く感じますの。

 害虫と戦う力が有る自分がこうして安全な仕事をしている間にも、仲間の皆さんが戦っていると思うと……」

「そう、そうだよね……」

 団長はハナモモが自分を咎めているように思えて、肩を落とした。

 

「べ、別に団長さんを責めているわけじゃありませんわ!!

 ただこれがアタシのするべきことなのかなって」

 別にハナモモは決して衛兵の仕事を軽視しているわけではなかった。

 衛兵が居なければ城下町は無法地帯になるのは分かり切っていることなのだから。

 

「……ハナモモちゃん、君が花騎士の仕事に誇りを感じてるのは分かるよ。

 花騎士に成るのがどれだけ大変なのかも。

 リンゴ団長は花騎士は選ばれた人間だけができる特別な仕事だって言うかもしれないけど、チューリップ団長は以前こんなことを言ってたんだ」

 団長は、今の騎士団に来た時のことを思い出す。

 

『経理の仕事を、騎士団長自らやる必要ってあるんですか?』

『あはは、それよく言われるよ。騎士団長のくせに金勘定ばかりしてるのかってね』

『あ、すみません、バカにしたわけじゃないんです。

 とっても重要な仕事だって分かってます。でも、他の人に任せることもできるんじゃないかって』

『確かにそうだね。だけどお金は魔物だよ。信頼できる人間にしかその流れを任せられない。

 俺が一番信頼できる人間は俺だけだったって話なんだよ。

 それに俺にとって騎士団長の仕事って経理の仕事に取って代わらなければならないほど、特別な仕事だとは思えないんだよね。

 実際、俺が討伐任務から外れても上手くやれてるし』

『騎士団長がそれでいいんですか?』

『大事なことだよ。誰にも代わりの務まらない特別な職業や役職なんてあっちゃいけないし。

 人間は社会的動物だから、その社会の根幹となる歯車が代替できない唯一無二ならそんなのは人間社会とは言えないよ』

『では、花騎士も特別じゃないと?』

『花騎士が特別なら、彼女らは何百何千人も居ないよ。

 確かに彼女らは害虫と戦うための訓練を受けてるし、命の危険が常に付きまとう。

 けど、それは大工さんだってそうだろ? 家を建てる為に親方の所で修行して、屋根の工事で落下死する危険もある。

 一番すごいのはたった一人の勇者が世界を滅ぼす何かを倒すことじゃなくて、その勇者が守りたいと思える社会を維持し続ける一人一人だと思うんだよね』

 

「それで仮にその勇者がその世界を守りたいと思えない社会ならそれまでだって」

「花騎士は特別じゃない、ですのね……」

 それはハナモモには無い発想ではあった。

 彼女の根底には、少なからず花騎士は特別な職業であるとの認識があった。

 なぜなら彼女にとって、花騎士とは女性として憧れる従姉妹のモモそのものなのだから。

 

「あ、いや、別にそれが悪いとかって話じゃなくてさ。

 ハナモモちゃんが戦いに出れなくても、ちゃんと補い合えるからこそ仲間だっていうか、その、そこまで気に病まなくてもいいんじゃないかなって」

「…………」

「な、なにかな? やっぱり、僕が言っても説得力無いかな……」

 ハナモモにジッと見つめられ、おどおどする団長。

 彼も彼なりに決闘の件を後悔しているようだった。

 

「いえ、団長さんもちゃんと成長していたんですのね。

 とりあえず、以前申し上げた男らしくないってのは訂正いたしますわ」

 と、ハナモモは何となく素直に謝るのは癪だったので憎まれ口を叩いたが、内心では戦いのことばかり考えていた自分を恥じていた。

 まあ半分くらいは職業病みたいなものだと思っていたが。

 

「よ、よかった……」

「でも、まだまだ、全然!! 頼りないまんまですわ!!

 他の団長さま達のように一人前になれるように、アタシはびしばし行きますわよ!!」

「うん、うん!!」

 ハナモモとしては凄んでいるつもりなのだが、彼は何だか目尻に涙を浮かべて嬉しそうにしていた。

 それを見て自分にも威厳が出てきたのだと思うハナモモだった。

 

 そんなこんなで、噛み合っているようで微妙にすれ違っている二人は翌日に向けて帰路に着いた。

 

 

 

「きゃぁああ、ひったくりよーー!!」

 そして、事件は翌日に起こった。

 

 リリィウッド商業区にて最近多発している連続ひったくり犯を警戒し、私服で巡回していた団長たちはその声に動いた。

 団長たちの部隊は若者ばかりが中心で、傍から見れば衛兵に見えないので商業区の警戒に抜擢されていた。

 昼間なのに犯行に及ぶのは、周辺の人だかりに紛れ込みやすいからだろう。

 そして周囲に衛兵や休暇中の花騎士らしき人間は居ないと見たのか、犯人は犯行を行った。

 

「アイツだ、取り押さえろ!!」

 周辺に散っていた衛兵たちは、あらかじめこの辺りをマークしていた。

 そして運よく、犯行の現場を目撃した衛兵仲間がいた。

 

「逃がすか!!」

 人混みの中数人の私服衛兵の連携され追いかけられ、ボロを出したひったくり犯は焦って全速力で逃げ始めた。

 

「逃がしませんわーー!!」

 そんな中、小柄で機動力のあるハナモモがいち早く犯人に接近できた。

 

「く、くそッ」

 犯人は苦し紛れに、手のひらをハナモモに向け事前に準備していたらしい魔法を放った。

 

 花騎士は世界花から加護を受けているが決して常に肉体的超人では無い。

 魔力を全身に行き渡らせ、使いこなすことで肉体や武器、衣服などを一時的に物理法則から逸脱した結果を齎すことができる。

 

 一般人の魔法でも至近距離から受ければ全身火だるまになるだろう魔法だったが、相手が悪かった。

 その目眩まし用の火炎魔法は、彼女にとって上半身を消し飛ばす害虫の魔力砲撃に比べればそよ風にも等しかったのである。

 

 ハナモモは魔力の障壁で守られた手で火炎をあっさりと払いのけ、ひったくり犯に飛び掛かって地面に押し倒した!!

 

「てめぇ!! 人に向けて攻撃性の魔法を使いやがったな!!

 ただの窃盗で済むと思うなよ!」

 他の衛兵仲間たちも犯人の両手や頭を押さえながら、愚かな犯行を行ったひったくり犯に怒りを向けていた。

 

「おい、こいつ何も持ってないぞ!!」

「途中で捨てたか? おい、探せッ!!」

 だが、犯行を目撃していたにもかかわらず、犯人は盗んだ荷物らしきものを所持していなかった。

 

「ちょっと男子ぃ、詰めが甘いんじゃないのー?」

「なかなか捕まらないから、協力者が居るんじゃないかって話しになったでしょー」

 そこに後からやってきた衛兵仲間たちが、荷物を受け取ったらしい犯人の協力者を確保して現れた。

 

「はん、今回は言い逃れできなかったさ。街中で攻撃性の魔法まで使ったんだからな!!」

「おい止せよ、とりあえず犯人は捕まえられたんだから良しとしよう」

 妙な対抗意識を持って言い返す衛兵に仲間を諌めていると、被害者を連れた団長が合流した。

 

「皆さん、大丈夫でしたか?」

「ええ団長、ハナモモちゃんが大活躍でしたよ」

「とりあえず、このクソどもを城の留置所にぶち込みましょうよ」

「あ、うん、そうだね」

 団長が調書を取る為被害者に同行を願い出る横で、犯人の男女二人に魔法の発動を阻害する呪符を張りつけ手際よく拘束していく衛兵たち。

 

「連れてくぞ!!」

「おら、キリキリ歩け!!」

 こうして、無事連続ひったくり犯の逮捕に成功したのだった。

 

「……?」

 事件が解決して安堵していたハナモモだったが、ふと視線を感じて振り返ると以前と同じように、未だ花騎士に成ることを諦めきれていないという衛兵仲間が彼女を見ていた。

 

 彼女とハナモモと視線が合うと、相手はさっと目を逸らして犯人を連行する仲間たちに付いて行ってしまった。

 

「どうしたの? ハナモモちゃん」

「あ、いいえ、何でもないですの」

 団長に呼ばれて、ハナモモは我に返った。

 そして、彼女の視線に若干のしこりを感じつつも、ハナモモも犯人たちを城に連行する為、後を追ったのだった。

 

 

 つづく

 

 

 

 

『変態性=有能性』

 

 

「バラさん、ちょっと気になったんですぱが」

 あくる日、最近やってきたばかりのラークスパーはたまたま食堂で昼食中に相席になったバラに己の中に生まれた疑問を投げかけていた。

 

「うちの団長ってあんまり活躍しているって聞かないですぱ。

 実際のところ、どうなんですぱ?」

「あ、それ私も気になる!!」

 それにラークスパーの隣の席で一緒に食事中だったワルナスビも同調した。

 

「まあ、うちの団長は害虫討伐では輝くタイプの団長ではないのは確かね、有能なのは確かよ」

 と、バラはそのように述べた。

 

「ナズナ団長やリンゴ団長みたいに分かりやすい成果や戦果はあまりないけど、彼には彼にしかできないことがあるのよ」

 と言われても、二人にとってキンギョソウ団長とは吸血鬼の格好をして変な趣味や魔法に興じるよく分からない人物だった。

 

「まあ、そのうち二人にも彼の有能さが分かる時が来るわよ」

 そう言うバラに、ワルスパコンビはお互いに顔を見合わせ首を傾げるのだった。

 

 

 

「くくく、聞こえる、聞こえるぞ、深淵へと我を誘おうとするイニシエの呼び声が」

「いいからさっさと号令掛けてよ」

「ああ、うむ……」

 そしてその機会はすぐにやってきた。

 キンギョソウ団長とその補佐官率いる二十名4チームが、エダの深き森周辺に古い遺跡が発見されたということで、調査する事となったのだ。

 

 キンギョソウ団長の担当はこう言った遺跡調査や害虫の分布や地図作成。

 故に今回彼にお鉢が回ってきたわけである。

 

「調査班以外は周辺警戒や長丁場に備え野営の準備を。

 今回は内部に害虫が巣食っていないか、侵入者対策の罠の有無などに留めるが警戒するに越したことは無い」

 団長の視線の先には、苔むした崖に紛れた岩の扉があった。

 それがよく見ないと発見できないほど時間が経過している証左であった。

 この辺りは祭事ぐらいにしか訪れる人間が居ないので、発見が困難でもあったのだろう。

 

「ふむふむ、年代としては賢人エダが存命していた時代によく見られる様式だね。

 賢人エダが修業時代に利用していた施設かもしれないね」

 そして調査班の筆頭たる花騎士は、勿論マロニエだった。

 遺跡調査と聞いて彼女が乗り出さない訳がない。団長の号令の最中も、ずっと遺跡の苔むした扉を見てそわそわしていた。

 今や彼女は遺跡の扉に張り付いて、ルーペ片手に舐め回さんばかりに扉の文様などを分析していた。

 

「マロニエさん、外壁の調査で分かることは高が知れています。

 まずは害虫の侵入されているかどうか、侵入しているのならそれらの排除。

 その後、細かい調査を行うのが効率的と言えます」

 そう彼女に意見を述べたのは、バナナオーシャンの花騎士タチバナである。

 彼女もまた調査班に抜擢される知見の持ち主だ。

 

「あのー、団長。なぜワルナスビ様と私が調査班なんですぱ?

 そりゃあ勿論、ワルナスビ様からすれば遺跡の調査なんて朝飯前ですぱが」

 そして今回、最近入隊したばかりの二人も調査班に入っていた。

 そのことにラークスパーが疑問を抱いたのだが。

 

「くくく、分からぬか? 鉄鳥の蹴爪よ」

「け、鉄鳥の蹴爪……か、かっこいいですぱ!?」

「そうだろうそうだろう」

 この二人波長が同じなんだなぁ、と傍から見ていたキンギョソウは冷めた視線を向けてそう思った。

 

「遺跡探索と言えば、鉄板の組み合わせが存在する。

 即ち、タンク、ローグ、アタッカー、ウィザード、ヒーラーだ」

 それあんたがいつも会議の時に他の団長とやってるテーブルゲームの作成キャラじゃねえか、とシナリオ作りを手伝わされたことのあるキンギョソウは口から出かかったが我慢した。

 

「なるほど、つまり盾を持って敵の攻撃を集めるタンクがマロニエさん、その素晴らしい妙技で道を開き罠を見破るローグがワルナスビ様、高い攻撃力で敵を粉砕するアタッカーが私、後衛から強力な魔法攻撃を叩き込むウィザードがタチバナさん!! ですが、ヒーラーは居ないですぱよ」

 同じ中二波長を持つ者同士なのか、理解が早いラークスパーだった。

 

「実は医療技術などの持ち主を借りて来ようと思ったのだが、軒並み忙しいようでな」

「忙しいのなら仕方ないですぱね……」

「代わりと言ってはなんだが、我が眷属を貸し出そう。

 アタッカーが二人、しかもハンマー使いで被るが致し方あるまい」

「今なら私、予知で100%命中するパンチを編み出せそう……」

 キンギョソウの握る拳が謎のオーラに満ち溢れている!!

 

「ご歓談するのはよろしいですが、団長殿。

 そろそろ始めてくれませんか?」

「ああ、分かっている」

 タチバナに促され、団長は呪文を詠唱し始めた。

 すると、周囲から無数のコウモリが空中を飛び回り始めた。

 

「行け」

 呪文の完成と同時に、団長が指示を出すと無数のコウモリはマロニエが開けていた遺跡の扉の中へと飛んで行った。

 

「ふむふむ、なるほど」

 そして団長はクリップボードとペンを取り出すと、目を瞑って用紙に何かを書き始めた。

 

「あれは何をやってるの?」

「使い魔と感覚を共有して遺跡の内部の構造を把握しているんだよ」

 ワルナスビの疑問に答え、マロニエは彼の書いている遺跡内部の地図を見やる。

 

「確かそれって、すごく高度な魔法だったような」

「でも、使っている花騎士の人を見たこと無いですぱ」

 感覚が共有できるのなら、偵察などにとても便利だ。

 しかし、ワルナスビもラークスパーも、動物を使役する花騎士でそれをする人物を知らない。

 単に難しい魔法なのかもしれないが。

 

「ああ、それは……」

 それについてマロニエが説明しようとした時、それは起こった。

 

「あッ」

 唐突に、キンギョソウが自分の上司の背を突き飛ばした。

 

「な、何事ですぱ!!」

「大丈夫、団長さん!!」

 思わず駆け寄った二人だが、団長の様子を見てギョッとした。

 

「助かったぞ、我が眷属よ」

 彼は額から、だらだらと血を流していたのだ。

 

「我が使い魔の一匹が犠牲になった。

 内部は害虫のコロニーになっているようだ。感覚の同調を切るのが遅れれば、フィードバックでもっとダメージを負っただろう」

「やっぱり、か」

 ハンカチを取り出し、団長の血を拭いながらマロニエは書き掛けのクリップボードを拾い上げる。

 

「構造的に、避難所のような場所だったのかな。

 この目立たないような外観も迷彩の一種だったんだろうね」

「それが今、害虫の巣窟とは皮肉ですね」

 消毒液を用意しながら、タチバナも己の胸中を吐露する。

 団長が傷を負ったのに誰もそこまで心配していなかった。これも日常茶飯事だと言わんばかりに。

 

「当時の生活の一端が垣間見れば御の字か。

 それじゃあ、行こうか、皆。仕事だ」

「団長さんはこれ以上の魔法の行使は控えてください。

 御二人とも、行きましょう」

 既にハンマーを担いでいるキンギョソウを見やり、あわあわしているワルスパコンビにタチバナは声を掛けた。

 

「団長って、いつもあんな感じなの?」

「今日は運が悪い方だ。とは言え、有用だけどリスクの高い魔法は控えてほしいところだね。

 流石にこちらも心臓に悪い」

 と、マロニエは肩を竦ませ苦笑気味にワルナスビにそう言ったのだった。

 

 団長が書き記した地図のお蔭もあり、害虫の掃討は滞りなく終わった。

 地図が無ければもっと慎重に行動せざるをえなくなり、討伐は長引いただろう。

 

 ワルナスビとラークスパーは、何となくあの癖の強い団長を皆が慕っているのか理解した。

 部下の為にリスクのある魔法を恐れない団長を、何だかんだで信頼しているのだ。

 

「お前たち、ご苦労だった。

 しかし、これを忘れるとはいただけないな」

 五人が討伐を終えて帰ってくると、包帯を巻いてより中二感が増した団長が出迎えた。

 

「なんですぱ、それ?」

 ラークスパーは、団長が忘れ物だという長い棒を見てそう言った。

 

「10フィート棒だ。ダンジョン探索には必須アイテムだというのに!!

 これで10フィート先に罠が無いか調べるのだ。ただ、チューリップ団長の奴はたまに11フィート先に罠を仕掛けるので要注意なのだが……あ、おい、待てお前たち!!」

 団長のどうでもいい話を五人は聞くことなく解散し、野営をしている面々の元に向かって行った。

 

 こうして、彼女らの今日の任務が終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、アニメとかあんまり見ないんですが、最近素晴らしいロリっ子に出会いました。
血小板ちゃん可愛いです。一人のロリコンとしてもっと愛でたいです。

もうすぐ100話になりますが一体何を書きましょうか。
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