大倶利伽羅は、自室で寝ころんでいた。
主の最後の訪問から、1か月が経っている。
毎日のようにしていたダンスの特訓もせず、ただだらだらと日々を送っていた。
長谷部は、本部に毎日アクセスして、主からの連絡を待っているようだが、何の報告もないようである。
(皆が、生きる気すら失ってる…。俺も…)
大倶利伽羅はそう思い、嘆息した。
光忠は、畑作業に没頭しているようだ。「それしかすることがないから」と力なく笑いながら、今日も出て行った。
その時、廊下からあわただしい足音が聞こえた。大倶利伽羅は、体を起こした。
「倶利伽羅!」
長谷部がいきなり障子を開いた。何かを手の上に乗せている。
が、大倶利伽羅はそれには気づかず「主から連絡があったのか!?」と言った。
「いや、とにかくこれを見てくれ!」
そう言われ、大倶利伽羅は初めて、長谷部が差し出した手の上にあるものを見た。
「!?…これは?」
長谷部の手の中には、大倶利伽羅の武装をした小さな付喪神(?)が丸まっていた。すーすーと寝息を立てて眠っている。長谷部が言った。
「ネンドロイド型というやつだ。」
「ねんど…?」
「まぁ、小型の付喪神というのかな。さっき、本部から「刀装兵」の祈願の指示が来たから、祈祷所に行ったんだ。そうしたら、玉ではなく、この子が生まれてきたんだ。」
大倶利伽羅は目を見開いて長谷部を見、再び眠っているネンドロイド型の大倶利伽羅を見た。
長谷部が続けた。
「で、生まれたとたん「先輩はどこ?」って叫んだんだ。」
「先輩?…えっ!?」
大倶利伽羅は目を見開いた。大倶利伽羅の姿をした付喪神が先輩と呼ぶのは…
「…まさか…まさか…前の2代目…」
大倶利伽羅の呟きに、長谷部が微笑んでうなずいた。
………………
…………
……
「なっ!?どうしたんだ!…!!…長谷部!何があったんだ!?」
大倶利伽羅は裸足のまま庭に飛び降り、傷ついた今剣を抱いて走っている長谷部を追いかけた。
長谷部が息を切らしながら答えた。
「第2部隊が、出陣でほぼやられたんだ!手入部屋もいっぱいだから、とりあえず第2部隊の宿舎で俺たちが手当てしないと…」
「大倶利伽羅は!?」
「大倶利伽羅?」
「俺じゃない!2振り目の奴だ!」
大倶利伽羅はそう言いながら、第2部隊の宿舎の玄関を開き、長谷部を先に中に入れさせた。長谷部は軽く会釈をして、また走り出しながら答えた。
「彼は一番重篤な状態なんだが、短刀達を先に手入れさせろって言ってな。部屋で寝かせてる。」
「あいつ独りでかっ!?」
「光忠が行ってる!」
「!よし、俺もそっちにいるから、手入部屋が空いたら呼びに来てくれ!」
「わかった!」
長谷部が、開いたままの障子から部屋に入ったのを見届けてから、大倶利伽羅は反対側に走った。
(俺達の宿舎と同じ作りなら、奥にまだ部屋が…)
そう思いながら走っていると、光忠の声がした。「気を失うな!」と叫び続けている。
その声のする部屋の障子を開け放すと、ぐったりした2代目「大倶利伽羅」の姿が、目に飛び込んできた。
「倶利伽羅!?」
2代目に覆いかぶさるようにしていた光忠が、驚いた表情で大倶利伽羅を見上げた。
「主は、こいつらにどんな出陣に行かせたんだ!!レベルは考えてなかったのか!?」
大倶利伽羅が、光忠にそう怒鳴った。光忠は沈うつな表情で2代目に目を落としながら答えた。
「…短刀たちが、レベルを上げたいと隊長のこの子に懇願したらしい。それで、この子も承諾して、主に頼んだそうだ。主は、何度もだめだと言ったが、結局押し通した。…それで、こんなことに…」
「先輩」
体中血だらけの2代目が、大倶利伽羅をうつろな目で見上げていた。
「先輩?…俺のことか?」
大倶利伽羅は、2代目の横に屈みこんだ。
「馬鹿かお前は!!短刀たちが何を言ったか知らんが、無理な出陣をさせたお前に責任があるんだぞ!」
「倶利伽羅!!今は怒る状況じゃない!」
「わかってる!!」
大倶利伽羅は、光忠にそう言い返してから口をつぐんだ。
2代目の息がかなり荒い。そして…姿が少し消えかかっている。
(…まずい、このままじゃ死んじまう…)
大倶利伽羅と光忠は、同じ事を思っている。どう見ても、助かる様子がない。2代目は何度もまぶたを開こうとするが、限界が来ている。
「だめだ!目を開けろ!!」
大倶利伽羅が、2代目の頬を軽く叩きながら言った。2代目が目を薄く開いた。
「体が治ったら、俺がじきじきに手合わせしてやる!!」
大倶利伽羅のその言葉に、2代目の目が少し見開かれ、口元が少し緩んだ。
光忠が微笑んでいる。
「だっ…だから死ぬな!!気をしっかり持て!!」
「はい」
障子がいきなり開け放たれた。長谷部が息を切らして立っている。
「手入部屋がもうすぐ1つ空くぞ!そいつを今のうちに運んでくれ!」
「!わかった!」
光忠はそう返事をすると、2代目の上半身を起こそうとした。が、大倶利伽羅がそれをさえぎった。
「倶利伽羅?」
「俺が運ぶ!光忠は先に手入部屋に行ってくれ!」
「…よし!」
光忠は何かを悟ったように口元に笑みを見せると、先に立ちあがった。
「2代目君、1代目の手合わせが終わったら、僕の手料理を食べてもらうからね。楽しみにしてるんだよ。」
2代目が光忠を見上げて微笑み「はい」と答えた。光忠は微笑み返すと、すぐに険しい表情を外に向け、走り去った。
大倶利伽羅が2代目の顔を見下ろした。確かに自分より幼い顔をしている。だが、今はそんなことを考えている場合じゃない。
「体を上げるぞ、いいか?」
「はい」
大倶利伽羅が、2代目の背に手を差し入れ、ゆっくりと上半身を上げた。そして、2代目の腕を自分の肩に回そうとした。
「…っ!!」
2代目の顔が痛みに歪む。
「!大丈夫か?!すまない、ゆっくりと動かすぞ。」
2代目はうなずいた。返事をするのも辛い様子である。大倶利伽羅は、2代目の頭を自分の肩にもたれさせ、両膝の下にも反対の腕を差し入れると、ゆっくりと立ち上がった。
(体がかなり冷たい…。それに軽すぎる。)
2代目の姿が消えかかっている。大倶利伽羅が1歩踏み出したとき、耳元で「先輩」というささやき声がした。
「今しゃべるな!後で聞く!」
大倶利伽羅がそう怒鳴りつけると、閉じていた2代目の目が少し開いた。
「…暖かい…」
2代目はそう呟くと、再び目を閉じた。そして、体中の力が抜けた。
「!?」
2代目の体は、大倶利伽羅の腕の中で、ダイアモンドダストのように儚く散り、消えた。
……
…………
………………
長谷部が、眠っているネンドロイド型の大倶利伽羅を見ながら続けた。
「「先輩」と何度も連呼して、いきなりこてんと倒れたから驚いたんだが、そのまま眠っていた。」
大倶利伽羅は、微笑む長谷部から両手で小さな大倶利伽羅を受けた。
小さな大倶利伽羅は、その揺れで目を覚ました。
「…!…」
大倶利伽羅は、黙って小さな大倶利伽羅を見つめている。小さな大倶利伽羅は大倶利伽羅を見、目を大きく見開いた。
「せんぱいっ!」
そう叫んで、その場で跳ね始めた。
「お前…前の2代目か?」
大倶利伽羅が震える声でそう尋ねた。小さな大倶利伽羅は、こくこくと何度もうなずいてから言った。
「いっぱいいっぱい、ちゅぎょうちて…やっと…やっとね…ここまで、おおきくなれたの!」
「お前…」
大倶利伽羅の目から涙が零れ落ちた。そして、何も言葉が出ないまま、小さな大倶利伽羅を額にくっつけるようにした。
小さな大倶利伽羅は、その額に両手を当て、頬をこすりつけた。
「…せんぱい…」
大倶利伽羅が、嗚咽をもらしながら泣いた。それを見ていた長谷部も、零れ落ちた涙をそっと指で祓いながら微笑んだ。
……
大倶利伽羅と長谷部はあぐらを掻いて座り、前できちんと正座している小さな大倶利伽羅の話すことを聞いていた。
「ぼく…ずっと「キリ」だったの」
「霧?」
「うん。ずっと、このほんまるのなかをただよっていたけど、だれもきじゅいてくれなくて…」
小さな大倶利伽羅は、そう言ってうなだれた。
「すまなかったな…。」
大倶利伽羅が涙ぐみながら言った。小さな大倶利伽羅は首を振った。
「ううん!みんながしゅごく、かなしんでくれてるのをみるのが、ちゅらかっただけなの。…そして「みちゅただ」が、ぼくをうまれかわらせようって、はなちちてるのをきいて…ぼくも、うまれかわれるとおもってたんだけど…。」
小さな大倶利伽羅は、またうなだれた。
「うまれかわれなかった…ぼくじゃないこがうまれてしまって…」
大倶利伽羅が目を伏せた。長谷部もうつむいた。
「でも…ぼくのかわりに、うまれたこも、かわいちょうだった…。ぼくのちゅらいきおくだけがのこってて…とっても、くるちんでだ。ねてるときとか、ときどき、とびおきたりも、ちてた。」
「!?…あいつが…」
大倶利伽羅は、そう言って絶句した。後の2代目は、自分には全くそんな様子を見せていなかったからだ。長谷部が眉を曇らせた。小さな大倶利伽羅が続けた。
「でね。ぼく、…ぼくのかわりにうまれたこと、3だいめと、4だいめがウィルスとたたかってきえたとき、さいごまでついていったの。」
「えっ!?あいつらの最期を見たのかっ!?」
大倶利伽羅が思わず声を上げた。長谷部も思わず身を乗り出した。
小さな大倶利伽羅は、こくんとうなずいた。
「ぼくは、きりのようにじゆうじざいにかたちをかえられるから、ついていけたの。」
「教えてくれ!あいつらの最期を知りたい!」
大倶利伽羅は、目に涙を溜めて言った。小さな大倶利伽羅が、うなずいた。
「ちょのために、いっぱいちゅぎょうちたの。あのね。」
小さな大倶利伽羅が、話し出した。
………………
…………
……
2代目、3代目、4代目「大倶利伽羅」3人が、鍛刀部屋の炉の前に立っている。
…しばらくして、轟音と共に、炉から炎が上がった。
「!行くぞ!」
2代目は、顔だけを後ろに向け「さよなら皆」と呟いてから、炎に飛び込んだ。3代目は、背を向けたまま「さよなら」と呟き、続いて飛び込む。そして4代目は「皆の幸せを」と呟いて、飛び込んだ。
…炉の炎が消え、静寂が訪れた。
……
3人は、ゆっくりと目を開いた。
暗闇が広がっている。ただ、3人の体から発するオーラのおかげで、お互いの顔は見えた。
「なんだ。あっさりしたもんだな。」
3代目が、辺りを見渡して言った。
「鍛刀の時の方が、劇的だったな。」
2代目が苦笑しながら言った。「確かに」と4代目が笑った。
すると、1本の道が現れた。2代目が苦笑した。
「向こうから、お誘いだ。」
「しゃくだが、闇雲に歩くのも無駄だしな。」
「行こう。」
2代目が、歩き出した。3代目、4代目が続く。
…3人は、暗闇を歩き続けている。3代目が、不思議そうに言った。
「すぐに襲われると思ったが、えらい静かだな。」
「こっちの様子を、伺ってるんじゃないか?」
2代目がそう答えてから、思い出したように言った。
「そういや、3代目。さっき、腰布がどうのこうのって言ってなかった?」
「ああ、前の出陣で破られてさ。それ直してなかったなって思って…」
「そのままか?」
「いや、あのビデオを撮った後に、4代目に直してもらった。」
2代目が、4代目の顔を驚いて見ながら言った。
「女子力たかーい」
普段どおりの2人の会話に、4代目が苦笑した。
「あ、そう言えば4代目。さっき3人で撮った写真、主に送ったのか?」
3代目が、隣を歩く4代目に尋ねた。
「ああ、送ったには送ったが、すぐに見られたら困るから、1日遅れて届くようにしておいた。」
「おー」
4代目の答えに、2代目3代目が感心した声を上げた。3代目が言った。
「あれ、いい写真だ。」
「うん。」
「4代目のあんな笑顔見るの、最初で最後だよな。」
「やめてよ。恥ずかしい。」
4代目がそう言って、うつむいた。
…2代目が、立ち止まった。
3、4代目も立ち止まって、2代目の前を見た。
「…!…」
道が3本に分かれている。暗闇の中で、道だけが輝いて見えた。
「…ここからは、1人で来いって事か。」
2代目が、低い声で言った。
…3人は沈黙した。
「共に戦って死にたかったが、向こうが許さないようだ。」
2代目がそう言い、2人に振り返った。3代目が、苦笑しながら言った。
「結局、独りで戦って、独りで死ぬのか。」
「大倶利伽羅の宿命だな。」
4代目のその言葉に、2代目が「そういうことだ」と笑った。
「ここでお別れだ。」
2代目がそう言うと、3人は誰からともなく、肩を組み合い円陣を組んだ。お互いの頭を合わせ、目を閉じる。
2代目が、口を開いた。
「お前達に出会えた事を、幸せに思う。」
「……」
「今まで、本当にありがとう。」
3代目が嗚咽をもらした。涙がとめどなく流れている。
「お前、泣きすぎ。」
2代目が、少しくだけた口調で言った。3代目は、嗚咽を抑えようともせずに言った。
「…こんなに…別れが…つらいだなんて…思って…なかった…」
円陣を組んだまま、2代目と4代目の手が3代目の頭を撫でる。2代目は、4代目の頭にも手を乗せた。
4代目の閉じた目からも、涙が溢れ出ている。
「「大倶利伽羅」の名に恥じないよう、最期まで戦い、潔く散ろう。」
2代目のその言葉に、2人は小さくうなずいた。
3人は、同時に言った。
「さよなら、永遠に。」
……
…………
………………
大倶利伽羅は、肩を震わせてうつむき泣いていた。長谷部も流れる涙を払うことなく、ただうつむいて黙っている。
小さな大倶利伽羅は、しばらく黙ってそんな2人を見ていたが、やがて口を開いた。
「まだ…ちゅぢゅきがあるの。きいて。」
大倶利伽羅と長谷部は、目を見開いて小さな大倶利伽羅を見た。
「続き?」
小さな大倶利伽羅がうなずいた。
「そのあと、3にんともちがうみちを、しゅしゅんでいったから、ぼくもからだをわけて、ちゅいていったの。」
大倶利伽羅達は目を見開いて、小さな大倶利伽羅を見つめている。
「…みんな、しゅごかった…。くろいキリみたいなのに、からだをいっぱいきじゅちゅけられてるのに、たたかってたたかって、まえへいくの。たおれても、しゅぐにおきあがって、まえへまえへといっちゃうの…。」
大倶利伽羅が、辛そうに目に手を当てた。その肩に、長谷部が手を乗せる。
「ぼくもたすけてあげたかった…でも、なんのちからもなかったの…。くろいきりにすら、ふれることができなかった…。ただ…3にんがきじゅちゅきながらすすんでいくのを、みてるしかできなかったの…。」
小さな大倶利伽羅はそこまで言って、さっと涙を払った。
「…そしたら…まえから、ひかりがさしこんできて…。」
その言葉に、大倶利伽羅と長谷部が顔を上げた。
「しゅごく、ちゅよいきれいなひかりだった…。くろいきりは、ひかりがさしたとたん、きえていって…3にんが、みんなうれしそうにして、そのひかりにむかって、てをさしだしてた。そしたらね…」
大倶利伽羅が、身を乗り出した。
「みんなキリのようになったんだけど…そのひかりのむこうへでていったの。」
「!?出て行った!?」
「うん。ぼくも、ついていこうとしたんだけど、ぼくはかべみたいなのにはじかれて、いけなかった。きがついたら、ここにもどされてたんだ。」
それを聞いた大倶利伽羅が、長谷部に向いて言った。
「…主の言うことは、本当だったんだ…」
長谷部が、うなずいた。
「あいつらも、きっと現世で生きてる。」
大倶利伽羅もうなずいて、小さな大倶利伽羅を両手で抱き(?)上げた。
「ありがとう。2代目。よく、教えてくれた。」
その大倶利伽羅の言葉に、小さな大倶利伽羅は不服そうな表情をした。
「ぼく、2だいめだけど、2だいめじゃないよ。」
「え?」
「せんぱい。ぼくになまえつけて。2だいめは、あのこだけ。ぼくは、ちがうなまえがいい。」
大倶利伽羅は「そういや、そうだな」と呟いて、困惑した表情を見せた。
「違う名前か…どうすりゃいいのかな…」
そう言って長谷部に向くが、長谷部も苦笑しながら首をかしげた。
小さな大倶利伽羅は、わくわくしながら、大倶利伽羅を見つめている。
「せんぱい!はやく!ぼくのなまえ、なんてなまえ?」
「えっと、ちょっと待ってくれよ。えー?どうしたらいいんだー?」
大倶利伽羅は、小さな大倶利伽羅を両手に捧げるように持ったまま、顔を伏せたが…
「そうだっ!!」
と突然、顔を上げて言った。
「おまえは「廣光」だ!」
「!「ひろみちゅ」?」
「そうだよ!俺たちがつけてもらえなかった銘を、お前が名乗れ。」
長谷部が微笑んで「そりゃいい」と言い、小さな大倶利伽羅「廣光」を見た。
「ぼく、ひろみちゅ!」
小さな大倶利伽羅…いや「廣光」は、大倶利伽羅の上で飛び跳ねた。
「わーい!ぼくひろみちゅ!」
喜んでその場を回りながら飛び跳ねる「廣光」を見て、大倶利伽羅が笑った。
そして、長谷部と笑顔を見合わせた。
……
「みちゅただ!」
畑仕事をしていた光忠は、その声に「え?」と振り返った。
「?」
大倶利伽羅と長谷部が立っているが、それ以外に誰もいない。
「?今の声誰だい?」
光忠が、あたりを見渡しながら言った。
「みちゅただ、ぼくここ!」
「???」
大倶利伽羅が笑いながら、自分の右肩を指さした。
何かが飛び跳ねている。
「えっ!?」
光忠は大倶利伽羅に近づいて、廣光を凝視した。
「!?」
「ぼく、ひろみちゅっ!」
「ひろみちゅ?」
「廣光だよ。」
大倶利伽羅が吹き出して、笑いながら言った。
「前の2代目だ。死んでから修行して、やっとここまで大きくなれたんだって。」
「!!…前の…!?」
光忠は目を見開いて大倶利伽羅を見、そして廣光を見た。
「…君…」
光忠の目から、大粒の涙が零れ落ちた。
「みちゅただ!!」
廣光は光忠の肩に飛び移り、頬ずりした。
「…君…生まれ変われたのか…良かった…」
光忠が涙声で言った。そして、廣光の体を包み込むようにして抱き、自分の頬にこすりつけるようにした。廣光がくすぐったそうに笑った。
「…主はまだ戻ってこられないが…これで皆、元気になれそうだな。」
長谷部のその呟きに、大倶利伽羅がうなずいて答えた。
「ああ。廣光に会えば、短刀達も元気になるだろう。」
そう言って、再びあふれた涙を払った。
……
小さな大倶利伽羅「廣光」が特別に作られた台の上で、短刀達に囲まれて「好き!雪!本気マジック」を楽しそうに踊っている。
廣光が、あまりにはしゃいで動き回るので台から落ちたが、体にくくられたゴムの命綱で「ぼよんぼよん」とぶら下がる。
横で踊っていた「薬研藤四郎」がそれに気づき、笑いながらその廣光を両手で体を受けて、そっと台に乗せる。廣光は「ごめんごめん」というように、薬研に両手を合わせてから、また踊り出すが、今度は反対側に落ちてしまう。
横で踊っていた「乱藤四郎」がそれに気づいて、こちらも笑いながら両手で廣光の体を支えて、台に乗せる。
廣光、乱にも両手を合わせて「ごめんごめん」と謝ってから踊り出す。
短刀達、踊っているが廣光がまた落ちないかハラハラしながら踊っている様子。
その後も廣光は何度も落ちるが、その度に短刀達に助けられて踊り続ける。
…やっと曲が終わり、皆が最後のポーズを取った。
画面の後ろから拍手が起こるが、笑い声も起こっている。
カメラがくるりと反転し、椅子に並んで座っている第1部隊の「大倶利伽羅」を除いた4人が拍手しながら笑っている姿が映る。獅子王は、体を折り曲げて下を向いて体を震わせ、石切丸が笑いすぎたのか、涙を払っている。
長谷部も(この男に珍しく)満面の笑顔で、腹のあたりを押さえている。光忠がいない。
画面が、再び廣光と短刀達の方を向く。光忠が、台の上にいる廣光の頭を撫でている。
カメラを持っているらしい「大倶利伽羅」が、笑いながら言う声がする。
「廣光、はりきりすぎだ!命綱がなかったら、どうなってるんだよお前!」
台の上にいる廣光が、ふてくされている。
「だって、たのちいんだもん!いっぱいおどりたいんだもん!」
「もっと、台を広くしたらどうだ?」
長谷部の声がする。カメラが第1部隊の方へ向く。大倶利伽羅の声。
「そうだと、短刀達を映すのに、もっと後ろへ下がらなきゃならなくなるからな。」
「皆が小さく映っちゃうってことか。」
長谷部がそう言い、考え込む様子。獅子王と石切丸が立ち上がり、画面から外れる。廣光の所へ行っているようだ。
「あー!うちにも「ドローン」欲しいなぁ!あれがあったら、四方八方から撮れるのに!」
大倶利伽羅の声に「そりゃ無理だよ」と、長谷部が苦笑しながら言う。
「ねぇ!ちがうきょく、れんしゅうしよ!ぼく、もっとおどりたい!!」
その廣光の声に、画面が廣光の方を向く。第1部隊と短刀達に囲まれて、廣光が台の上でぴょんぴょん飛び跳ねている。
長谷部の声がする。
「カメラ、変わるよ。お前も映れ。」
「え?」
「いつか、主に見せる日が来るだろう。お前も映っとけ。」
「ん。ありがとう。早く、三脚直さなきゃなぁ…。」
画面が少し揺れ、大倶利伽羅が画面の端から現れて、画面に向かってピースする。
「次は、何の曲がいいんだ?廣光」
光忠が、廣光に尋ねている。
廣光が台の上で、ぴょんぴょん跳ねながら答えた。
「えっとね。また、いっぱいいっぱいたのしいきょくがいい!」
「お前が、台から落ちまくるような曲だな。」
大倶利伽羅の言葉に、短刀達と第1部隊の全員が笑った。
それを映しながら、長谷部の声がする。
「主、新しい仲間もできて、皆元気です。少しでも早く、主と会える日が来ますように…。」
その時、廣光が何を言ったのか、第1部隊、短刀達全員が大爆笑する姿が映る。
-FIN-
挿入曲「好き!雪!本気マジック」by Mitchie M様
……
-妄想CAST-
廣光(ネンドロイド型大倶利伽羅)「いと様」式
大倶利伽羅「ku-ya様」式
へし切長谷部「XAIN様」式
燭台切光忠「SAM様」式
獅子王「るか様」式
石切丸「帽子屋様」式
乱藤四郎「なかむら様」式
薬研藤四郎「ぱぴこ様」式
今剣「ゆるん様」式
五虎退「カクタス様」式
前田藤四郎「2PC様」式
平野藤四郎「2PC様」式
(特別出演)
2代目 大倶利伽羅(前、後共)「ES様」式
3代目 大倶利伽羅「RIRAKO様」式
4代目 大倶利伽羅「ミズタ様」式
Back Music「君じゃなきゃだめみたい」by オーイシマサヨシ様
……
<あとがき&懺悔>
今回は短いものでしたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
「大倶利伽羅ラプソディ」第1章「第2部隊」で殉職した、前の2代目の再登場です。ネンドロイド型にしちゃいましてごめんなさいなんですが、可愛いでしょ?ねっねっ!(押しつけ(--;))
すぐに死なせた割には回想シーンもなく「審神者悲しみの本丸に行く」でも触れることができず、ちょっと申し訳なかったので、新たに登場してもらうことにしました。
今後ももちろん、出ていただきますよっ!
廣光君達に踊ってもらった「好き!雪!本気マジック」は、知る人ぞ知るボーカロイド「初音ミク」ちゃんが歌う明るい歌です。「廣光」君が小さな子供になっちゃったので、歌詞の「子供でいられたら Dream Land いいじゃん!」にかけました(^^;)
そして、Back Musicの「君じゃなきゃだめみたい」は、次に廣光君が踊る予定の曲です(笑)また、はりきって、台から落ちまくってもらいましょう(爆)
…ってか、主との再会のお話がっ…どうすればいいのか…うーいろいろ思いついているんですが、収集付かない状況です。お待ちいただいている方いらっしゃいましたら、ごめんなさいです。
では、またお会いできます日までー!(いつになるんだぁぁぁぁ???)
立花祐子