骸骨と得体の知れない何か   作:クリマタクト

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第3話

俺たちは、指輪の力で闘技場の端っこの方に転移をした。

周りは、仲間が作ってくれたものと何一つ変わらないもので、すこし誇らしくなった。

 

「とりあえず、私がMOBを何か召喚して、それを的にしましょうか?」

「そうですね、俺のはだいぶMP使っちゃうからそっちのがいいですね」

「あっ!モモンガ様にパルパル様!」

 

実験に使う的の話をしていると、観客席から一人のダークエルフの子供アウラが飛び降りて、こちらに向かってくる。

 

「ようこそ、第六階層へ!」

「うむ、邪魔をするぞ、アウラ」

「邪魔なんてとんでもございません。どうぞ気の済むまでゆっくりして行ってください」

 

アウラは深く礼をしながら、子供なりに歓迎の意を示す。

俺はアウラの姉弟である、マーレがいない事に気づく。

 

「アウラ、マーレはどこに行ったんですか?」

「あっ」

 

アウラはすこし不味いと言ったような表情を、こちらになるべく見せないように、隠しつつ観客席に向かい大声を出す。

 

「マーレ!モモンガ様とパルパル様が来てるんだよ!早く降りて来なさい!!」

「こ、怖くて降りれないよう」

「はーやーくーおーりーなーさーい!!」

「うぅ、えい!」

 

マーレは、姉のアウラに急かされて、飛び降りる。

その後、走ってこちらまで来た。

 

「よ、ようこそ、モモンガ様、パルパル様」

「うむ」

「えぇ」

 

マーレは、すこし短めのスカートを整えた後、深く礼をした。

そう、スカートを整えた後、だ。

 

この双子の生みの親は、リアルでは、売れっ子エロゲ声優で、弟のペロロンチーノとともにこのギルドに所属していた、ぶくぶく茶釜さんだ。

茶釜さんいわく、姉のアウラは「こんな可愛い妹が欲しかった。弟いらね(ペッ」だそうだ。マーレのコンセプトは聞いても答えてくれなかったが、まあそういう事だろう。

だが、姉のアウラにボーイッシュな衣装。弟のアウラにはガーリーないわゆる男の娘衣装を着させているあたり、自分の趣味を全乗せしているのだろう。

 

「ここで、すこし魔法の実験をしたい」

「そうでしたか、でしたら的をご用意しましょうか?」

「いや、的は自分でアンデットを作成するから問題はない。だが一つやってもらいたい事がある」

「何なりとお申し付けください」

「これから二時間後に、ビクティム、ガルガンチュアを除いた階層守護者全員にここに集合するように伝えてくれ」

「はい!」

 

アウラはマーレを連れて、邪魔にならないようにか、端っこの方に移動をして行った。

終始マーレがおどおどしていたのは見ていて可愛かった。いかん、俺は男だぞ?

 

「だが、この体なら人間じゃないからいけるんじゃないか?」

 

この体には、いちおう生殖器らしき物は、認識ができる。

そして、この体のモチーフになっているであろう、イカもタコも卵を作るタイプ。すなわち、誰が相手だろうとも問題はないのではないだろうか?

これは、ペロロンチーノさんが言っていた「触手 is god」を自分で実践する日がきたのではないだろうか?

 

――一つ正しておくが、タコもイカも確かに卵で子供を産むタイプだが、そもそも同じ種族でなければ卵が作り出されない。当たり前だ。いくらファンタジーとはいえ、某ゲーム界の触手先輩みたいな便利さが最初から備わっている生物は存在しないだろう。

つまり何が言いたいかというと、こいつの考えている事は、かなり的外れでアホな考えという事である。

 

「何言ってるんですか?パルパルさん」

「はっ!?いかんいかん、わが計画が口に出てしまったか」

「全く、いくら可愛いとはいえ、ギルメンで作った存在。言わば自分たちの子供のような存在ですよ?さすがにアウトですよ?」

「うっ、だよなぁ〜」

 

まあ実際そうだ。みんなが作り上げたNPCとプロレスごっこをするなんて、流石にない。やはり、外の安全を知ることがこれからの目標になるだろう。このフォルムチェンジした息子を使う機会を得るためには。

 

「やれやれ、もういいですか?そろそろ実験に移りたいんですけど?」

「あっ、はい。お先にどうぞ」

「はいはい、じゃあ《中位アンデッド創造/デス・ナイト》」

 

モモンガさんが唱えると、俺たちの目の前に一体のアンデッドが召喚された。

デス・ナイトは、どんな攻撃でも、HPが1だけ残るという肉盾として優秀な能力を持っていて、魔法詠唱者(マジック・キャスター)のモモンガさんには切り離す事のできないべんりな盾だ。

 

「じゃあまずは、《グラビティメイルシュトローム/重力渦》!」

 

モモンガさんの手から渦巻いている、手のひらサイズの玉が生み出され、デス・ナイト目掛けて投げられた。

 

「グオォオオオオオオオ!!」

「あっ、やっぱり同士討ち(フレンドリー・ファイア)はONになってるんだ」

「まさしく『異世界』にきた。そういう感じですね」

「ですねぇ、私はこんなんでいいでしょう。感覚的にできる気もするし」

「あっ、いいんですか?じゃあ《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚》つかってくれませんか?召喚系のテストしたいんで」

 

そういうと、モモンガさんはすこし悩んだ。

 

「あれ、1日に一回しか使えないんですけど?」

「まぁいいじゃないですか、別に使えなくても、俺がその代わりの奴ら出しますから」

「むぅ、まぁいいですよ。《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚》!!」

 

モモンガさんが唱えると、デス・ナイトを中心として、熱波の竜巻が発生する。その勢いはとても強く、耐性の持っていない俺には針の先で突かれたような痛みの感覚が、生まれる。

だが、次第にその勢いも治まっていき、竜巻の中心から人の上半身を象った炎が現れた。

根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)、元素精霊の中では最上位の位置付けに存在し、レベルも80という高ランクだ。経験値消費無しに出せるモンスターの中では指折りの存在だ。

アウラは、こいつを見て遊びたいとでも言うような視線を向けているが、悪いな、今日は俺がこいつを使うんだ。

 

俺はモモンガさんとは真反対の位置に行き、目の前から根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)を見据える。

見ていると、炎が段々と強くなっていった。これはこいつ特有の威嚇行動なのだろうか?

しかしモモンガさんからの指示がないからか、その程度しかして来ない

 

「《サモン:ナイト/召喚:兵士》、《サモン:アサシン/召喚:暗殺者》、《サモン:ヒーラー/召喚:神官》、《マス・ターゲティング・エネルギーインフェルニティ・ファイヤー/集団目標、火属性無効化》、これでいいだろう」

 

俺の目の前には、俺の呼び出した、白銀の鎧を着て一本の長剣を持つ兵士、革鎧を着てナイフを構えた黒髪の女性、白い祭服を着て木製の杖を片手に持った女性、その3人が現れる。

その中の兵士が、代表するように一歩前に出たあと、3人同時に跪く。

 

「我らの主人、パルパル様。この度はどのようなご用件でございましょうか?」

 

兵士は、顔を下に向けたまま問いかけてくる。

今までなら、完全にどもって何も言えなかっただろうが、玉座の間でもうそんなのは慣れた!

 

「すこし、戦闘の実験に付き合ってもらい、あのデカ物を一緒に倒してもらいます。いいですね?」

「はっ!パルパル様と共に戦場を再び駆け巡ることが出来るとは、光栄の至り。了解しました、我らシモベ一同、パルパル様の名の恥じない戦いを御身に捧げましょう」

 

3人は一層、頭を深く下げた後立ち上がり、各々のポジションにわかれる。

相手の目の前には、兵士が入り、相手と俺の中間には暗殺者が入り、そして神官は俺の隣に立っていた!

 

「よろしいですか皆さん?」

「はっ!問題ありません!!」

「よし、ならば始めよう。行け根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)よ、我が友パルパルを攻撃せよ!」

「ガアアァァ!!」

「総員戦闘態勢!対象推定80!炎の遠距離攻撃に注意!!」

「了解!!」

 

根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)は、咆哮と共に、兵士に向かい、灼熱の拳を振り下ろす。

 

「はあ!!」

 

兵士はそれを紙一重で避けながら、腕を断つ。

しかし切ったはずの腕は、すぐにその場で繋がり、横薙ぎに兵士をなぎ払おうとし、――頭を後ろから撃ち抜かれた。

 

「甘いんですよ、兵士!目くらまし程度だから、さっさと全線復帰!」

「悪い!特殊技能(スキル)!鬼神発動!!」

 

そう言うと、兵士の腕はみるみると膨れ上がり、先ほどまでの倍の太さになっていた。

頭が修復された、根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)は再び目の前の邪魔者を潰すべく、拳を振り上げるが、その拳は役目を果たすことなく、破壊された。

 

特殊技能(スキル)盗賊の勘発動、《パーフェクト・アンノアブル/完全不可視可》発動」

 

空中に一瞬だけ、暗殺者の姿が映ったが、次の瞬間には消える。

探知魔法すらも無効化する、完全不可視の前には、目を右往左往させるしかない。

そしてその隙に。再び兵士が、前に駆け出す。

 

「《マキシマイズ・マジック・グレーターフルポテンシャル/最強化・上位全能力強化》」

特殊技能(スキル)鬼神連撃発動!」

 

能力強化をされたことにより、駆け抜ける速度が速くなったが、根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)は弱点を突かない限りは、ダメージが何割かカットされてしまう。

それは鬼神連撃で、連続攻撃でのダメージボーナスを得ようともだ。

 

「はああぁぁぁぁぁ!!」

 

兵士はまさに鬼神のような連撃を、精霊に与える。

その、一撃一撃が、モモンガさんや俺のような紙装甲なら3割は持ってかれる攻撃だ。

しかし、相手は全く動じない。いくら強い攻撃の連続だろうと、デメリットでクリティカルの発生しない攻撃には、直接攻撃に対して耐性を持つこいつには、そこまで効く攻撃じゃないのだろう。

精霊は、先ほどよりは緩慢になったが、それでも力強く、そして全力で兵士に向かい殴りかかる。

だが兵士は動かない。いや動く必要がなかった。

 

「――特殊技能(スキル)盗賊の毒牙、暗殺者の目、発動。死ね」

 

根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)の振り下ろした腕は、当たる直前に解体され、そして体と頭の中心には一本のナイフは突き刺さっていた。

 

勝負はついた。

根源の火の精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)はそのまま消えていく。

そして、その後3人は再び俺の前に跪き、兵士が話す。

 

「ご満足いただけたでしょうか?」

「ええ、なかなかに素晴らしい戦いぶりでしたよ」

 

その返答に、3人は雰囲気が明るくなったのを感じる。

 

「有難うございます。では、私たちはこれで失礼いたします。偉大なる創造主のご尊顔をお見えになれて光栄の至りでした」

 

そう言い残すと、3人はその場で沈んでいくように消えていった。

そして消えたと一緒に、頭の中でクールタイムが、後どれくらいか認識できるようになった。

この世界でも問題はなさそうだが、一つだけ課題がある。いや、できた。

 

「あいつら、こんなに優秀だったの?てか怖いよ、あそこまで敬われると」

 

上位者としての、振る舞いを考えよう。

 




踏んだり蹴ったりのデス・ナイトさん
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