FAIRY TAIL ~ 傍観する死者 ~   作:β×ψ=√

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変わる物語

 

 

 超軍事魔法帝国《アルバレス》。から離れた街の一つに、薄汚れたような外套に身に纏う一人の男と兵士の二人がそこにいた。

 

「……ゴホッごほ。……ふぃ~この街もいいとこだ~。とても静かで集中しやすいものじゃ~ねぇの~」

 

「…………は、はぁ」

 

「もっと盛り上がっていこ~じゃねぇ~の」

 

 陽気に黒い鎧甲冑を身に纏う兵士。このアルバレス帝国の兵士であることを示すものとして、立派にこしらえてある鎧を着ているこの兵士だが、今日この兵士に課せられた命令は単純なもの。

 アルバレス帝国の偉大なる〝スプリガン〟皇帝陛下を守護しているとされる《大魔導士》たる十二人の一人である、()()()()()()様の護衛、となっている。

 だが、たかだか一兵士の分際でもあるこの兵士は【大魔導士】たるナインハルト様を護衛できるのか、と問われれば強く反論はできない。

 それなのに何故自分にお声をかけてくださったのか理解できないでいた。

 その兵士の様子を見て、()()()()()()は言った。

 

「君はさぁ~。(ナインハルト)を見たことあるのかい?」

 

「は、はっ? それはどういう……?」

 

 質問の意図が分からないでいる兵士に、()()()()()()は頭まで被っていたフードを取った。

 

「この顔を、見たことあるのかな~、と思ってね~。だってさ~、そんなに簡単にさ、兵士たち諸君と話せる機会なんてそうないじゃない? だから見たことあるのかな~ってね」

 

 言われてみれば確かにと、兵士は皇帝陛下を御守りしているこの方々【大魔導士】たる《スプリガン12(トゥエルブ)》のお歴々にはそう会えるものではなかった。

 こうしてナインハルトに会えるのも、兵士は稀なんだという。

 

「噂とか色々とあるんでしょ~? インベルさんは鉄の規律ともいえるくらい規則にうるさいやら、アジィールは喧しいやら、ブランディッシュちゃんやディマリアちゃんとは超可愛いくてヤバいとか、……いや本当に可愛いくて可愛いくてもう内なる獣の部分と変態の塊が段々と融合を果たしていくのに対しとても抑えること厳しいとかね~?」

 

「後半ちょっとおかしいですね」

 

「まぁ君を呼んだのは、城歩いてたら手頃なところに一人で居たからちょっとき来てよ~って言っただけだからさぁ~。そんなに深い意味は無いんだよね~」

 

 そうナインハルトが言うと否や、兵士に持って来させていた沢山の荷物に手を伸ばすと、手早くそれを広げていってみせた。

 

「面倒だ。君を呼んだもう一つの理由はこれだ、うん。ちょっとこのバーベキューセット広げてくれ」

 

「いや一体何したいんですか!? この街でなにかするのでは!?」

 

「えっ、この無人街(ゴーストタウン)で何しろって? 静かなところと言えばバーベキューでしょ? 私いやなんだよね、がやがやしてる場所でバーベキューするの……うん」

 

 何度でも言うが、このナインハルトと呼ばれる男は、偉大なる皇帝陛下を守護するとされている【大魔導士】様の御一人。

 何か重大な任務があるのかと緊張して来てみれば、バーベキューセットを広げることになるなんて誰が予測できよう。

 

「首都では皇帝陛下が一年ぶりにお帰りになられたというのに、何をしてるんですかナインハルト様!」

 

「ナインハルト~燃えそうな木をマリンが拾ってきた~」

 

「ひぃ~不合格不合格~! ブランディッシュ様ひどいです~……でも美しいから合格!」

 

「キモイ」

 

 兵士は固まってしまった。

 薄々は『あれ、何かとてつもないバカみてぇな魔力近寄ってんな~でも別にナインハルト様居るからいいか~』なんてバカみたいな考えをしていたなんて今更ながら残念過ぎた。

 アルバレス帝国軍の最強の【大魔導士】たちの御一人でおられる《スプリガン12(トゥエルブ)》のブランディッシュ・μ(ミュー)がそこに居た。ついでにブランディッシュ隊のマリン・ホーロウまでいる。

 

「うん? ぬぬ!? そこに居るのはァ! 愚者の道化師(オーギュスト)じゃねぇか!? ひ、ひィ」

 

「えっ、なに、そんなオサレな二つ名なんてあったの?」

 

 そのナインハルトに連れて来られた兵士、『愚者の道化師(オーギュスト)』と呼ばれた兵士は顔まで隠していた兜から覗かせる隙間から、なんとも疲れたような溜め息を吐き出した。

 まだマリンがブランディッシュ隊に配属されるまで軍隊で一緒だった奴に会ったような感覚になるが、ナインハルトもまさか偶然通りかかった兵士が名の知れた者だったとは知らなかった様子。

 

「なるほど………じゃあオーギュストは長いからオーちゃんにしようか」

 

「『じゃあ』じゃありませんよ! 名前がオーギュストってだけで、ふざけた同期から『愚者の道化師』なんて呼ばれるようになっただけです! 何か特出したものもありせんよ!」

 

 女の前だと変な腰の低い口調な性格となるマリンだが、魔力量や『〝空間〟系魔法の制御(コントロール)』など恐ろしく便利な魔法使い。今や立場はオーギュストより、マリンの方が上なのだが、

 

「ヒ、ヒヒィ~、ぐぐぐぐ」

 

 と何故か冷や汗を垂らして両手一杯にある枯れ木をギュッと抱いて後退りする。

 

「マリン、早く火を起こして。バーベキューが始まらないわ」

 

「おっふ♡ わっかりましたーブランディッシュ様~」

 

 などと親愛なる上司の一言により、マリンはすぐに自慢の空間魔法を使って、様々な道具などを設置させていく。そしてあっという間に、無人街であった広場に軽くキャンプ場のように様変わりした。

 

「……ブランディッシュ様……不躾ながらご質問をしてもよろしいでしょうか」

 

「なによ、キモイわね」

 

 グサッ! と心に効く鋭利ある言葉が刺さる。美女に言われるとこれほど酷いものなのかとオーギュストは戦慄する。

 だが、気になることを聞かなければならない。

 

「な、なぜブランディッシュ様までここに? 今日は、その、皇帝陛下の……」

 

「お昼がまだだったから」

 

「それだけ!?」

 

「そうよ、キモイわね」

 

 カチャカチャと鎧が震える。

 こうまて自由なのか《スプリガン12(トゥエルブ)》。

 

「他にも確認したいことはあるわよ」

 

 しかし、その言葉を聞き逃さなかった。

 

「……()()()()()()のことでね」

 

 マリンが執事よろしく完璧なブランディッシュ様のゆったりまったりスペースを『空間』から物を引き出して作り出すと、そこにブランディッシュはその豊満な胸を揺らしながら悠然と座る。マリンに労いの言葉も向けないが、マリンはニコニコしながらバーベキューセットを広げていく。

 

「あれ、あれあれ? ちょっとマリンくん? どーしてこっちはノータッチ? あれあれ? 盲目なの?」

 

「…………ブランディッシュ様~♪ 第一陣のお肉様はもうすぐ焼けますからね~」

 

「ん」

 

「うわ~盲目だ~。恋は盲目だ~」

 

 《スプリガン12(トゥエルブ)》でもあろうお方でもあるナインハルトのバーベキューセットは一切手を出してないことに気付き、それを指摘するも、なんと無視してブランディッシュのみにニコニコしていた。

 力の差で言えば完全にナインハルトの方が上であるのは間違いないのだが、それでも貫き通すマリンのその覚悟。

 

「その貫き通す気持ち! 受け取った!! よーし! バーベキューセットを広げるぞオーちゃん!」

 

「寛大ですねナインハルト様。ですが、それクーラーボックスです。見た目で分かります」

 

 あれ!? とナインハルトは間違えた手順でバーベキューセットを展開させていく。

 オーギュストも途中から手伝っていったが、ナインハルトが余計なことをして手間を広げるので、あっという間に時間は過ぎていく。ブランディッシュなんか既に食べ終えて、マリンに買いに行かせたデザートなんか食べている。

 

「くっ! 意地でも食べてやるバーベキュー!!」

 

「ナインハルト様、もうこの街からフライパン借りてきて焼いた方が簡単です」

 

「君ィッ? 本気か!?」

 

「この惨状を見てしまっては」

 

 オーギュストはナインハルトが手をつけた場所から何から何まで破損させてしまい、再起不能まで壊してしまった。最早何処かのお店に行った方が良いんじゃないかと思ってしまうほどに。

 

「……もう、おふざけはそこまでにして帰るわよ、ナインハルト」

 

「えっ!? 肉を食べないで!? 何をしに来たのか私は?」

 

「知った事ではないわ。12(トゥエルブ)は集合せよ、連絡がきた」

 

「私には来てないよ」

 

「ならば()()()()()()()を黙らせたら? きっと妨害系の魔法を使う魔導士でも居るんでしょ?」

 

 先程からなにを話しているのか理解出来ないでいたオーギュストだったが、別にそれは構わなかった。

 とにかくこのナインハルト様に絡まれる事が無くなるというのならそれが一番だ。

 

「そうか……()()()がそう言ってるのか~……。じゃあ行かないといけないね~」

 

 ゼレフ? 誰の事だと思考に巡らせる前に、ナインハルトはオーギュストと向き合った。

 

「オーちゃん。悪いけどここの後片付けを頼むよ。ちょっと集合してくれ~って言われたから戻んないといけないから」

 

「それは構いませんが……本当に何故自分がここに呼ばれたのか理解出来ないのですが」

 

「大丈夫大丈夫。ただ君が私の()()()()()だから是非見たくってね」

 

 その発言が、脳に到達するまでに、視界が闇に染まった。

 何も聞こえなくなった。

 何も感じなくなった。

 何も、何も、感じなく、…………なにも…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ……ハァハ、げほっ!」

 

「……ハァ……あれは、もう()()()()()()じゃないわ。マリン、しっかりと見ていたわね」

 

「ヒィ、ヒィ……みました、見ましたともあの恐ろしい光景を! あ、あいつを、あいつを飲み込んじまった! あいつは、オーギュストは、あっしの〝空間魔法〟の方がすごいと思ってるらしいですが、アイツの方が恐ろしい! あいつの《狂乱魔法》が恐ろしい! どんな奴も、あいつの魔法にかかれば体調から魔法まで全部どこか狂ってしまうという魔法! だからあいつは常に一人だったんです!」

 

「……その魔法に目星をつけて、〝死者〟にさせたのね。ナインハルトは」

 

「…………えっ? あ、えっ、そんな……なんで」

 

「……知りもしないわ。なんせ関わりなんて元からあめりなかったし、協調性もなかった奴でもあった。けど、()()()()じゃなかったわ。あいつはナインハルトであって、ナインハルトじゃない」

 

「そ、それって……偽物って訳ですか?」

 

「まだ分からない。それに例えそうだったとしても、皇帝はそれをも利用しそうなのよね」

 

「……スプリガン皇帝陛下が……」

 

「……とにかく、ナインハルトは反意の意思は見えなかった。それだけでもインベルに伝えるか。めんどくさいけど」

 

(なんてお方なんだ。あの異質な光景を目にしても動揺が見受けられない。あぁなんて強く美しいブランディッシュ様♡ もう合格の合格ですブランディッシュ様ペロペロ)

 

 

 

 アルバレス帝国首都ヴィスタリオン王城内王宮の間渡り廊下から二人の発言から抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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