FAIRY TAIL ~ 傍観する死者 ~   作:β×ψ=√

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 これは、原作では余りな活躍しかできなかったマリン・ホーロウという男が、違う道筋を通ったif(イフ)の話。


空間を制御せし者、恋する者

 

 

 

 

 

 何から何までそれは巡るめく出会いであった。

 空間の掟、という魔法。これを持ってして生まれたのがマリン・ホーロウという男だった。

 自ら持っているこの空間を制御する魔法は、様々な場面で活躍する魔法でもあった。

 その甲斐あって、アルバレス帝国では魔導士ながらかなり帝国軍で上へ上への登り詰めていった。

 溢れ出る自信。そして同時に張り付いていた慢心。

 それもあり、中々帝国軍内部でも孤立していったマリンであったが、女好きの癖もあり、内部でのいざこざも多かったことがあった。

 ある兵士から、彼女を無理矢理お茶に誘ったことで喧嘩沙汰が大きくなり、とうとう上層部まで話が登り、除隊命令が下されることは誰でも想像できた。

 

 その本人でさえも。

 

(いったい何してんだ、あっしはよぅ)

 

 女好きであっても軍隊に所属していた身として、鍛え抜かれた体や感覚はそうそうに無くならず、首都ヴィスタリオンの下町の酒場で不貞腐れていたマリンであったが、世の中奇怪な出会いというものがあるというもの。

 下町の酒場に溜まるのは大抵柄の悪い奴らなのは相場なのだが、そこに布地が馬鹿みたいに少ない格好をした女性が入ってきては誰でも勘違いするというもの。

 入ってきた人物に対し、世間に少しでも知っている者がいればその女性が一体誰なのか一目瞭然だった。

 皇帝を守りし『盾』の一員。【大魔導士】と謳われても偽りない魔力と実力。

 《スプリガン12(トゥエルブ)》たるブランディッシュ・μ(ミュー)、その人だった。

 

 軍に所属していたマリンは知っていた。話を聞いていた。彼女の凄まじさを、彼女の強さを知っていた。

 だがそれは所謂、他所へ他所へと飛んでいく人の話。何処から何処までが本当なのか知りようもないそのことに、マリンは女だからとか、露出が凄いからとかという理由で直視していた訳じゃなかった。強さが気になったのだ。

 

 《スプリガン12(トゥエルブ)》。アルバレス帝国が誇る最強の皇帝の剣にして盾。

 

 その実力は如何様なものなのかと、ブランディッシュに近寄っていく柄の悪い男たちは下卑た笑みを浮かべて肩を触ろうとした瞬間、爆発的な魔力の奔流が迸る気配を察知する。

 いやでも察知するこの爆発的な魔力の奔流。

 彼女は自慢の魔法をこの首都ヴィスタリオンの下町で披露しようとしたのだろう。

 だがそれは不味いとマリンは思った。

 ここは《首都》なのだ。そんな場所で皇帝の盾でもある12(トゥエルブ)が暴れたりでもしたら、国外にへ話が流れると思ったのだ。

 仮にも軍隊の上に立つ者だ。その『後』のことくらい気を配っているだろうとチラッとだけ彼女・ブランディッシュを見てみるが、どうみても本気切(ブッチギ)れであった。

 まだ若いマリンであったが、長年このヴィスタリオンに住んでいたことで都市の様々な人達の顔が思い浮かんでしまった。

 自分は女好きだ。人に不幸にしてしまうくらい馬鹿な女好きだ。勝手なことして女の子を泣かせるくらい最悪な男だとマリンは自分でも、いや自分だからこそ理解している。

 そんな最悪な男に対しても、暖かく迎え入れてくれた人達の顔が浮かんでしまった。

 

「やめときな、ブランディッシュ様」

 

 女の前だと変に低姿勢というか、変な丁寧口調となるマリンであったが、今はそんな気分にはならなかった。

 

「……なんだと貴様。お前もここの建物が崩壊したような顔の連中たちと一緒に無くなりたいの?」

 

 その彼女の言葉に反応するのは、酔って思考能力が落ちている下卑た男共。

 マリンは強気な女の子だ、と無意識に笑みを作ってしまい、飲んだ酒の代金をカウンターテーブルに起き、己の『魔法』を駆使した。

 一瞬にしてその場から消えてみせるマリンに、驚きの表情となったブランディッシュだったが、その彼女の背後にマリンがいきなり出現した。

 

「ここから場所を離れようね」

 

 ブランディッシュの腹を腕を回して密着させる。これであっという間に瞬間移動で首都ヴィスタリオンから外に移動していた。

 そのことにブランディッシュは混乱が生じたが、直ぐに回されていた腕を振り払い、マリンと距離をとる。

 

「……面白い、そして便利な魔法ね」

 

 余裕を崩さないブランディッシュ。に見えるマリンであったが、それが動揺を隠すものだと分かってしまった。強気な女性によくある隠し方の一つだと分かっているからだ。

 だが、半分は簡単にマリンを敵に回しても勝てるという絶対なる魔法の自信を持っているからだと判断した。

 そして、マリンは改めて対峙して分かってしまった。

 

「………………ァ……ァァァ……」

 

 これは、雷に打たれた衝撃の如く激しきもの。

 全身の全神経が逆撫でるほどのもの。

 

「……惚れた」

 

「はぁ……?」

 

 既に夜になっていた首都ヴィスタリオンの夜景をバックに立ち、堂々たる美しい肢体を最低限大切な場所にだけ布地があるくらい露出している美女。

 コートを羽織っていることで、完全なる露出とまでいかないが、何処からここまで自信たっぷりにその肢体をさらけ出しているのか理解できないが、異性からすれば最早目が奪われることしかできないほどの美の魅力。

 その魅了は治まることを知らないのか、マリンの動脈を激しくさせていく。

 女好きであったマリンが、脳天から雷が突き刺さるような衝撃を受けてからすぐに建て直すまで、時間がかかった。

 

「いきなりこんな人気のないとこに飛ばしてきておいて無反応とはいい度胸ね。せっかく夜の街の酒場というところに行って、マリーに嫌味を言ってやるつもりだったのに……」

 

(な、何なんだその美声はッッッ!!?)

 

 仰け反るマリン。それを見て引くブランディッシュ。

 

「……変質者ね、気持ち悪いから早く倒して帰ろうっと」

 

 ブランディッシュはまるで軽く簡単に言ってしまうが、実力は本物。彼女の異名は恐ろしい【国崩し】の名。あり得ない程の魔力量を持ち、噂では一国に存在する人口ほどあると言われており、《魔力貯蔵庫》とまで同じ12(トゥエルブ)たちも言っていた。

 

「はっ」

 

 ブランディッシュが、コツンとヒールを履いた足を母なる大地に踏んでみせると、地震と思わせる大きな震動がマリンを襲う、のだが。

 

「……なんて強く綺麗なんだ……」

 

 最早、マリンはブランディッシュしか見ていなかった。周辺の大地が()()()()()来ているというのに、

 

「アジィールがうるさく言ってきそうだけどまぁいいでしょ」

 

 アジィールとは、ブランディッシュと同じ《スプリガン12(トゥエルブ)》のメンバー。《砂漠王》の異名を持ち、砂を自在に操る魔法の持ち主だが、それがどうしたとブランディッシュはこの目前の男を潰す為に地面の土の質量を魔法により変えていくが、

 

「ブランディッシュ様!」

 

 瞬きをした瞬間だった。

 その瞬間に、既にマリンはブランディッシュの背後に移動していた。

 マリンに向けて地面に大穴でも開けて落としてやろうとしていたのだが、そう言えばコイツの魔法は異質だったな、と思い返す。

 だがそれでも焦らない。焦る必要がない。

 

(それでも私はコイツより強い)

 

 振り向き様に、質量の魔法を変化させた重い蹴りを味合わせてやれば終わりと、確信もってブランディッシュは振り向いた。

 だが、そこに待っていたのは、絶対に想像出来なかったもの。

 

「……んむっ……!?」

 

 マリンによって、唇を奪われてしまったことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルバレス帝国首都ヴィスタリオンの王城内、執政官執務室。

 そこは《スプリガン12(トゥエルブ)》の纏め役として皇帝に重宝されている苦労人、そして実質この首都のあらゆる政治面などでも活躍している通称《冬将軍》インベルの仕事部屋。

 連日連夜を通して仕事をしているのに顔色を変えないインベルは、恐ろしいほど手早い動きで書類を片付けている最中、首都郊外から莫大な魔力が放出されたことを感じた。

 この帝国(アルバレス)で、都市一つ覆い纏うほどの恐ろしい魔力量を持っているのは一人しかいないのですぐに検討はつくが、だからといって簡単に済ませられる事柄ではない。

 

「………………仕事が、遅々としてはかどりません」

 

 若いというのに、白銀の美しい髪がまるで疲労による白髪に見えるのは見間違いではないのかもしれないと、報告に来た兵士が同情の視線を送る。

 

「……すぐに確認に向かわせない。ですが小規模で調査を。ヴィスタリオンの臣民たちが不安がらないように」

 

「ハッ!」

 

 兵士はすぐに部屋から出ていき、優秀な帝国軍の軍人たちは朝にへと向かう。

 だがインベルはそれは無駄に終わることくらい想像できた。

 《スプリガン12(トゥエルブ)》は、一人一国を相手しても生き残る絶大なる強者の集まり。インベル自身も相当な実力者でもあるが、他の12(トゥエルブ)たちも『個性』というものがある。人間誰しもそうである。

 故に、そう丸く治まる展開などインベルは知らない。

 

「……まともな人格者は居ないのかて……」

 

 大抵の12(トゥエルブ)は油断、慢心、傲慢、我儘といった類いの連中の集まりともいえる。

 『強さ』が彼らを狂わせる。『普通』が分からなくなるのだ。

 その絶大なる強者を束ねるのは、我らの偉大なる《スプリガン皇帝》。

 だが、その肝心の皇帝陛下は、皇帝らしからぬ『放浪癖』という、城には居ないという特殊過ぎる帝国の(おう)が居ないのだ。

 王が居ない城ほど寂しいものはない、インベルは常々そう思っていた。

 

「……早くお戻りください、陛下」

 

 戦いなれば負け知らずの《スプリガン12(トゥエルブ)》。だが、その纏め役ともなれば、疲労によって打ち負けるかもしれない心配が浮上してしまうインベル。

 今日もインベルは、馴染みになりつつある薬を飲んでは、再び終わらない激務をこなすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手の許しも得ず、身勝手な行動をしてしまったマリン・ホーロウであったが、最早目の前の女神に殺されたとしても本望だった。

 女神と接吻(キス)できたのだ。死んでも幸運に浸れるというもの。

 そして現在、マリンはキスを奪われたへなへなと腰を砕けて座り込んだブランディッシュ。泣き出すのかと思いきや、内なる全魔力を放出させて、足元に大穴を開けてしまったブランディッシュは、自らその穴に落下していってしまい、それをマリンは助けては、間の抜けた声を細くしながら出して、再び地上に戻ると大人しくなってしまうブランディッシュにマリンは少し困っていた。

 困っていたのだが、

 

「あぁ~顔を真っ赤して恥ずかしがるブランディッシュ様可愛いです!! 合格です合格!」

 

「ぁぁぁぅぅっ……ぁぁぁぃぃぃ……」

 

「……可愛い……本当に可愛い」

 

 徐々に思い出してきているのか、ブランディッシュは真っ赤にした顔をフルフルとして横に振り、力無い瞳でマリンを睨む。

 

「コココ……コロス! 殺して、ころ」

 

「はむっ」

 

「……むぐぅッッッ!!?」

 

 

 マリンは再び可愛いブランディッシュの小さな唇を奪った。

 そしてブランディッシュ、再び脳が停止。

 

「…………可愛いです。大好きです。本当に大好きです。一目惚れです。身勝手なことをすみません。殺されても文句言えませんね」

 

「……ぁぁぁぁぁ」

 

「死ぬ前に言えることだけ言ってやります。……好きです。大好きです。本当に大好きです。まだ名しか知らない貴女だというのに、惚れました。もうブランディッシュ様しか見れません。神様に感謝します、ブランディッシュ様……愛しています」

 

 ドカンッ! とブランディッシュは混乱した頭でその場に倒れてしまった。

 なんと!? とマリンはブランディッシュを抱き起こし、様子を見ると、気絶したように見える。

 

「アッハッハッハ! これはスゴい。良いものが見れたというもの」

 

「インベル殿に言われて来てみれば、これは罪深きものなれば」

 

 後ろから、いや正確には首都ヴィスタリオンの方向に背を向けていたので、誰か様子を見に来たとしても後ろからなのだが、マリンはそれどころでは無かった。

 

「ブランディッシュ様と同じ、スプリガン12(トゥエルブ)のお方々! 《戦乙女》ディマリア・イエスタ様に《審判者》ワール様!?」

 

「可愛い可愛いランディがファーストキスを奪われてしまったな。あぁ~可哀想なランディ」

 

「顔がそう言ってはいませんよ、ディマリア」

 

 戦場にでも向かうのか、鎧を装着しているにも関わらず、堂々と美しい素肌をさらしている通称《戦乙女》のディマリアと。恰幅のいい体格をしているが、機械染みた記憶力や予想もつかない魔法を持つと言われる《審判者》のワールがそこに立っていた。

 それもそうだろう。

 皇帝を守護するであろう《スプリガン12(トゥエルブ)》の一人が莫大な魔力を放ったのだ。

 確かめに来ない筈がない。

 だが、マリンは決して後悔などなかった。

 

「……わっしは捕らわれるのでしょうか」

 

「にしても随分と落ち着いている。肝が据わっていると言っても過言ではないが、それとは違う思惑を感じる眼差しだな、マリン・ホーロウ」

 

「……名前も既に」

 

「帝国軍に一度でも所属したものは記憶し(おぼえ)ておりますれば」

 

 マリンが考えていること、そして既にアルバレス帝国軍にも所属していたことも知られている。

 

「女好きで、軍規を悉く破っていた『空間使い』のマリン・ホーロウ。その魔法が発覚したのは子供の頃からだと聞き及んでおりますれば。その類い稀な空間を制御する魔法は、『空間関連魔法』全てを妨害出きるまでに至っていると聞いておりますれば」

 

「ほほう、確かにそれは……無視出来ない魔法(モノ)だ。それなのに軍は追い出したのか」

 

「かなり甘く見ていたにも関わらず、マリン・ホーロウは、それを利用して将校クラスの奥方にまで手を出していたとか、これは罪深きものなれば」

 

 冷や汗が止まらないマリン!

 

「上層部は空間魔法の使い手であるマリン・ホーロウは他の空間魔法を妨害するという軍力強化には欠かせない戦力ではございましたが、常識(ルール)が欠如している軍人など、他の軍人の方がどれにも勝ると決断し、除隊命令を下し、インベル殿にも報告が上がっていた筈なれば」

 

「見境のない猿か。確かに見るにも聞くにも耐え難いクズだな。終いには己の魔法(のうりょく)に酔っているとは……」

 

「それは他の魔導士にも言えること。マリン・ホーロウだけではないはず。しかし、だからも言ってこれとそれとは話は別。罪は深きものなれば」

 

 マリンは己がしてきた自業自得の記憶が甦る。どうしてあんなことをしてしまったのかと。

 だが、してきたことは変わりない。

 マリンは12(トゥエルブ)の二人に土下座をする。

 

「た、確かにわっしは……あ、いえ、私は数多くの過ちと、軍に対して泥を塗る行為をしてきました! ですが、どうかもう一度チャンスをいただきたい!」

 

 ピリッと空気が変わったのをマリンは肌で感じた。まるで冬の静電気を感じたかのような、そんな小さな痺れのようなものだったが、確かに変わったのを感じた。

 分かってる。マリンが言っている言葉など塵にも等しく薄っぺらいもの。

 しかし、それでもこれは本当の自分の確固たる意思で物申す。

 

「……クズが今更何をほざいている。お前は皇帝陛下が()()している軍に対し既に万死に値する行いを数多くしてきたのだぞ。それもお前は知っているな? 知っていて繰り返してきたのだろう、その魔法で」

 

「……はっ」

 

「除隊だけで免れただけで済んだものを、貴様は更に皇帝陛下の最大の大切な駒(トゥエルブ)に手を出した。そこにランディだから許す、という私個人的の感情は持ち合わせていない。いや()()()()

 

 鞘から、剣を引き抜く鈍い音が聞こえた。

 

「《審判者》ワールであっても、私の物言いに何か言うことはないだろう?」

 

「罪深きものなれば、それは相応の代償が必要か。それに対して何を払えるか……」

 

 ワールの足音が聞こえる。少しマリンから離れたらしい。

 

「面を上げなさい、マリン・ホーロウ。審判の時なれば」

 

 恐ろしい。激しく恐ろしく感じているマリン。普通ならば、己の空間魔法を使い、一瞬にしてこの場から移動して逃げたいと思っていただろう。

 だが、もうそんなこと出来やしない。

 マリンは気絶しているブランディッシュを見た。

 恐らく年齢は同じか年下と見える可愛く美しい女性。

 

(ここでわっしの覚悟をみせる)

 

 ゆっくりとだが、面を上げるマリン。

 眼前には、既にディマリアの自慢の剣が、向けられていた。

 その剣を握る戦場の乙女は、目で相手を殺すと言わんばかりの眼光を放ち、揺らぎもしない。

 斜め後方でそれを見ているのは、《審判者》ワール。同じスプリガン12(トゥエルブ)であることを示すかのように、余裕の顔色でゆっくりと見定められている。

 

「マリン・ホーロウ。覚悟を見せない」

 

 カチャリ、とディマリアは剣を(かざ)す。

 断頭台の刃のように、死を匂わす斜状刃(ギロチン)を構えた。

 『死』の恐怖が突如やってくる。

 震える奥歯に、脳内に聞こえる己の断末魔、逃げろと囁く天使か悪魔かの囁き、だがしかし。

 

「は、はぁはがっ……ひぃ、ひぃひぃ」

 

 無表情で覚悟を示そうなどと、思わなかった。醜く汚くても、あることだけを考えて。

 

(逃げるかよ……逃げるかよ……逃げるかよォォオ!!)

 

 逃げない。

 一目惚れした女と、話したい、一緒に居たい。

 欲の感情だとしても、死よりも越えれば対したもんだろうよ、と誰かに叫ぶマリン。

 

(惚れたんだ、好きになったんだ)

 

 ガタガタと震え出す、情けない。でもディマリアの剣から『死』しか連想出来なくなってきている。

 いつ振り下ろす? ちゃんと楽に斬ってくれるのか? どうして早くやらない?

 マリンは気付いてないが、涙が炊きのように流れている。

 だが、

 

(逃げませぬか、空間魔法が使えるというのに、逃げませぬか)

 

 ワールの目かしても、醜く愚かしい人間の姿にしか見えないというのに、一歩も逃げ出さないでそこに座り続けている。

 ディマリアは情け容赦などしない。

 皇帝陛下に仕える身として、命令は絶対だ。

 陛下の許しなどなければ、勝手な行動など出来ないのだが、

 

「……ゆくぞ」

 

 貴重な戦力でもある空間魔法使いの死刑を勝手に執行している。

 だがワールは、手は出さない。

 『何かを感じ取った』からだ。

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

 

 咆哮とも思わせる轟音。しかし、女性だから、はたまた戦乙女だからなのか知らないが、とても美しくも激しい声色で、『死』の刃がマリン目掛けて振り下ろされた。

 

 そして、その場ではまるで、爆発が起きたかよのうな、激しい衝撃と砂塵によって、見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想やコメントお待ちしております。

最近暑すぎて大変ですが、水分を小まめにとってきましょう。

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