私にとって、この世界は羨ましかった。
天界の堕落感はないけれど、どこか和やかで、外の世界より賑やかではないけれど、どこかつまらないことがなさそうだった。
私は元の世界の天界に戻りたくなくて、他の神の目を盗み、飛び降りた(比喩ではなく)。
その世界は眩しかった
たった一つ。
そう、たった一つだけ変わらなかったことがある。
私が私個神であったことだ。
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「結衣〜!」
「なんなのさ。笑実」
私は夏の暑さでだれながら、博麗笑実に応えた。
「七辻屋の新商品出たわよ」
「何っ!?」
七辻屋は私のお気に入りの和菓子屋である。
新商品とは、水ようかんだったはず。
「買いに行ってくる!」
「私と霊夢の分もよろしくね」
「任せろぉ!」
この駄神が。という笑実の愚痴が聞こえたような気がするが、無視だ。
そうと決まれば、七辻屋へレッツゴー!
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「おばちゃん!水ようかん3つ!」
「結衣ちゃんごめんね。水ようかん2つしか残ってないの」
「ん〜。それなら、水ようかん2つといつもの!」
いつもの。
みたらし団子 一本 250円
私のお気に入りである。
「あいよ!350円2つに250円だから、950円!」
予算ギリギリ。
予算を超えると、笑実の鉄拳制裁(わりかし痛い)が飛んでくる。
「はい!」
「50円のお釣りと水ようかんとみたらし団子!」
「ありがとね!」
外へ出ると、人目のつかない場所へ移動。
「転移結界 level2」
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「たっだいまー」
「おかえりー神様」
霊夢がドタドタと足音を立てながらやって来た。
「あっ!ななじゅうや!」
どうやらこっちの方が目当てらしい。
霊夢はまだ、漢字は読めない。
七辻屋 しちつじや
「後で分けるから、待っててね」
「うん!」
そして、霊夢は母である笑実の元へと向かった。
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数日後
霊夢は霧雨魔理沙とかいう友達の家に泊まりに行くようだ。
笑実は妖怪退治のために、人里の外れまで。
というわけで、神社には、私、四月一日 結衣しかいなかった。
「う〜ん。そろそろ笑実は命の代償が来てもおかしくはないんだけどな〜」
笑実の能力はかなり変わっている。
命を削って狂化する能力だ。
命を削るとは、文字通り、寿命がどんどん短くなっていく。
つまり、笑実もそう長くは続かない。
そして、最近妖怪の数は増え、狂化する回数が増えていた。
「自制はしてるって言ってるけども…」
不安だ。
今、暇だし笑実を見に行ってみよう。
そう決めた私は、小さな声で呟く。
「転移結界 level2」
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「な…なんなんだよ…これ」
妖怪の退治跡はあった。
しかし、妖怪のものとは思えないほどの、人の血が夥しいほどに、大地を朱く染め上げていた。
「ユイ?」
「笑実!戻らないと!」
狂化の能力は戻らないと、無差別に人を殺す者になってしまう。
「ユイ、ワタシヲコロスかフウインシテ」
「なんで!」
「命ノダイ償」
命の代償とは、自分の命を最期まで削り切った者を永遠に狂化させる。
今、笑実が話していられるのは、狂化の本能を理性で抑え込んでいるからであろう。
「……神王結界 level5」
「そう…それで」
「幻想結界level2」
この瞬間にいろんなことが思い出した。
笑実と一緒に笑ったこと。泣いたこと。怒られたこと。喧嘩したこと。霊夢が産まれたこと。
そして、3人で一緒に和菓子を食べたこと。
この記憶、永遠に。
自然と溢れた雫が瞳から頬を伝い、落ちてゆく。
そして、笑実は名の通り、満面の笑みを実らせた。
だから、私も精一杯の笑顔を実らせた。
「滅!!」
結界は笑実ごと爆ぜ、消えていった。
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その後、笑実の部屋に入った。
そこには、遺書が置いてあった。
そのときは、涙ぐんでいてほとんど内容は覚えていない。
ただ、最後の一行だけ、覚えている。
結衣。あの子。霊夢をよろしくね。
「ごめん。無理だよ。その約束…」
「紫、いるんでしょ」
「いるわよ」
「霊夢のこと、よろしく」
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ごめん。笑実。
約束破っちゃって。
「今は遠き幻想よ。私を封じ、私を鎮めよ」
バイバイ霊夢。
私に関する記憶は、私の封印を解いたら、甦るから。
「夢幻結界 level5」
私と笑実は、君の近くで見守っているから。
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「ふう。やっとこの封印が解けるわ」
ぴしりと何かにヒビが入る音が聞こえた。
「解!」
「…………久しぶり、霊夢」
「あんた…結衣?」
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私が愛したこの世界は未だ強く輝いている。眩しいくらいに。
さて、霊夢。
君はこの幻想に何を刻んでくれるのかな?
君の目にはどんな幻想が映るのかな?
未来が楽しみだ。