「喰らえいッ! 」
両手から放たれる闇のごとき紫の波動が二人の仮面ライダーを吹き飛ばす。
「ぐっ……うぅっ」
「なんて……力だ」
圧倒的な力、圧倒的な手数をもつファントム眼魔・ウルティマの攻撃を受けたスペクターとネクロムが地に伏せる。
「無駄だ、貴様らはオレに勝てない」
眼魔ウルティマ・ファントムがスペクターとネクロムに言い放つ、分身体をゴーストとウィザードに任せてからどれくらい戦っただろうか、二人の攻撃は全く効かず、一方的な防戦を強いられていた。眼魔とファントム、その二つの力を持つこの怪物はそれほどまでに強力な敵だったのだ。
絶望的な実力差、しかし倒れてもなお消えることのない闘志が拳を握らせ、二人の仮面ライダーを立ち上がらせた。
「アラン、まだいけるな」
「勿論だ、コイツを野放しにしておくわけにはいかない」
スペクターはドライバーからディープスラッシャーを、ネクロムはメガウルオウダーからガンガンキャッチャーを出現させ、空中で掴みとる。
そしてそれぞれの武器に眼魂を装填した。
《メガハゲシー! メガハゲシー!》
《ダイカイガン!》
「いくぞ!」
「ああ!」
《キョクゲン!ダイカイガン! ギガ!オメガダマ!》
《オメガフィニッシュ!》
スペクターの放った赤い雷を纏った紫色の巨大な光球とネクロムの放った緑色の光球が混ざりあい眼魔ウルティマ・ファントムに襲いかかる、その様を例えるとするなら“まばゆい光の奔流”だろう。どこまでも激しく、どこまでも強く、そして美しい、その光は彼らの“生き様″、そして“心の叫び″を体言していると言えるだろう。
尋常ではない“仮面ライダー”の力、しかし対峙する者も尋常ではない“怪物”の力を有していた。
「ぬっ……ぉおおおおお!」
“怪物”の力が暗雲を呼び寄せ、日の光を閉ざす。
「空が、青空が閉ざされてゆく……」
思わずネクロムが呟いた。
眼魔ウルティマ・ファントムは体のありとあらゆる場所から鎖を出し、その先端部と両腕から紫の光弾を壁として撃ち放つ。その光弾の色もウルティマになったせいかどす黒くなっていた。
光の奔流とそれを喰い破る勢いの光弾、敵の紫の光は禍々しさを増していく。
両者の激突はどちらに届くまでもなく大爆発を起こし、煙と巻き上がった土埃がそれぞれの姿をかき消した。
《ゲンカイ!ダイカイガン! ゲキコウスペクター!
デッドゴー! 激怒! ギリギリゴースト! 闘争!暴走!怒りのソウル!》
一寸先も見えない煙の中で紫銀の強烈な光が輝いた。
「うぉおりぃやぁあああああ!!!!」
《キョクゲン!ダイカイガン! ディープスペクター! ギガ!オメガドライブ!》
眼を開けることも出来ない強烈な光を後ろに背負ったスペクターの拳が煙も砂埃も吹き飛ばして眼魔ウルティマ・ファントムの胴体に突き刺さった。胴体を突き抜けた衝撃が大気を激しく揺らし、地面を抉る。
避けることも、防ぐことも許さない完全に不意をついた己の“力”も、己の“覚悟”もスペクターの持ちうる総てを込めた渾身の一撃。
スペクターは拳を突き立てたまま、肩で息をするほどに消耗しきっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、これで……」
しかし
「ククク、ハッハッハッハ!」
「っ! 何っ!?」
「まさかっ!?」
眼魔ウルティマ・ファントムは耐えていた。隙を見せたスペクターとネクロムを鎖で縛り上げて振り回し、時には地面に叩き付けてクレーターを作り、時には崖にぶつけて崖を崩し、時にはスペクターとネクロムをぶつける、二人の仮面ライダーがボロボロになるまで一方的に叩き付ける。
「ぐあぁああ!」
「うわぁああっ!」
そして、地面に投げ落とされた二人の変身が解けた。
「これで、消え去れ!」
タケルと違い生身のマコトとアランに放たれた紫の光弾、二人は“死”を覚悟した。
《チョーイイネ! スペシャル! サイコー!》
《ダイカイガン! メガ!オメガフラッシュ!》
2つの炎がマコトとアランの頭上を通り過ぎ、紫の光弾を弾き返した。
「マコト兄ちゃん! アラン!」
「大丈夫か!」
ゴーストとウィザードがマコト達と眼魔ウルティマ・ファントムの間に入り、油断なく構える。
「タケル、すまない」
一目見ても二人はボロボロだ、今は立ち上がることさえ難しいだろう。眼魔ウルティマ・ファントムの動きに警戒しながらウィザードは考えを巡らせる。このまま彼らをここに置いておくには危険だ、だがほぼ無傷で彼らを倒した敵に背を向けて逃がす訳にもいかない、隙を見せればマコトとアランの二の舞だ。それにウィザード自身も表面では飄々としているが内面はかなりボロボロだ、連戦に続く連戦にテレポートで仮面ライダー四人と敵一体、それも戦闘中での大転移、ドラゴタイムでの大乱戦、オールドラゴンの使用、短時間で魔力と体力を激しく消耗していた。
「ふん、纏めて葬ってやる!」
そう言って眼魔ウルティマ・ファントムの背後に現れるそこから数えるのも馬鹿らしくなるほどの鎖と紫の光弾が襲い掛かる。
「マズイッ!」
ウィザードが咄嗟にディフェンドの魔法を使おうと指輪を付け替える、だが魔法を発動させるより速く鎖が迫っていた。
ーーーやられる!
誰もがそう思ったその時
「キャプテンゴーストォ!」
虚空より出現した幽霊船が壁となって立ちはだかった。
「まーったく、このユルセン様が居ないとほんっとダメダメだなぁ、タケルは」
幽霊船、キャプテンゴーストから声の主がふよふよと降りてきた。
一つ目の顔に口が付き、オレンジ色の身体をもつそれには手らしきものはあるが足がない、胴体に当たる部分が顔と同じ程のサイズをしている、謎生物。いや、はたしてそれを生物と言って良いのだろうか。面識の無いウィザードが困惑している間にゴーストと謎生物のやり取りは進んでいく。
「ユルセン!」
「オーッス、大丈夫かー、マコトー、タコヤキ少年ー」
「どうして此処に、いや、そんなことよりマコト兄ちゃん達を安全な場所に運んで!」
「合点承知だ! にしてもタケルは相変わらずユルセン様使いの荒いやつだなー、おいそこの真っ赤っか、お前も手伝え」
「真っ赤っかって、俺?」
「他に誰がいるんだ、さっさと手伝え」
ゴーストとのやり取りを見ている限りでは味方のようだ。
この謎生物、ユルセンの正体は考えないようにしたウィザードは倒れているアランを抱えてキャプテンゴーストに乗せる。
「すまない、タケル……」
「必ず、ヤツを倒してくれ。タケル、操真晴人」
二人がこれ以上戦うのは無理だ、たとえ変身したとしても役に立つことは難しいだろう。だから二人は力を、希望を託す。
「うん」
「約束する、ヤツは俺達が必ず倒す。俺達が、最後の希望だ」
キャプテンゴーストが去り、ゴーストとウィザードの二人が残る。攻撃を防がれ、様子をうかがっていた眼魔ウルティマ・ファントムと対峙する。
「まだ戦うか、貴様らの仲間は二人倒した。四人ならまだしも二人だけの貴様らにこのオレを倒せる可能性はゼロだ! 万に一つの希望も残ってすらいない!」
再び放たれる無数の鎖と紫の光弾、さっきはキャプテンゴーストという不確定要素があったがために防がれたがもうその心配はない、だが念には念を入れて先程よりもさらに密度を濃くし、範囲を広げてある。ウィザードのディフェンドを数の暴力で押し切り、ゴーストの幽霊のごとき浮遊による回避も間に合わせない、一撃必殺の威力は無くとも塵も積もればなんとやらだ。回避も防御もさせない雨というよりも濁流といった方がしっくりくる。どこまでも禍々しく、冷たく、無機質な、そんな攻撃を前にすれば誰もが絶望し、諦めていただろう。だがーーー
二人の仮面ライダーは諦めてはいなかった、絶望などしていなかった!
《
《無限進化! 超開眼!
七色に輝く光の奔流が、金剛石のごとき輝きを持ったドラゴンが、純白に輝くパーカーゴーストが、絶望を体言した濁流のごとき攻撃を打ち払った!
「何ッ!?」
それは絶望を打ち砕く希望の光、永遠に紡がれる命の輝きそのもの。
絡み合いながら天高く昇った二筋の光は眼魔ウルティマ・ファントムが呼び寄せた曇天を突き破り、その切れ目から太陽の光が大地に降り注ぐ。そしてーーー
《ヒィイスイフゥウドォオッ!ボゥウザバビュゥウドッゴォオンッ!!》
《keep・on・going! ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴッドゴーストッ!》
七色に光り輝くウィザードラゴンとムゲンパーカーゴーストが二人の仮面ライダーの元に舞い降りる、そして強烈かつ鮮烈な光が彼らから発せられる。腕で目を隠してもそれを突き抜けるような光りが止むとそこには二人の純白の光を纏った仮面ライダーが立っていた。
「さぁ、最後の……」
ウィザードが永遠の輝きを放つ指輪を掲げ、ゴーストが印を組むと二人の背後に無限の輝きを放つ魔方陣と∞の形を模した紋章が出現する。
「「ショータイムだッ!」」
眼魔ウルティマ・ファントムの目の前に並び立つは
仮面ライダーウィザード インフィニティスタイル
仮面ライダーゴースト ムゲン魂
“∞”の名を冠する二人の仮面ライダーが、そこにいた。
序盤からボロッボロのマコト兄ちゃんとアラン様……うん、いつも通りだなっ!