光秀×幸村 短編集   作:とましの

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屋上にて

強い雨が地面を叩く。傘を足元に置いた俺はその場で花束をばらした。

季節だからと花屋に勧められた紫陽花をその場からはるか眼下の海へと投げる。

 

慰霊

プレゼント

戦友へのはなむけ

誰も知らないあいつの存在を忘れないため

俺たちは神でもなんでもないという事実を忘れないため

 

理由なんてのは何でも良い

 

強い雨が俺の背中に叩きつけられる。暗い雲が空をおおい海も黒く淀んで見える。

チカ、おまえは怒っているだろうか。

絶望したまま生きる俺の不甲斐なさを責めるだろうか。

 

あれから石黒は研究員として研究室にこもっている。血の駄目なあいつだが、それでもできる方法で獣症根絶のために戦い続けている。

 

だがな、チカ。今の外科におまえほどの才能と熱意を持ったヤツはいないんだ。

 

ああけど、今年外科に来た新人はわからねぇな。あのふたりはおまえに近いかもしれない。

けど熱意はわからねぇよ。よく知らねぇし、俺もあいつらに目を向ける暇がないからな。

 

なぁ、チカ。才能のない俺に何ができるんだろうな。

 

いつもの墓参りを終えた俺は車に戻る。雨は弱まることを知らないらしい。

けど雨で良かったようにも思う

俺が流したものを一緒に洗い流してくれるから

 

 

 

休日があけた月曜日。昨日から気分を引きずっていた俺は屋上で煙草をふかしていた。

やる気が出ないってわけじゃねぇ。けど今のここに何があるのかわからねぇ。

月城さんの事は尊敬してるし、あの人の下で働けるのは嬉しい。

けどやりがいみたいなのが欠落してる気がする。

 

苦い気持ちと煙を吐き出していると若い男がやってきた。

どっかで見た気がする。新人か?

 

「……ここ、よく人来る?」

 

緩やかな金髪のこいつは誰だったか

外科じゃねぇから記憶が薄いわ

 

「俺が使うと知って来るヤツはいねぇよ」

 

質問に答えるとガキはそっかと気のない顔でつぶやいた

しかもなぜか俺の隣に座り込むと棒付き飴を舐め始める

 

「俺の幼馴染が外科に行ったんだけどサ…外科部長ってどんなやつ?」

 

ガキの質問に俺は苦い顔で煙草を噛み締める。

「知らねぇよ」

「……へぇ…あんたはどこの人」

「テメェが名乗れ」

馴れ馴れしく話しかけんな。質問すんな。俺はいま最悪の気分なんだ。

そんな怒りを突き刺すように問い返してやる。

 

すると相手は座り込んだ姿勢のまま俺を見上げてきた。

 

「真葉幸村。麻酔科だヨ」

 

平然とした顔で名乗ったこいつの意気込みに免じて殴らないでおいてやる。

 

「あんたは?」

「さあな」

「……ウゼェ」

 

飄々とした顔から一転して鬱陶しそうに顔をしかめる。

ああ、こいつこんな顔か。

 

煙草の火を消した俺は久しぶりに楽しい気分になっていた。

「あんたがいる時はここに人は来ないんだよナ」

「まぁな」

 

不機嫌かと思ったがこいつは意外と絡んでくるな。やっぱ面白ぇわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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